355 / 1,253
【354 渓谷の戦い】
しおりを挟む
「来たぞ・・・・・今だ!撃てーッツ!」
高台へと続く険しい岩の道、帝国軍を待ち伏せていたカエストゥス軍は、青魔法のサーチでその位置を掴み、攻撃魔法の射程距離に捉えると一斉射撃を開始した。
使用する魔法は、風の初級魔法のウインドカッター、そして氷の初級魔法の刺氷弾。
渓谷という地形上、崖崩れや森の火事で、自軍にも被害を及ぼしかねない爆発と火の魔法は極力使用を控えた。
「よし!手ごたえありだ!このまま撃ち続けろ!青魔法使いは反撃に備え結界の準備は怠るな!剣士隊は周囲の警戒だ!」
先手はカエストゥス軍の攻撃が見事に決まった。
だが高台への進軍が読まれている事は、帝国軍も想定内。
テレンス・アリームは、進軍を読まれ攻撃を受けた場合の指示を出していた。
「ちっ、やはりサーチで上回っている分、どうしても先手はカエストゥスか!だが、こっちも動きを読まれている事を前提に行動してんだよ!よし、お前達!遠慮なくぶっ放してやれ!」
止むことなく撃ち込まれる攻撃魔法を、青魔法使い達の結界で防ぎながら、帝国軍先発隊の部隊長は、準備していた黒魔法使い達に号令を出した。
次の瞬間、帝国軍黒魔法使い達の手から放たれた魔法は、上級黒魔法の光源爆裂弾だった。
「貴様らは自国の領土だから、上級魔法の使用をためらっているんだろ?だが、俺達帝国には何の躊躇も無い。愛国心が貴様らの敗因だ」
高い魔力の込められたエネルギー弾が、400メートル先のカエストゥス陣営に打ち込まれた。
「来たぞ!マーヴィン様の読み通りだ!」
自分達が攻撃魔法を撃ち込んでいる先から、突然大きな光が見えたと思うと、それは高魔力の破壊のエネルギーの塊だった。
その魔力を捉えた瞬間、青魔法使い達が結界を張り巡らせる。
結界を張った直後に光源爆裂弾が炸裂し、足元から激しく揺さぶられる。
多くの兵達が膝を着く事になったが、帝国の反撃を予測していた分混乱をきたす事はなかった。
隊への直接のダメージは無かったが、爆発の余波は樹々を焼き足場を砕いた。
「くそっ!分かってはいたが、こっちの領土がどうなろうと知った事じゃねぇってか!」
「まだくるぞ!気を抜くな!」
たて続けに上級魔法を撃ち込まれる。
結界の最高峰、天衣結界で防いで入るが、帝国軍も間をおかずに撃ってくるため、一時も休む暇はなかった。
戦いを見ていた部隊長は、後方支援として同行させた第三部隊へ支持を出した。
「・・・いきなり光源爆裂弾とはな、第三部隊がいなければ危なかった」
いよいよとなれば、こちらも渓谷を崩壊させてでも上級魔法を使わざるをえない。
だが、まだその時ではない。
こちらの領土を欲している帝国が、初手で渓谷を崩壊させかねない光源爆裂弾を撃ってくる事には驚かされた。そして撃ちあいになればこちらが不利だ。
ならばどうするか。
「接近戦で制圧する」
高台で帝国軍との戦いが始まった時、マーヴィンの元へ偵察に出ていた兵が報告へ戻った。
「・・・そうか、ブレンダンから聞いてはいたが、白い髪の女・・・俺のところへ来るとはな。」
「はい。すでにロペス様へ報告は済ませました。あの女はブレンダン様の霊力で無ければ対抗できないそうです。幸い、今は動く様子はありませんが・・・」
「いずれは、か・・・目を合わせただけで呼吸ができなくなると言っていたな。ふむ・・・」
霊力の話しは以前、ブレンダンから聞いた事はある。
だが、今回聞いたクラレッサという女は、同じ霊力でもまるで種類が違っていた。
聞いたままの能力であるならば、マーヴィンには勝ち目が無かった。
「・・・戦い方次第だがな」
ブレンダンが間に合えばそれでいい。だが、その前に戦う事になるのであれば・・・・・
「年季の違いをみせてやろう」
どこか楽しそうに、マーヴィンは呟いた。
高台へと続く険しい岩の道、帝国軍を待ち伏せていたカエストゥス軍は、青魔法のサーチでその位置を掴み、攻撃魔法の射程距離に捉えると一斉射撃を開始した。
使用する魔法は、風の初級魔法のウインドカッター、そして氷の初級魔法の刺氷弾。
渓谷という地形上、崖崩れや森の火事で、自軍にも被害を及ぼしかねない爆発と火の魔法は極力使用を控えた。
「よし!手ごたえありだ!このまま撃ち続けろ!青魔法使いは反撃に備え結界の準備は怠るな!剣士隊は周囲の警戒だ!」
先手はカエストゥス軍の攻撃が見事に決まった。
だが高台への進軍が読まれている事は、帝国軍も想定内。
テレンス・アリームは、進軍を読まれ攻撃を受けた場合の指示を出していた。
「ちっ、やはりサーチで上回っている分、どうしても先手はカエストゥスか!だが、こっちも動きを読まれている事を前提に行動してんだよ!よし、お前達!遠慮なくぶっ放してやれ!」
止むことなく撃ち込まれる攻撃魔法を、青魔法使い達の結界で防ぎながら、帝国軍先発隊の部隊長は、準備していた黒魔法使い達に号令を出した。
次の瞬間、帝国軍黒魔法使い達の手から放たれた魔法は、上級黒魔法の光源爆裂弾だった。
「貴様らは自国の領土だから、上級魔法の使用をためらっているんだろ?だが、俺達帝国には何の躊躇も無い。愛国心が貴様らの敗因だ」
高い魔力の込められたエネルギー弾が、400メートル先のカエストゥス陣営に打ち込まれた。
「来たぞ!マーヴィン様の読み通りだ!」
自分達が攻撃魔法を撃ち込んでいる先から、突然大きな光が見えたと思うと、それは高魔力の破壊のエネルギーの塊だった。
その魔力を捉えた瞬間、青魔法使い達が結界を張り巡らせる。
結界を張った直後に光源爆裂弾が炸裂し、足元から激しく揺さぶられる。
多くの兵達が膝を着く事になったが、帝国の反撃を予測していた分混乱をきたす事はなかった。
隊への直接のダメージは無かったが、爆発の余波は樹々を焼き足場を砕いた。
「くそっ!分かってはいたが、こっちの領土がどうなろうと知った事じゃねぇってか!」
「まだくるぞ!気を抜くな!」
たて続けに上級魔法を撃ち込まれる。
結界の最高峰、天衣結界で防いで入るが、帝国軍も間をおかずに撃ってくるため、一時も休む暇はなかった。
戦いを見ていた部隊長は、後方支援として同行させた第三部隊へ支持を出した。
「・・・いきなり光源爆裂弾とはな、第三部隊がいなければ危なかった」
いよいよとなれば、こちらも渓谷を崩壊させてでも上級魔法を使わざるをえない。
だが、まだその時ではない。
こちらの領土を欲している帝国が、初手で渓谷を崩壊させかねない光源爆裂弾を撃ってくる事には驚かされた。そして撃ちあいになればこちらが不利だ。
ならばどうするか。
「接近戦で制圧する」
高台で帝国軍との戦いが始まった時、マーヴィンの元へ偵察に出ていた兵が報告へ戻った。
「・・・そうか、ブレンダンから聞いてはいたが、白い髪の女・・・俺のところへ来るとはな。」
「はい。すでにロペス様へ報告は済ませました。あの女はブレンダン様の霊力で無ければ対抗できないそうです。幸い、今は動く様子はありませんが・・・」
「いずれは、か・・・目を合わせただけで呼吸ができなくなると言っていたな。ふむ・・・」
霊力の話しは以前、ブレンダンから聞いた事はある。
だが、今回聞いたクラレッサという女は、同じ霊力でもまるで種類が違っていた。
聞いたままの能力であるならば、マーヴィンには勝ち目が無かった。
「・・・戦い方次第だがな」
ブレンダンが間に合えばそれでいい。だが、その前に戦う事になるのであれば・・・・・
「年季の違いをみせてやろう」
どこか楽しそうに、マーヴィンは呟いた。
0
お気に入りに追加
141
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる