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【243 ヤヨイの6年】
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ウィッカーさんは結婚した事を機に、メアリーちゃんの家に住むようになった。
親元に住んでいたウィッカーさんだったから、結婚した後は新居をと考えていたようだけど、メアリーちゃんが今自分が住んでいるところで、一緒に暮らしましょうと提案し、その通りになったようだ。
ウィッカーさんもメアリーちゃんも、二人ともあまり贅沢には興味がないらしく、ごく普通の生活が一番と考えているみたいだ。
私もそれが一番だと思う。何気ない日常がかけがえのない宝物だと私は思う。
月日は流れる。
6月1日キャロルちゃんが11歳になり、その翌週6月7日に私は24歳になった。
また恒例の孤児院で誕生日パーティーが行われたけど、他にも小さい子供達が2人、6月産まれで全部で4人いる。
これは一人一人やるのは大変なので、全員まとめて一回で行う事になった。
お誕生日会の時パトリックさんから、秋になったら結婚式を挙げようと言われ、私は、喜んでお受けします、と言葉を返した。
7月、トロワ君が11歳、タジーム王子が14歳になった。
キャロルちゃんは、自分の方が一か月お姉さんだと、トロワ君に勝ち誇ったように言う時がある。
その度にトロワ君は悔しそうにするのだ。年下の子供扱いされる事が嫌なようだ。
最近、トロワ君はキャロルちゃんの前で、少しかっこつけようとする事がある。
私やジャニスさんはそれがなんだか分かるけど、キャロルちゃんは、バカみたい、と言ってあまり取り合わない。
でも、なんだか私が孤児院に来た頃より、キャロルちゃんとトロワ君には、なにか特別な絆を感じるようになっていた。
二人だけにしか分からないなにかがあるんだと思う。
キャロルちゃんはジョルジュさんが好きなのは分かるけど、私はトロワ君を応援したい気持ちがある。
お誕生日会の時、王子は嫌がるかと思ったけど、みんなのお祝いの言葉に、ありがとう、と一言だけ返事をくれた。
王子はあまり注目を集めたり、目立つ事は好きではないようだけど、この日はジャニスさんにされるがまま引っ張りまわされ、子供達が集まっては構われほうだいだった。
ウィッカーさんは、以前の王子からは考えられない程の変化だと話していた。
ウィッカーさんも、前は王子がほとんど返事も何も返してくれず、声をかけづらかったそうだ。
でも、ジャニスさんだけは、王子がどんなに不愛想だったとしても、声をかけ続けたと言う。
ジャニスは王子のお姉ちゃんだから、そう笑って話すウィッカーさんに、ウィッカーさんもお兄ちゃんじゃないですか?と言葉をかけると、ウィッカーさんは、・・・そうですね。と笑ってくれた。
8月最後の日
メアリーちゃんが妊娠した。
報告してくれたメアリーちゃんは、愛おしそうにお腹を撫で、穏やかで優しさに満ちた表情をしていた。
男の子かな?女の子かな?
気になるけど、どちらが生まれても、ウィッカーさんとメアリーちゃんの子供なら、
きっと幸せになれるよ。
夏が終わり秋になった。
9月20日 秋風が気持ちの良く、いつまでも見ていたくなるような、穏やかな青空の日。
私とパトリックさんは結婚式を挙げた。
ウィッカーさんとメアリーちゃんが結婚式を挙げた時と、同じ教会だ。
メアリーちゃんの純白のウエディングドレスに憧れて、僅か4か月。
パトリックさんと交際を始めてやっと1年たったばかりだから、自分がこんなに早く着れるとは思わなかった。
式の最中、私はこの世界で出会ったみんなに心の中で感謝の言葉を告げた。
そして、日本に残した母にも、私を産んでくれてありがとう、そう感謝の思いをはせた。
私は、弥生は母と打ち解ける事ができず、家を出ていく形で一人暮らしを始めた。
理想を押し付けられ、反発していた部分はあるけれど、弥生は決して母を憎んでいたわけではない。
今となっては、もっと母と話せば良かった。
私も自分の気持ちをもっと伝えて、分かってもらう努力をすれば良かった。
そう思う時がある。
もう日本に帰る事はできないだろう。
帰れるとしても、この世界で大切なものが沢山できた・・・私はこの世界で生きていく
だから、せめて心の中で感謝の気持ちを伝えよう
どうか届いて欲しい
お母さん
ありがとう
シンジョウ・ヤヨイはこの日、異世界プライズリング大陸 カエストゥス国で、
パトリック・ファーマーと生涯を誓い合った
翌年
シンジョウ・ヤヨイ 25歳 第一子 男児を授かる
第一子誕生から二年後
シンジョウ・ヤヨイ 27歳 第二子 女児を授かる
第二子誕生から更に二年後
シンジョウ・ヤヨイ 29歳
この世界に来てからの6年
この6年はヤヨイにとって、もう一人の弥生にとっても、人生で一番充実した時間だった
この6年のためにこれまで生きてきた
そう思える程かけがえのない6年だった
親元に住んでいたウィッカーさんだったから、結婚した後は新居をと考えていたようだけど、メアリーちゃんが今自分が住んでいるところで、一緒に暮らしましょうと提案し、その通りになったようだ。
ウィッカーさんもメアリーちゃんも、二人ともあまり贅沢には興味がないらしく、ごく普通の生活が一番と考えているみたいだ。
私もそれが一番だと思う。何気ない日常がかけがえのない宝物だと私は思う。
月日は流れる。
6月1日キャロルちゃんが11歳になり、その翌週6月7日に私は24歳になった。
また恒例の孤児院で誕生日パーティーが行われたけど、他にも小さい子供達が2人、6月産まれで全部で4人いる。
これは一人一人やるのは大変なので、全員まとめて一回で行う事になった。
お誕生日会の時パトリックさんから、秋になったら結婚式を挙げようと言われ、私は、喜んでお受けします、と言葉を返した。
7月、トロワ君が11歳、タジーム王子が14歳になった。
キャロルちゃんは、自分の方が一か月お姉さんだと、トロワ君に勝ち誇ったように言う時がある。
その度にトロワ君は悔しそうにするのだ。年下の子供扱いされる事が嫌なようだ。
最近、トロワ君はキャロルちゃんの前で、少しかっこつけようとする事がある。
私やジャニスさんはそれがなんだか分かるけど、キャロルちゃんは、バカみたい、と言ってあまり取り合わない。
でも、なんだか私が孤児院に来た頃より、キャロルちゃんとトロワ君には、なにか特別な絆を感じるようになっていた。
二人だけにしか分からないなにかがあるんだと思う。
キャロルちゃんはジョルジュさんが好きなのは分かるけど、私はトロワ君を応援したい気持ちがある。
お誕生日会の時、王子は嫌がるかと思ったけど、みんなのお祝いの言葉に、ありがとう、と一言だけ返事をくれた。
王子はあまり注目を集めたり、目立つ事は好きではないようだけど、この日はジャニスさんにされるがまま引っ張りまわされ、子供達が集まっては構われほうだいだった。
ウィッカーさんは、以前の王子からは考えられない程の変化だと話していた。
ウィッカーさんも、前は王子がほとんど返事も何も返してくれず、声をかけづらかったそうだ。
でも、ジャニスさんだけは、王子がどんなに不愛想だったとしても、声をかけ続けたと言う。
ジャニスは王子のお姉ちゃんだから、そう笑って話すウィッカーさんに、ウィッカーさんもお兄ちゃんじゃないですか?と言葉をかけると、ウィッカーさんは、・・・そうですね。と笑ってくれた。
8月最後の日
メアリーちゃんが妊娠した。
報告してくれたメアリーちゃんは、愛おしそうにお腹を撫で、穏やかで優しさに満ちた表情をしていた。
男の子かな?女の子かな?
気になるけど、どちらが生まれても、ウィッカーさんとメアリーちゃんの子供なら、
きっと幸せになれるよ。
夏が終わり秋になった。
9月20日 秋風が気持ちの良く、いつまでも見ていたくなるような、穏やかな青空の日。
私とパトリックさんは結婚式を挙げた。
ウィッカーさんとメアリーちゃんが結婚式を挙げた時と、同じ教会だ。
メアリーちゃんの純白のウエディングドレスに憧れて、僅か4か月。
パトリックさんと交際を始めてやっと1年たったばかりだから、自分がこんなに早く着れるとは思わなかった。
式の最中、私はこの世界で出会ったみんなに心の中で感謝の言葉を告げた。
そして、日本に残した母にも、私を産んでくれてありがとう、そう感謝の思いをはせた。
私は、弥生は母と打ち解ける事ができず、家を出ていく形で一人暮らしを始めた。
理想を押し付けられ、反発していた部分はあるけれど、弥生は決して母を憎んでいたわけではない。
今となっては、もっと母と話せば良かった。
私も自分の気持ちをもっと伝えて、分かってもらう努力をすれば良かった。
そう思う時がある。
もう日本に帰る事はできないだろう。
帰れるとしても、この世界で大切なものが沢山できた・・・私はこの世界で生きていく
だから、せめて心の中で感謝の気持ちを伝えよう
どうか届いて欲しい
お母さん
ありがとう
シンジョウ・ヤヨイはこの日、異世界プライズリング大陸 カエストゥス国で、
パトリック・ファーマーと生涯を誓い合った
翌年
シンジョウ・ヤヨイ 25歳 第一子 男児を授かる
第一子誕生から二年後
シンジョウ・ヤヨイ 27歳 第二子 女児を授かる
第二子誕生から更に二年後
シンジョウ・ヤヨイ 29歳
この世界に来てからの6年
この6年はヤヨイにとって、もう一人の弥生にとっても、人生で一番充実した時間だった
この6年のためにこれまで生きてきた
そう思える程かけがえのない6年だった
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