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【377 夫婦】
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「ねぇ、ジョルジュ、それで先発隊とはどのくらい離れてるの?」
「そうだな、俺達がこのままのペースで進めば、夕方には合流できるだろう」
エンスウィル城で夜を明かした二人は、朝食を終えると身支度を整え首都を発ち東に向かっていた。
移動手段はいつも通り。
ジョルジュが風を纏い空を飛び、ジャニスはジョルジュが両腕で抱いている形である。
この時期の朝は陽が出ていても震えてしまう程に寒い。
当然空を飛んで行けば、それだけ風が体にあたり寒いはずだが、ジョルジュもジャニスも一向に寒さを感じている様子は見せない。
それは風の操作で、自分達の周囲に風のシールドを張っているためである。
「これだけ速く飛んでるのに、全く風が当たらないって不思議よね。まぁ快適だからいいんだけどね」
お姫様抱っこを最初は恥ずかしがっていたジャニスだが、今ではすっかり慣れてしまい、むしろ楽でいいとさえ思っていた。
「先発隊は確か三千と言っていたか?」
「えぇ、早く追いつかないと。まぁ、ジョルジュのスピードがあるから、ロペスさんも昨日一日時間をくれたんでしょうけどね」
ロペスは東の敗戦の一報を受けた段階で、なにもせず手をこまねいていたわけではない。
ジョルジュとジャニスが到着するまでに、城に残っていた兵で編成を組み、先発隊として東に向かわせていたのである。
その数は三千。
首都の護りもあるため、それ以上の数を組む事はできなかった。
しかし、急遽編成したにしては上出来だったとも言える。
この先発隊の役目は、ジョルジュとジャニスが合流するまでに、セシリアを迎え撃てる場所で拠点を構えておく事である。
「・・・このままのペースだと、セシリアとぶつかるのは明日の夜だろう。時間は十分にある。急いで合流するに越した事はないが、猶予はある。焦る必要はない」
「いつも思うけど、ジョルジュの風の力って本当に便利よね?青魔法のサーチみたいな事できるし、空も飛べるし、人の感情も分かるんでしょ?すごいよね」
「・・・人の感情か、まぁどこから敵意を向けられているかくらいは分かる。戦争時には確かに便利だな。あと、ジャニスが最近は俺に抱っこされて喜んでいる事も分かるぞ」
「そうなんだ・・・え!?ちょっと待って!あんたなにいきなり!?」
「ん?恥ずかしがる事なのか?俺達は夫婦だろ?俺もジャニスを抱いて飛ぶのは好きだぞ」
「だからっ、あんた本当にそういうとこ・・・あーもういいわよ!私少し黙るから!」
自分の腕の中で少しだけすねたように顔を反らしたジャニスを見て、ジョルジュは首を傾げた。
怒っているわけではないのは分かるが、ジャニスと話しているとたまにこういう事がある。
昔と比べればずいぶん人の感情が分かったと思う。
人は好意には好意が返って来る事が多い。だからジョルジュは自分の大切な人には、素直に好意を伝えている。
だけど、ジョルジュはあまりにストレートに伝えすぎるため、時にジャニスが返事に困ってしまう事がある。
「俺は素直に気持ちを伝えているだけなのだが・・・難しいな」
ぼそりと呟いたジョルジュの胸を、ジャニスが顔を反らしたまま軽く叩いた。
一晩泣いていくらかは気持ちの整理もできたようだな。
こういうやり取りができるのならば、大丈夫だろう。
だが、まだ風は不安定だ・・・内心では心配でしかたないはずだ。
ヤヨイ、キミはよく俺に、ジャニスは本当は繊細だから大事にしてくれと言っていたな。
確かにそうだ。
分かっているさ。だから俺がしっかり支えなければならない。それが夫婦だ。
「・・・ジャニス、俺は何があってもキミの傍にいるぞ」
返事は無かったが、ジャニスは俺の袖を強く掴み、かすかに頷いた。
「そうだな、俺達がこのままのペースで進めば、夕方には合流できるだろう」
エンスウィル城で夜を明かした二人は、朝食を終えると身支度を整え首都を発ち東に向かっていた。
移動手段はいつも通り。
ジョルジュが風を纏い空を飛び、ジャニスはジョルジュが両腕で抱いている形である。
この時期の朝は陽が出ていても震えてしまう程に寒い。
当然空を飛んで行けば、それだけ風が体にあたり寒いはずだが、ジョルジュもジャニスも一向に寒さを感じている様子は見せない。
それは風の操作で、自分達の周囲に風のシールドを張っているためである。
「これだけ速く飛んでるのに、全く風が当たらないって不思議よね。まぁ快適だからいいんだけどね」
お姫様抱っこを最初は恥ずかしがっていたジャニスだが、今ではすっかり慣れてしまい、むしろ楽でいいとさえ思っていた。
「先発隊は確か三千と言っていたか?」
「えぇ、早く追いつかないと。まぁ、ジョルジュのスピードがあるから、ロペスさんも昨日一日時間をくれたんでしょうけどね」
ロペスは東の敗戦の一報を受けた段階で、なにもせず手をこまねいていたわけではない。
ジョルジュとジャニスが到着するまでに、城に残っていた兵で編成を組み、先発隊として東に向かわせていたのである。
その数は三千。
首都の護りもあるため、それ以上の数を組む事はできなかった。
しかし、急遽編成したにしては上出来だったとも言える。
この先発隊の役目は、ジョルジュとジャニスが合流するまでに、セシリアを迎え撃てる場所で拠点を構えておく事である。
「・・・このままのペースだと、セシリアとぶつかるのは明日の夜だろう。時間は十分にある。急いで合流するに越した事はないが、猶予はある。焦る必要はない」
「いつも思うけど、ジョルジュの風の力って本当に便利よね?青魔法のサーチみたいな事できるし、空も飛べるし、人の感情も分かるんでしょ?すごいよね」
「・・・人の感情か、まぁどこから敵意を向けられているかくらいは分かる。戦争時には確かに便利だな。あと、ジャニスが最近は俺に抱っこされて喜んでいる事も分かるぞ」
「そうなんだ・・・え!?ちょっと待って!あんたなにいきなり!?」
「ん?恥ずかしがる事なのか?俺達は夫婦だろ?俺もジャニスを抱いて飛ぶのは好きだぞ」
「だからっ、あんた本当にそういうとこ・・・あーもういいわよ!私少し黙るから!」
自分の腕の中で少しだけすねたように顔を反らしたジャニスを見て、ジョルジュは首を傾げた。
怒っているわけではないのは分かるが、ジャニスと話しているとたまにこういう事がある。
昔と比べればずいぶん人の感情が分かったと思う。
人は好意には好意が返って来る事が多い。だからジョルジュは自分の大切な人には、素直に好意を伝えている。
だけど、ジョルジュはあまりにストレートに伝えすぎるため、時にジャニスが返事に困ってしまう事がある。
「俺は素直に気持ちを伝えているだけなのだが・・・難しいな」
ぼそりと呟いたジョルジュの胸を、ジャニスが顔を反らしたまま軽く叩いた。
一晩泣いていくらかは気持ちの整理もできたようだな。
こういうやり取りができるのならば、大丈夫だろう。
だが、まだ風は不安定だ・・・内心では心配でしかたないはずだ。
ヤヨイ、キミはよく俺に、ジャニスは本当は繊細だから大事にしてくれと言っていたな。
確かにそうだ。
分かっているさ。だから俺がしっかり支えなければならない。それが夫婦だ。
「・・・ジャニス、俺は何があってもキミの傍にいるぞ」
返事は無かったが、ジャニスは俺の袖を強く掴み、かすかに頷いた。
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