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【259 家庭を持って】
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「ヤヨイさん!ひっさしぶりー!」
午後3時を過ぎて日も傾き始めた頃、ジャニスさんが両腕で赤ちゃんを抱いて、レイジェスを訪れた。
「あ!ジャニスさん!久しぶりー、元気そうで安心したわ」
店内に足を入れると、ジャニスさんは懐かしそうに辺りを見渡す。
妊娠しても少しの間はレイジェスで働いてくれたけど、一か月を過ぎてつわりが始まると、やはりそうとうきつかったようだ。妊娠二か月目くらいで仕事を辞めて、旦那さんの家で安静にするようにしたのだ。
そして、その男性というのが、今ジャニスさんの後ろに立っているアイスブルーの髪の人。
「ジョルジュさんも、お久しぶりです」
そう、ジョルジュ・ワーリントンさんだ。
束感のある髪を軽く手で流し、ジョルジュさんは右手を軽く挙げて笑う。
「久しぶりだな、ヤヨイ。昨日は急な連絡で悪かった。ジャニスも街で出産したきり、ずっと家で安静にしていたから、そろそろ外に連れて行ってやりたくてな。それなら、やはりまずはここと孤児院だと思ってな」
結婚をしたからだろうか。
以前に比べて、ジョルジュさんはずいぶん感情の表現が豊かになったと思う。
やっぱり、独特な雰囲気はあるけど、言葉に思いやりがあって、ジャニスさんを大切にしている事が伝わってくる。
キャロルちゃんが失恋した時は大変だった。
キャロルちゃんは13歳になった時、ジョルジュさんに告白した。
でも、残念だけどその恋は実らなかった。
ジョルジュさんには恋愛の感情がまるで分からなったようで、キャロルちゃんがジョルジュさんに持った特別な気持ちも、ただの友達としてのものとしか、とらえていなかったと言うのだ。
そんな事があるのかな?と思ったけれど、考えてみれば一番最初に私達が友達になった時も、その時初めて友達という感情を理解していたし、森の中で精霊に祈りを捧げて育ったという、特殊な環境の影響もあったのかもしれないと思った。
それから、1か月、キャロルちゃんは落ち込んで、私達も様子を見ながらキャロルちゃんに接していたけれど、そんなキャロルちゃんを立ち直らせたのが、トロワ君だった。
ある日、朝食が終わった後、トロワ君はキャロルちゃんの手を取ると、遊びに行くぞ、と言って、戸惑うキャロルちゃんを引っ張るようにして外へ連れ出したのだ。
急な事でびっくりしたけれど、トロワ君がキャロルちゃんを元気にしようとしての行動というのは分かったので、その日の仕事は残ったみんなで分配してやりくりした。
夕暮れになって、帰ってきたキャロルちゃんは、ちょっと怒っていたけれど、なんだか吹っ切れたようにも見えた。
逆にトロワ君は、何か言われたのか、少し落ち込んでいて、なぜか水に濡れていた。
・・・ばかトロワ見てたら、やっぱり私がしっかりしなきゃって思った・・・・・あ~あ、やっぱり女がしっかりしないとなぁ・・・
そう言って、キャロルちゃんは私達に、ずっと落ち込んで心配かけてごめんなさい。と謝った。
翌日からキャロルちゃんはちょっとづつ元気を取り戻していって、一週間もするとすっかり元通りになっていた。
あの日、キャロルちゃんとどこで何してたの?
後日、トロワ君にそう聞くと、トロワ君は色んなところに行って、とにかくキャロルちゃんを笑わせようとしたらしい。
でも、美味しいお菓子やさんに連れて行っても、路上の大道芸を見に行っても、何をしてもキャロルちゃんは反応が薄く笑わなかった。
そこでトロワ君は孤児院の近くの川に行って、何を思ったのか木のてっぺんから川に飛び込んだのだ。
幸い川は深く、頭を打つことは無かったし、流される事もなかったけれど、危険な行為だった事は間違いなく、キャロルちゃんは笑うどころか激怒して、トロワ君はめちゃくちゃ怒られたらしい。
そう言えば、私がこの世界に来た時、川で倒れていたんだった。
あそこは流れも早いし、飛び込みなんて危ない。キャロルちゃんが怒るのはもっともだ。
でも、トロワ君に怒った事で、気持ちの切り替えができたのかもしれない。
きっと、失恋してもどこに感情をぶつけていいか分からないでいたんだ。
泣いていいのに、キャロルちゃんは泣かなかった。きっと、他に小さい子がいっぱいいたし、頑張らなきゃって思ってたのかもしれない。
トロワ君に、八つ当たりも少し入ったかもしれないけど、溜め込んでいた感情をぶつけて気持ちを整理できたんだと思う。
川に飛び込んだのは駄目だけど、優しいね。
私が褒めると、トロワ君はなんで褒められたか分からないって顔してたけど、それでも褒められたのは嬉しかったみたいで、ちょっとだけ照れて笑ってくれた。
「あ、ジョセフ君、今はお寝んねなのかな?」
「うん。さっきまで機嫌良かったんだよ。このくらいの時って、本当によく寝るよね。スージーとチコリが赤ちゃんだった時の事、思い出したよ」
ジャニスさん譲りの明るい栗色の髪は、空気が入っているみたいにふわふわとしている。
眠っているジョセフ君の頬をつついてみる。もちもちしていて、いつまでも触っていたくなる。
「あはは、アタシもよく触ってるの、赤ちゃんの肌ってすっごい柔らかいよね」
「ジャニス、疲れてないか?ジョセフは俺が持つぞ」
「ん?大丈夫だって、軽い軽い」
「駄目だ。少し休め」
さっと、ジャニスさんの腕からジョセフ君を取ると、慣れた手つきでジョセフ君を腕に治める。
「ふふ・・・ジョルジュさん、本当に変わったわね。ジャニスさん、大事にされてるのね」
私が二人を交互に見て、ちょっと笑いかけると、ジャニスさんはちょっと困った感じで笑った。
「う~ん、それは分かるんだよね。でも、ちょっと過保護かも。私が妊娠中はさ、歩くと、足元に気を付けろっていっつも言うし、ご飯の食器を出そうとすると、俺がやるから座ってろ、でしょ。運動不足でちょっと太ったくらい」
「なにそれー!ジョルジュさんそんなタイプだったの!?すごく良い旦那さんじゃない!」
「そうか?身重の妻を労わるのは当然ではないのか?」
「ジョルジュさん、すっごい紳士ね」
私の中で、ジョルジュさんの株が急上昇した。
良い人なのは知ってたけど、そこまで細かい気遣いをしているとは思わなかった。
「ジャニスさん、そんなに大切に想われて幸せだね」
「え、う、うん・・・まぁね」
ジャニスさんは頬を少し赤くして、隣でジョセフ君を抱っこしているジョルジュさんにチラリと目を向ける。
その視線を受けて、ジョルジュさんがジャニスさんに微笑みを向ける。
するとジャニスさんが慌てて視線を逸らす。
本当に変わったなぁと、私はしみじみとジョルジュさんを眺めた。
あれは、キャロルちゃんが失恋から立ち直って、さらに1年程経ってからだ。
ジョルジュさんに誘われて、ジャニスさんが食事に出かけたのだ。
そして夜帰って来たジャニスさんは、とても難しい顔をしていた。
腕を組んで、眉を寄せてどうしたらいいか分からないという顔をしていたので、どうしたの?と声をかけると、ジョルジュに一緒になりたいって言われた。と答えるので、私も固まってしまった。
ジャニスさんは最初は冗談だと思ったらしいけど、話していて、ジョルジュさんが本気だという事が分かって、すぐには返事ができないから、とりあえず返事を保留にしてもらったらしい。
すぐに返事をしなかったという事は、ジャニスさんもジョルジュさんに、少なからず気持ちがあったのだと思う。
でも、キャロルちゃんの事を気にして、返事を保留にしたんだと思った。
失恋から立ち直って一年は経ったし、今ではジョルジュさんと以前のように普通に話せるようになったけど、それでも自分が失恋した相手と、ジャニスさんが付き合うとなったら・・・どう思うだろう。
私だったら、やっぱり辛い。
・・・・・ジャニス姉さん、私の事ならもう大丈夫だよ。
玄関で話していたら、近くにキャロルちゃんがいて、聞こえてしまったみたいだ。
私達の前に立つと、気まずそうにしているジャニスさんに、キャロルちゃんは優しく声をかけて、自分の今の素直な気持ちを話し始めた。
確かに失恋は辛かったけど、あれから一年経って、ちゃんと立ち直る事ができた事。
ジョルジュさんともちゃんと話して、自分も新しい恋をしなきゃって思った事。
・・・それにね、私、ジャニス姉さんには幸せになってほしいんだ。
だから、姉さんが今、ジョルジュさんと一緒になりたいって気持ちがあるんなら、その気持ちに正直になってほしい。
その夜、ジャニスさんとキャロルちゃんは一緒のベットで寝た。
沢山お話しして、ぎゅっと抱きしめ合って、朝には二人とも笑顔で朝食の席についた。
多分キャロルちゃんは、この時はまだ引きずっていたと思う。
でも、姉としてずっとを育ててくれたジャニスさんに、幸せになってほしいという気持ちもやっぱり大きくて、キャロルちゃんは自分の気持ちを隠したんだ。
ジャニスさんがほんの少しでも気にしないようすために。
そして、ジャニスさんはジョルジュさんと交際を始めて、結婚をして子供を授かった。
今の二人をみていると、本当に幸せそうに見える。
キャロルちゃんはとても辛い思いをした。
でも、ジャニスさんの幸せのために、自分の気持ちも抑えて・・・本当に優しい子だ。
だから、今度はキャロルちゃんが幸せになるために、私もできる事はなんでもしようと思う。
「ジョルジュさん、今更かもだけど・・・なんで、ジャニスさんと一緒になりたいって思ったの?」
ふいに私がたずねると、ジョルジュさんはジャニスさんに目を向けた後、私に向き直って笑って答えた。
「ジャニスが好きになったからだ。口うるさいし、人の都合を考えないで決めるし、強引なんだよな。でも、ジャニスと一緒にいたいって思ったんだ。・・・・・キャロルが教えてくれたんだ。人を好きになる気持ちを・・・俺達が結婚できて、ジョセフが産まれたのは、全部キャロルのおかげだ。キャロルは俺に沢山の事を教えてくれた。本当に感謝している」
「・・・なんか、最初の方が引っかかって、素直に喜べないな。でも、キャロルに感謝って言うのは、アタシも一緒かな。最近さ、トロワと一緒にいるの多いでしょ?もし、あの二人がくっつくなら、いっぱいお祝いしたいな。ね?ジョルジュ」
キャロルちゃんとトロワ君ももう16歳。年頃だ。
でも、付き合いが長い分、きっかけがないとあと一歩踏み出せないのかもしれない。
もし、キャロルちゃんとトロワ君が交際を始めるのなら、私もみんなといっぱいお祝いしようと思った。
午後3時を過ぎて日も傾き始めた頃、ジャニスさんが両腕で赤ちゃんを抱いて、レイジェスを訪れた。
「あ!ジャニスさん!久しぶりー、元気そうで安心したわ」
店内に足を入れると、ジャニスさんは懐かしそうに辺りを見渡す。
妊娠しても少しの間はレイジェスで働いてくれたけど、一か月を過ぎてつわりが始まると、やはりそうとうきつかったようだ。妊娠二か月目くらいで仕事を辞めて、旦那さんの家で安静にするようにしたのだ。
そして、その男性というのが、今ジャニスさんの後ろに立っているアイスブルーの髪の人。
「ジョルジュさんも、お久しぶりです」
そう、ジョルジュ・ワーリントンさんだ。
束感のある髪を軽く手で流し、ジョルジュさんは右手を軽く挙げて笑う。
「久しぶりだな、ヤヨイ。昨日は急な連絡で悪かった。ジャニスも街で出産したきり、ずっと家で安静にしていたから、そろそろ外に連れて行ってやりたくてな。それなら、やはりまずはここと孤児院だと思ってな」
結婚をしたからだろうか。
以前に比べて、ジョルジュさんはずいぶん感情の表現が豊かになったと思う。
やっぱり、独特な雰囲気はあるけど、言葉に思いやりがあって、ジャニスさんを大切にしている事が伝わってくる。
キャロルちゃんが失恋した時は大変だった。
キャロルちゃんは13歳になった時、ジョルジュさんに告白した。
でも、残念だけどその恋は実らなかった。
ジョルジュさんには恋愛の感情がまるで分からなったようで、キャロルちゃんがジョルジュさんに持った特別な気持ちも、ただの友達としてのものとしか、とらえていなかったと言うのだ。
そんな事があるのかな?と思ったけれど、考えてみれば一番最初に私達が友達になった時も、その時初めて友達という感情を理解していたし、森の中で精霊に祈りを捧げて育ったという、特殊な環境の影響もあったのかもしれないと思った。
それから、1か月、キャロルちゃんは落ち込んで、私達も様子を見ながらキャロルちゃんに接していたけれど、そんなキャロルちゃんを立ち直らせたのが、トロワ君だった。
ある日、朝食が終わった後、トロワ君はキャロルちゃんの手を取ると、遊びに行くぞ、と言って、戸惑うキャロルちゃんを引っ張るようにして外へ連れ出したのだ。
急な事でびっくりしたけれど、トロワ君がキャロルちゃんを元気にしようとしての行動というのは分かったので、その日の仕事は残ったみんなで分配してやりくりした。
夕暮れになって、帰ってきたキャロルちゃんは、ちょっと怒っていたけれど、なんだか吹っ切れたようにも見えた。
逆にトロワ君は、何か言われたのか、少し落ち込んでいて、なぜか水に濡れていた。
・・・ばかトロワ見てたら、やっぱり私がしっかりしなきゃって思った・・・・・あ~あ、やっぱり女がしっかりしないとなぁ・・・
そう言って、キャロルちゃんは私達に、ずっと落ち込んで心配かけてごめんなさい。と謝った。
翌日からキャロルちゃんはちょっとづつ元気を取り戻していって、一週間もするとすっかり元通りになっていた。
あの日、キャロルちゃんとどこで何してたの?
後日、トロワ君にそう聞くと、トロワ君は色んなところに行って、とにかくキャロルちゃんを笑わせようとしたらしい。
でも、美味しいお菓子やさんに連れて行っても、路上の大道芸を見に行っても、何をしてもキャロルちゃんは反応が薄く笑わなかった。
そこでトロワ君は孤児院の近くの川に行って、何を思ったのか木のてっぺんから川に飛び込んだのだ。
幸い川は深く、頭を打つことは無かったし、流される事もなかったけれど、危険な行為だった事は間違いなく、キャロルちゃんは笑うどころか激怒して、トロワ君はめちゃくちゃ怒られたらしい。
そう言えば、私がこの世界に来た時、川で倒れていたんだった。
あそこは流れも早いし、飛び込みなんて危ない。キャロルちゃんが怒るのはもっともだ。
でも、トロワ君に怒った事で、気持ちの切り替えができたのかもしれない。
きっと、失恋してもどこに感情をぶつけていいか分からないでいたんだ。
泣いていいのに、キャロルちゃんは泣かなかった。きっと、他に小さい子がいっぱいいたし、頑張らなきゃって思ってたのかもしれない。
トロワ君に、八つ当たりも少し入ったかもしれないけど、溜め込んでいた感情をぶつけて気持ちを整理できたんだと思う。
川に飛び込んだのは駄目だけど、優しいね。
私が褒めると、トロワ君はなんで褒められたか分からないって顔してたけど、それでも褒められたのは嬉しかったみたいで、ちょっとだけ照れて笑ってくれた。
「あ、ジョセフ君、今はお寝んねなのかな?」
「うん。さっきまで機嫌良かったんだよ。このくらいの時って、本当によく寝るよね。スージーとチコリが赤ちゃんだった時の事、思い出したよ」
ジャニスさん譲りの明るい栗色の髪は、空気が入っているみたいにふわふわとしている。
眠っているジョセフ君の頬をつついてみる。もちもちしていて、いつまでも触っていたくなる。
「あはは、アタシもよく触ってるの、赤ちゃんの肌ってすっごい柔らかいよね」
「ジャニス、疲れてないか?ジョセフは俺が持つぞ」
「ん?大丈夫だって、軽い軽い」
「駄目だ。少し休め」
さっと、ジャニスさんの腕からジョセフ君を取ると、慣れた手つきでジョセフ君を腕に治める。
「ふふ・・・ジョルジュさん、本当に変わったわね。ジャニスさん、大事にされてるのね」
私が二人を交互に見て、ちょっと笑いかけると、ジャニスさんはちょっと困った感じで笑った。
「う~ん、それは分かるんだよね。でも、ちょっと過保護かも。私が妊娠中はさ、歩くと、足元に気を付けろっていっつも言うし、ご飯の食器を出そうとすると、俺がやるから座ってろ、でしょ。運動不足でちょっと太ったくらい」
「なにそれー!ジョルジュさんそんなタイプだったの!?すごく良い旦那さんじゃない!」
「そうか?身重の妻を労わるのは当然ではないのか?」
「ジョルジュさん、すっごい紳士ね」
私の中で、ジョルジュさんの株が急上昇した。
良い人なのは知ってたけど、そこまで細かい気遣いをしているとは思わなかった。
「ジャニスさん、そんなに大切に想われて幸せだね」
「え、う、うん・・・まぁね」
ジャニスさんは頬を少し赤くして、隣でジョセフ君を抱っこしているジョルジュさんにチラリと目を向ける。
その視線を受けて、ジョルジュさんがジャニスさんに微笑みを向ける。
するとジャニスさんが慌てて視線を逸らす。
本当に変わったなぁと、私はしみじみとジョルジュさんを眺めた。
あれは、キャロルちゃんが失恋から立ち直って、さらに1年程経ってからだ。
ジョルジュさんに誘われて、ジャニスさんが食事に出かけたのだ。
そして夜帰って来たジャニスさんは、とても難しい顔をしていた。
腕を組んで、眉を寄せてどうしたらいいか分からないという顔をしていたので、どうしたの?と声をかけると、ジョルジュに一緒になりたいって言われた。と答えるので、私も固まってしまった。
ジャニスさんは最初は冗談だと思ったらしいけど、話していて、ジョルジュさんが本気だという事が分かって、すぐには返事ができないから、とりあえず返事を保留にしてもらったらしい。
すぐに返事をしなかったという事は、ジャニスさんもジョルジュさんに、少なからず気持ちがあったのだと思う。
でも、キャロルちゃんの事を気にして、返事を保留にしたんだと思った。
失恋から立ち直って一年は経ったし、今ではジョルジュさんと以前のように普通に話せるようになったけど、それでも自分が失恋した相手と、ジャニスさんが付き合うとなったら・・・どう思うだろう。
私だったら、やっぱり辛い。
・・・・・ジャニス姉さん、私の事ならもう大丈夫だよ。
玄関で話していたら、近くにキャロルちゃんがいて、聞こえてしまったみたいだ。
私達の前に立つと、気まずそうにしているジャニスさんに、キャロルちゃんは優しく声をかけて、自分の今の素直な気持ちを話し始めた。
確かに失恋は辛かったけど、あれから一年経って、ちゃんと立ち直る事ができた事。
ジョルジュさんともちゃんと話して、自分も新しい恋をしなきゃって思った事。
・・・それにね、私、ジャニス姉さんには幸せになってほしいんだ。
だから、姉さんが今、ジョルジュさんと一緒になりたいって気持ちがあるんなら、その気持ちに正直になってほしい。
その夜、ジャニスさんとキャロルちゃんは一緒のベットで寝た。
沢山お話しして、ぎゅっと抱きしめ合って、朝には二人とも笑顔で朝食の席についた。
多分キャロルちゃんは、この時はまだ引きずっていたと思う。
でも、姉としてずっとを育ててくれたジャニスさんに、幸せになってほしいという気持ちもやっぱり大きくて、キャロルちゃんは自分の気持ちを隠したんだ。
ジャニスさんがほんの少しでも気にしないようすために。
そして、ジャニスさんはジョルジュさんと交際を始めて、結婚をして子供を授かった。
今の二人をみていると、本当に幸せそうに見える。
キャロルちゃんはとても辛い思いをした。
でも、ジャニスさんの幸せのために、自分の気持ちも抑えて・・・本当に優しい子だ。
だから、今度はキャロルちゃんが幸せになるために、私もできる事はなんでもしようと思う。
「ジョルジュさん、今更かもだけど・・・なんで、ジャニスさんと一緒になりたいって思ったの?」
ふいに私がたずねると、ジョルジュさんはジャニスさんに目を向けた後、私に向き直って笑って答えた。
「ジャニスが好きになったからだ。口うるさいし、人の都合を考えないで決めるし、強引なんだよな。でも、ジャニスと一緒にいたいって思ったんだ。・・・・・キャロルが教えてくれたんだ。人を好きになる気持ちを・・・俺達が結婚できて、ジョセフが産まれたのは、全部キャロルのおかげだ。キャロルは俺に沢山の事を教えてくれた。本当に感謝している」
「・・・なんか、最初の方が引っかかって、素直に喜べないな。でも、キャロルに感謝って言うのは、アタシも一緒かな。最近さ、トロワと一緒にいるの多いでしょ?もし、あの二人がくっつくなら、いっぱいお祝いしたいな。ね?ジョルジュ」
キャロルちゃんとトロワ君ももう16歳。年頃だ。
でも、付き合いが長い分、きっかけがないとあと一歩踏み出せないのかもしれない。
もし、キャロルちゃんとトロワ君が交際を始めるのなら、私もみんなといっぱいお祝いしようと思った。
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