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【354 渓谷の戦い】

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「来たぞ・・・・・今だ!撃てーッツ!」

高台へと続く険しい岩の道、帝国軍を待ち伏せていたカエストゥス軍は、青魔法のサーチでその位置を掴み、攻撃魔法の射程距離に捉えると一斉射撃を開始した。

使用する魔法は、風の初級魔法のウインドカッター、そして氷の初級魔法の刺氷弾。
渓谷という地形上、崖崩れや森の火事で、自軍にも被害を及ぼしかねない爆発と火の魔法は極力使用を控えた。

「よし!手ごたえありだ!このまま撃ち続けろ!青魔法使いは反撃に備え結界の準備は怠るな!剣士隊は周囲の警戒だ!」



先手はカエストゥス軍の攻撃が見事に決まった。

だが高台への進軍が読まれている事は、帝国軍も想定内。

テレンス・アリームは、進軍を読まれ攻撃を受けた場合の指示を出していた。


「ちっ、やはりサーチで上回っている分、どうしても先手はカエストゥスか!だが、こっちも動きを読まれている事を前提に行動してんだよ!よし、お前達!遠慮なくぶっ放してやれ!」

止むことなく撃ち込まれる攻撃魔法を、青魔法使い達の結界で防ぎながら、帝国軍先発隊の部隊長は、準備していた黒魔法使い達に号令を出した。


次の瞬間、帝国軍黒魔法使い達の手から放たれた魔法は、上級黒魔法の光源爆裂弾だった。


「貴様らは自国の領土だから、上級魔法の使用をためらっているんだろ?だが、俺達帝国には何の躊躇も無い。愛国心が貴様らの敗因だ」

高い魔力の込められたエネルギー弾が、400メートル先のカエストゥス陣営に打ち込まれた。





「来たぞ!マーヴィン様の読み通りだ!」

自分達が攻撃魔法を撃ち込んでいる先から、突然大きな光が見えたと思うと、それは高魔力の破壊のエネルギーの塊だった。

その魔力を捉えた瞬間、青魔法使い達が結界を張り巡らせる。

結界を張った直後に光源爆裂弾が炸裂し、足元から激しく揺さぶられる。
多くの兵達が膝を着く事になったが、帝国の反撃を予測していた分混乱をきたす事はなかった。

隊への直接のダメージは無かったが、爆発の余波は樹々を焼き足場を砕いた。


「くそっ!分かってはいたが、こっちの領土がどうなろうと知った事じゃねぇってか!」
「まだくるぞ!気を抜くな!」

たて続けに上級魔法を撃ち込まれる。
結界の最高峰、天衣結界で防いで入るが、帝国軍も間をおかずに撃ってくるため、一時も休む暇はなかった。

戦いを見ていた部隊長は、後方支援として同行させた第三部隊へ支持を出した。

「・・・いきなり光源爆裂弾とはな、第三部隊がいなければ危なかった」


いよいよとなれば、こちらも渓谷を崩壊させてでも上級魔法を使わざるをえない。

だが、まだその時ではない。
こちらの領土を欲している帝国が、初手で渓谷を崩壊させかねない光源爆裂弾を撃ってくる事には驚かされた。そして撃ちあいになればこちらが不利だ。

ならばどうするか。

「接近戦で制圧する」






高台で帝国軍との戦いが始まった時、マーヴィンの元へ偵察に出ていた兵が報告へ戻った。

「・・・そうか、ブレンダンから聞いてはいたが、白い髪の女・・・俺のところへ来るとはな。」

「はい。すでにロペス様へ報告は済ませました。あの女はブレンダン様の霊力で無ければ対抗できないそうです。幸い、今は動く様子はありませんが・・・」

「いずれは、か・・・目を合わせただけで呼吸ができなくなると言っていたな。ふむ・・・」

霊力の話しは以前、ブレンダンから聞いた事はある。
だが、今回聞いたクラレッサという女は、同じ霊力でもまるで種類が違っていた。

聞いたままの能力であるならば、マーヴィンには勝ち目が無かった。

「・・・戦い方次第だがな」


ブレンダンが間に合えばそれでいい。だが、その前に戦う事になるのであれば・・・・・

「年季の違いをみせてやろう」

どこか楽しそうに、マーヴィンは呟いた。
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