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【217 新しい風】
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「ウィッカーさん、結婚式は5月15日なんですよね?」
3月に入ると雪も溶けてきて、少しづつ暖かい日が多くなってきた。
春の訪れが感じられる。
天気も良かったので、昼食の後洗濯物を干していると、たまたま外に出て来たウィッカーさんが手伝ってくれて、二人で洗濯物を干していた。
「はい。メアリーの誕生日なんですよ。特別な日をもっと特別にしたいそうです」
メアリーちゃんらしい。
誕生日に結婚式を挙げるなんて、本当に特別な日になると思う。
「あと二ヵ月ですね。この前、メアリーちゃんのご両親にお会いになってきたじゃないですか?帰ってきてから、メアリーちゃんがウィッカーさんにずっとくっついてて、なかなか聞けなかったんですが、どうだったんですか?」
結婚の許可をもらうため、ウィッカーさんはメアリーちゃんと一緒に、メアリーちゃんの生まれ育った村にご挨拶に行ったのだ。
メアリーちゃんは、手紙はまめに出していたそうだけど、帰るのは数年ぶりだったのだ、ブレンダン様もゆっくりしておいでと言って、三日間泊まって帰ってきたのだ。
帰って来たウィッカーさんから、大丈夫でした。式は5月15日です。とは聞いたけど、詳しい話しは聞けていなかった。
「色々聞きたかったんだけど、メアリーちゃん、いつも以上にすごいくっつていたから、なんだか邪魔しちゃ悪いと思って。あの幸せそうな笑顔を見たら、円満に了解をもらえたのは分かったんだけどね」
ウィッカーさんは、少し照れたように話し始めた。
「えっと、はい、俺はけっこう緊張してたんですけど、メアリーの家に着いて、ご両親に会って自己紹介をするなり向こうから、娘をよろしくお願いします、ですよ?俺、一瞬何を言われてるか分かんなくて返事に詰まりましたもん」
「え!?メアリーちゃんのご両親から!?」
思わず声が大きくなる。
「はい。俺、頭の中で色々言葉を考えてたのに、メアリーのご両親、揃って頭下げてくるんです。もう、なんて言っていいか分からなかったですよ。とにかく頭を上げてもらって、こちらこそお願いしますとか、絶対幸せにしますから、とか、思いつく言葉は全部伝えましたけど、まぁ・・・なんかメアリーのお父さんお母さんだなって印象でした」
「・・・すごいわね。でも、いきなり娘をよろしくお願いしますなんて、普通はちょっと考えられないわね。今回初めてお会いしたんでしょ?」
驚きながらも、私が疑問を口にすると、ウィッカーさんは、苦笑いのようななんとも言えない表情をして見せた。
「会ったのは初めてなんですが、実はメアリー、俺が告白した日に、両親に結婚するって手紙出してたみたいなんです。それで返ってきた手紙には、ウィッカーさんなら安心ね。って書いてあったみたいで。いつの間にか両親公認の婚約者になってました」
「・・・メアリーちゃんのご両親って感じね」
ウィッカーさんは、王子を除けば黒魔法使いとして大陸一の実力者であり、若干19歳にして、ブレンダン様と共に王宮の魔法兵団に指導も行っている。
王宮仕えではないけれど、その気になればいつでも好待遇で迎えられるだろうし、特別な立場にいる人だ。結婚相手として申し分ないと思う。
「はい。俺、三日間もメアリーの家に泊まるってなった時、大丈夫かなって思ったんですけど、すごい歓迎されて、二日目には俺もだいぶくつろげました。三日目には俺ももう息子みたいな感じに扱われて、堅苦しくない分楽でしたね」
「それはなによりね。メアリーちゃんの事も、ウィッカーさんのご両親は歓迎してくれたんでしょ?」
「はい。年明けに初めて連れて行きましたけど、うちの母親なんかメアリーに、俺なんかでいいの?って何回も確認するんですもん。俺の事なんだと思ってるんですかね?まぁ、いつまでも師匠のとこでブラブラしてるって思われてるのは知ってますけど、俺も魔法の指導で給金もらってるし、家にも生活費いれてるから、道楽息子ではないとは思うんですけどね」
「あら、偉いわね。私はウィッカーさんはとても良い旦那さんになると思うわよ。それに、私は知らないけど、毒を持つバッタの大群から、この国を護ったとも聞いたわ。街に出かけると、ウィッカーさん達を英雄って言う声なんかも聞くし・・・・・でも、親からすれば、どんなにすごい子供でも、子供は子供って感じなのかもしれないわね。私も薙刀で全国優勝しても、まだまだだって認めてもらえなかったから・・・」
日本の母親の事を思い出した。
私は薙刀も茶道も、母親の期待に応えられる腕前にはなったと確信している。
薙刀の全国優勝の賞状を見せた時の表情は、厳格な母親が珍しく喜びをはっきりと見せたから。
だけど、すぐにいつもの厳しい顔つきになり、まだまだこんなくらいで満足しない事。と褒められるどころか諫められたのは正直ショックだった。
「・・・・・ウィッカーさんは、誰がなんと言おうとメアリーちゃんの最高の旦那さんになります。私が保証しますよ」
そう。間違いない。だって、メアリーちゃんは毎日あんなに幸せそうな顔をしてるんだもん。
「・・・ヤヨイさんも、パトリックさんの最高の奥さんになりますよ。俺が保証します」
「え!?」
突然そんな事を言われて、私がウィッカーさんに顔を向けると、ウィッカーさんは少しニヤリと笑っていた。
「も、もう!いきなり何言ってくるんですか!?」
「はは、ヤヨイさん、不意打ちに弱いですよね。でも、本心ですよ。まさかあのパトリックさんが女性と付き合えるなんて思わなかったし、ヤヨイさんすごい家庭的なのに、店を経営する力もある。そんな人他にいませんよ。パトリックさんと結婚の話しはでないんですか?」
ストレートに褒められて、つい頬が赤くなる。
ウィッカーさんて、いじられたり、子供に言い負かされたりするのに、時々ハッキリと言葉を向けてくる。
「結婚か・・・まだ具体的には出てないわ。でも、ロビンさんもモニカさんも、いつお邪魔しても温かく迎えてくれるし、いずれとは思うかな」
「そっか・・・じゃあ、パトリックさん次第ですね?」
「そうね、パトリックさん次第!私も女だから、プロポーズはされたいわ」
あの人奥手だからな~
そうなの、デートもね、なかなか自分から誘ってくれないの
え?じゃあ、いつもヤヨイさんから?
うぅん、誘いたがってるのは分かるから、ちょっと助け船を出してあげるの
あ~、それは本当にヤヨイさん以外、パトリックさんの奥さん務まりませんね
しばらくふたりで談笑していると、春の訪れを感じられる暖かい風が吹く
ふと、私の目に日本での思い出が映る
日本では学生達が卒業し、新しい社会へと進む季節
私もそうだった
そしてそれはとても遠い過去に感じられた
思い出す事はこの先ずっと続くだろう
寂しさを感じる事もある
でも、私も前に進もう
この世界で
リサイクショップ・レイジェスもいよいよオープンだ
3月に入ると雪も溶けてきて、少しづつ暖かい日が多くなってきた。
春の訪れが感じられる。
天気も良かったので、昼食の後洗濯物を干していると、たまたま外に出て来たウィッカーさんが手伝ってくれて、二人で洗濯物を干していた。
「はい。メアリーの誕生日なんですよ。特別な日をもっと特別にしたいそうです」
メアリーちゃんらしい。
誕生日に結婚式を挙げるなんて、本当に特別な日になると思う。
「あと二ヵ月ですね。この前、メアリーちゃんのご両親にお会いになってきたじゃないですか?帰ってきてから、メアリーちゃんがウィッカーさんにずっとくっついてて、なかなか聞けなかったんですが、どうだったんですか?」
結婚の許可をもらうため、ウィッカーさんはメアリーちゃんと一緒に、メアリーちゃんの生まれ育った村にご挨拶に行ったのだ。
メアリーちゃんは、手紙はまめに出していたそうだけど、帰るのは数年ぶりだったのだ、ブレンダン様もゆっくりしておいでと言って、三日間泊まって帰ってきたのだ。
帰って来たウィッカーさんから、大丈夫でした。式は5月15日です。とは聞いたけど、詳しい話しは聞けていなかった。
「色々聞きたかったんだけど、メアリーちゃん、いつも以上にすごいくっつていたから、なんだか邪魔しちゃ悪いと思って。あの幸せそうな笑顔を見たら、円満に了解をもらえたのは分かったんだけどね」
ウィッカーさんは、少し照れたように話し始めた。
「えっと、はい、俺はけっこう緊張してたんですけど、メアリーの家に着いて、ご両親に会って自己紹介をするなり向こうから、娘をよろしくお願いします、ですよ?俺、一瞬何を言われてるか分かんなくて返事に詰まりましたもん」
「え!?メアリーちゃんのご両親から!?」
思わず声が大きくなる。
「はい。俺、頭の中で色々言葉を考えてたのに、メアリーのご両親、揃って頭下げてくるんです。もう、なんて言っていいか分からなかったですよ。とにかく頭を上げてもらって、こちらこそお願いしますとか、絶対幸せにしますから、とか、思いつく言葉は全部伝えましたけど、まぁ・・・なんかメアリーのお父さんお母さんだなって印象でした」
「・・・すごいわね。でも、いきなり娘をよろしくお願いしますなんて、普通はちょっと考えられないわね。今回初めてお会いしたんでしょ?」
驚きながらも、私が疑問を口にすると、ウィッカーさんは、苦笑いのようななんとも言えない表情をして見せた。
「会ったのは初めてなんですが、実はメアリー、俺が告白した日に、両親に結婚するって手紙出してたみたいなんです。それで返ってきた手紙には、ウィッカーさんなら安心ね。って書いてあったみたいで。いつの間にか両親公認の婚約者になってました」
「・・・メアリーちゃんのご両親って感じね」
ウィッカーさんは、王子を除けば黒魔法使いとして大陸一の実力者であり、若干19歳にして、ブレンダン様と共に王宮の魔法兵団に指導も行っている。
王宮仕えではないけれど、その気になればいつでも好待遇で迎えられるだろうし、特別な立場にいる人だ。結婚相手として申し分ないと思う。
「はい。俺、三日間もメアリーの家に泊まるってなった時、大丈夫かなって思ったんですけど、すごい歓迎されて、二日目には俺もだいぶくつろげました。三日目には俺ももう息子みたいな感じに扱われて、堅苦しくない分楽でしたね」
「それはなによりね。メアリーちゃんの事も、ウィッカーさんのご両親は歓迎してくれたんでしょ?」
「はい。年明けに初めて連れて行きましたけど、うちの母親なんかメアリーに、俺なんかでいいの?って何回も確認するんですもん。俺の事なんだと思ってるんですかね?まぁ、いつまでも師匠のとこでブラブラしてるって思われてるのは知ってますけど、俺も魔法の指導で給金もらってるし、家にも生活費いれてるから、道楽息子ではないとは思うんですけどね」
「あら、偉いわね。私はウィッカーさんはとても良い旦那さんになると思うわよ。それに、私は知らないけど、毒を持つバッタの大群から、この国を護ったとも聞いたわ。街に出かけると、ウィッカーさん達を英雄って言う声なんかも聞くし・・・・・でも、親からすれば、どんなにすごい子供でも、子供は子供って感じなのかもしれないわね。私も薙刀で全国優勝しても、まだまだだって認めてもらえなかったから・・・」
日本の母親の事を思い出した。
私は薙刀も茶道も、母親の期待に応えられる腕前にはなったと確信している。
薙刀の全国優勝の賞状を見せた時の表情は、厳格な母親が珍しく喜びをはっきりと見せたから。
だけど、すぐにいつもの厳しい顔つきになり、まだまだこんなくらいで満足しない事。と褒められるどころか諫められたのは正直ショックだった。
「・・・・・ウィッカーさんは、誰がなんと言おうとメアリーちゃんの最高の旦那さんになります。私が保証しますよ」
そう。間違いない。だって、メアリーちゃんは毎日あんなに幸せそうな顔をしてるんだもん。
「・・・ヤヨイさんも、パトリックさんの最高の奥さんになりますよ。俺が保証します」
「え!?」
突然そんな事を言われて、私がウィッカーさんに顔を向けると、ウィッカーさんは少しニヤリと笑っていた。
「も、もう!いきなり何言ってくるんですか!?」
「はは、ヤヨイさん、不意打ちに弱いですよね。でも、本心ですよ。まさかあのパトリックさんが女性と付き合えるなんて思わなかったし、ヤヨイさんすごい家庭的なのに、店を経営する力もある。そんな人他にいませんよ。パトリックさんと結婚の話しはでないんですか?」
ストレートに褒められて、つい頬が赤くなる。
ウィッカーさんて、いじられたり、子供に言い負かされたりするのに、時々ハッキリと言葉を向けてくる。
「結婚か・・・まだ具体的には出てないわ。でも、ロビンさんもモニカさんも、いつお邪魔しても温かく迎えてくれるし、いずれとは思うかな」
「そっか・・・じゃあ、パトリックさん次第ですね?」
「そうね、パトリックさん次第!私も女だから、プロポーズはされたいわ」
あの人奥手だからな~
そうなの、デートもね、なかなか自分から誘ってくれないの
え?じゃあ、いつもヤヨイさんから?
うぅん、誘いたがってるのは分かるから、ちょっと助け船を出してあげるの
あ~、それは本当にヤヨイさん以外、パトリックさんの奥さん務まりませんね
しばらくふたりで談笑していると、春の訪れを感じられる暖かい風が吹く
ふと、私の目に日本での思い出が映る
日本では学生達が卒業し、新しい社会へと進む季節
私もそうだった
そしてそれはとても遠い過去に感じられた
思い出す事はこの先ずっと続くだろう
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