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247 あの日の木漏れ日

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突然のエリザベートの告白に、レイジェスの全員が言葉を出せずにいた。


エリザベートの堂々とした佇まいから、それが嘘偽りでない事はよく理解できた。
なによりそんな嘘を付く理由も考えられない。


「・・・信じます。まさか、ちょうどカエストゥスの戦争の話しをしていた時に、エリザ様がジャニスの子孫だったなんて驚きがすごいけど」

最初に声を出したのは、ケイトだった。
テーブルの上に肘を着き、顎を手の平に乗せエリザベートに顔を向ける。

王女に対しての態度とは到底見れないが、ケイトはエリザベートの望む態度で接しようと決めていた。

「そうね・・・私も信じます。疑う理由もありませんし、お噂ですが、エリザ様は白魔法使いとして非常に高い魔力をお持ちだとか、あのジャニスの血を引いていらっしゃるのでしたら納得です」

シルヴィアもエリザベートを信じる言葉を口にする。
それに続き、それぞれが同調した言葉をエリザベートへかける。

最後にエリザベートはアラタへ顔を向けた。

アラタだけは、何も言わずにエリザベートを見つめていた。



「・・・アラタ様、ジャニスの事は、あなたはあまり知らないのでしょう?」

「・・・さっきまで、ジャレットさんから聞いた話しくらいです。孤児院ではみんなの姉という立場だったとか、ディーロ兄弟と戦ったとか・・・・・」

「そうです。その辺りまではご存じなのですね・・・でしたら、ジャニスがヤヨイ様を実の姉のように慕っていた事もお聞き及んでませんか?」

「それは、聞きました・・・気の強い人だったけど、本当は繊細だったようですね。弥生さんと、ジョルジュの母を心の拠り所にしていたとか・・・それがなにか?」



「・・・・・ジャニスは、ヤヨイ様の遺言を預かってました。それは、ジャニスの子供へ預けられ、子供はその子供へ・・・・・何代にも渡り受け継がれてきました。絶対に届けなくてはならない言葉だと・・・私も母、王妃から受け継ぎました。私の代でこの言葉を伝える事になるとは思いませんでしたが・・・・・ヤヨイ様は、もし、いつか、サカキ・アラタに会う事があったらこう伝えて欲しいと言葉を残したそうです・・・・・」



その言葉はアラタの周りの音を全て消した。

静寂の中、エリザベートの、いや弥生(ヤヨイ)の言葉だけがアラタの心に届き
深く・・・・・残った





・・・・・私は幸せだったよ。アラタも幸せだといいな・・・・・





少しの沈黙の後、アラタの頬を一筋の涙が伝う

唇を噛みしめていたが、止めどなく溢れる涙にアラタは声を押し殺す事ができなかった

ジャレットから、弥生の死を聞かされた時の、悲しみと苦しみの涙とは違う涙だった




200年・・・
これほどの長い時をかけて、弥生は言葉を届けてくれた
そしてそれは今のアラタにとって、必要な言葉だった

弥生を失った悲しみと苦しみを、弥生の言葉が救ってくれた

自分はこれほど想われていたのだ




「ぐぅ・・・うぅぅ・・・や、やよい・・・さん・・・・」

零れ落ちる涙がテーブルに一つ、また一つと悲しいシミを作る



弥生さん・・・・・この世界でも俺の事を考えてくれてたんですね・・・・・

弥生さん、最後に幸せだったと思えたのなら・・・・・俺は・・・・・






それは200年に渡る想いが見せた願いの力だったのかもしれない



閉め切られた室内に緑を感じる風が流れた



・・・・・いつかまた会えるといいな・・・・・



陽の光が差し込む森の中
異世界でできた友達と笑い合うヤヨイの姿が見えた気がした

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