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【289 赤い瞳への戦い方】
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「ジャニス、どうしたの?もう寝ないと体に障るわよ」
「・・・うん・・・お義母さん、ジョセフって・・・ジョルジュ似かな?」
森のツリーハウス。私はジョルジュと結婚してから義父のエディさん、義母のナタリーさんと同居して暮らしている。
孤児院のみんなは大切な家族だ。師匠の事も本当の父だと思っている。
師匠に拾われた私は本当に幸運だったと思っている。
そして結婚して家庭に入り、自分と血の繋がった子供まで産まれた。
私は二つの家族に恵まれた。今、私は心から幸せだ。
窓辺でジョセフを抱きながら夜空を眺める私の肩に、ナタリーさんがケープをかけてくれる。
暖かい・・・・・
「ジョセフはね、目元はジャニスに似ていると思うわ。鼻はジョルジュかしらね。二人の血をちゃんと受け継いでいるわよ」
「そっか・・・うん。私とジョルジュの子供だもんね。どっちにも似てるんだよね」
私に抱かれて安心しきった顔で寝ているジョセフの頬をつついてみる。
とても柔らかく、いつまでもさわっていたくなる感触だ。
そう言えば、孤児院のスージーとチコリが赤ちゃんだった頃も、こうして頬をつついていたっけ・・・
「・・・ジョルジュ・・・みんな」
森の夜はとても静かだ。
静寂に包まれるというのはこういう事を言うのだろう。
時折風が吹き、草木が揺れる音が届くけれど、それだけだ。
「ジャニス・・・大丈夫よ。ジョルジュは絶対に帰ってくるから・・・あの子がなんて呼ばれているか知ってるでしょ?」
お義母さんが私を抱きしめてくれる。
この温もりが私は大好きだ。あの日、あの時から・・・私のお義母さんはナタリーさんだから。
「うん、お義母さん・・・私、信じてる。だってジョルジュは・・・」
そう、信じて待とう。朝には帰ってくるといった夫を。
「だってジョルジュは、史上最強の弓使いだから」
「ジョルジュ、助かったぜ・・・お前が風で飛ばしてくれなきゃ、危なかったな」
あの瞬間、俺は足元の風を爆発させ全速力で後方へ飛んだ。
だが、とても逃げ切れるものではなかった。
そして地面がおおきく光、大爆発を起こした瞬間、突如俺の体は爆発が追い付かない程の速さで、空高く飛ばされたのだ。
それはジョルジュの風の精霊の力だった。
「すでにウィッカーが風魔法を使っていた事が幸いした。精霊の力を上乗せする事で、爆発から逃げ切れる程の速さを出せたからな」
「・・・そりゃ、すごいな・・・さて、隠れ場所も無くなって、お前も姿を見られたし、これからどうする?」
俺達が見下ろす先には、深紅の甲冑を身に纏った大柄な男ルシアン・クラスニキ。
小柄で神経質そうに眼鏡を上げる青魔法使い、ジャキル・ミラー。
そして、長く赤い髪、その瞳も剣も全てが血のように赤い女、セシリア・シールズが立っていた。
「やるしかないだろう」
「悪霊はどうする?」
「風を読む限り、あの女とその兄は俺への警戒を強めている。どこから飛んでくるか分からない矢を何発も射られたんだ。当然だろう。守勢に回っている今、すぐに攻撃はしてこないはずだ」
「・・・分かった。なら、動き出す前に叩かないとな」
ウィッカーとジョルジュは身に纏う風を緩め、ゆっくりと地上に降り立った。
目の前の敵、セシリア、ルシアン、ミラーの三人は空を飛ぶことはできない。
ならば空中から、矢と魔法で攻め立てる攻撃手段も考えに無かった訳ではない。
だが、それはおそらく当たらない。
セシリアがジョルジュの矢を叩き落とした事から分かるように、
このレベルの戦いで、ただ空から撃つだけの攻撃で勝てるはずがない。
接近戦も挑み、死線を抜けなければ勝てない。
そう判断した二人は、地上に降り立ち目の前の三人に対し構えをとった。
「あら、本当に素敵ねあなた達・・・飛べるのに、わざわざ降りてくれるなんて」
地上戦を選んだウィッカーとジョルジュに、セシリアが嬉しそうに目を細める。
「空から撃ってるだけで勝てる程、あまい相手じゃないからな」
ウィッカーの言葉に、またも舌を出し唇をなめる。
「いいわ・・・あなたもすごく良い。そう、敵とは言っても相手の力はちゃんと評価しないといけないわ。あなたは私が相手をしてあげる!」
セシリアの赤い瞳に、一瞬だが火が灯ったかに見えた。
【セシリア・シールズの目は、相手に熱を帯びた気を当てる事ができる】
セシリアの目に火が灯るよりも早く、ウィッカーは視線を下げた。
「あれ?躱されちゃった・・・う~ん、やっぱりあの時ヤヨイに見せたからだよね。ちゃんと対策してたんだ。でもさ・・・」
それなりの距離は離れていたと思う。
だが、一瞬のうちに距離を詰めたセシリアは、右手のレイピアをウィッカーの胸めがけて突き出していた。
【だから、正面から相手をするつもりなら、視線を下げたまま戦うしかないよ】
それは五年前、帝国との話し合いの後、リンダから聞いた言葉だった。
目を合わせる事ができないのならば、セシリアとどう戦えばいいのか?
それに対するリンダの答えは、顔から下だけを見て動きを予想し戦うと言うものだった。
足を見てどう動くか予想し、肩から先の動きで攻撃位置を判断する。
「・・・え?」
ウィッカーはセシリアの腰の位置まで低く身を落とし、セシリアの突きを躱しつつ懐に飛び込んだ。
魔法使いのウィッカーに自分の突きが躱される。しかも今ウィッカーは、視線を落としていたのだ。
そんな状態で、身体能力で圧倒的に勝るセシリアの突きが躱されるなど、予想すらできない事だった。
そしていかに体術を学び、普通の魔法使いより高い運動能力を持ったとしても、魔法使いは魔法使い。
ルシアンとミラーの二人を相手に互角に戦ったと言っても、師団長一のスピードを誇る自分の突きまでも躱すウィッカーに、セシリアは驚きを隠せなかった。
絶対に躱される事などない突きが躱され、セシリアの次の行動が後れを取る。
懐に入られたセシリアは、膝を立てウィッカーの腹を突き上げようとするが、セシリアの突きを読み、次に備えたウィッカーの反撃が早かった。
一撃で決める!
セシリア相手に様子見はありえない。
ウィッカーは右手をセシリアの腹に打ち込み、あらかじめ集中させていたその魔力を解き放った。
氷の上級魔法 竜氷縛
巨大な氷の竜がセシリアを飲み込み、その腹の中で氷の彫像として縛り付けた。
「・・・うん・・・お義母さん、ジョセフって・・・ジョルジュ似かな?」
森のツリーハウス。私はジョルジュと結婚してから義父のエディさん、義母のナタリーさんと同居して暮らしている。
孤児院のみんなは大切な家族だ。師匠の事も本当の父だと思っている。
師匠に拾われた私は本当に幸運だったと思っている。
そして結婚して家庭に入り、自分と血の繋がった子供まで産まれた。
私は二つの家族に恵まれた。今、私は心から幸せだ。
窓辺でジョセフを抱きながら夜空を眺める私の肩に、ナタリーさんがケープをかけてくれる。
暖かい・・・・・
「ジョセフはね、目元はジャニスに似ていると思うわ。鼻はジョルジュかしらね。二人の血をちゃんと受け継いでいるわよ」
「そっか・・・うん。私とジョルジュの子供だもんね。どっちにも似てるんだよね」
私に抱かれて安心しきった顔で寝ているジョセフの頬をつついてみる。
とても柔らかく、いつまでもさわっていたくなる感触だ。
そう言えば、孤児院のスージーとチコリが赤ちゃんだった頃も、こうして頬をつついていたっけ・・・
「・・・ジョルジュ・・・みんな」
森の夜はとても静かだ。
静寂に包まれるというのはこういう事を言うのだろう。
時折風が吹き、草木が揺れる音が届くけれど、それだけだ。
「ジャニス・・・大丈夫よ。ジョルジュは絶対に帰ってくるから・・・あの子がなんて呼ばれているか知ってるでしょ?」
お義母さんが私を抱きしめてくれる。
この温もりが私は大好きだ。あの日、あの時から・・・私のお義母さんはナタリーさんだから。
「うん、お義母さん・・・私、信じてる。だってジョルジュは・・・」
そう、信じて待とう。朝には帰ってくるといった夫を。
「だってジョルジュは、史上最強の弓使いだから」
「ジョルジュ、助かったぜ・・・お前が風で飛ばしてくれなきゃ、危なかったな」
あの瞬間、俺は足元の風を爆発させ全速力で後方へ飛んだ。
だが、とても逃げ切れるものではなかった。
そして地面がおおきく光、大爆発を起こした瞬間、突如俺の体は爆発が追い付かない程の速さで、空高く飛ばされたのだ。
それはジョルジュの風の精霊の力だった。
「すでにウィッカーが風魔法を使っていた事が幸いした。精霊の力を上乗せする事で、爆発から逃げ切れる程の速さを出せたからな」
「・・・そりゃ、すごいな・・・さて、隠れ場所も無くなって、お前も姿を見られたし、これからどうする?」
俺達が見下ろす先には、深紅の甲冑を身に纏った大柄な男ルシアン・クラスニキ。
小柄で神経質そうに眼鏡を上げる青魔法使い、ジャキル・ミラー。
そして、長く赤い髪、その瞳も剣も全てが血のように赤い女、セシリア・シールズが立っていた。
「やるしかないだろう」
「悪霊はどうする?」
「風を読む限り、あの女とその兄は俺への警戒を強めている。どこから飛んでくるか分からない矢を何発も射られたんだ。当然だろう。守勢に回っている今、すぐに攻撃はしてこないはずだ」
「・・・分かった。なら、動き出す前に叩かないとな」
ウィッカーとジョルジュは身に纏う風を緩め、ゆっくりと地上に降り立った。
目の前の敵、セシリア、ルシアン、ミラーの三人は空を飛ぶことはできない。
ならば空中から、矢と魔法で攻め立てる攻撃手段も考えに無かった訳ではない。
だが、それはおそらく当たらない。
セシリアがジョルジュの矢を叩き落とした事から分かるように、
このレベルの戦いで、ただ空から撃つだけの攻撃で勝てるはずがない。
接近戦も挑み、死線を抜けなければ勝てない。
そう判断した二人は、地上に降り立ち目の前の三人に対し構えをとった。
「あら、本当に素敵ねあなた達・・・飛べるのに、わざわざ降りてくれるなんて」
地上戦を選んだウィッカーとジョルジュに、セシリアが嬉しそうに目を細める。
「空から撃ってるだけで勝てる程、あまい相手じゃないからな」
ウィッカーの言葉に、またも舌を出し唇をなめる。
「いいわ・・・あなたもすごく良い。そう、敵とは言っても相手の力はちゃんと評価しないといけないわ。あなたは私が相手をしてあげる!」
セシリアの赤い瞳に、一瞬だが火が灯ったかに見えた。
【セシリア・シールズの目は、相手に熱を帯びた気を当てる事ができる】
セシリアの目に火が灯るよりも早く、ウィッカーは視線を下げた。
「あれ?躱されちゃった・・・う~ん、やっぱりあの時ヤヨイに見せたからだよね。ちゃんと対策してたんだ。でもさ・・・」
それなりの距離は離れていたと思う。
だが、一瞬のうちに距離を詰めたセシリアは、右手のレイピアをウィッカーの胸めがけて突き出していた。
【だから、正面から相手をするつもりなら、視線を下げたまま戦うしかないよ】
それは五年前、帝国との話し合いの後、リンダから聞いた言葉だった。
目を合わせる事ができないのならば、セシリアとどう戦えばいいのか?
それに対するリンダの答えは、顔から下だけを見て動きを予想し戦うと言うものだった。
足を見てどう動くか予想し、肩から先の動きで攻撃位置を判断する。
「・・・え?」
ウィッカーはセシリアの腰の位置まで低く身を落とし、セシリアの突きを躱しつつ懐に飛び込んだ。
魔法使いのウィッカーに自分の突きが躱される。しかも今ウィッカーは、視線を落としていたのだ。
そんな状態で、身体能力で圧倒的に勝るセシリアの突きが躱されるなど、予想すらできない事だった。
そしていかに体術を学び、普通の魔法使いより高い運動能力を持ったとしても、魔法使いは魔法使い。
ルシアンとミラーの二人を相手に互角に戦ったと言っても、師団長一のスピードを誇る自分の突きまでも躱すウィッカーに、セシリアは驚きを隠せなかった。
絶対に躱される事などない突きが躱され、セシリアの次の行動が後れを取る。
懐に入られたセシリアは、膝を立てウィッカーの腹を突き上げようとするが、セシリアの突きを読み、次に備えたウィッカーの反撃が早かった。
一撃で決める!
セシリア相手に様子見はありえない。
ウィッカーは右手をセシリアの腹に打ち込み、あらかじめ集中させていたその魔力を解き放った。
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巨大な氷の竜がセシリアを飲み込み、その腹の中で氷の彫像として縛り付けた。
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