287 / 1,253
【286 瞼の裏に見える愛】
しおりを挟む
俺は剣士隊の隊長だが、俺が剣士隊でもっとも強いという訳ではない。
除隊して何年も経つが、在籍していた頃から妻のリンダの方が俺より上だった。
そしてペトラとルチル、元々センスのあった二人だが、ヤヨイさんに師事するようになり、ぐんぐんと力を付けていった。
二人がかりでこられると、もう俺でも勝てないし、最近は一対一でも押されるようになってきた。
近いうちに、二人とも完全に俺を上回ってしまうだろう。
みんな個性が強いから、そんなやつらをまとめるには、俺みたいなのが丁度良いのかもしれない。
ただ、これから帝国との戦争になるのは間違いないだろう。
その時に必要なのは、ペトラ、ルチル、お前達のように次代を担って行ける若者だ。
41歳になったドミニクは、まだまだ自分の剣を磨く事を怠ってはいなかったが、それ以上に若い世代への教育に力を入れていた。
今、自分を破ったコバレフを相手に、互角の戦いを繰り広げるペトラとルチルを目の当たりにし、ドミニクは悔しさも感じてはいたが、それ以上に喜びを感じていた。
「・・・あのハネっかえり達が、こんなに頼もしく成長してくれるなんてな・・・」
ペトラ・・・
ルチル・・・
お前達なら勝てる!頑張れ!
拳を固く握り締め、ドミニクは巨大な敵に一歩も引かず剣を振るう二人の勝利を祈った。
「うぉぉぉぉぉぉッツ!燃えろぉぉぉッツ!」
コバレフの叫び声と共に、コバレフを中心とした全方向に、深紅の鎧から炎が噴射される。
「ルチル!」
ペトラが声を上げると、ルチルはペトラの後ろに身を隠す。
「ハァァァァッツ!」
ペトラは両手で大剣を地面に深く突き刺すと、そのまま力任せに剣を走らせた。
突き刺さったままの剣は地面を抉りながら走り、地面から頭上に向け高く強く振り上げられた。
ペトラの大剣は、眼前に迫ったコバレフの炎を切り裂き、その勢いで地面から巻き上げられた土と爆風によって、コバレフの炎はほぼ相殺されてしまった。
「なにぃッツ!?」
逃げるという選択肢以外は無いと見ていた自分の炎が相殺され、コバレフは驚きに動きが一瞬止まる。
コバレフが動きを止めた一瞬の間に、ルチルはすでにペトラの背中から飛び出していた。
コバレフは一手遅れる。
ルチルに気付いたコバレフが剣を構え、迎撃態勢を整えるまでに、ルチルはあと一歩でシャムシールが届くところまで距離を詰めていた。
すでにシャムシールを振るう体制に入っているルチルに対して、コバレフはすでに後手に回っている。
炎を使う事も選択肢にはあったが、たった今ペトラに相殺されたばかりであり、また一瞬の溜めが必要になるので、これほど詰められた状態では逆に命取りになりかねない。
コバレフは純粋に力で迎え撃つ事を選んだ。
射程に入ったルチルは、勢いそのままにシャムシールをコバレフの左足に目掛け振るう。
それに合わせたコバレフは、ルチルのシャムシールに狙いを定め、腰を落とし上半身を捻り、全力で右の剣を振り切った。
武器破壊。
コバレフは自分の膝当てを砕いたルチルのシャムシールに、何かがあると見ていた。
それを確認するため、ルチルのシャムシールに自分の剣を合わせる事を選択した。
予想に反し、ルチルの武器を破壊できるのならばそれで良し。
だが、おそらく予想通りに自分の剣が破壊されるであろう。コバレフはその瞬間を見極め、ルチルの攻撃の正体を見極めるつもりでいた。
コバレフの剣は自分のシャムシールを受けるためではない。
自分の武器に向け全力で振るわれるコバレフの剣を見て、ルチルは瞬時にコバレフの狙いを察した。
「退く分けにはいかない・・・受けて立つ!」
ルチルのシャムシールがコバレフの剣を、腹から真っ二つに砕いた。
剣を砕かれた事はコバレフの予想通り、むしろ砕かせるために剣を差しだしたと言ってもいい。
その対価は十分だった・・・見た!
剣と引き換えにコバレフが目に映したルチルの謎の攻撃の正体は、振動だった。
ルチルのシャムシールは常人の目では捉えきれない程の速さで震えていたのだ。
「うぉぉぉぉぉぉッツ!」
コバレフの剣を破壊するためにシャムシールを振りぬいたルチルの身体は、防御のための体勢がとれていない。
コバレフの丸太のような左足が、ルチルの腹を蹴り抜いた。
「がっ・・・・・!」
同じ体力型でも、コバレフとルチルでは大人と子供、いや大人と赤子程に筋力に差がある。
身長は2メートルを超え、体重は100キロを優に超えるコバレフの蹴りは、ルチルの体を宙に浮かせ、10メートルは後方に蹴り飛ばした。
これまで味わった事が無い、強烈な一撃だった。
受け身すらとれず、無防備に地面に叩きつけられた事で、左肩にも痛みが走るが、そんな事全く気にならない程コバレフに蹴られた腹が痛み、呼吸すらままない苦しみに目を開ける事もできない。
コバレフの蹴りはそれほどの威力があり、内蔵すら痛めたのかもしれなかった。
ルチルは武器を落とし、ただ両手で腹を押さえる事しかできずにいた。
「振動剣か・・・話しに聞いた事はあるが、実際に目にしたのは初めてだな。大した破壊力じゃねぇか。だが・・・ここまでだ!」
コバレフはルチルを蹴り飛ばすと、倒れた切り起き上がってこないルチルにとどめをさそうと、地面を強く蹴って飛び掛かった。
次の瞬間、コバレフの喉元にペトラの大剣が迫った。
ルチルが蹴り飛ばされた瞬間、ペトラはすでに飛び出していたのだ。
「ちっ!」
両手を上げて盾にすると、ペトラの大剣がコバレフの鎧の腕当てを叩きつけた。
「オォォォォォッツ!」
二倍以上はあるだろう体重差を物ともせず、ペトラは大剣を振り抜き、コバレフを後ろへと弾き飛ばした。
「ぐっ、まさか!?」
ペトラの力はコバレフの想定以上だった。最初の一撃の時は、意識と体制が不十分だった事もあったが、今度は両手でしっかりと受けた。
だが、それでもペトラはコバレフの体を持ち上げ、後方へと弾き飛ばした。
これは完全にコバレフの予想を大きく上回っていた。
ペトラは後ろで倒れ、痛みに苦しむルチルの事を振り返る事はしなかった。
ペトラの勝機はここしかなかった。
予想外の力を見せられ、攻めの勢いを一瞬止められたコバレフに畳みかける。
ルチルが戦線を離脱した今、自力で劣るペトラが勝つにはこのまま押し切る意外に勝機は無かった。
「ウオォォォォーッツ!」
ルチル程のスピードは無いが、それを補ってあまりある膂力で大剣を振るいコバレフを追い詰めていく。
ペトラの猛攻に、コバレフは防戦一方だった。
自力ではコバレフがペトラのはるか上をいく。
だが、ペトラの気迫は自力の差を埋める程に鬼気迫ったものだった。
ドミニクは全身に火傷を負って満足に動けない。
ルチルはコバレフの蹴りで倒れ伏し、そのダメージはすぐに戦線に復帰できるものではない。
戦える者は自分しかいない。
自分まで敗れれば、コバレフはドミニクとルチルの命も奪っていくだろう。
それだけは絶対に阻止しなければならない。
「たい、した、女、だ・・・だが!」
無防備な頭部にだけは剣を受けないように、コバレフは深紅の鎧でペトラの剣を受け続けた。
ペトラの剣を受ける瞬間、コバレフはポイントをずらし、鎧を砕かれないように流していた。
ルチルの振動剣ならばガードなど関係なしに当たった先から全てを破壊していくが、ペトラの剣ではそうはいかない。
だが、いかにポイントをずらしていても、受け続けるコバレフの鎧は確実にダメージを蓄積させていった。
防戦一方だったコバレフだが、下から顔を狙った突き上げを左腕で弾くと、右の拳をペトラの顔面に打ち込んだ。
「なにッ!?」
コバレフの右拳がペトラの顔を打ち抜いたと思われた時、ペトラは剣を弾かれ体が右に流れた事を利用し、そのまま体を右から左に回転させコバレフの拳を紙一重で躱した。
ペトラの顔を潰すつもりで全力で打ち込んだ拳が躱された事で、コバレフの右ががら空きになる。
これは、先のドミニクのとの戦いでも出たコバレフの癖だった。
決めの一撃を打った後に防御がおろそかになる。
これまで圧倒的な実力で敵をねじ伏せてきたがゆえに、自分自身が危機的状況になった事がない。
そのため、止めを躱され、あまつさえ反撃を受けるという可能性に意識がむかないのだ。
「ハァァァァーッツ!」
回転により遠心力をつけたペトラの大剣が、がら空きのコバレフの顔面に叩き込まれた。
鮮血を巻き上げながら、コバレフの左腕が宙に飛ばされる。
確実にコバレフの顔を真っ二つにできたと確信できたタイミングだった。だが、コバレフはペトラの大剣が叩き込まれる瞬間、迷わず左腕を顔の前に出したのだ。
これまでの戦いで、深紅の鎧にはペトラの剣によるダメージが蓄積していた。
そこにペトラの渾身の一撃でコバレフの腕は斬り飛ばされた。
勝負あった。
ペトラは勝ちを確信した。顔を斬り飛ばすつもりだったが、それでも腕を斬り飛ばせたのは大きい。
左肘の先から噴水のように真っ赤な血を撒き散らす様を見て、出血により動けなくなるのは時間の問題なのは明白だった。
コバレフの命を絶つ前に勝利を確信した事で、ペトラの緊張感が一瞬だが薄れる。
コバレフには回転を付けたペトラの一撃の威力は、受ける瞬間に理解できていた。
左腕を犠牲にしなければならないだろうという覚悟ができていたコバレフは、腕を斬り飛ばされても決して動揺する事なく、痛みに顔を歪めるよりも早くペトラへの反撃の体勢に入っていた。
腕一本取った事で緊張感が緩んだペトラは、コバレフの反撃に対して致命的な隙を見せる。
2メートルを超える巨躯、肉厚で超重量の鎧、これらを支え続けた大木のようなコバレフの左足が、ペトラの右の脇腹を蹴り抜いた。
「ぐぁッ・・・!」
上半身が吹き飛んだのではないかと思える程の衝撃、体の内側から聞こえる何かをへし折るような鈍い音は、ペトラがこれまで味わった事のないものだった。
体をほぼ水平に蹴り飛ばされ、十数メートルも先でやっと勢いが衰え地面を転がされた。
喉の奥から吐き出された血と土にまみれる。
ペトラに立ち上がる力は残っていなかった。
肘から先が無くなった腕を見て、コバレフは痛みと屈辱に顔を歪ませる。
決して侮りはしなかった。だが、読み合いで遅れをとり、その結果取り返しのつかない深手を負わされた。
大陸一の軍事国家ブロートン帝国の第四師団長。
万の兵士を従え戦士の頂点とも言える男にとって、これほどの屈辱はなかった。
「・・・認めよう」
コバレフは視線の先に倒れるペトラとルチルに目を向け呟いた。
「お前らは強かった」
左腕から流れ出る出血は一刻も早く止めなければならない。
だが、コバレフの本能が告げていた。それよりも先に、こいつらの息の根を止めなければならないと。
自分の怪我の治療で、相手にも回復の時間を与えてはいけない。
まずは止めをさす事が先決。止血はそれからでいい。
体の大きなコバレフは、腕一本落とされ、それによる多量の出血をともなってもまだ動けるだけの力を残していた。
かろうじて首だけを動かしたペトラは、自分に向かい一歩一歩近づいてくるコバレフを黙って見ている事しかできなかった。
・・・・・ここまでか
おそらく肋骨は粉々に砕けている。
折れた骨が体の中を傷つけてもいるだろう。
蹴られた衝撃で上半身もまるで動かせない。
・・・・・ヤヨイ姉さん・・・・・ごめんね。せっかく鍛えてもらったのに、私、勝てなかった・・・
でもね、私頑張ったよ・・・・・
「言い残す事はあるか?」
・・・・・ルチル、ヤヨイ姉さん・・・・・もう一度だけ、三人でコーヒーが飲みたかった・・・・・
目の前に立ち自分を見下ろすコバレフに、ペトラは震える右手を上げて中指を立てた。
口の端を上げ、不敵な笑みを見せるのは、最後まで屈しなかったという戦う女の意地。
「・・・この状況でそれか・・・」
それがペトラの限界だった。力無く右手を落とし目を閉じる。
「じゃあな!」
コバレフが右足を高く上げ、ペトラの首を踏みつぶそうとした時、突然コバレフの両脇から回された腕に体の自由が奪われる。
「なっ!?てめっ、くっ!?」
瞬間、コバレフの喉元めがけ短刀が迫る。
咄嗟に短刀を持つ手を押さえ、自分を羽交い絞めにする敵に顔を向ける。
「て、てめぇ!まだ動けたのか!?」
「はぁ・・ふぅ・・部下二人が命を懸けているのに・・・隊長の俺が、寝てるわけにはいかんだろう」
ドミニクはコバレフを羽交い絞めにしながら、コバレフの喉を斬り裂こうと右手に持った短刀に力を込める。
左腕が無いコバレフは、右手でドミニクの手を押さえるしかない。
本来のコバレフであればドミニクを振り払うくらい造作もなかった。だが、左腕を無くした事によりバランスは崩れ、ダメージと出血により、なりふり構わずしがみ付いてくるドミニクを振り払う程の力は残っていなかった。
このまま短刀を押さえているだけでは、いずれ出血多量で死ぬ。
だが、密着状態ではコバレフに分があった。
「馬鹿が!俺の鎧の力を忘れたか!」
深紅の鎧が火を噴きドミニクの体を炎が襲う。
「忘れてないさ・・・・・」
「なに!?」
ドミニクは自分の体が炎で焼かれてもその腕の力を緩める事はしなかった。
絶叫を上げてのたうち回ると思ったコバレフだったが、背中から耳に聞こえたやけに落ち着いた声に、一瞬だが冷たいなにかが背筋に走った。
「お前はここで・・・俺と死ぬんだ」
短刀により力が入り、コバレフの喉に刃先が触れる。
「ぐっ!?馬鹿なっ、どこにこんな力が!?離せ!離しやがれぇぇぇーッツ!」
深紅の鎧の炎がかつてない程に高く強く燃え上がる。
熱気に当てられたペトラとルチルは、残った力を振り絞り、肘を付きながらかろうじて顔だけを上げ、目の前で死力を尽くすドミニクを見ていた。
「た、たい、ちょう・・・ドミニク、隊長ーッツ!だめだ!逃げてー!くそぉぉぉ!動け!動けよぉ!」
声の限り叫び、ペトラは自分の足を何度も叩いた。
「ぐっ、うぅ・・・隊長―ッツ!やめて!リンダさんが・・・あなたが、死んだら、リンダさんはどうすればいいんですか!」
ルチルもまた、震える足で一度は立ち上がったが、体を支えきれず前のめりに倒れてしまった。
ペトラとルチル、二人は目の前でその命を燃やすドミニクを見ている事しかできず、無力な自分にただ涙を流す事しかできなかった。
「なぜだぁぁぁ!なぜ死なねぇ!?俺の炎をこれだけ・・・」
一瞬コバレフは眩暈を起こす、血を流し過ぎたのだ。
火の精霊の加護を受けているコバレフは己の炎で焼かれる事はない。
焼くのであれば、自らの意思で焼くと決めて火を使わなければならない。
「・・・傷口を焼かねば・・・・血は・・・止まら・・・んぞ・・・・・」
か細い声が背後から聞こえる。
ドミニクの異様な執念と、自分の命のカウントダウンに焦りを覚えたコバレフは、意識が切断された左腕にいく。
切断面を今焼いて血を止めなければ死ぬ・・・・・
わずかにだが、意識がドミニクの短刀から逸れる。
それが生死を分けた。
ほんの僅かだが自分の右手を押さえる力のゆるみを感じ、ドミニクは残り全ての力を込めて短刀を振った。
コバレフの喉は大きく斬り裂かれ、噴水のように飛び散った真っ赤な血は、炎によって燃え散らされた。
己の喉を斬り裂いたドミニクに顔を向け、口を震わせなにか言葉を出そうとするが、コバレフはそのまま倒れ二度と起き上がる事はなかった。
ドミニクもまた、コバレフが倒れ絶命した事を見届けると、力尽き後ろに倒れた。
・・・・・リンダ・・・・・
・・・・・隊長~それって愛の告白ですか~?
・・・・・あぁ、今日は愛の告白だ!リンダ!お前が好きだ!俺と結婚してくれ!
・・・・・え!?な、なんスか!?ちょ、ちょっと!え!?近っ!隊長近いっス!
・・・・・ドミニク~、今日は何の日だっけ~?
・・・・・忘れるわけないだろ?俺達の結婚記念日だよ。はい、これ・・・
・・・・・あ!これ・・・嬉しい!アタシこれ欲しかったんだ!
・・・・・なかなか子供できないね・・・・ごめんね、ドミニク子供好きなのに
・・・・・謝るなよ、子供は授かりものだよ。できる時はできるさ、それに俺は・・・
・・・・・ん?なに?
・・・・・リンダと一緒ならそれでいいから
・・・・・ドミニク・・・アタシ・・・・・ドミニクの事大好きだよ
「・・・ちょう!たい・・・・・・・・・た・・・・・・・ちょう!・・・・・・・・たいちょう!」
微かに聞こえる声に目を開ける・・・・・・
「隊長!ドミニク隊長!お願い死なないで!」
・・・ペトラ
「ドミニク隊長・・・私達のために・・・・う・・・うぅ・・・しな、ないでくだ・・・さい」
・・・ルチル
・・・よかった・・・・・生きて・・・・・
「ペトラ待って!隊長・・・なにか・・・言ってる」
・・・・・ペトラ・・・これからは・・・・お前が、隊長・・・・だ
・・・・・ルチル、ペトラを・・・・・支えて・・・・二人で・・・・・
・・・・・国を・・・街の人を・・・子供達を・・・・・・・護って・・・・・・
「た・・・・たいちょ・・・う・・・・・・・うぅ・・・うぐ・・・う・・・たいちょう・・・・」
「う・・・うぅ・・・たいちょう・・・・ドミニク、たいちょう・・・・しな、ないで・・・・」
涙でぐしゃぐしゃになった顔で、ドミニクに声をかけ続けるペトラとルチル。
だが、もうドミニクには何も聞こえていなかった
・・・・・リンダ・・・・・愛してる・・・・・どうか幸せに
最後に瞼の裏に見えたのは愛する妻の顔、ドミニクは微笑みを残し息を引き取った
除隊して何年も経つが、在籍していた頃から妻のリンダの方が俺より上だった。
そしてペトラとルチル、元々センスのあった二人だが、ヤヨイさんに師事するようになり、ぐんぐんと力を付けていった。
二人がかりでこられると、もう俺でも勝てないし、最近は一対一でも押されるようになってきた。
近いうちに、二人とも完全に俺を上回ってしまうだろう。
みんな個性が強いから、そんなやつらをまとめるには、俺みたいなのが丁度良いのかもしれない。
ただ、これから帝国との戦争になるのは間違いないだろう。
その時に必要なのは、ペトラ、ルチル、お前達のように次代を担って行ける若者だ。
41歳になったドミニクは、まだまだ自分の剣を磨く事を怠ってはいなかったが、それ以上に若い世代への教育に力を入れていた。
今、自分を破ったコバレフを相手に、互角の戦いを繰り広げるペトラとルチルを目の当たりにし、ドミニクは悔しさも感じてはいたが、それ以上に喜びを感じていた。
「・・・あのハネっかえり達が、こんなに頼もしく成長してくれるなんてな・・・」
ペトラ・・・
ルチル・・・
お前達なら勝てる!頑張れ!
拳を固く握り締め、ドミニクは巨大な敵に一歩も引かず剣を振るう二人の勝利を祈った。
「うぉぉぉぉぉぉッツ!燃えろぉぉぉッツ!」
コバレフの叫び声と共に、コバレフを中心とした全方向に、深紅の鎧から炎が噴射される。
「ルチル!」
ペトラが声を上げると、ルチルはペトラの後ろに身を隠す。
「ハァァァァッツ!」
ペトラは両手で大剣を地面に深く突き刺すと、そのまま力任せに剣を走らせた。
突き刺さったままの剣は地面を抉りながら走り、地面から頭上に向け高く強く振り上げられた。
ペトラの大剣は、眼前に迫ったコバレフの炎を切り裂き、その勢いで地面から巻き上げられた土と爆風によって、コバレフの炎はほぼ相殺されてしまった。
「なにぃッツ!?」
逃げるという選択肢以外は無いと見ていた自分の炎が相殺され、コバレフは驚きに動きが一瞬止まる。
コバレフが動きを止めた一瞬の間に、ルチルはすでにペトラの背中から飛び出していた。
コバレフは一手遅れる。
ルチルに気付いたコバレフが剣を構え、迎撃態勢を整えるまでに、ルチルはあと一歩でシャムシールが届くところまで距離を詰めていた。
すでにシャムシールを振るう体制に入っているルチルに対して、コバレフはすでに後手に回っている。
炎を使う事も選択肢にはあったが、たった今ペトラに相殺されたばかりであり、また一瞬の溜めが必要になるので、これほど詰められた状態では逆に命取りになりかねない。
コバレフは純粋に力で迎え撃つ事を選んだ。
射程に入ったルチルは、勢いそのままにシャムシールをコバレフの左足に目掛け振るう。
それに合わせたコバレフは、ルチルのシャムシールに狙いを定め、腰を落とし上半身を捻り、全力で右の剣を振り切った。
武器破壊。
コバレフは自分の膝当てを砕いたルチルのシャムシールに、何かがあると見ていた。
それを確認するため、ルチルのシャムシールに自分の剣を合わせる事を選択した。
予想に反し、ルチルの武器を破壊できるのならばそれで良し。
だが、おそらく予想通りに自分の剣が破壊されるであろう。コバレフはその瞬間を見極め、ルチルの攻撃の正体を見極めるつもりでいた。
コバレフの剣は自分のシャムシールを受けるためではない。
自分の武器に向け全力で振るわれるコバレフの剣を見て、ルチルは瞬時にコバレフの狙いを察した。
「退く分けにはいかない・・・受けて立つ!」
ルチルのシャムシールがコバレフの剣を、腹から真っ二つに砕いた。
剣を砕かれた事はコバレフの予想通り、むしろ砕かせるために剣を差しだしたと言ってもいい。
その対価は十分だった・・・見た!
剣と引き換えにコバレフが目に映したルチルの謎の攻撃の正体は、振動だった。
ルチルのシャムシールは常人の目では捉えきれない程の速さで震えていたのだ。
「うぉぉぉぉぉぉッツ!」
コバレフの剣を破壊するためにシャムシールを振りぬいたルチルの身体は、防御のための体勢がとれていない。
コバレフの丸太のような左足が、ルチルの腹を蹴り抜いた。
「がっ・・・・・!」
同じ体力型でも、コバレフとルチルでは大人と子供、いや大人と赤子程に筋力に差がある。
身長は2メートルを超え、体重は100キロを優に超えるコバレフの蹴りは、ルチルの体を宙に浮かせ、10メートルは後方に蹴り飛ばした。
これまで味わった事が無い、強烈な一撃だった。
受け身すらとれず、無防備に地面に叩きつけられた事で、左肩にも痛みが走るが、そんな事全く気にならない程コバレフに蹴られた腹が痛み、呼吸すらままない苦しみに目を開ける事もできない。
コバレフの蹴りはそれほどの威力があり、内蔵すら痛めたのかもしれなかった。
ルチルは武器を落とし、ただ両手で腹を押さえる事しかできずにいた。
「振動剣か・・・話しに聞いた事はあるが、実際に目にしたのは初めてだな。大した破壊力じゃねぇか。だが・・・ここまでだ!」
コバレフはルチルを蹴り飛ばすと、倒れた切り起き上がってこないルチルにとどめをさそうと、地面を強く蹴って飛び掛かった。
次の瞬間、コバレフの喉元にペトラの大剣が迫った。
ルチルが蹴り飛ばされた瞬間、ペトラはすでに飛び出していたのだ。
「ちっ!」
両手を上げて盾にすると、ペトラの大剣がコバレフの鎧の腕当てを叩きつけた。
「オォォォォォッツ!」
二倍以上はあるだろう体重差を物ともせず、ペトラは大剣を振り抜き、コバレフを後ろへと弾き飛ばした。
「ぐっ、まさか!?」
ペトラの力はコバレフの想定以上だった。最初の一撃の時は、意識と体制が不十分だった事もあったが、今度は両手でしっかりと受けた。
だが、それでもペトラはコバレフの体を持ち上げ、後方へと弾き飛ばした。
これは完全にコバレフの予想を大きく上回っていた。
ペトラは後ろで倒れ、痛みに苦しむルチルの事を振り返る事はしなかった。
ペトラの勝機はここしかなかった。
予想外の力を見せられ、攻めの勢いを一瞬止められたコバレフに畳みかける。
ルチルが戦線を離脱した今、自力で劣るペトラが勝つにはこのまま押し切る意外に勝機は無かった。
「ウオォォォォーッツ!」
ルチル程のスピードは無いが、それを補ってあまりある膂力で大剣を振るいコバレフを追い詰めていく。
ペトラの猛攻に、コバレフは防戦一方だった。
自力ではコバレフがペトラのはるか上をいく。
だが、ペトラの気迫は自力の差を埋める程に鬼気迫ったものだった。
ドミニクは全身に火傷を負って満足に動けない。
ルチルはコバレフの蹴りで倒れ伏し、そのダメージはすぐに戦線に復帰できるものではない。
戦える者は自分しかいない。
自分まで敗れれば、コバレフはドミニクとルチルの命も奪っていくだろう。
それだけは絶対に阻止しなければならない。
「たい、した、女、だ・・・だが!」
無防備な頭部にだけは剣を受けないように、コバレフは深紅の鎧でペトラの剣を受け続けた。
ペトラの剣を受ける瞬間、コバレフはポイントをずらし、鎧を砕かれないように流していた。
ルチルの振動剣ならばガードなど関係なしに当たった先から全てを破壊していくが、ペトラの剣ではそうはいかない。
だが、いかにポイントをずらしていても、受け続けるコバレフの鎧は確実にダメージを蓄積させていった。
防戦一方だったコバレフだが、下から顔を狙った突き上げを左腕で弾くと、右の拳をペトラの顔面に打ち込んだ。
「なにッ!?」
コバレフの右拳がペトラの顔を打ち抜いたと思われた時、ペトラは剣を弾かれ体が右に流れた事を利用し、そのまま体を右から左に回転させコバレフの拳を紙一重で躱した。
ペトラの顔を潰すつもりで全力で打ち込んだ拳が躱された事で、コバレフの右ががら空きになる。
これは、先のドミニクのとの戦いでも出たコバレフの癖だった。
決めの一撃を打った後に防御がおろそかになる。
これまで圧倒的な実力で敵をねじ伏せてきたがゆえに、自分自身が危機的状況になった事がない。
そのため、止めを躱され、あまつさえ反撃を受けるという可能性に意識がむかないのだ。
「ハァァァァーッツ!」
回転により遠心力をつけたペトラの大剣が、がら空きのコバレフの顔面に叩き込まれた。
鮮血を巻き上げながら、コバレフの左腕が宙に飛ばされる。
確実にコバレフの顔を真っ二つにできたと確信できたタイミングだった。だが、コバレフはペトラの大剣が叩き込まれる瞬間、迷わず左腕を顔の前に出したのだ。
これまでの戦いで、深紅の鎧にはペトラの剣によるダメージが蓄積していた。
そこにペトラの渾身の一撃でコバレフの腕は斬り飛ばされた。
勝負あった。
ペトラは勝ちを確信した。顔を斬り飛ばすつもりだったが、それでも腕を斬り飛ばせたのは大きい。
左肘の先から噴水のように真っ赤な血を撒き散らす様を見て、出血により動けなくなるのは時間の問題なのは明白だった。
コバレフの命を絶つ前に勝利を確信した事で、ペトラの緊張感が一瞬だが薄れる。
コバレフには回転を付けたペトラの一撃の威力は、受ける瞬間に理解できていた。
左腕を犠牲にしなければならないだろうという覚悟ができていたコバレフは、腕を斬り飛ばされても決して動揺する事なく、痛みに顔を歪めるよりも早くペトラへの反撃の体勢に入っていた。
腕一本取った事で緊張感が緩んだペトラは、コバレフの反撃に対して致命的な隙を見せる。
2メートルを超える巨躯、肉厚で超重量の鎧、これらを支え続けた大木のようなコバレフの左足が、ペトラの右の脇腹を蹴り抜いた。
「ぐぁッ・・・!」
上半身が吹き飛んだのではないかと思える程の衝撃、体の内側から聞こえる何かをへし折るような鈍い音は、ペトラがこれまで味わった事のないものだった。
体をほぼ水平に蹴り飛ばされ、十数メートルも先でやっと勢いが衰え地面を転がされた。
喉の奥から吐き出された血と土にまみれる。
ペトラに立ち上がる力は残っていなかった。
肘から先が無くなった腕を見て、コバレフは痛みと屈辱に顔を歪ませる。
決して侮りはしなかった。だが、読み合いで遅れをとり、その結果取り返しのつかない深手を負わされた。
大陸一の軍事国家ブロートン帝国の第四師団長。
万の兵士を従え戦士の頂点とも言える男にとって、これほどの屈辱はなかった。
「・・・認めよう」
コバレフは視線の先に倒れるペトラとルチルに目を向け呟いた。
「お前らは強かった」
左腕から流れ出る出血は一刻も早く止めなければならない。
だが、コバレフの本能が告げていた。それよりも先に、こいつらの息の根を止めなければならないと。
自分の怪我の治療で、相手にも回復の時間を与えてはいけない。
まずは止めをさす事が先決。止血はそれからでいい。
体の大きなコバレフは、腕一本落とされ、それによる多量の出血をともなってもまだ動けるだけの力を残していた。
かろうじて首だけを動かしたペトラは、自分に向かい一歩一歩近づいてくるコバレフを黙って見ている事しかできなかった。
・・・・・ここまでか
おそらく肋骨は粉々に砕けている。
折れた骨が体の中を傷つけてもいるだろう。
蹴られた衝撃で上半身もまるで動かせない。
・・・・・ヤヨイ姉さん・・・・・ごめんね。せっかく鍛えてもらったのに、私、勝てなかった・・・
でもね、私頑張ったよ・・・・・
「言い残す事はあるか?」
・・・・・ルチル、ヤヨイ姉さん・・・・・もう一度だけ、三人でコーヒーが飲みたかった・・・・・
目の前に立ち自分を見下ろすコバレフに、ペトラは震える右手を上げて中指を立てた。
口の端を上げ、不敵な笑みを見せるのは、最後まで屈しなかったという戦う女の意地。
「・・・この状況でそれか・・・」
それがペトラの限界だった。力無く右手を落とし目を閉じる。
「じゃあな!」
コバレフが右足を高く上げ、ペトラの首を踏みつぶそうとした時、突然コバレフの両脇から回された腕に体の自由が奪われる。
「なっ!?てめっ、くっ!?」
瞬間、コバレフの喉元めがけ短刀が迫る。
咄嗟に短刀を持つ手を押さえ、自分を羽交い絞めにする敵に顔を向ける。
「て、てめぇ!まだ動けたのか!?」
「はぁ・・ふぅ・・部下二人が命を懸けているのに・・・隊長の俺が、寝てるわけにはいかんだろう」
ドミニクはコバレフを羽交い絞めにしながら、コバレフの喉を斬り裂こうと右手に持った短刀に力を込める。
左腕が無いコバレフは、右手でドミニクの手を押さえるしかない。
本来のコバレフであればドミニクを振り払うくらい造作もなかった。だが、左腕を無くした事によりバランスは崩れ、ダメージと出血により、なりふり構わずしがみ付いてくるドミニクを振り払う程の力は残っていなかった。
このまま短刀を押さえているだけでは、いずれ出血多量で死ぬ。
だが、密着状態ではコバレフに分があった。
「馬鹿が!俺の鎧の力を忘れたか!」
深紅の鎧が火を噴きドミニクの体を炎が襲う。
「忘れてないさ・・・・・」
「なに!?」
ドミニクは自分の体が炎で焼かれてもその腕の力を緩める事はしなかった。
絶叫を上げてのたうち回ると思ったコバレフだったが、背中から耳に聞こえたやけに落ち着いた声に、一瞬だが冷たいなにかが背筋に走った。
「お前はここで・・・俺と死ぬんだ」
短刀により力が入り、コバレフの喉に刃先が触れる。
「ぐっ!?馬鹿なっ、どこにこんな力が!?離せ!離しやがれぇぇぇーッツ!」
深紅の鎧の炎がかつてない程に高く強く燃え上がる。
熱気に当てられたペトラとルチルは、残った力を振り絞り、肘を付きながらかろうじて顔だけを上げ、目の前で死力を尽くすドミニクを見ていた。
「た、たい、ちょう・・・ドミニク、隊長ーッツ!だめだ!逃げてー!くそぉぉぉ!動け!動けよぉ!」
声の限り叫び、ペトラは自分の足を何度も叩いた。
「ぐっ、うぅ・・・隊長―ッツ!やめて!リンダさんが・・・あなたが、死んだら、リンダさんはどうすればいいんですか!」
ルチルもまた、震える足で一度は立ち上がったが、体を支えきれず前のめりに倒れてしまった。
ペトラとルチル、二人は目の前でその命を燃やすドミニクを見ている事しかできず、無力な自分にただ涙を流す事しかできなかった。
「なぜだぁぁぁ!なぜ死なねぇ!?俺の炎をこれだけ・・・」
一瞬コバレフは眩暈を起こす、血を流し過ぎたのだ。
火の精霊の加護を受けているコバレフは己の炎で焼かれる事はない。
焼くのであれば、自らの意思で焼くと決めて火を使わなければならない。
「・・・傷口を焼かねば・・・・血は・・・止まら・・・んぞ・・・・・」
か細い声が背後から聞こえる。
ドミニクの異様な執念と、自分の命のカウントダウンに焦りを覚えたコバレフは、意識が切断された左腕にいく。
切断面を今焼いて血を止めなければ死ぬ・・・・・
わずかにだが、意識がドミニクの短刀から逸れる。
それが生死を分けた。
ほんの僅かだが自分の右手を押さえる力のゆるみを感じ、ドミニクは残り全ての力を込めて短刀を振った。
コバレフの喉は大きく斬り裂かれ、噴水のように飛び散った真っ赤な血は、炎によって燃え散らされた。
己の喉を斬り裂いたドミニクに顔を向け、口を震わせなにか言葉を出そうとするが、コバレフはそのまま倒れ二度と起き上がる事はなかった。
ドミニクもまた、コバレフが倒れ絶命した事を見届けると、力尽き後ろに倒れた。
・・・・・リンダ・・・・・
・・・・・隊長~それって愛の告白ですか~?
・・・・・あぁ、今日は愛の告白だ!リンダ!お前が好きだ!俺と結婚してくれ!
・・・・・え!?な、なんスか!?ちょ、ちょっと!え!?近っ!隊長近いっス!
・・・・・ドミニク~、今日は何の日だっけ~?
・・・・・忘れるわけないだろ?俺達の結婚記念日だよ。はい、これ・・・
・・・・・あ!これ・・・嬉しい!アタシこれ欲しかったんだ!
・・・・・なかなか子供できないね・・・・ごめんね、ドミニク子供好きなのに
・・・・・謝るなよ、子供は授かりものだよ。できる時はできるさ、それに俺は・・・
・・・・・ん?なに?
・・・・・リンダと一緒ならそれでいいから
・・・・・ドミニク・・・アタシ・・・・・ドミニクの事大好きだよ
「・・・ちょう!たい・・・・・・・・・た・・・・・・・ちょう!・・・・・・・・たいちょう!」
微かに聞こえる声に目を開ける・・・・・・
「隊長!ドミニク隊長!お願い死なないで!」
・・・ペトラ
「ドミニク隊長・・・私達のために・・・・う・・・うぅ・・・しな、ないでくだ・・・さい」
・・・ルチル
・・・よかった・・・・・生きて・・・・・
「ペトラ待って!隊長・・・なにか・・・言ってる」
・・・・・ペトラ・・・これからは・・・・お前が、隊長・・・・だ
・・・・・ルチル、ペトラを・・・・・支えて・・・・二人で・・・・・
・・・・・国を・・・街の人を・・・子供達を・・・・・・・護って・・・・・・
「た・・・・たいちょ・・・う・・・・・・・うぅ・・・うぐ・・・う・・・たいちょう・・・・」
「う・・・うぅ・・・たいちょう・・・・ドミニク、たいちょう・・・・しな、ないで・・・・」
涙でぐしゃぐしゃになった顔で、ドミニクに声をかけ続けるペトラとルチル。
だが、もうドミニクには何も聞こえていなかった
・・・・・リンダ・・・・・愛してる・・・・・どうか幸せに
最後に瞼の裏に見えたのは愛する妻の顔、ドミニクは微笑みを残し息を引き取った
0
お気に入りに追加
141
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる