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【357 マーヴィン 対 テレンス ①】
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「ぬるいのう!なんじゃその攻撃は!?」
無数に撃ち込まれる攻撃魔法を結界で防ぐ。
「セイッ!ハァッ!オォォォォォッツ!」
後ろについたブレンダンが結界で攻撃を防ぎ、マーヴィンが帝国の攻撃の合間をぬって斬りつける。
単純だが、マーヴィンとブレンダンの息の合った連携は、10年の歳月を感じさせない程に見事なものだった。
「み、見えない!何も見えない!」
「うわぁぁぁーッツ!どうなってんだよ!」
マーヴィンの黒い剣、鴉は斬った相手の視覚を奪う魔道具。
それが腕でも足でも、小さなかすり傷であっても斬られた相手は視界を闇で覆われてしまう。
「さすがマーヴィン様だ!」
「このまま敵の大将を討ち取るぞ!」
マーヴィンに視界を奪われた帝国兵を、側近達が仕留めていく。
「ブレンダン、一つ聞いておきたい」
向ってくる帝国兵を斬り伏せ走りながら、マーヴィンが後ろを見ずに言葉をかける。
「はぁ・・はぁ・・・なんじゃ?」
高齢で魔法使いであるブレンダンに合わせているため、走る速さはだいぶ抑えられている。
だが、それでも息が上がっていて、苦しそうに言葉を返す。
「この先にいる帝国の指揮官は、テレンスとクラレッサという兄妹のようだ。お前の言っていた悪霊使いの女だ」
「・・・そう聞いたから、ワシが来たんじゃ。はぁ・・・はぁ・・、あの娘は、ワシ以外では、誰も押さえられん」
目の前の敵を一掃し攻撃が止んだところで、マーヴィンは足を止めた。
「はぁ・・・はぁ・・・マーヴィン、お主、ワシより年上のくせに、体力、あるのう・・・」
「引退したとて怠けていたわけではないからな。なぁ、ブレンダン・・・・・さっきお前が見せた魔空の枝、小手調べ程度の力なのはわかるが、クラレッサの悪霊とはあんなものではないのだろう?」
「ふぅ・・・そうじゃ、あんなものではないぞ。よいか、あの娘とはワシがやる。お前達は男の方を頼む」
呼吸を整える。
あの日、王宮で会った白い髪の悪霊使いの少女の顔を思い出す。
「分かった。ロペスでも何もできなかったというしな。話しを聞いた限り、お前以外では全く無力のようだ。俺達はお前がクラレッサと一対一で集中できるよう、テレンスを抑える事に全力をつくす」
「あぁ、頼んだぞ」
言葉少なにブレンダンが頷くと、マーヴィン達は意思を確認するように顔を見合わせた。
「・・・では、行くか」
足を進めながらブレンダンは考えた。
悪霊使いのクラレッサ・アリーム。果たして自分で抑えきれるだろうか?
あの日、王宮でお互いの霊力をぶつけ合わせた時に感じたクラレッサの力は、自分と同等・・・いや、それ以上かもしれなかった。
魔道具その物の力もあるだろうが、あの年であれほどの霊力を備えている事は驚異的だった。
霊力を使うセンスは自分よりもはるかに上だろう。
「もっと早く、ワシが出会っておればな・・・」
口にしてもしかたのない事だが、言わずにはいれなかった。
どういう境遇かは分からないが。だが、何十年と子供と向き合ってきたブレンダンには、クラレッサの心の闇は親が原因だと感じていた。
親に何かされたか、それとも何らかの理由で親のいない境遇だったのか?
いずれにしろ、心を大きく壊す程の事があったのだろう。
・・・・・できる事なら救ってやりたい
そのためにはクラレッサの魔道具、御霊の目を何とかしなければならないだろう。
あの禍々しさは普通の魔道具ではない。それこそ悪霊そのものと言っていい。
「・・・ワシにしかできん事だ」
ブレンダンのサーチが、テレンスとクラレッサを捉えた。
「くそッ、強い!」
「だめだ!近づく事ができない」
「一歩引いて援護に回れ!ヤツはマーヴィン様にまかせるしかない!」
押し寄せる帝国軍を退け、たどり着いた先で、マーヴィン・マルティネスはテレンス・アリームと対峙していた。
テレンスの火球を上段から斬り落とし、ウインドカッターを右から左へ薙ぎ払う。刺氷弾を下から上へと振り上げて弾き飛ばす。
側近達は防御と回避で精一杯だったが、
マーヴィンはテレンスの攻撃魔法を全て黒い剣で叩き落としていた。
「じいさんやるじゃないか。僕の魔法、けっこう強いと思うけど・・・よく防いでるよ」
「ふん、この程度で強いだと?うぬぼれるな。俺の国の王子に比べれば貴様なんぞ赤子同然だ」
「言ってくれるな。僕はまだ初級魔法しか出してないぞ」
テレンスの右手が光輝き、周囲の空気が震えだす。
「爆裂空破弾か?上級魔法並みの魔力だな。その若さで大したものだと褒めてやろう」
感心するような言葉とは裏腹に、マーヴィンの目には余裕があり、まるで驚異を感じていない
「受けて見ろ!」
テレンスもマーヴィンに狙いを定めると、投げつけるように右手を振るい魔法を放った。
「ふん、その程度で俺をとれると思ったか?見くびるな!」
大人の頭程もある大きなエネルギーの塊が向かってくるが、マーヴィンはその場で剣を構え、上から下へ真っ二つに斬り裂いた。
半分にされたエネルギー弾は、マーヴィンの体を避けるように左右に別れ飛び、地面にぶつかり土砂を巻き上げ爆ぜた。
「若造、爆裂空破弾でこの程度ならば、上級魔法もしれたものよ。俺には勝てんぞ」
「・・・本当に強いな。確かに光源爆裂弾でも斬って落としそうな勢いだよ。分かった。じいさんの実力を認めて僕も本気を出そう」
自分の魔法をあっさりと斬り裂いたマーヴィンを見て、テレンスの顔付きが変わる。
口元には薄い笑みを浮かべているが、目は笑っていない。
目の前のマーヴィンを強敵と認め、射貫くように鋭く睨みつけている。
しかし、なぜか両手をローブの中に入れ構えを解いてしまった。
「ふん・・・両手をしまって何を企んでいる?一見戦う姿勢には見えんが、そうではないのであろう?面白い・・・見せて見ろ!貴様の本気とやらを!」
「もう見せている」
マーヴィンが剣を構え直したその時、突然背中に強い衝撃を感じるとともに爆発が起こり、マーヴィンは前のめりに地面に叩きつけられた。
「さて・・・何発持つかな?」
無数に撃ち込まれる攻撃魔法を結界で防ぐ。
「セイッ!ハァッ!オォォォォォッツ!」
後ろについたブレンダンが結界で攻撃を防ぎ、マーヴィンが帝国の攻撃の合間をぬって斬りつける。
単純だが、マーヴィンとブレンダンの息の合った連携は、10年の歳月を感じさせない程に見事なものだった。
「み、見えない!何も見えない!」
「うわぁぁぁーッツ!どうなってんだよ!」
マーヴィンの黒い剣、鴉は斬った相手の視覚を奪う魔道具。
それが腕でも足でも、小さなかすり傷であっても斬られた相手は視界を闇で覆われてしまう。
「さすがマーヴィン様だ!」
「このまま敵の大将を討ち取るぞ!」
マーヴィンに視界を奪われた帝国兵を、側近達が仕留めていく。
「ブレンダン、一つ聞いておきたい」
向ってくる帝国兵を斬り伏せ走りながら、マーヴィンが後ろを見ずに言葉をかける。
「はぁ・・はぁ・・・なんじゃ?」
高齢で魔法使いであるブレンダンに合わせているため、走る速さはだいぶ抑えられている。
だが、それでも息が上がっていて、苦しそうに言葉を返す。
「この先にいる帝国の指揮官は、テレンスとクラレッサという兄妹のようだ。お前の言っていた悪霊使いの女だ」
「・・・そう聞いたから、ワシが来たんじゃ。はぁ・・・はぁ・・、あの娘は、ワシ以外では、誰も押さえられん」
目の前の敵を一掃し攻撃が止んだところで、マーヴィンは足を止めた。
「はぁ・・・はぁ・・・マーヴィン、お主、ワシより年上のくせに、体力、あるのう・・・」
「引退したとて怠けていたわけではないからな。なぁ、ブレンダン・・・・・さっきお前が見せた魔空の枝、小手調べ程度の力なのはわかるが、クラレッサの悪霊とはあんなものではないのだろう?」
「ふぅ・・・そうじゃ、あんなものではないぞ。よいか、あの娘とはワシがやる。お前達は男の方を頼む」
呼吸を整える。
あの日、王宮で会った白い髪の悪霊使いの少女の顔を思い出す。
「分かった。ロペスでも何もできなかったというしな。話しを聞いた限り、お前以外では全く無力のようだ。俺達はお前がクラレッサと一対一で集中できるよう、テレンスを抑える事に全力をつくす」
「あぁ、頼んだぞ」
言葉少なにブレンダンが頷くと、マーヴィン達は意思を確認するように顔を見合わせた。
「・・・では、行くか」
足を進めながらブレンダンは考えた。
悪霊使いのクラレッサ・アリーム。果たして自分で抑えきれるだろうか?
あの日、王宮でお互いの霊力をぶつけ合わせた時に感じたクラレッサの力は、自分と同等・・・いや、それ以上かもしれなかった。
魔道具その物の力もあるだろうが、あの年であれほどの霊力を備えている事は驚異的だった。
霊力を使うセンスは自分よりもはるかに上だろう。
「もっと早く、ワシが出会っておればな・・・」
口にしてもしかたのない事だが、言わずにはいれなかった。
どういう境遇かは分からないが。だが、何十年と子供と向き合ってきたブレンダンには、クラレッサの心の闇は親が原因だと感じていた。
親に何かされたか、それとも何らかの理由で親のいない境遇だったのか?
いずれにしろ、心を大きく壊す程の事があったのだろう。
・・・・・できる事なら救ってやりたい
そのためにはクラレッサの魔道具、御霊の目を何とかしなければならないだろう。
あの禍々しさは普通の魔道具ではない。それこそ悪霊そのものと言っていい。
「・・・ワシにしかできん事だ」
ブレンダンのサーチが、テレンスとクラレッサを捉えた。
「くそッ、強い!」
「だめだ!近づく事ができない」
「一歩引いて援護に回れ!ヤツはマーヴィン様にまかせるしかない!」
押し寄せる帝国軍を退け、たどり着いた先で、マーヴィン・マルティネスはテレンス・アリームと対峙していた。
テレンスの火球を上段から斬り落とし、ウインドカッターを右から左へ薙ぎ払う。刺氷弾を下から上へと振り上げて弾き飛ばす。
側近達は防御と回避で精一杯だったが、
マーヴィンはテレンスの攻撃魔法を全て黒い剣で叩き落としていた。
「じいさんやるじゃないか。僕の魔法、けっこう強いと思うけど・・・よく防いでるよ」
「ふん、この程度で強いだと?うぬぼれるな。俺の国の王子に比べれば貴様なんぞ赤子同然だ」
「言ってくれるな。僕はまだ初級魔法しか出してないぞ」
テレンスの右手が光輝き、周囲の空気が震えだす。
「爆裂空破弾か?上級魔法並みの魔力だな。その若さで大したものだと褒めてやろう」
感心するような言葉とは裏腹に、マーヴィンの目には余裕があり、まるで驚異を感じていない
「受けて見ろ!」
テレンスもマーヴィンに狙いを定めると、投げつけるように右手を振るい魔法を放った。
「ふん、その程度で俺をとれると思ったか?見くびるな!」
大人の頭程もある大きなエネルギーの塊が向かってくるが、マーヴィンはその場で剣を構え、上から下へ真っ二つに斬り裂いた。
半分にされたエネルギー弾は、マーヴィンの体を避けるように左右に別れ飛び、地面にぶつかり土砂を巻き上げ爆ぜた。
「若造、爆裂空破弾でこの程度ならば、上級魔法もしれたものよ。俺には勝てんぞ」
「・・・本当に強いな。確かに光源爆裂弾でも斬って落としそうな勢いだよ。分かった。じいさんの実力を認めて僕も本気を出そう」
自分の魔法をあっさりと斬り裂いたマーヴィンを見て、テレンスの顔付きが変わる。
口元には薄い笑みを浮かべているが、目は笑っていない。
目の前のマーヴィンを強敵と認め、射貫くように鋭く睨みつけている。
しかし、なぜか両手をローブの中に入れ構えを解いてしまった。
「ふん・・・両手をしまって何を企んでいる?一見戦う姿勢には見えんが、そうではないのであろう?面白い・・・見せて見ろ!貴様の本気とやらを!」
「もう見せている」
マーヴィンが剣を構え直したその時、突然背中に強い衝撃を感じるとともに爆発が起こり、マーヴィンは前のめりに地面に叩きつけられた。
「さて・・・何発持つかな?」
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