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248 思いやりの涙
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「・・・・・くん!アラタ君!アラタ君!?」
自分の名前を呼ばれている事に気付き、声の方に顔を向けると、カチュアが心配そうに眉を下げ、俺を呼び続けていた。
「あ、カチュア・・・・・今、俺・・・ごめん」
「・・・大丈夫?声をかけても全然反応しないから・・・心配したよ」
どうやら、ぼーっとしていたらしい。カチュアだけでなく、全員の視線が俺に集まっている。
「・・・ごめん。実は今・・・・・弥生さんが見えた気がして・・・どこかの森で、友達と笑い合ってたんだ。そんなの見えるはずないけど・・・でも、信じたいんだ。きっと、あれは弥生さんの過ごした人生の一つの場面で、弥生さんは幸せだったんだ・・・・・カチュア、ごめん。ずっとくよくよしてて・・・俺も・・・元気だして頑張って・・・・・そして、幸せにならなきゃな・・・弥生さんに怒られちまうや」
「・・・アラタ君・・・・・良かった。いつもの、私の好きなアラタ君の顔だ」
カチュアは安心したように、ほっと息を付く。
ずいぶん心配をかけたようだ。微笑んでいるけど、目元に少し涙が浮かんでいる。
「カチュア・・・一緒に幸せになろうな」
「・・・アラタ君・・・うん!一緒に幸せになろうね」
隣に座るカチュアを抱き寄せると、カチュアも俺の背中に腕を回して答えてくれた。
弥生さん・・・・・俺、弥生さんが安心できるように、絶対に幸せになってみせます。
「あのさ・・・キミ達さ、もうアレかい?私につっこんで欲しくてイチャついてるのかい?」
レイチェルの、からかいと少しの呆れが混じった声に、俺とカチュアは慌てて体を離した。
言われてみれば、最近レイチェルに、人目を気にせずイチャついてるね、とつっこまれるのが多い気がする。
「アラやん、いつもの感じに戻ったみてぇだな?」
「ジャレットさん・・・・すみません。せっかく話してくれたのに、俺・・・なんか雰囲気悪くしちゃって・・・」
「おいおい、んな事気にすんなよ。しかたねぇって・・・そんだけ大事な人だったって事だろ?まぁ、ちょっと心配したが、乗り越えたみてぇだな」
ジャレットさんは口の端を少し持ち上げて見せた。
乗り越えた、か・・・正直、弥生さんの死を乗り越えたかと言われると、まだハッキリと返事はできない。だけど、向い合う事はできたと思う。
多分、ジャレットさんがこのタイミングで話しを一度区切ったのは、ここから先の話しが戦争の話しであり、それは戦死したという弥生さんの話しをしなくてはならないからだ。
俺の様子を見て、気持ちを落ち着ける時間を作ってくれたんだと思う。
俺は、この世界でも良い先輩に恵まれたと思う。
「ジャレットさん・・・ありがとうございます。もう大丈夫です。向き合えます」
「・・・アラやん、ちょっと・・・成長したか?」
ジャレットさんは、お茶を一口飲むと、満足そうに笑った。
「アラタ様はとても大切に想われていたのですね。私は王妃から遺言を受け継いだ時、失礼ながら、なぜこの言葉を代々200年も受け継いできたのかと、とても疑問に思っておりました。
ですが、今なら分かります・・・・・人一人を立ち直らせる。言葉にはこれほどの力があるのですね・・・・・浅はかな自分を恥じております」
エリザベートが慈しむような目でアラタを見ると、アラタは小さくかぶりを振った。
「いえ、そんなエリザ様が恥じる事なんて、なにもありません。ただ、俺は弥生さんに力をもらいました。日本でも、こっちの世界でも・・・本当に俺は、弥生さんに世話になりっぱなしで・・・でも、これからは弥生さんが安心できるような男になってみせます」
「アラタ様・・・・・はい。きっとヤヨイ様もお喜びになられておりますよ」
エリザベートはそこで言葉を区切ると、一つ息をつき姿勢を正し、全員の顔を見渡した。
どこか意を決したような表情に、これから本題に入るという事が察せられた。
「・・・レイジェスの皆さん、恐らくある程度の御察しが付いているかと思いますが、真実の花は、幻覚や催眠状態を治す事に用いられます。ですが、それだけではありません。
青魔法使いでも、それこそ青魔法を極めた者しか使えないとされている、変身魔法、真実の花はこれを無効化できるのです」
国王陛下が偽者ではという推測の話しはしていたが、王女様の口から発せられた言葉は、その推測を断定したと言っていい内容だった。
「王妃は、何年も前から国王陛下に違和感を感じておりました。最初は小さな違和感でしたが、夫婦ですから、やはり気付くものです。ここ2~3年で、国王陛下は偽者だと確信したそうです。
そして、気付かれないように少しづつ準備を始め、相当の額をつぎ込んだそうですが、ブロートン帝国へ協力者、と言ってもお金での結びつきですが、協力者を作り、セインソルボ山への入山許可を得ました。万一に備え、護衛も本当に信頼できる者に変えました。このリーザ・アコスタ、そしてローザ・アコスタは一年程前から王妃の専属として付いております」
「そうでしたか。前回、城で会った時、初めて見るなと思いましたが、一年程前からの専属でしたか。それにしても、そこまで強い信頼を得ているとは・・・どういう経緯で護衛に着かれたのか、お伺いしてもよろしいですか?」
王女の言葉に、レイチェルがリーザ・アコスタに目を向けた。
確かに、わざわざ護衛を変え、そして今回、国の今後を左右する話しをしに来た王女様の護衛にまで付かせるだから、絶対に裏切らないという確信がなければ無理だ。
「アコスタ姉妹は、バリオス様からご紹介いただきました。そして、ブレンダン・ランデルの孤児院で育った、スージーの血を引いております。疑う余地はありません」
王女の言葉に、レイチェルは驚きのあまりすぐに言葉を返せず、リーザ・アコスタを目を開いて見つめた。
レイチェルの反応を見た王女は、スージーとチコリの事は知っているようですね?と呟き、言葉を続けた。
「・・・カエストゥス国は、戦争には敗北しました。ですが、孤児院の人間全てが戦死したわけではありません。生き延びた者もいるのです・・・ただ、心に追った傷は生涯忘れる事はできなかったでしょう。スージとチコリ、戦争が始まった当時、二人は8歳位だったと聞いております。戦う事などできなかった二人を、トロワとキャロルが必死に護ったそうです。生き延びたスージーとチコリは、その後、ここクインズベリー国のとある村で引き取られたそうです」
王女の話しの区切りを待ち、ジャレットさんが言葉を挟んだ。
「エリザ様、すみません。ちょっといいですか?一度整理しましょう。俺は今日ちょうどみんなに200年前の戦争の話しをしてました。エリザ様がいらっしゃった時は休憩した時で、シンジョウ・ヤヨイが結婚して子供を出産したところまで、みんなに話したところだったんです。俺は以前、バリオス店長からこの話しを聞いた事がありますが、結末までは聞いてないんです。エリザ様は・・・どこまで知ってるんですか?俺は、スージーとチコリのその後までは知らないです」
おそらく王女様はジャレットさんより、深いところまで知っている。
ジャレットさんも、王女様が自分より知っているだろうという事を、察しているような口振りだ。
「私と、母である、アンリエール王妃は全て知っております。上の兄二人、第一王子と第二王子はバッタまでしか知りえていないでしょう。他国の事までは分かりませんが、このクインズベリー国で、あの戦争の結末まで知っている人間は、バリオス様を含め三人という事になります」
「・・・すごいな。店長から聞いたんですか?それとも、ジャニスが書物でも残していたとか?」
ジャレットさんも驚きを隠せないようだ。
感嘆の息をもらし、王女様になぜ知っているのかを問いかける。
「ジャニスは書物の類は残さなかったようです。残す気が無かったのかもしれません。記録として書き留める事は、とても辛いでしょうから・・・・・私は一昨年、13歳になった時にバリオス様からお聞きしました。王妃も同席しており、そこでヤヨイ様の遺言も受け継ぎました」
「店長から直接・・・エリザ様、前々から思ってましたけど、なぜ店長は王族とそこまで結びつきが強いのですか?」
レイチェルが一歩踏み込んだ質問をする。
謎が多いという店長の、確信にも触れそうな問いかけだ。
「・・・レイチェル、それは私からは申し上げられません。ただ、私も王妃も、バリオス様を疑う事はありません。心から信頼しております。あの方は・・・・・」
そこで言葉を切ると、王女様は悲し気に目を伏せた。
「・・・いつか、時が来ればバリオス様ご自身からお話しされるかもしれません。私も母である王妃も、バリオス様に関してお話しできる事は、非常に限られております。
今、私が申しあげられる事は、あの方は、バリオス様は謎が多い方ですが、みなさんご存じの通り決して嘘はつきません。どうか、バリオス様を信じて支えてください。あの方は・・・・・あれほど心に深い傷を負っているのに、この国のためにどれほど自分を犠牲にしてきたか・・・・・・私は、何もお力になれない無力な自分に心が苦しいです・・・」
「・・・エリザ様・・・」
エリザベートの頬を伝う一滴の涙に、レイチェルはそれ以上言葉を重ねる事はできなかった。
一体、店長には何があるのか。
口ぶりから、エリザベートは店長の事情を知っている。それもかなり深いところまで。
だが、唇を結び、バリオスを思いやり涙を流すエリザベートの顔を見て、レイチェルは席を立ち、エリザベートの隣に立つと、エリザベートの頭を抱きしめた。
「エリザ様・・・友達なら、こういう時抱きしめてもいいですよね?」
「・・・レイチェル・・・ありがとう・・ございます」
身分は違う
だが、レイチェルもまたエリザベートを友達と思っていた
エリザ様・・・店長を大事に思って泣いてくださるんですね
泣きたい時は、いっぱい泣きましょう
そして、いっぱい泣いたら、今度はいっぱい笑いましょうね
頭を撫でる手の平の温かさが、エリザベートに友達の優しさを伝えた
自分の名前を呼ばれている事に気付き、声の方に顔を向けると、カチュアが心配そうに眉を下げ、俺を呼び続けていた。
「あ、カチュア・・・・・今、俺・・・ごめん」
「・・・大丈夫?声をかけても全然反応しないから・・・心配したよ」
どうやら、ぼーっとしていたらしい。カチュアだけでなく、全員の視線が俺に集まっている。
「・・・ごめん。実は今・・・・・弥生さんが見えた気がして・・・どこかの森で、友達と笑い合ってたんだ。そんなの見えるはずないけど・・・でも、信じたいんだ。きっと、あれは弥生さんの過ごした人生の一つの場面で、弥生さんは幸せだったんだ・・・・・カチュア、ごめん。ずっとくよくよしてて・・・俺も・・・元気だして頑張って・・・・・そして、幸せにならなきゃな・・・弥生さんに怒られちまうや」
「・・・アラタ君・・・・・良かった。いつもの、私の好きなアラタ君の顔だ」
カチュアは安心したように、ほっと息を付く。
ずいぶん心配をかけたようだ。微笑んでいるけど、目元に少し涙が浮かんでいる。
「カチュア・・・一緒に幸せになろうな」
「・・・アラタ君・・・うん!一緒に幸せになろうね」
隣に座るカチュアを抱き寄せると、カチュアも俺の背中に腕を回して答えてくれた。
弥生さん・・・・・俺、弥生さんが安心できるように、絶対に幸せになってみせます。
「あのさ・・・キミ達さ、もうアレかい?私につっこんで欲しくてイチャついてるのかい?」
レイチェルの、からかいと少しの呆れが混じった声に、俺とカチュアは慌てて体を離した。
言われてみれば、最近レイチェルに、人目を気にせずイチャついてるね、とつっこまれるのが多い気がする。
「アラやん、いつもの感じに戻ったみてぇだな?」
「ジャレットさん・・・・すみません。せっかく話してくれたのに、俺・・・なんか雰囲気悪くしちゃって・・・」
「おいおい、んな事気にすんなよ。しかたねぇって・・・そんだけ大事な人だったって事だろ?まぁ、ちょっと心配したが、乗り越えたみてぇだな」
ジャレットさんは口の端を少し持ち上げて見せた。
乗り越えた、か・・・正直、弥生さんの死を乗り越えたかと言われると、まだハッキリと返事はできない。だけど、向い合う事はできたと思う。
多分、ジャレットさんがこのタイミングで話しを一度区切ったのは、ここから先の話しが戦争の話しであり、それは戦死したという弥生さんの話しをしなくてはならないからだ。
俺の様子を見て、気持ちを落ち着ける時間を作ってくれたんだと思う。
俺は、この世界でも良い先輩に恵まれたと思う。
「ジャレットさん・・・ありがとうございます。もう大丈夫です。向き合えます」
「・・・アラやん、ちょっと・・・成長したか?」
ジャレットさんは、お茶を一口飲むと、満足そうに笑った。
「アラタ様はとても大切に想われていたのですね。私は王妃から遺言を受け継いだ時、失礼ながら、なぜこの言葉を代々200年も受け継いできたのかと、とても疑問に思っておりました。
ですが、今なら分かります・・・・・人一人を立ち直らせる。言葉にはこれほどの力があるのですね・・・・・浅はかな自分を恥じております」
エリザベートが慈しむような目でアラタを見ると、アラタは小さくかぶりを振った。
「いえ、そんなエリザ様が恥じる事なんて、なにもありません。ただ、俺は弥生さんに力をもらいました。日本でも、こっちの世界でも・・・本当に俺は、弥生さんに世話になりっぱなしで・・・でも、これからは弥生さんが安心できるような男になってみせます」
「アラタ様・・・・・はい。きっとヤヨイ様もお喜びになられておりますよ」
エリザベートはそこで言葉を区切ると、一つ息をつき姿勢を正し、全員の顔を見渡した。
どこか意を決したような表情に、これから本題に入るという事が察せられた。
「・・・レイジェスの皆さん、恐らくある程度の御察しが付いているかと思いますが、真実の花は、幻覚や催眠状態を治す事に用いられます。ですが、それだけではありません。
青魔法使いでも、それこそ青魔法を極めた者しか使えないとされている、変身魔法、真実の花はこれを無効化できるのです」
国王陛下が偽者ではという推測の話しはしていたが、王女様の口から発せられた言葉は、その推測を断定したと言っていい内容だった。
「王妃は、何年も前から国王陛下に違和感を感じておりました。最初は小さな違和感でしたが、夫婦ですから、やはり気付くものです。ここ2~3年で、国王陛下は偽者だと確信したそうです。
そして、気付かれないように少しづつ準備を始め、相当の額をつぎ込んだそうですが、ブロートン帝国へ協力者、と言ってもお金での結びつきですが、協力者を作り、セインソルボ山への入山許可を得ました。万一に備え、護衛も本当に信頼できる者に変えました。このリーザ・アコスタ、そしてローザ・アコスタは一年程前から王妃の専属として付いております」
「そうでしたか。前回、城で会った時、初めて見るなと思いましたが、一年程前からの専属でしたか。それにしても、そこまで強い信頼を得ているとは・・・どういう経緯で護衛に着かれたのか、お伺いしてもよろしいですか?」
王女の言葉に、レイチェルがリーザ・アコスタに目を向けた。
確かに、わざわざ護衛を変え、そして今回、国の今後を左右する話しをしに来た王女様の護衛にまで付かせるだから、絶対に裏切らないという確信がなければ無理だ。
「アコスタ姉妹は、バリオス様からご紹介いただきました。そして、ブレンダン・ランデルの孤児院で育った、スージーの血を引いております。疑う余地はありません」
王女の言葉に、レイチェルは驚きのあまりすぐに言葉を返せず、リーザ・アコスタを目を開いて見つめた。
レイチェルの反応を見た王女は、スージーとチコリの事は知っているようですね?と呟き、言葉を続けた。
「・・・カエストゥス国は、戦争には敗北しました。ですが、孤児院の人間全てが戦死したわけではありません。生き延びた者もいるのです・・・ただ、心に追った傷は生涯忘れる事はできなかったでしょう。スージとチコリ、戦争が始まった当時、二人は8歳位だったと聞いております。戦う事などできなかった二人を、トロワとキャロルが必死に護ったそうです。生き延びたスージーとチコリは、その後、ここクインズベリー国のとある村で引き取られたそうです」
王女の話しの区切りを待ち、ジャレットさんが言葉を挟んだ。
「エリザ様、すみません。ちょっといいですか?一度整理しましょう。俺は今日ちょうどみんなに200年前の戦争の話しをしてました。エリザ様がいらっしゃった時は休憩した時で、シンジョウ・ヤヨイが結婚して子供を出産したところまで、みんなに話したところだったんです。俺は以前、バリオス店長からこの話しを聞いた事がありますが、結末までは聞いてないんです。エリザ様は・・・どこまで知ってるんですか?俺は、スージーとチコリのその後までは知らないです」
おそらく王女様はジャレットさんより、深いところまで知っている。
ジャレットさんも、王女様が自分より知っているだろうという事を、察しているような口振りだ。
「私と、母である、アンリエール王妃は全て知っております。上の兄二人、第一王子と第二王子はバッタまでしか知りえていないでしょう。他国の事までは分かりませんが、このクインズベリー国で、あの戦争の結末まで知っている人間は、バリオス様を含め三人という事になります」
「・・・すごいな。店長から聞いたんですか?それとも、ジャニスが書物でも残していたとか?」
ジャレットさんも驚きを隠せないようだ。
感嘆の息をもらし、王女様になぜ知っているのかを問いかける。
「ジャニスは書物の類は残さなかったようです。残す気が無かったのかもしれません。記録として書き留める事は、とても辛いでしょうから・・・・・私は一昨年、13歳になった時にバリオス様からお聞きしました。王妃も同席しており、そこでヤヨイ様の遺言も受け継ぎました」
「店長から直接・・・エリザ様、前々から思ってましたけど、なぜ店長は王族とそこまで結びつきが強いのですか?」
レイチェルが一歩踏み込んだ質問をする。
謎が多いという店長の、確信にも触れそうな問いかけだ。
「・・・レイチェル、それは私からは申し上げられません。ただ、私も王妃も、バリオス様を疑う事はありません。心から信頼しております。あの方は・・・・・」
そこで言葉を切ると、王女様は悲し気に目を伏せた。
「・・・いつか、時が来ればバリオス様ご自身からお話しされるかもしれません。私も母である王妃も、バリオス様に関してお話しできる事は、非常に限られております。
今、私が申しあげられる事は、あの方は、バリオス様は謎が多い方ですが、みなさんご存じの通り決して嘘はつきません。どうか、バリオス様を信じて支えてください。あの方は・・・・・あれほど心に深い傷を負っているのに、この国のためにどれほど自分を犠牲にしてきたか・・・・・・私は、何もお力になれない無力な自分に心が苦しいです・・・」
「・・・エリザ様・・・」
エリザベートの頬を伝う一滴の涙に、レイチェルはそれ以上言葉を重ねる事はできなかった。
一体、店長には何があるのか。
口ぶりから、エリザベートは店長の事情を知っている。それもかなり深いところまで。
だが、唇を結び、バリオスを思いやり涙を流すエリザベートの顔を見て、レイチェルは席を立ち、エリザベートの隣に立つと、エリザベートの頭を抱きしめた。
「エリザ様・・・友達なら、こういう時抱きしめてもいいですよね?」
「・・・レイチェル・・・ありがとう・・ございます」
身分は違う
だが、レイチェルもまたエリザベートを友達と思っていた
エリザ様・・・店長を大事に思って泣いてくださるんですね
泣きたい時は、いっぱい泣きましょう
そして、いっぱい泣いたら、今度はいっぱい笑いましょうね
頭を撫でる手の平の温かさが、エリザベートに友達の優しさを伝えた
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