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【203 クリスマスパーティー②】

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一階の広間はクリスマスパーティーで盛り上がっていた。
落ち着いた場所で話したくて、メアリーを二階の、泊まる時に俺が使っている部屋に誘うと、メアリーは二つ返事で付いて来てくれた。

ヤヨイさんの話しでは、ニホンのクリスマスという行事では、恋人同士がプレゼントを交換するものらしい。

俺はこの日のために選んだプレゼントを渡そうとして、メアリーと二人きりになったのだが、いざ渡そうとすると、急に意識してしまい、なかなか渡す事ができなかった。

そんな煮え切らない俺を見てか、メアリーは綺麗にリボンが巻かれた包装紙を俺に手渡して、メリークリスマスです。と笑いかけてくれた。

メアリーからもらったマフラーは、黒と白の二色を交互に使ったストライプ柄だった。

「メアリー、ありがとう。すごい嬉しいよ」

俺が首にマフラーを巻いてお礼を言うと、メアリーは顔をほころばせる。


「喜んでもらえて嬉しいです。ウィッカー様の事を想いながら、編みました」

メアリーの気持ちに俺も照れて頬が赤くなるが、メアリーが好意をストレートに口にする事にも、大分慣れた。
最初は何と言葉を返していいか戸惑ったけれど、難しく考える事はない。

自分もその時の気持ちをそのまま返せばいいんだ。


「ありがとう。俺もメアリーの事を想って選んだんだ。はい、プレゼント」

先にプレゼントをもらったからか、自然に言葉にする事ができた。

手の平に納まるくらいの、小さくて四角く包装された箱をメアリーに手渡す。

メアリーは笑顔で受け取ってくれた。

開けていいですか?と聞いてくるので、もちろんだよ。と言葉を返す。





「・・・ウィッカー様。これは・・・・・そういう事でよろしいのでしょうか?」


メアリーは箱から取り出した指輪をじっと見つめている。

月明かりが指輪の宝石に触れて、淡い輝きを放つ。

サイズはジャニスから聞いていたので間違いないはず。
石もどういう物がいいのか分からなかったから、宝石店までジャニスに来てもらい、相談しながら選んだのだ。

ジャニスに相談ばかりしたけれど、メアリーの顔を思い浮かべ、なにが似合うか一生懸命考えた。


「うん。これはそういう事だよ。メアリー・・・・・結婚しよう」

「・・・・・・」


いつものように抱き着いて来るかと思ったけど、メアリーは両手の指先で指輪を持ち、じっと見つめたまま何も答えなかった。


「・・・えっと、メアリー?」

もしかして振られたか?そう心配になり、メアリーの肩にそっと触れると、メアリーは大粒の涙を零し、うつむいてしまった。

「メ、メアリー!?どうした!?なんで泣くの?」


「・・・・・う、うれしい・・・です・・・・・本当に・・・私、ウィッカーさまの、お嫁さんに・・・うぅ・・・ぐすっ・・・」


「・・・メアリー・・・うん。ご両親にもご挨拶に行かないとね。来年、暖かくなったら式を上げよう。あ、まず結婚を許してもらわないといけないな」


メアリーをそっと抱き寄せると、メアリーはいつものように力いっぱいに、俺の背中に手を回す。


「大丈夫です。もう許してもらってます」

「え?」


もう許してもらってる?


俺は今日プロポーズしたのに、なんですでに許してもらっているのか理解できず、俺の胸に顔をうずめるメアリーに目を向ける。


「ウィッカー様が告白してくださった日に、両親に手紙を書いて送ったのです。ウィッカー様の事は父も母も存じておりますので、私はこのまま結婚しますと書いたのですが、ウィッカー様なら安心だね。と返事がきました。だからもう許可は下りてます」


メアリーが顔を上げる。

俺と目が合うと、まるで花のような笑顔を咲かせた。

さすがに予想外だったけど、メアリーのこういう行動には散々驚かされてきたので、俺は笑ってメアリーの頭を撫でた。





「あ、ウィッカー、あんたの用意したプレゼント、子供達みんな大喜びだったよ!良いの見つけて来たね!」

一階に降りると、ジャニスが駆け寄って来た。

俺は今回、子供達のプレゼント用意が担当だった。

ジャニス達、女性陣は料理やらなんやら忙しいというので、一番自由がきく俺が用意する事になったのだが、これがなかなか難しかった。

女の子はよくお人形遊びをしているので、新しい人形でいいかなと、すぐに決まったのだが、男の子が難しかった。

男の子達は人形遊びはしないし、体を使った遊びが多い。
木登りをしたり、追いかけっこをしたり、川で遊んだりだ。

でも、今は冬なので、家で剣士ごっこや、外では雪を投げて遊んだりしている。

そこで俺は、雪遊びのセットをプレゼントする事にした。
二人乗りできるソリと、雪を掘るための人数分のスコップ。

これを師匠から子供達へ渡してもらった。

買ってきたウィッカーが渡したらどうだ、と言われたが、子供達の父親は師匠だ。


ヤヨイさんから、クリスマスにはサンタという赤服で白髭の小太りの男が、プレゼントを届けに来るという話しも聞いたが、それは子供達に夢を与えるための話しで、実在はしないらしい。


トナカイという、馬に似た動物に乗って空を飛んでくるというので、俺はサンタは黒魔法使いかと聞いたら、ヤヨイさんは涙が出るほど大笑いをしていた。なぜだ?風魔法で飛ぶんじゃないのか?

まぁ、そんな話しもあったけれど、サンタの代わりに親が子供にプレゼントをするそうだ。

ならばやはり師匠しかいない。この孤児院の父は師匠だからだ。


子供達は初めてもらうクリスマスプレゼントに、とても大喜びをしていた。
俺にも、スコップを見せて来て、明日からこれで雪遊びするんだ!とみんな沢山の喜びの声を聞かせてくれた。

年に一度のクリスマス、とても良い行事だと思った。




「ねぇ、ウィッカー、今日はいつも以上にメアリーがくっ付いてない?」

ジャニスは俺の腕に、ぎゅっとしがみついているメアリーに目を向ける。

「あぁ、プレゼント渡したんだ。そしたらもうずっとこうなんだ」

「あ~、なるほど。メアリーならそうなるよね。そっか、でも良かったね。うまくいったんだ?って言うか、メアリーが断るわけないか」


ジャニスが、これでもかと言う程、俺に腕を組ませているメアリーの顔を覗き見る。

メアリーはニコニコと幸せそうな顔をしており、周りの言葉は全く聞こえていないようで、完全に自分の世界に入っていた。


「全くこの子は・・・ウィッカー、今日はメアリーずっとこのままだと思うから、あんたちゃんと見てるんだよ?後片付けとか、その辺は私達でやっておくからさ」

「あ、あぁ、なんか悪いな」

「いいよ。大丈夫。それに、普段のメアリーは人の何倍も働いてるよ。朝一番早く来て、みんなのご飯作ってさ。だから、私もヤヨイさんもキャロルも、みんなメアリーがウィッカーに抱き着いてる時は、気が済むまでそうさせようって決めてあるの」

ジャニスはそう言って俺の肩を軽く叩くと、しっかり見てるんだよ。と言って、広間の談笑に混ざって行った。




ジャニスの背中を見送って、俺はメアリーと一緒に玄関脇の窓から、外を眺めた。

「・・・なぁ、メアリー、ニホンではクリスマスに雪が降ると、ホワイトクリスマスって言うらしいぞ」

「はい。ロマンチックですね・・・うふふ」

少し落ち着いたのか、メアリーから言葉が返ってきた。でも、腕を組む力は変わらず強く、ちょっと離れそうにない。


「ウィッカー様・・・私、ウィッカー様に結婚して良かったって思ってもらえるように、頑張りますね」

メアリーが少し顔を上げて俺を見る。

「じゃあ・・・俺もメアリーが結婚して良かったって思ってもらえるように、頑張るよ」

同じ言葉を返すと、メアリーは背伸びをして、俺の唇に軽くキスをした。


「ウィッカー様、私幸せです」


そう微笑むメアリーが愛しくて強く抱きしめた
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