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【211 少しづつ進む準備】

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年が明け、1月2日

レオネラちゃんが孤児院に来た。

子供達はみんな人懐っこい。お客さんが来ると、だいたい集まってくるのだ。
レオネラちゃんも玄関に入ると、子供達が集まってきて、だれー?どこから来たの?など色々と質問責めにしてします。

行商として各地を回るレオネラちゃんは、人が集まる事に慣れているのか簡単に自己紹介をすると、子供達にお菓子を上げて、あっという間にてなづけてしまったのですごい。


物件の正式な契約も滞りなく終えると、そこからはアラルコン商会の商品紹介になった。
広間のテーブルで、レオネラちゃんがサンプルを置いて説明を始める。


まずはクッキーなどの菓子類だ。
日本のように工夫をこらしたパッケージではなく、無地の紙袋にザックリ入れただけの物だけど、この世界では普通だ。

私も食べ物を売る事は考えていた。
だけど、一口サイズのクッキーのように、小さくて数を必要とするものは、できた物を仕入れた方が包装の手間なども無く楽かと考えていた。

そして、メアリーちゃんのお料理の実力を生かして、手作りパウンドケーキなんかを、数量限定でちょっと高めに設定し売ろうかと思う。

私の考えを話すと、メアリーちゃんは、やります!と即答してくれた。
メアリーちゃんはレジに立つより、ポーさん作りや、お菓子作りが中心になりそうな気がする。

クッキーや飴玉などは仕入れで考えているけど、発注については単価やロットの書類をもらい、検討してまた後日になった。

人形や、衣類用の布、革製品など、様々な物を見せてもらった。
基本的にはリサイクル品を中心にと考えているので、あまり数は入れられないけれど、書類だけは一式もらっておいた。


「アタシからは今日はこんなとこだねぇ~。とりあえず綿は早めに持って来るね。メアリーちゃんうずうずしてるから。まぁ、アタシもしばらくこっちにいるし、月に一回くらいはここに顔だしに来るから、なにか入用になったらその時に教えてねぇ~」

商談が終わり、レオネラちゃんは席を立つと、玄関にかけてるベージュのボアジャケットに袖を通す。


「ねぇ、こっちには行商で来てるんでしょ?レオネラちゃんはどこに泊まってるの?」

もしかしたら、急ぎの用が出るかもしれないし、拠点は知っておきたい。
そう思い、見送りに立ちながら宿を尋ねると、レオネラちゃんはカバンから、日本でいうお守りのような物を取り出した。


「ヤヨイちゃん、これあげる」


レオネラちゃんから手渡された物は、水色の布袋で船の刺繍が施されていた。

「・・・えっと、これ何?お守り?」

「それはねぇ~、青の船団の特別会員証みたいなヤツかな。アラルコン商会は、ロンズデールで最大手の造船業なのさ。名前は青の船団。造船だけじゃなくて、こういう卸業も手広くやってるけど、本業は造船なんだよねぇ~。
それで、その布袋は特にご贔屓にしてもらってる人にだけ渡してるの。それがあれば便利だよ。ロンズデールならだいたいどこでも優遇してもらえるからさぁ~。この街の中央通りの先に、モロニーハウスってとこがあって、滞在中はそこを借りてるんだ。アタシに会いたくなったらそれ持って来て。アタシの他にも数人いるけど、それ見せれば話し早いからさぁ~」

「え、そんなすごい物なの?でも、いいの?私達まだお取引したばかりだし」

私が少し戸惑って話すと、レオネラちゃんは笑って、顔の前で手を振った。

「いいのいいの。だって、私達友達でしょ?来てくれたら私も嬉しいしねぇ~」

「レオネラちゃん・・・うん!ありがとう。私達お友達よ。大事にするね」

またね。私達はそう言葉を交わし、レオネラちゃんは帰って行った。




契約も終わり、いよいよ建物の工事に入る。
ブレンダン様が職人さんを手配してくれるので、内装は木の温もりが感じられる木目板張りでと希望を伝えた。

以前、孤児院の修理を頼んだ職人さんと同じになるらしいので、腕前は安心だ。

什器類は私達で揃えるけれど、できるだけ木を使った温かみのある物を選ぼうと思う。

レオネラちゃんのところで揃えられたら良かったけど、カエストゥスでは什器類は扱っていないらしい。確かに什器はかさばるだろうし、行商に来ているのでは扱い難いと思う。

支店は出さないの?そう聞くと、ちょっとだけ肩をすくめて、だしたいけどカエストゥス国の許可が下りない。そう答えた。

本拠地がロンズデールなので、カエストゥスで大きく稼ぎ、カエストゥスの同業が割を食う事になると反発が起きるからという理由のようだ。

物件を扱えるだけでも特別らしいが、その代わり、売れ残って処分に困るような物件も引き取らねばならない事もあるようで、良い事ばかりじゃないよぉ~。と言って軽く息を付いていた。


工事が終わるまでは建物の中には入れないので、私達は孤児院の仕事を中心に行いながら、空いた時間にそれぞれができる事をやるようにした。


メアリーちゃんはアラルコン商会から仕入れた綿を使い、ポーさんぬいぐるみの制作に余念がない。
出来上がりも数を追うごとにクオリティが増しており、すでに日本のゲームセンターの景品にあってもおかしくないレベルだ。

私とウィッカーさんはご近所を回って、買い取りを始めた。
まだオープンには二か月以上かかるけど、商品集めは始めておいてもいい。
なんせ古着を扱うのだから、綻びの修復もあるし、時間はいくらあっても足りないだろう。


無理はせず、今できる分量だけ集めていこうと話して、リサイクルショップの宣伝がてら、買い取りで各家庭を回ると、最初はみんなリサイクルショップという馴染みのない言葉と業種に首を捻るけど、丁寧に説明をすると、だいたいの人は感心を持って聞いてくれた。

そして、どこの家にも着れなくなったけど捨てれない服や、使わないけど捨てたくはない家具などがあるのだ。

他の誰かには必要な物かもしれませんよ。
そう話して買い取りをすると、みんな笑顔でありがとうと言ってくれる。

やっぱり、この世界にはリサイクルショップが必要なんだと思った。


持って帰った古着は、女性陣で洗濯したり、ほつれを直したり、できるだけ綺麗に仕上げているけど、やはり時間はかかり大変だった。

ウイニングで働いている時にはやらなかった作業なので、私も想定が甘かったようだ。
いざオープンしたら、人数が足りなくなるかもしれない。
ジャニスさんには、2人と伝えておいたけど、場合によってはもう1~2人はお願いする事になるかもしれない。



物件も決まったので、ジャニスさんはリサイクルショップ専属の人探しを始めている。
何人か前向きな返事はもらっているそうだ。

日本では面接をするのだろうけど、孤児院の出身だと言うので私は人探しはジャニスさんに全面的に任せている。

元は一緒に住んでいた人なのだから、誰を連れて来ても間違いないと思うから。



そして1月も中旬に差し掛かろうとした日に、ジャニスさんがリサイクルショップの専属として雇った二人の女性を連れてきた。
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