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理太郎

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【331 空中戦】

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弥生の風で落下の衝撃を和らげる。
階段の上から軽く飛び降りるくらいの感覚で、パトリックは地面に着地した。

「弥生、打ち合わせ通りだ。まずは帝国の第一陣を叩く!」

「了解、先手は任せたよ」

パトリックは右手の人差し指にはめた、雷の指輪に魔力を集中する。

弥生は足元に風を纏い、前方に意識を集中する。
持ち味の機動力を最大限に生かすためでる。




「・・・来やがったな!」

パトリックの視線の先、数百メートル程だろうか。
上空にいくつもの小さな黒い点が見える。
それはすぐに大きくなり、黒いローブを纏った人間だと分かった。

帝国軍の第一陣は黒魔法使いだった。




「射程・・・よし、雷の指輪の力を見せてやるぜ!」

距離にしておよそ50メートル程まで敵が近づいた。
メディシングの上空にその姿を現した帝国の黒魔法使いが、最初の一発を撃とうとした瞬間、パトリックは空に向かって、右手を大きく振り払った。


指先からほとばしる強烈な電撃は、空を飛ぶ何千何百という帝国の魔法使いに直撃し、焼き払ったかに見えた。

だが・・・・・

「むっ!?」

帝国の黒魔法使いはそれぞれ銀色に光る金属のプレートを手にし、自身の正面に青く光る結界を張りパトリックの雷を防ぐ。結界の魔道具である。





「パトリックさん、黒魔法使いを突撃させるんです。結界の魔道具を持たせるのは当然じゃないですか。あまく見ましたね?」

魔力の流れを読むマイリスは、はるか後方でも場の動きを把握できる。
パトリックの魔道具が雷の指輪。
そこまでは掴めないが、なんらかの攻撃用魔道具を使用している事は分かっている。

「昨日と同じ轍は踏みません、さぁ!今度はこちらの番です!」






上空の黒魔法使い達が爆裂魔法を撃ち放つとほぼ同時に、パトリックの横を一陣の風が吹き抜けた。

撃ち放たれた魔法は中級黒魔法の爆裂空破弾。

「フン、そんなもの・・・」

ヤヨイは大地を蹴り飛び上がると、上段から薙刀を振り下ろし、爆裂空破弾を真っ二つに斬り裂いた。

「こうだ!」

空中で縦に二つに分かれた爆裂魔法だったエネルギーの塊は、勢いを無くしたまま少しだけ宙を進むと、やがて限界を迎えたように爆ぜた。

そのまま空に留まった弥生は、自分に手の平を向けて来る黒魔法使い達に、薙刀を真横に振り払う。

強い風が一の字に襲い掛かり、帝国の魔法使い達を叩きつける。

「くそっ!この女、体力型だろ!?この風はなんだ!?」
「あの槍のような武器が魔道具か!?だが、魔力は一切感じないぞ?」
「いいから撃て!全員で囲んで、ぐわぁぁぁーっつ!」

帝国の黒魔法使い弥生を囲み、一斉に魔法を放とうとするが、弥生の体を中心にから強い風が吹き荒れ、黒魔法使い達を吹き飛ばす。

「フン、帝国の魔法使いってこの程度なの!?」

薙刀を振るう度にその切っ先から撃ち放たれる風の刃が、帝国兵を一人また一人と打ち落としていく。




「フッ・・・弥生、久しぶりに風姫の本領発揮か」

帝国の数百人にも及ぶ黒魔法使いを相手に、たった一人で叩き伏せている姿を見て、パトリックはその姿に目を奪われそうになっていた。

風を操る姫だから風姫。
姫という言葉に弥生は恥ずかしがっていたが、これほどピッタリな渾名も無かった。

帝国のどんな攻撃魔法も弥生の風の前に防がれ、一発も浴びせる事ができずにいた。




「・・・先行させた黒魔法使いが落とされている・・・魔力は感じませんが、代わりに不思議な力を感じますね。昨日はいなかった・・・・・ずいぶん優秀な援軍がいたのですね。ですが、我が帝国の黒魔法使いも負けてませんよ」

戦局を読むマイリスは、先行させた黒魔法使いだけでメディシングを制圧できるとは思っていなかった。
だが、たった一人にここまで一方的に倒され、何もできないという状況も予想外であった。
しかし、追い込まれた時の対策も事前伝えてある。





「準備はできた!撃つぞ!」
空中戦を繰り広げる弥生と帝国の黒魔法使い達。

後方で戦闘に加わらずにいた魔法使い達が声を上げると、戦闘を繰り広げていた魔法使い達が一斉に弥生から離れる。

魔法の通り道ができた。

「喰らえ!光源爆裂弾!」
「灼炎竜!」
「トルネードバースト!」

数十人の黒魔法使い達が、一度に放つ上級黒魔法が弥生に襲い掛かった。



「これだけの上級魔法、果たして防げますか?」

マイリスの目が冷たく光り、はるか先の空を睨む。
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