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【184 パトリックの覚悟】
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「ヤヨイさん!ヤヨイさん!」
パトリックは混乱していた。
突然ヤヨイが胸を押さえうずくまり、そのまま倒れて意識を失ってしまったのだ。
必死に呼びかけるが、返事はない。
一体何が起きた?敵の攻撃か?いや、結界は張り続けているし、攻撃された形跡もない。
いくら考えても答えは出なかった。
顔の前に手を持って行くと、呼吸をしている事は確認できた。
「呼吸はある・・・だが、一体なぜ急に?」
パトリックの疑問に対する答えは無いが、代わりにこの状況を嘲笑う不快な声が耳に届いた。
「フハハハハ・・・お前たちは・・・ここで・・・死ぬ・・・」
開け放たれている玄関口の上から、顔を逆さまに覗かせている男がいた。
肌は浅黒く、長く編み込んだいくつもの髪の束が、頭が下を向いている事で、空中でゆらゆらと揺れていた。
・・・・・コイツか
パトリックは敵の顔を視認した瞬間、腰に巻いているベルトからナイフを一本抜き取り、男の顔面目掛けて投げつけた。
確認はしなくても分かる。先手必勝で投げたナイフは、パトリックの結界を抜け、そのまま男の顔面に突き刺さった・・・・・ように見えた。
「馬鹿が、こんなナイフで俺を殺れると思ったか?」
男の顔面に突き刺さる寸前、ナイフは男の顔の前に突如現れた氷の壁に突き刺さり、その動きを止めていた。
「お前がディーロ兄弟の一人なら、もちろん思ってないさ」
「あ?なん・・・」
氷の壁に刺さっているナイフに向け、パトリックが魔力を放つと、ナイフは一瞬目もくらみそうな光を放ち爆発した。
砕け散る氷、玄関のドアも吹き飛びたち立ち込める煙は、外からの煙と合わさり、室内の見通しが効かない程に充満していった。
・・・・・どうだ?
パトリックの魔道具 破壊のナイフ
カエストゥスの魔法兵団で開発された魔道具であるこのナイフは、魔法を封じ込める事ができるナイフである。
封じ込められた魔法は、使い手が誰であっても使用可能であり、利便性は高い。
基本的で本来の目的とされている使い方は、黒魔法を込めて使用する事である。
爆発魔法の爆裂弾。火魔法の火球。氷魔法の刺氷弾。攻撃魔法を黒魔法使いに封じ込めてもらい、それを投げて使用する。これが基本であり、一番使われるやり方だった。
ナイフの耐久性の関係で、中級、上級魔法は封じ込める事ができなかったが、その分お手軽に、安価で揃える事ができるようになり、破壊のナイフを愛用する魔法使いは少なくない。
使用方法は、ナイフを使う前に、まず自分の魔力を込める。
そして任意のタイミングで効果を発揮するように魔力を解放すると、封じ込められていた魔法が発動する。
これの最大の利点は、いつでも発動できるところである。
今回パトリックは、氷の壁に突き刺さった状態で魔法を発動させたが、いつでも発動できるという事は、宙を飛んでいる状態でも発動できるという事である。
投げたナイフを髪一重で躱されたとしても、そのタイミングで発動すれば、魔法に巻き込む事は可能という事だ。
また、お手軽で誰でも使えるという点から、他国へ流れた時の危険性を考えられ、国外への輸出の禁止、そして使用は国内のみに限定されていた。
そのため、カエストゥス国の外では知られていない。
上級、中級魔法は込められないが、利便性の高さと、消費魔力の少なさが気に入り、パトリックはこのナイフを愛用するようになった。
玄関口からは煙が充満してきている。
視界は遮られ、外を見る事は敵わない。今の爆裂弾を込めたナイフで、どれだけのダメージを与えられただろうか?いや、全く与えられていない可能性もある。
パトリックは冷静に状況を分析していた。
敵、おそらくディーロ兄弟最後の一人は、今のナイフでほとんどダメージを受けていないだろう。
そして、すぐ近くに潜んでいる事は間違いない。
今は自分が結界を張っている事で、直接攻撃をしかけてきていないが、火の手はどんどん強くなり、煙も充満してきている。
パトリックとヤヨイは結界でしのぎ切れる。
だが、孤児院と子供達はどうなる?
王子が付いているから、子供達は大丈夫かもしれない。
だが、この孤児院が無くなったら、明日からどうすればいい?
「・・・・・俺がやるしかない。ヤヨイさん、すみません。少しの間一人にしますが、結界はかけておきますので・・・」
これだけの大事になっているにも関わらず、タジームも、ブレンダンも、エロールも、誰もこの場に現れない。
おそらく全員、身動きがとれない状態なのだろう。
そう判断したパトリックは意識を失っているヤヨイを、そっと床に寝かせると、自分一人で、ディーロ兄弟最後の一人、ジャーグール・ディーロと戦う覚悟を決めた。
パトリックは混乱していた。
突然ヤヨイが胸を押さえうずくまり、そのまま倒れて意識を失ってしまったのだ。
必死に呼びかけるが、返事はない。
一体何が起きた?敵の攻撃か?いや、結界は張り続けているし、攻撃された形跡もない。
いくら考えても答えは出なかった。
顔の前に手を持って行くと、呼吸をしている事は確認できた。
「呼吸はある・・・だが、一体なぜ急に?」
パトリックの疑問に対する答えは無いが、代わりにこの状況を嘲笑う不快な声が耳に届いた。
「フハハハハ・・・お前たちは・・・ここで・・・死ぬ・・・」
開け放たれている玄関口の上から、顔を逆さまに覗かせている男がいた。
肌は浅黒く、長く編み込んだいくつもの髪の束が、頭が下を向いている事で、空中でゆらゆらと揺れていた。
・・・・・コイツか
パトリックは敵の顔を視認した瞬間、腰に巻いているベルトからナイフを一本抜き取り、男の顔面目掛けて投げつけた。
確認はしなくても分かる。先手必勝で投げたナイフは、パトリックの結界を抜け、そのまま男の顔面に突き刺さった・・・・・ように見えた。
「馬鹿が、こんなナイフで俺を殺れると思ったか?」
男の顔面に突き刺さる寸前、ナイフは男の顔の前に突如現れた氷の壁に突き刺さり、その動きを止めていた。
「お前がディーロ兄弟の一人なら、もちろん思ってないさ」
「あ?なん・・・」
氷の壁に刺さっているナイフに向け、パトリックが魔力を放つと、ナイフは一瞬目もくらみそうな光を放ち爆発した。
砕け散る氷、玄関のドアも吹き飛びたち立ち込める煙は、外からの煙と合わさり、室内の見通しが効かない程に充満していった。
・・・・・どうだ?
パトリックの魔道具 破壊のナイフ
カエストゥスの魔法兵団で開発された魔道具であるこのナイフは、魔法を封じ込める事ができるナイフである。
封じ込められた魔法は、使い手が誰であっても使用可能であり、利便性は高い。
基本的で本来の目的とされている使い方は、黒魔法を込めて使用する事である。
爆発魔法の爆裂弾。火魔法の火球。氷魔法の刺氷弾。攻撃魔法を黒魔法使いに封じ込めてもらい、それを投げて使用する。これが基本であり、一番使われるやり方だった。
ナイフの耐久性の関係で、中級、上級魔法は封じ込める事ができなかったが、その分お手軽に、安価で揃える事ができるようになり、破壊のナイフを愛用する魔法使いは少なくない。
使用方法は、ナイフを使う前に、まず自分の魔力を込める。
そして任意のタイミングで効果を発揮するように魔力を解放すると、封じ込められていた魔法が発動する。
これの最大の利点は、いつでも発動できるところである。
今回パトリックは、氷の壁に突き刺さった状態で魔法を発動させたが、いつでも発動できるという事は、宙を飛んでいる状態でも発動できるという事である。
投げたナイフを髪一重で躱されたとしても、そのタイミングで発動すれば、魔法に巻き込む事は可能という事だ。
また、お手軽で誰でも使えるという点から、他国へ流れた時の危険性を考えられ、国外への輸出の禁止、そして使用は国内のみに限定されていた。
そのため、カエストゥス国の外では知られていない。
上級、中級魔法は込められないが、利便性の高さと、消費魔力の少なさが気に入り、パトリックはこのナイフを愛用するようになった。
玄関口からは煙が充満してきている。
視界は遮られ、外を見る事は敵わない。今の爆裂弾を込めたナイフで、どれだけのダメージを与えられただろうか?いや、全く与えられていない可能性もある。
パトリックは冷静に状況を分析していた。
敵、おそらくディーロ兄弟最後の一人は、今のナイフでほとんどダメージを受けていないだろう。
そして、すぐ近くに潜んでいる事は間違いない。
今は自分が結界を張っている事で、直接攻撃をしかけてきていないが、火の手はどんどん強くなり、煙も充満してきている。
パトリックとヤヨイは結界でしのぎ切れる。
だが、孤児院と子供達はどうなる?
王子が付いているから、子供達は大丈夫かもしれない。
だが、この孤児院が無くなったら、明日からどうすればいい?
「・・・・・俺がやるしかない。ヤヨイさん、すみません。少しの間一人にしますが、結界はかけておきますので・・・」
これだけの大事になっているにも関わらず、タジームも、ブレンダンも、エロールも、誰もこの場に現れない。
おそらく全員、身動きがとれない状態なのだろう。
そう判断したパトリックは意識を失っているヤヨイを、そっと床に寝かせると、自分一人で、ディーロ兄弟最後の一人、ジャーグール・ディーロと戦う覚悟を決めた。
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