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【241 風姫】
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「・・・ペトラ、大丈夫か?」
弥生とペトラが立ち上がり、握手をかわしたところで、ドミニクが輪になっている隊員達の前に出て、言葉をかけた。
「あ、ドミニク隊長・・・」
隊長のドミニクを前にして、ペトラは少し委縮したように俯いた。
その様子を見て、ドミニクはまた驚きを感じた。
ペトラとルチルは剣士隊の中で、少し問題のある二人だった。
いつも二人だけで行動し、他の隊員とは必要がなければ口を聞こうともせず、なにかあればすぐに喧嘩腰しになる。
扱いづらく、頭を悩ませられていた。
だが、今のペトラはどうだ?
自分の行動がまずいものだったと理解しているように見える。
いつもなら、隊長である自分が注意をしても、不貞腐れるか、屁理屈をこねるところだ。
それが弥生と手合わせをし、言葉を交わしただけで、こうも変わるものだろうか。
「・・・ペトラ、大丈夫ならいい。次からは俺に一言断ってからにしてくれ」
「あ・・・・・はい。すみませんでした」
ドミニクの言葉に、ペトラは目を伏せ、頭を下げた。それにならい、ルチルも謝罪を口にして頭を下げる。
ペトラとルチルの二人は、弥生に顔を向けると、じゃあ頑張ってね、と声をかけ、ドミニクと入れ替わるように隊員達の輪の中に入って行った。
「お、ドミニク、11時までまだ時間あるけど、出て来たって事はもうやるの?」
「はい、全隊員がこうして集まってますし、俺も今の試合を見て気合が入りました。ヤヨイさんがお疲れでなければやりませんか?」
そう答えると、ドミニクは刃を潰した模擬戦用の剣を軽く振り、感触を確かめるように握り直した。
「アタシはいいよ。あ、武器だけど、アタシ、剣より槍の方がいいんだ。本当は薙刀が一番なんだけど、どうもこっちには無いようだし、この槍このまま使っていい?穂先は潰れてないから当てないようにするよ」
「ええ、もちろんいいですよ。しかし、穂先を気にしては全力を出せないでしょう?模擬戦用の槍を用意しましょう。少しお待ちください」
隊員に指示し、模擬戦用の槍を持って来させている間に、ドミニクは弥生に謝罪を口にした。
「・・・ヤヨイさん、すみませんでした。先程のペトラとの試合、本来は止めるべきだったんです。でも俺は、あなたの実力を見て見たかったのと、高慢なペトラの鼻っ柱をへし折って欲しいという身勝手な理由で続けさせました。本当にすみません」
「ん、なに?そんな事気にしてたの?いいって、アタシああいう子、けっこう好きだよ。ああいう子はね、一回好きなようにさせて、それから話した方が分かってくれるかな。だから希望通り試合して、それから話したの。見ての通り仲良くなれたでしょ?」
隊員が模擬戦用の、穂先を潰し先を丸くした槍を持って来て、弥生はそれを受け取った。
「・・・なるほど、いつも表に出ているヤヨイさんの事は少し知ってますが、あなたはあのヤヨイさんとはずいぶん違いますね」
弥生は槍の感触を確かめるように、二度、三度、槍を振り軽く回す。
「ん、そうだね。アタシは戦闘担当ってとこだし、性格もこの通りガサツなもんでね・・・さて、アタシはもう準備はいいよ。やろうか?」
弥生はいつもの通り、左半身を前に脇構えである。
「ええ、俺はいつでもいけます。ヤヨイさん、手加減はいりません。風の力も存分に使ってください。俺は、あなたの全力が見たいのです」
ドミニクは右手に片手剣、左手に滑らかで丸みのある少し小ぶりな盾を持った。
やや腰を落とし、盾を前に出した左構えである。
「・・・ふ~ん、じゃあ遠慮なくいくけど、ドミニクも魔道具とかなんかあるでしょ?遠慮なく使ってね?不公平だからさ」
「はい。遠慮なんてしたら、一瞬でやられそうなので、もとよりそのつもりです」
「・・・そういうの、いいね。じゃあ、始めようか」
弥生の返事を最後に、二人の会話は途切れた。
静寂が場を支配する。
二人を囲む剣士隊の隊員達は、緊張感の中、固唾を呑みつつ、弥生とドミニクから目を離せずにいる。
先手は弥生だった。
盾を前に出すドミニクの構えから、弥生はドミニクが後の先をとるタイプと見ていた。
睨み合いが十数秒を過ぎた頃、弥生はいくつか考えた攻めと受けのパターンの中で、一番安全だと思える攻撃を選んだ。
風薙ぎ。
腰を捻り、右手をすくい上げるように頭上高く振り上げる。
地面スレスレから舞い上がる風は、風の刃となり、対峙するドミニクに鋭い風切り音とともに襲い掛かった。
さぁ、どう捌く?
弥生はあえてその一発で手を止め、ドミニクの出方を見た。
弥生が風を放ち、攻撃する手段を持っている事を知っているドミニクにとって、弥生の風薙ぎは予想の範囲内だった。
そして、最初の一手は遠距離攻撃。
これはドミニクの予想しうる中で、一番高い確率で来ると思っていた攻撃だった。
魔道具 流水の盾
ドミニクはしっかりと腰を落とし、左手に構えた盾を弥生の放った風に向け、正面から受けた。
すると、風の刃はその盾の丸みに流されるように上空へと飛ばされて霧散した。
風の刃を流すと同時にドミニクは地面を蹴り、一気に距離を詰めると、弥生に左脇腹を狙い、剣を振り抜いた。
弥生は風の刃を流された事に一瞬驚き、ドミニクに攻撃を許したが、左脇腹を狙ったドミニクの剣を、一歩後ろへ飛び退き躱す。
しかしドミニクも、弥生が飛び退いた分だけ迫り、連続した剣撃で弥生に反撃体制を整える隙を与えない。
肩を狙う突きを身を捻り躱し、腹を狙い振るわれる剣を槍を立てて受け、足を刈り取るように迫る剣を後方へ飛び躱す。
「けっこう速いじゃん。それに攻撃が単調じゃない、肩、腹、足と流れるような連続性がある。なかなか反撃させてくれないし、ドミニク強いね」
更に追撃を続けるドミニクに対し、弥生は反撃にこそ移れていないが、余裕を持って躱し防ぎ、言葉を口にする。
「全く・・・嫌になるな。意表をついたつもりだったんだが・・・」
最初に流水の盾で風の刃を流し速攻をかけた事が、ドミニクの勝ち筋だった。
だが、攻撃の主導権を奪ったまでは狙い通りだったが、ドミニクの剣は全て躱し防がれ、弥生に一撃を入れる事ができずにいた。
数十におよぶドミニクの剣を見た事で、弥生にはドミニクの剣がほぼ読めていた。
・・・ここで左肩狙いの袈裟懸けを躱す・・・・・
弥生の左肩を狙ったドミニクの剣を、半歩身を捻り躱す。
・・・ここだ!
右足を強く踏み込むと同時に、槍を握る両腕を前に突き出す。
ドミニクの鳩尾を狙った弥生の突きだった。申し分のないタイミングだった。だが・・・
あえて隙を見せ打たせたドミニクは、左手にしていた流水の盾を、弥生の突きに合わせ打ちつけた。
「なっ!?」
「流水の盾は、受けるすべてを流し去る」
弥生の突きは、ドミニク流水の盾によって外へ流され、力の流れを逸らされた弥生は、ぐらりと前のめりに、その体制を大きく崩してしまった。
もらった!
体制を崩した一瞬の隙を付き、ドミニクの右の打ち下ろしが弥生の左肩目掛け振り下ろされた。
「うっ・・・ぐぁ・・・」
「あっぶなかったぁ~」
ドミニクの剣が弥生の左肩を打ち抜こうとしたその時、一瞬早く、弥生の横薙ぎがドミニクの腹にめり込んでいた。
「ゲホッ!っぐ、うぅ・・・た・・・たい、せいを・・・くずした、まま、槍を・・・・・ふった、の、か・・」
弥生が槍を引くと、ドミニクは膝を付き、地面に向け苦しそうに息を吐きだしながら、弥生を見上げる。
「その丸みのある盾で、風の刃を飛ばしたのは驚いたよ。だけど、武器を受け流すってのは最初に見た時から想定してたからね。ドミニクの構えも、盾を前に出した左構えでしょ?狙いが分かりやすいね。まぁ、これまではそれで勝ててたんだろうけど、ブロートンのあの護衛で来てた七人・・・あのレベルを相手にする事を考えるなら、もっと違う攻めを考えた方がいいと思う」
弥生が手を差し伸べると、ドミニクはその手を見つめた後、フッと笑い、手を握り腰を上げた。
「・・・まんまと、策にはめられたわけか・・・俺の負けです。やはり、あなたは俺よりずっと強かった。どうです?あらためて剣士隊に入りませんか?あなたが入るなら、俺は団長を譲りますよ?」
「え!?・・・いやぁ~、それは面倒そうだから止めとくわ。うん。でも、アタシでなんか力になれる事があったら、いつでも言ってね」
弥生が笑うと、ドミニクも笑った。
輪になっていた隊員達から拍手が起こる。
自分達の隊長は負けてしまったが、気持ちの良い試合だった。
さっき弥生と戦ったペトラとルチルの二人も、温かい眼差しで両手を打ち合わせている。
「・・・負けて得るものもある・・・俺はもっと強くなって見せます。また、相手をしてください」
「いいよ。アタシも負けないように鍛えないとね。またやろう」
握手を交わす二人。
この日から弥生に「風姫」という渾名が付いた
弥生とペトラが立ち上がり、握手をかわしたところで、ドミニクが輪になっている隊員達の前に出て、言葉をかけた。
「あ、ドミニク隊長・・・」
隊長のドミニクを前にして、ペトラは少し委縮したように俯いた。
その様子を見て、ドミニクはまた驚きを感じた。
ペトラとルチルは剣士隊の中で、少し問題のある二人だった。
いつも二人だけで行動し、他の隊員とは必要がなければ口を聞こうともせず、なにかあればすぐに喧嘩腰しになる。
扱いづらく、頭を悩ませられていた。
だが、今のペトラはどうだ?
自分の行動がまずいものだったと理解しているように見える。
いつもなら、隊長である自分が注意をしても、不貞腐れるか、屁理屈をこねるところだ。
それが弥生と手合わせをし、言葉を交わしただけで、こうも変わるものだろうか。
「・・・ペトラ、大丈夫ならいい。次からは俺に一言断ってからにしてくれ」
「あ・・・・・はい。すみませんでした」
ドミニクの言葉に、ペトラは目を伏せ、頭を下げた。それにならい、ルチルも謝罪を口にして頭を下げる。
ペトラとルチルの二人は、弥生に顔を向けると、じゃあ頑張ってね、と声をかけ、ドミニクと入れ替わるように隊員達の輪の中に入って行った。
「お、ドミニク、11時までまだ時間あるけど、出て来たって事はもうやるの?」
「はい、全隊員がこうして集まってますし、俺も今の試合を見て気合が入りました。ヤヨイさんがお疲れでなければやりませんか?」
そう答えると、ドミニクは刃を潰した模擬戦用の剣を軽く振り、感触を確かめるように握り直した。
「アタシはいいよ。あ、武器だけど、アタシ、剣より槍の方がいいんだ。本当は薙刀が一番なんだけど、どうもこっちには無いようだし、この槍このまま使っていい?穂先は潰れてないから当てないようにするよ」
「ええ、もちろんいいですよ。しかし、穂先を気にしては全力を出せないでしょう?模擬戦用の槍を用意しましょう。少しお待ちください」
隊員に指示し、模擬戦用の槍を持って来させている間に、ドミニクは弥生に謝罪を口にした。
「・・・ヤヨイさん、すみませんでした。先程のペトラとの試合、本来は止めるべきだったんです。でも俺は、あなたの実力を見て見たかったのと、高慢なペトラの鼻っ柱をへし折って欲しいという身勝手な理由で続けさせました。本当にすみません」
「ん、なに?そんな事気にしてたの?いいって、アタシああいう子、けっこう好きだよ。ああいう子はね、一回好きなようにさせて、それから話した方が分かってくれるかな。だから希望通り試合して、それから話したの。見ての通り仲良くなれたでしょ?」
隊員が模擬戦用の、穂先を潰し先を丸くした槍を持って来て、弥生はそれを受け取った。
「・・・なるほど、いつも表に出ているヤヨイさんの事は少し知ってますが、あなたはあのヤヨイさんとはずいぶん違いますね」
弥生は槍の感触を確かめるように、二度、三度、槍を振り軽く回す。
「ん、そうだね。アタシは戦闘担当ってとこだし、性格もこの通りガサツなもんでね・・・さて、アタシはもう準備はいいよ。やろうか?」
弥生はいつもの通り、左半身を前に脇構えである。
「ええ、俺はいつでもいけます。ヤヨイさん、手加減はいりません。風の力も存分に使ってください。俺は、あなたの全力が見たいのです」
ドミニクは右手に片手剣、左手に滑らかで丸みのある少し小ぶりな盾を持った。
やや腰を落とし、盾を前に出した左構えである。
「・・・ふ~ん、じゃあ遠慮なくいくけど、ドミニクも魔道具とかなんかあるでしょ?遠慮なく使ってね?不公平だからさ」
「はい。遠慮なんてしたら、一瞬でやられそうなので、もとよりそのつもりです」
「・・・そういうの、いいね。じゃあ、始めようか」
弥生の返事を最後に、二人の会話は途切れた。
静寂が場を支配する。
二人を囲む剣士隊の隊員達は、緊張感の中、固唾を呑みつつ、弥生とドミニクから目を離せずにいる。
先手は弥生だった。
盾を前に出すドミニクの構えから、弥生はドミニクが後の先をとるタイプと見ていた。
睨み合いが十数秒を過ぎた頃、弥生はいくつか考えた攻めと受けのパターンの中で、一番安全だと思える攻撃を選んだ。
風薙ぎ。
腰を捻り、右手をすくい上げるように頭上高く振り上げる。
地面スレスレから舞い上がる風は、風の刃となり、対峙するドミニクに鋭い風切り音とともに襲い掛かった。
さぁ、どう捌く?
弥生はあえてその一発で手を止め、ドミニクの出方を見た。
弥生が風を放ち、攻撃する手段を持っている事を知っているドミニクにとって、弥生の風薙ぎは予想の範囲内だった。
そして、最初の一手は遠距離攻撃。
これはドミニクの予想しうる中で、一番高い確率で来ると思っていた攻撃だった。
魔道具 流水の盾
ドミニクはしっかりと腰を落とし、左手に構えた盾を弥生の放った風に向け、正面から受けた。
すると、風の刃はその盾の丸みに流されるように上空へと飛ばされて霧散した。
風の刃を流すと同時にドミニクは地面を蹴り、一気に距離を詰めると、弥生に左脇腹を狙い、剣を振り抜いた。
弥生は風の刃を流された事に一瞬驚き、ドミニクに攻撃を許したが、左脇腹を狙ったドミニクの剣を、一歩後ろへ飛び退き躱す。
しかしドミニクも、弥生が飛び退いた分だけ迫り、連続した剣撃で弥生に反撃体制を整える隙を与えない。
肩を狙う突きを身を捻り躱し、腹を狙い振るわれる剣を槍を立てて受け、足を刈り取るように迫る剣を後方へ飛び躱す。
「けっこう速いじゃん。それに攻撃が単調じゃない、肩、腹、足と流れるような連続性がある。なかなか反撃させてくれないし、ドミニク強いね」
更に追撃を続けるドミニクに対し、弥生は反撃にこそ移れていないが、余裕を持って躱し防ぎ、言葉を口にする。
「全く・・・嫌になるな。意表をついたつもりだったんだが・・・」
最初に流水の盾で風の刃を流し速攻をかけた事が、ドミニクの勝ち筋だった。
だが、攻撃の主導権を奪ったまでは狙い通りだったが、ドミニクの剣は全て躱し防がれ、弥生に一撃を入れる事ができずにいた。
数十におよぶドミニクの剣を見た事で、弥生にはドミニクの剣がほぼ読めていた。
・・・ここで左肩狙いの袈裟懸けを躱す・・・・・
弥生の左肩を狙ったドミニクの剣を、半歩身を捻り躱す。
・・・ここだ!
右足を強く踏み込むと同時に、槍を握る両腕を前に突き出す。
ドミニクの鳩尾を狙った弥生の突きだった。申し分のないタイミングだった。だが・・・
あえて隙を見せ打たせたドミニクは、左手にしていた流水の盾を、弥生の突きに合わせ打ちつけた。
「なっ!?」
「流水の盾は、受けるすべてを流し去る」
弥生の突きは、ドミニク流水の盾によって外へ流され、力の流れを逸らされた弥生は、ぐらりと前のめりに、その体制を大きく崩してしまった。
もらった!
体制を崩した一瞬の隙を付き、ドミニクの右の打ち下ろしが弥生の左肩目掛け振り下ろされた。
「うっ・・・ぐぁ・・・」
「あっぶなかったぁ~」
ドミニクの剣が弥生の左肩を打ち抜こうとしたその時、一瞬早く、弥生の横薙ぎがドミニクの腹にめり込んでいた。
「ゲホッ!っぐ、うぅ・・・た・・・たい、せいを・・・くずした、まま、槍を・・・・・ふった、の、か・・」
弥生が槍を引くと、ドミニクは膝を付き、地面に向け苦しそうに息を吐きだしながら、弥生を見上げる。
「その丸みのある盾で、風の刃を飛ばしたのは驚いたよ。だけど、武器を受け流すってのは最初に見た時から想定してたからね。ドミニクの構えも、盾を前に出した左構えでしょ?狙いが分かりやすいね。まぁ、これまではそれで勝ててたんだろうけど、ブロートンのあの護衛で来てた七人・・・あのレベルを相手にする事を考えるなら、もっと違う攻めを考えた方がいいと思う」
弥生が手を差し伸べると、ドミニクはその手を見つめた後、フッと笑い、手を握り腰を上げた。
「・・・まんまと、策にはめられたわけか・・・俺の負けです。やはり、あなたは俺よりずっと強かった。どうです?あらためて剣士隊に入りませんか?あなたが入るなら、俺は団長を譲りますよ?」
「え!?・・・いやぁ~、それは面倒そうだから止めとくわ。うん。でも、アタシでなんか力になれる事があったら、いつでも言ってね」
弥生が笑うと、ドミニクも笑った。
輪になっていた隊員達から拍手が起こる。
自分達の隊長は負けてしまったが、気持ちの良い試合だった。
さっき弥生と戦ったペトラとルチルの二人も、温かい眼差しで両手を打ち合わせている。
「・・・負けて得るものもある・・・俺はもっと強くなって見せます。また、相手をしてください」
「いいよ。アタシも負けないように鍛えないとね。またやろう」
握手を交わす二人。
この日から弥生に「風姫」という渾名が付いた
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