異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
上 下
290 / 1,370

【289 赤い瞳への戦い方】

しおりを挟む
「ジャニス、どうしたの?もう寝ないと体に障るわよ」

「・・・うん・・・お義母さん、ジョセフって・・・ジョルジュ似かな?」

森のツリーハウス。私はジョルジュと結婚してから義父のエディさん、義母のナタリーさんと同居して暮らしている。

孤児院のみんなは大切な家族だ。師匠の事も本当の父だと思っている。
師匠に拾われた私は本当に幸運だったと思っている。

そして結婚して家庭に入り、自分と血の繋がった子供まで産まれた。
私は二つの家族に恵まれた。今、私は心から幸せだ。

窓辺でジョセフを抱きながら夜空を眺める私の肩に、ナタリーさんがケープをかけてくれる。
暖かい・・・・・

「ジョセフはね、目元はジャニスに似ていると思うわ。鼻はジョルジュかしらね。二人の血をちゃんと受け継いでいるわよ」

「そっか・・・うん。私とジョルジュの子供だもんね。どっちにも似てるんだよね」

私に抱かれて安心しきった顔で寝ているジョセフの頬をつついてみる。
とても柔らかく、いつまでもさわっていたくなる感触だ。

そう言えば、孤児院のスージーとチコリが赤ちゃんだった頃も、こうして頬をつついていたっけ・・・

「・・・ジョルジュ・・・みんな」

森の夜はとても静かだ。
静寂に包まれるというのはこういう事を言うのだろう。
時折風が吹き、草木が揺れる音が届くけれど、それだけだ。


「ジャニス・・・大丈夫よ。ジョルジュは絶対に帰ってくるから・・・あの子がなんて呼ばれているか知ってるでしょ?」

お義母さんが私を抱きしめてくれる。
この温もりが私は大好きだ。あの日、あの時から・・・私のお義母さんはナタリーさんだから。

「うん、お義母さん・・・私、信じてる。だってジョルジュは・・・」

そう、信じて待とう。朝には帰ってくるといった夫を。


「だってジョルジュは、史上最強の弓使いだから」









「ジョルジュ、助かったぜ・・・お前が風で飛ばしてくれなきゃ、危なかったな」

あの瞬間、俺は足元の風を爆発させ全速力で後方へ飛んだ。
だが、とても逃げ切れるものではなかった。

そして地面がおおきく光、大爆発を起こした瞬間、突如俺の体は爆発が追い付かない程の速さで、空高く飛ばされたのだ。

それはジョルジュの風の精霊の力だった。

「すでにウィッカーが風魔法を使っていた事が幸いした。精霊の力を上乗せする事で、爆発から逃げ切れる程の速さを出せたからな」

「・・・そりゃ、すごいな・・・さて、隠れ場所も無くなって、お前も姿を見られたし、これからどうする?」

俺達が見下ろす先には、深紅の甲冑を身に纏った大柄な男ルシアン・クラスニキ。
小柄で神経質そうに眼鏡を上げる青魔法使い、ジャキル・ミラー。

そして、長く赤い髪、その瞳も剣も全てが血のように赤い女、セシリア・シールズが立っていた。



「やるしかないだろう」

「悪霊はどうする?」

「風を読む限り、あの女とその兄は俺への警戒を強めている。どこから飛んでくるか分からない矢を何発も射られたんだ。当然だろう。守勢に回っている今、すぐに攻撃はしてこないはずだ」

「・・・分かった。なら、動き出す前に叩かないとな」

ウィッカーとジョルジュは身に纏う風を緩め、ゆっくりと地上に降り立った。

目の前の敵、セシリア、ルシアン、ミラーの三人は空を飛ぶことはできない。
ならば空中から、矢と魔法で攻め立てる攻撃手段も考えに無かった訳ではない。

だが、それはおそらく当たらない。

セシリアがジョルジュの矢を叩き落とした事から分かるように、
このレベルの戦いで、ただ空から撃つだけの攻撃で勝てるはずがない。

接近戦も挑み、死線を抜けなければ勝てない。
そう判断した二人は、地上に降り立ち目の前の三人に対し構えをとった。


「あら、本当に素敵ねあなた達・・・飛べるのに、わざわざ降りてくれるなんて」

地上戦を選んだウィッカーとジョルジュに、セシリアが嬉しそうに目を細める。

「空から撃ってるだけで勝てる程、あまい相手じゃないからな」

ウィッカーの言葉に、またも舌を出し唇をなめる。

「いいわ・・・あなたもすごく良い。そう、敵とは言っても相手の力はちゃんと評価しないといけないわ。あなたは私が相手をしてあげる!」

セシリアの赤い瞳に、一瞬だが火が灯ったかに見えた。


【セシリア・シールズの目は、相手に熱を帯びた気を当てる事ができる】


セシリアの目に火が灯るよりも早く、ウィッカーは視線を下げた。

「あれ?躱されちゃった・・・う~ん、やっぱりあの時ヤヨイに見せたからだよね。ちゃんと対策してたんだ。でもさ・・・」


それなりの距離は離れていたと思う。
だが、一瞬のうちに距離を詰めたセシリアは、右手のレイピアをウィッカーの胸めがけて突き出していた。


【だから、正面から相手をするつもりなら、視線を下げたまま戦うしかないよ】


それは五年前、帝国との話し合いの後、リンダから聞いた言葉だった。
目を合わせる事ができないのならば、セシリアとどう戦えばいいのか?
それに対するリンダの答えは、顔から下だけを見て動きを予想し戦うと言うものだった。

足を見てどう動くか予想し、肩から先の動きで攻撃位置を判断する。


「・・・え?」

ウィッカーはセシリアの腰の位置まで低く身を落とし、セシリアの突きを躱しつつ懐に飛び込んだ。

魔法使いのウィッカーに自分の突きが躱される。しかも今ウィッカーは、視線を落としていたのだ。
そんな状態で、身体能力で圧倒的に勝るセシリアの突きが躱されるなど、予想すらできない事だった。

そしていかに体術を学び、普通の魔法使いより高い運動能力を持ったとしても、魔法使いは魔法使い。
ルシアンとミラーの二人を相手に互角に戦ったと言っても、師団長一のスピードを誇る自分の突きまでも躱すウィッカーに、セシリアは驚きを隠せなかった。


絶対に躱される事などない突きが躱され、セシリアの次の行動が後れを取る。

懐に入られたセシリアは、膝を立てウィッカーの腹を突き上げようとするが、セシリアの突きを読み、次に備えたウィッカーの反撃が早かった。

一撃で決める!
セシリア相手に様子見はありえない。

ウィッカーは右手をセシリアの腹に打ち込み、あらかじめ集中させていたその魔力を解き放った。


氷の上級魔法 竜氷縛りゅうひょうばく


巨大な氷の竜がセシリアを飲み込み、その腹の中で氷の彫像として縛り付けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ペット(老猫)と異世界転生

童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

巻き込まれたおばちゃん、召喚聖女ちゃんのお母さんになる

戌葉
ファンタジー
子育てが終わりこれからは自分の時間を楽しもうと思っていたある日、目の前で地面へと吸い込まれていく女子高生を助けようとして、自分も吸い込まれてしまった。 え?異世界?この子が聖女? ちょっと、聖女ちゃんは普通の女の子なのよ?四六時中監視してたら聖女ちゃんの気が休まらないでしょう。部屋から出なさい!この国、いまいち信用できないわね。 でも、せっかく異世界に来たなら、新しいことに挑戦したい。まずは冒険者ね! 聖女召喚に巻き込まれたおばちゃんが、聖女ちゃんの世話を焼いたり、冒険者になってみたりする話。 理不尽に振り回される騎士様の話も。 「悪役令嬢と私の婚約破棄」と同じ世界です。

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。 ※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。 ※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・) 更新はめっちゃ不定期です。 ※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

処理中です...