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【214 相談と店名】

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お昼前頃、パトリックさんとモニカさんがお店を見に来た。

工事が終わったので、私達が今日見に行く事は伝えてあった。
魔法兵団の仕事の都合がついたら、パトリックさんも行くと言っていたので、着てくれたのはとても嬉しい。


「パトリックさん、着てくれたのね。お仕事は大丈夫?」

「はい。朝のうちにやる頃はすませたので、午後は俺がいなくても大丈夫です。親父は抜けられなくて、ヤヨイさんに会えないと悔しがってましたけど」

そう言って笑うパトリックさんを見ると、心が温かくなる。
最近はお互い忙しくて、なかなか会えなかったから私は寂しかったようだ。


「ヤヨイさん、お久しぶり。素敵なお店ね。そうそう、相談の什器だけど、良い家具屋さんがいたの。良かったら明日にでもここにお店の方連れて来ましょうか?一度ここを見てもらって、雰囲気に合う物を見繕ってもらったらどうかしら?」

モニカさんは交友関係が広いようだったので、私は家具や什器類で良いお店が無い相談していたのだ。

「ヤヨイさん、木の温もりが感じられる雰囲気が好きって言ってたものね。きっと好みに合うと思うわ」

「ありがとうございます!では、明日の午後3時頃でお願いできますか?先方の都合が合わなければ、できるだけ合わせるようにします」

「3時ね。明日の午後は空いてるって言ってたから、大丈夫だと思うわ。ところで、このお店の名前は何ていうのかしら?」



お店の名前、実はまだ決まっていない。

そろそろ決めて看板を作らなければならないのだけれど、これがなかなか決まらず、つい後回しになっていたのだ。

みんなで意見を出し合ったけれど、ピンとくる名前がなかなか出てこないのだ。

「それが、まだ決まってないんです。なかなかこれだって名前がでなくて・・・」

「あら、そうだったの。でも、そうね、その名前でずっと営業するわけだから、時間があるならギリギリまで悩んでもいいんじゃないかしら。今話した家具屋さん、看板も作ってるから合うようならそこにお願いするといいと思うわ」


それから、モニカさんにも内装を見てもらい、大まかなイメージや仕事の流れを説明して、その日は帰る事になった。




「パトリックさん、ヤヨイさんと会うの久しぶりでしょ?このまま解散していいんですか?」

ドアを閉めて、私達は孤児院に、パトリックさんとモニカさんは家に、それぞれ別れて帰ろうとすると、ジャニスさんがパトリックさんに歩み寄った。

「・・・・・ヤ、ヤヨイさん、ご都合良ければ、甘いものでも食べて行きませんか?美味しい喫茶店があるんです」

ジャニスさんに詰め寄られて、少したじろぎながらも、パトリックさんは私を誘ってくれた。

嬉しかったけど、帰ったらお昼の準備、その後はお洗濯など仕事が溜まっている。

私がすぐに返事を返さないでいると、ブレンダン様が、行っておいで、と言葉をかけてくれた。

「こっちは大丈夫じゃから、行ってきなされ。確か、先月も1~2回しか会っておらんのじゃろ?たまには二人でゆっくりしておいで」

「・・・はい。それじゃあ、お言葉にあまえさせていただきます。皆さんありがとうございます」

みんな、大丈夫、と言うように笑顔で手を振ってくれる。
みんな本当に優しい。



パトリックさんの案内してくれた喫茶店は、前にレオネラちゃんと行った喫茶モロニーだった。

私が、ジャニスさんとレオネラちゃんの三人で一度来た事があると話すと、パトリックさんは、来た事あったんですか、と、ちょっとだけ残念そうだった。

「雰囲気の良い店なので、ちょっとおどろかせたかったんです」

確かにこの喫茶店は私の好きな雰囲気だ。
前回初めて来た時も、こんな素敵なお店があったんだ!と、ちょっと感動したくらい。

「ふふ、パトリックさん、私をおどろかせるのは、また今度ですね」

「しかたない。また良い店探しておきますよ」

ちょっと悔しそうなパトリックは可愛かった。
久しぶりに二人きり。すごく嬉しい。


丸太を縦に切った、すこし長いテーブルに向かいあって座る。
私はこういう自然を、感じられる空間が好きだ。

パトリックさんが言うには、ミートグラタンと言う料理が一番のオススメらしいので、私達はそれを注文した。
最初は甘いものと考えていたけれど、考えてみればまだお昼ご飯も食べていなかったのだ。

そして、ミートグラタンは、その名の通りミートグラタンだった。
ゴロゴロと大きな肉ダンゴが入っていて、クリーミーなホワイトソースと、肉汁が合わさると、まろやかだけどジューシーという、絶妙な美味しさだった。

「・・・驚いたわ。パトリックさん、これ本当に美味しいですね」

「やった!ヤヨイさんをおどろかせた」

しまった。さっきあんな事を言ったのに、さっそくおどろかされてしまった。
パトリックさんは、勝ち誇ったように笑っている。

付き合ってから、パトリックさんはつっかえる事なく話せるようになったし、こうして冗談も言ってくるようになった。

「パトリックさん、もうすっかり普通に話せるようになりましたね」

「あ、恥ずかしいな・・・本当に、最初はヤヨイさんを困らせてました」

「ふふ、ちょっと意地悪言っちゃいましたね。困った事なんか一度もないですよ。これからもよろしくね」

「はい。俺の方こそこれからもよろしく」

少しだけくだけて話すと、パトリックさんも同じように話してくれた。





「名前かぁ・・・なにかつけたい名前はないんですか?」

「・・・ウイニング、日本で働いてたお店の名前は少し考えましたけど、やっぱり私一人のお店じゃないし、ウイニングは違うかなと思いました。あとはなかなか出てこなくて・・・」

食後のコーヒーを飲みながら、私はリサイクルショップの名前を相談している。
なかなかピンと来る名前が思い浮かばない。

「もう、みんなに相談したんですよね?みんな駄目な感じですか?」

「そうですね。リサイクルショップがこの国で初めてなので、どういう名前がいいのか、うまく掴めないみたいなんです」

パトリックさんは、なるほど、と呟いて、コーヒーを口に含む。

「わかる気がします。これまでに無いものだから、具体的なイメージが難しいんですね」

そうなのかもしれない。そもそもリサイクルショップという名前も無かったのだから、これだ!という店名もなかなか思いつかないのだろう。



「あ、タジーム王子には聞いてみました?」

「え、王子・・・ですか」

「はい、聞いてませんか?う~ん、確かに王子は店名を考えるイメージではないか・・・でも、王子がいるお店ってなんかすごいですね」

「そうですね。私、王子には聞いてませんでした。名前決めとか興味無さそうだなって思いこんじゃってた・・・駄目だなぁ、偏見だ」

一言聞くべきだった。これでは仲間外れにしているようなものだ。

私がうなだれると、パトリックさんは優しく声をかけてくれた。

「・・・そんなに落ち込まなくてもいいと思いますよ。俺もそういうのあります。つい思い込んでしまうんですよね・・・人間関係って難しいですよ。でも、ヤヨイさんは王子の事をちゃんと考えてるから、自分を責めちゃうんです。王子を大切に思ってるって事じゃないですか。だから、今日帰ってから聞けばそれでいいと思いますよ。遅すぎるなんて事はありません」

「・・・パトリックさん。ありがとう」


それから私達は時間を作ってもっと会おうと話し合った。

リサイクルショップをやると決まってから、私も忙しくなって、なかなか時間を作れなかったけど、短い時間でも会おうと決めた。

今日はパトリックさんから元気をもらった。
明日も頑張ろう。
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