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【374 投身】
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「ブレンダン様、このまま川沿いに進めば首都バンテージに着きますが、その前にセシリアに追い付かれるでしょう」
ブレンダンを支えて歩いている兵士が口を開いた。
その言葉から察せられるのは、今残って戦っているカエストゥス兵が全滅するであろう事だった。
拠点では休まず、少しでも遠くへ逃げる事を選んだのは、残っている全軍を持ってしてもセシリアには敵わないであろう事を分かっているからだった。
「・・・ワシが、戦えれば・・・」
「いえ、お言葉ですが今は無理でしょう。青魔法使いが魔力を送ったとしても、それだけ疲労されていればすぐには動けないでしょう。今は耐えてお逃げください。ブレンダン様はカエストゥスになくてはならないお方です」
「ぐッ・・・」
兵士の言葉にブレンダンは苦悶の表情を浮かべ、唇を強く噛み締めた。
「おじいさん、辛そうです」
「クラレッサ・・・」
手を握る力が強くなる。
表情には出さないが、クラレッサもブレンダンの身を案じ、不安を感じているようだ。
「クラレッサ、大丈夫じゃ・・・」
「・・・はい」
俯き加減で頷く。
ブレンダンも分かってはいた。
戦力の差は歴然としている。
セシリアの力は今のカエストゥス兵達が太刀打ちできるものではない。
攻撃魔法を何十何百と浴びせていたが、おそらくほとんどダメージは与えられていないだろう。
ルーカス達カエストゥス兵は、身を賭してブレンダンとクラレッサを逃がしたのだ。
涙が出る・・・
なぜ、若者を犠牲にして自分が逃げ延びねばならない。
だが、自分の感情とは裏腹に、自分の立場も分かっていた。
この戦争に勝利するためには、自分の力はまだ必要だという事を。
心を押し殺してでも生き延びなければならないという事を。
「ぐはぁッツ!」
突然、自分の左肩を支えていた兵士が崩れ落ちた。
「ど、どうしたん・・・これは!?」
倒れた兵士の背中には、鋭く尖った炎の刃が突き刺さっていた。
そしてそれは激しく燃え上がった。
「くっ!」
「おじいさん!」
炎の勢いに押され一歩後ろに飛びのくと、今度は右肩を支えていた兵士の胸に炎の刃が突き刺さった。
「うぐッツ!」
そしてうめき声をもらし倒れると、炎の刃は一気に燃え上がり兵士の全身を紅蓮の炎で焼いた。
「うふふ・・・みーつけた」
木の陰からその姿を現し、楽し気な笑みを見せながらゆっくり歩いてくるのはセシリア・シールズ。
全身を真っ赤に濡らしているものは、血狂刃の力なのか、それともカエストゥス兵の返り血なのかさえもはや分からない。
「拠点って言っても大した事なかったわ。みんな弱いんだもの。でも、あなた達なら私を楽しませてくれるわよね?そろそろ決着をつけましょうよ」
この時、ブレンダンには全く戦う力は残っていなかった。
クラレッサの悪霊を使えば、セシリアに勝利する事もできたかもしれない。
だが、それはテレンスの想いに背く事。
そしてクラレッサ自身の破滅にも繋がる。
一歩一歩、ゆっくりと近づいてくるセシリアに、ブレンダンは動く事ができなかった。
逃げる事は不可能。魔力も無い。なすすべが無い。
ローブの中に手を伸ばし、魔空の枝を握る。
最後の手段・・・命を燃やしてセシリアを道連れにする。
テレンスと同じ道を歩もうと、ブレンダンが気を放出しようとしたその時、クラレッサがブレンダンの腕を掴んだ。
「おじいさん・・・私を信じてください」
耳元でそう呟くと、クラレッサはブレンダンの腕を引き川へ飛び込んだ。
「え!?なに!?どういうつもりよ!?」
意表を突かれたセシリアはすぐに体を動かす事ができず、わずかな時間だが川に呑まれ流されていく二人を唖然と見送ってしまった。
「はっ、まさか!?」
慌てて川の流れを見る。
かなり早い。そしてこの川の流れつく先は・・・・・カエストゥス国、首都バンテージ。
「・・・う、ふふふふ・・・あはははは・・・やるじゃないクラレッサ!まさかこんな大胆な事をするなんて思わなかったわ!川に身投げして逃げるなんて!」
すでにセシリアの視界から消えている二人。
いかに流れが速くても、追いかけようと思えば、セシリアの脚力ならば十分に追いつける。
だが、セシリアは深紅の片手剣、血狂刃の切っ先に炎を集め出した。
「・・・テレンスに血狂刃の本性を見せたから、プロミネンスはさすがにもう撃てないわ。でも、川を破壊するくらいの炎は撃てるわよ」
もし、これで生きていたらまた会いましょう
セシリアの血狂刃が火を噴いた。
ブレンダンを支えて歩いている兵士が口を開いた。
その言葉から察せられるのは、今残って戦っているカエストゥス兵が全滅するであろう事だった。
拠点では休まず、少しでも遠くへ逃げる事を選んだのは、残っている全軍を持ってしてもセシリアには敵わないであろう事を分かっているからだった。
「・・・ワシが、戦えれば・・・」
「いえ、お言葉ですが今は無理でしょう。青魔法使いが魔力を送ったとしても、それだけ疲労されていればすぐには動けないでしょう。今は耐えてお逃げください。ブレンダン様はカエストゥスになくてはならないお方です」
「ぐッ・・・」
兵士の言葉にブレンダンは苦悶の表情を浮かべ、唇を強く噛み締めた。
「おじいさん、辛そうです」
「クラレッサ・・・」
手を握る力が強くなる。
表情には出さないが、クラレッサもブレンダンの身を案じ、不安を感じているようだ。
「クラレッサ、大丈夫じゃ・・・」
「・・・はい」
俯き加減で頷く。
ブレンダンも分かってはいた。
戦力の差は歴然としている。
セシリアの力は今のカエストゥス兵達が太刀打ちできるものではない。
攻撃魔法を何十何百と浴びせていたが、おそらくほとんどダメージは与えられていないだろう。
ルーカス達カエストゥス兵は、身を賭してブレンダンとクラレッサを逃がしたのだ。
涙が出る・・・
なぜ、若者を犠牲にして自分が逃げ延びねばならない。
だが、自分の感情とは裏腹に、自分の立場も分かっていた。
この戦争に勝利するためには、自分の力はまだ必要だという事を。
心を押し殺してでも生き延びなければならないという事を。
「ぐはぁッツ!」
突然、自分の左肩を支えていた兵士が崩れ落ちた。
「ど、どうしたん・・・これは!?」
倒れた兵士の背中には、鋭く尖った炎の刃が突き刺さっていた。
そしてそれは激しく燃え上がった。
「くっ!」
「おじいさん!」
炎の勢いに押され一歩後ろに飛びのくと、今度は右肩を支えていた兵士の胸に炎の刃が突き刺さった。
「うぐッツ!」
そしてうめき声をもらし倒れると、炎の刃は一気に燃え上がり兵士の全身を紅蓮の炎で焼いた。
「うふふ・・・みーつけた」
木の陰からその姿を現し、楽し気な笑みを見せながらゆっくり歩いてくるのはセシリア・シールズ。
全身を真っ赤に濡らしているものは、血狂刃の力なのか、それともカエストゥス兵の返り血なのかさえもはや分からない。
「拠点って言っても大した事なかったわ。みんな弱いんだもの。でも、あなた達なら私を楽しませてくれるわよね?そろそろ決着をつけましょうよ」
この時、ブレンダンには全く戦う力は残っていなかった。
クラレッサの悪霊を使えば、セシリアに勝利する事もできたかもしれない。
だが、それはテレンスの想いに背く事。
そしてクラレッサ自身の破滅にも繋がる。
一歩一歩、ゆっくりと近づいてくるセシリアに、ブレンダンは動く事ができなかった。
逃げる事は不可能。魔力も無い。なすすべが無い。
ローブの中に手を伸ばし、魔空の枝を握る。
最後の手段・・・命を燃やしてセシリアを道連れにする。
テレンスと同じ道を歩もうと、ブレンダンが気を放出しようとしたその時、クラレッサがブレンダンの腕を掴んだ。
「おじいさん・・・私を信じてください」
耳元でそう呟くと、クラレッサはブレンダンの腕を引き川へ飛び込んだ。
「え!?なに!?どういうつもりよ!?」
意表を突かれたセシリアはすぐに体を動かす事ができず、わずかな時間だが川に呑まれ流されていく二人を唖然と見送ってしまった。
「はっ、まさか!?」
慌てて川の流れを見る。
かなり早い。そしてこの川の流れつく先は・・・・・カエストゥス国、首都バンテージ。
「・・・う、ふふふふ・・・あはははは・・・やるじゃないクラレッサ!まさかこんな大胆な事をするなんて思わなかったわ!川に身投げして逃げるなんて!」
すでにセシリアの視界から消えている二人。
いかに流れが速くても、追いかけようと思えば、セシリアの脚力ならば十分に追いつける。
だが、セシリアは深紅の片手剣、血狂刃の切っ先に炎を集め出した。
「・・・テレンスに血狂刃の本性を見せたから、プロミネンスはさすがにもう撃てないわ。でも、川を破壊するくらいの炎は撃てるわよ」
もし、これで生きていたらまた会いましょう
セシリアの血狂刃が火を噴いた。
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