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【224 笑顔】
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レイジェスは二日目も大盛況だった。
初日に買い取りに来たお客さんが、二日目は査定の結果を聞くために来店する。
そのため買い取りは、二人が受付で、一人は査定の説明という、合計三人体制を取った。
今回、査定の説明には私が着いた。
オープン二日目でまだまだ店内は混雑している事が理由だ。
そして、査定で1日待ったお客さんには、説明はできるだけスムーズに行えた方がいいからだ。
1日かかると伝えてあっても、中には気が急いている人もいるはずだ。
できるだけ順番待ちをさせずに早く回した方が、ストレスも無いだろうし、次に繋がるという考えからだ。
「お待たせしました。シャツ3枚で300イエンですが、いかがでしょうか?」
「ええ、それでいいわよ。私はもう着ないし、ちょっと汚れてるしね。300イエンで引き取ってもらえるならいいわ」
「こちらのジャケットですが、こことここに破れがあったので、修理をしなければなりません。修理の手間暇を考えますと、1000イエンの買取ですが、いかがでしょうか?」
「う~ん・・・そうなんだよね。俺も破れてなかったらまだ着るんだけどね。1000イエンか・・・もうちょっとだけ上がらない?」
「う~ん、そうですね・・・とても良い品ですものね。では、1200イエンでいかがですか?」
「1200か・・・うん。じゃあ、それでいいよ。お姉さんありがとね」
査定の結果を伝え、できるだけお客さんに納得してもらい買い取る。
交渉にもできるだけ応じて、安く買いたたく事だけはしない。信頼を損なえばそのお客さんは二度と来てくれないだろう。
金額が折り合わなかったり、売り手の気が変わった事で、何件かキャンセルになった事もあったけど、ほとんどのお客さんは快く置いていってくれた。
二日目にしてすでに事務所兼倉庫もコミコミになってきた。
買い取れた物は、今日はニコラさんがせっせと品出しをしてくれた。
ニコラさんは要領が良く、簡単な手入れで出せる物から素早く売り場に品出ししてくれる。
それでも買い取りの量が多く、私は開店二日目にして、早くも倉庫を何とかしなければという思いにかられ始めた。
倉庫の件は早急になにか考えるとして、大きなトラブルもなく、二日目も無事に営業を終える事ができた。
それと、ポーさんぬいぐるみについての問い合わせが数件あった。
私だけでなく、他のみんなも聞かれたようなので、全員合わせれば数十件にもなるだろう。
どうも初日に買った人からの口コミらしく、しかも意外な事に問い合わせの大半が男性なのだ。
その珍しさと愛くるしさから、どうやら女性へのプレゼント目的が多いようだ。
「ヤヨイさん・・・メアリーちゃんってすごいんですね」
営業が終わりモニカさんは自宅へ、私達は孤児院へ。お店の前でまた明日と声を掛け合い別れる。
孤児院への帰り道、まさかあれほどポーさんの問い合わせがあると思っていなかったニコラさんは、メアリーちゃんに対する称賛の言葉をしみじみと口にしていた。
「本当にね。一人なんとか都合つけられないかって、すごい食い下がって来たお客さんもいたでしょ?メアリーちゃんが出てちょっと話したら、納得して帰っちゃうんだもの・・・私も驚いたわ」
「あれ、なんですぐに納得しちゃったんです?」
「う~ん・・・メアリーちゃんの人柄かな。全部手作りで制作に時間がかかるって説明も、丁寧で良かったけど・・・なんかメアリーちゃんに言われると、つい許したくなっちゃうのよね。ニコさんもそういうのない?」
唇に指を当て、空を見上げる。メアリーちゃんの人柄としか言いようがない。
メアリーちゃんはウィッカーさんの事になると暴走しがちだけど、まるで天使かと思うような包容力を持っている。
「分かります!私、メアリーちゃんと話していると、なんだか癒されるんです。前の仕事の愚痴をこぼしても、メアリーちゃんは嫌な顔一つしないで最後まで聞いてくれるし、絶対に否定しないんです。そして私に問題があったところは、最後に、今度はこうすればいいとか、アドバイスをしてくれて終わるんです。私が男だったら間違いなく好きになってましたね」
ニコラさんは、後ろを歩くメアリーーちゃんに顔を半分向ける。
メアリーちゃんはウィッカーさんの腕に、体全部をくっつけるようにして歩いている。
毎度おなじみの光景だ。
ウィッカーさんもすっかり慣れたようで、二人で今日の仕事について話しながら歩いている。
「でも、ニコさんが男だったとしても、ウィッカーさんがいるからフラれちゃうわね」
「しまったー!ウィッカーがいた!じゃあ私の愛は報われませんね!」
大袈裟に頭を抱えるニコラさんのリアクションに、私が声を出して笑うと、ニコラさんも顔を上げて声を出して笑う。
笑い合う私達に、なになに?どうしたの?と、ジャニスさんやリンダさん、後ろを歩いていたみんなが集まってくる。
ニコさんが、男だったらメアリーちゃんを好きになってたんだってー
あー!ヤヨイさん!言わないでくださいよ~!
え!?ニコラさんごめんなさい。私にはウィッカー様しか考えられませんので・・・
メアリーちゃん、本気で断るのはやめて!
あッははは!ニコラー、フラれてやんの!
む~!リン姉さん!
あれ?王子、ちょっと笑ってます?
・・・・・
ねぇウィッカー、王子がちょっと笑ってるよ!
ジャニス、うるさいぞ。
え!?あ・・・本当だ!王子、ちょっとだけど笑ってますよ!王子!
・・・ウィッカー、お前もだ。うるさい。黙れ。
ジャニスさんとウィッカーさんに挟まれて、王子はちょっと面倒そうにあしらっているけれど、
本気で嫌がっている訳ではないのは見れば分かる
だって、本当に王子は笑っていたから
王子・・・・・やっと笑えたんですね
初日に買い取りに来たお客さんが、二日目は査定の結果を聞くために来店する。
そのため買い取りは、二人が受付で、一人は査定の説明という、合計三人体制を取った。
今回、査定の説明には私が着いた。
オープン二日目でまだまだ店内は混雑している事が理由だ。
そして、査定で1日待ったお客さんには、説明はできるだけスムーズに行えた方がいいからだ。
1日かかると伝えてあっても、中には気が急いている人もいるはずだ。
できるだけ順番待ちをさせずに早く回した方が、ストレスも無いだろうし、次に繋がるという考えからだ。
「お待たせしました。シャツ3枚で300イエンですが、いかがでしょうか?」
「ええ、それでいいわよ。私はもう着ないし、ちょっと汚れてるしね。300イエンで引き取ってもらえるならいいわ」
「こちらのジャケットですが、こことここに破れがあったので、修理をしなければなりません。修理の手間暇を考えますと、1000イエンの買取ですが、いかがでしょうか?」
「う~ん・・・そうなんだよね。俺も破れてなかったらまだ着るんだけどね。1000イエンか・・・もうちょっとだけ上がらない?」
「う~ん、そうですね・・・とても良い品ですものね。では、1200イエンでいかがですか?」
「1200か・・・うん。じゃあ、それでいいよ。お姉さんありがとね」
査定の結果を伝え、できるだけお客さんに納得してもらい買い取る。
交渉にもできるだけ応じて、安く買いたたく事だけはしない。信頼を損なえばそのお客さんは二度と来てくれないだろう。
金額が折り合わなかったり、売り手の気が変わった事で、何件かキャンセルになった事もあったけど、ほとんどのお客さんは快く置いていってくれた。
二日目にしてすでに事務所兼倉庫もコミコミになってきた。
買い取れた物は、今日はニコラさんがせっせと品出しをしてくれた。
ニコラさんは要領が良く、簡単な手入れで出せる物から素早く売り場に品出ししてくれる。
それでも買い取りの量が多く、私は開店二日目にして、早くも倉庫を何とかしなければという思いにかられ始めた。
倉庫の件は早急になにか考えるとして、大きなトラブルもなく、二日目も無事に営業を終える事ができた。
それと、ポーさんぬいぐるみについての問い合わせが数件あった。
私だけでなく、他のみんなも聞かれたようなので、全員合わせれば数十件にもなるだろう。
どうも初日に買った人からの口コミらしく、しかも意外な事に問い合わせの大半が男性なのだ。
その珍しさと愛くるしさから、どうやら女性へのプレゼント目的が多いようだ。
「ヤヨイさん・・・メアリーちゃんってすごいんですね」
営業が終わりモニカさんは自宅へ、私達は孤児院へ。お店の前でまた明日と声を掛け合い別れる。
孤児院への帰り道、まさかあれほどポーさんの問い合わせがあると思っていなかったニコラさんは、メアリーちゃんに対する称賛の言葉をしみじみと口にしていた。
「本当にね。一人なんとか都合つけられないかって、すごい食い下がって来たお客さんもいたでしょ?メアリーちゃんが出てちょっと話したら、納得して帰っちゃうんだもの・・・私も驚いたわ」
「あれ、なんですぐに納得しちゃったんです?」
「う~ん・・・メアリーちゃんの人柄かな。全部手作りで制作に時間がかかるって説明も、丁寧で良かったけど・・・なんかメアリーちゃんに言われると、つい許したくなっちゃうのよね。ニコさんもそういうのない?」
唇に指を当て、空を見上げる。メアリーちゃんの人柄としか言いようがない。
メアリーちゃんはウィッカーさんの事になると暴走しがちだけど、まるで天使かと思うような包容力を持っている。
「分かります!私、メアリーちゃんと話していると、なんだか癒されるんです。前の仕事の愚痴をこぼしても、メアリーちゃんは嫌な顔一つしないで最後まで聞いてくれるし、絶対に否定しないんです。そして私に問題があったところは、最後に、今度はこうすればいいとか、アドバイスをしてくれて終わるんです。私が男だったら間違いなく好きになってましたね」
ニコラさんは、後ろを歩くメアリーーちゃんに顔を半分向ける。
メアリーちゃんはウィッカーさんの腕に、体全部をくっつけるようにして歩いている。
毎度おなじみの光景だ。
ウィッカーさんもすっかり慣れたようで、二人で今日の仕事について話しながら歩いている。
「でも、ニコさんが男だったとしても、ウィッカーさんがいるからフラれちゃうわね」
「しまったー!ウィッカーがいた!じゃあ私の愛は報われませんね!」
大袈裟に頭を抱えるニコラさんのリアクションに、私が声を出して笑うと、ニコラさんも顔を上げて声を出して笑う。
笑い合う私達に、なになに?どうしたの?と、ジャニスさんやリンダさん、後ろを歩いていたみんなが集まってくる。
ニコさんが、男だったらメアリーちゃんを好きになってたんだってー
あー!ヤヨイさん!言わないでくださいよ~!
え!?ニコラさんごめんなさい。私にはウィッカー様しか考えられませんので・・・
メアリーちゃん、本気で断るのはやめて!
あッははは!ニコラー、フラれてやんの!
む~!リン姉さん!
あれ?王子、ちょっと笑ってます?
・・・・・
ねぇウィッカー、王子がちょっと笑ってるよ!
ジャニス、うるさいぞ。
え!?あ・・・本当だ!王子、ちょっとだけど笑ってますよ!王子!
・・・ウィッカー、お前もだ。うるさい。黙れ。
ジャニスさんとウィッカーさんに挟まれて、王子はちょっと面倒そうにあしらっているけれど、
本気で嫌がっている訳ではないのは見れば分かる
だって、本当に王子は笑っていたから
王子・・・・・やっと笑えたんですね
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