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【171 ジョルジュの両親】
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俺とジャニスはジョルジュと共に、城から歩いて北の森へと向かった。
「う~ん・・・気になる」
「ジャニス・・・師匠達なら大丈夫だよ。王子もいるし、パトリックさんにエロールだっている」
森の入り口まで来た時、ジャニスが腕を組み、首を捻りながら低い声を出したので、孤児院の心配をしているのかと思い、俺は心配しなくても大丈夫だと伝えるため、軽い調子で言葉をかけた。
「いや、そうじゃなくて・・・ヤヨイさんとパトリックさんよ。初対面どうなると思う?」
「・・・え?」
ずいぶんと思い悩んでいたように見えたと思ったら、予想もしない言葉に俺は何て返していいか分からずに顔を引きつらせてしまった。
「心配する事もないだろう。ヤヨイは相手の事を考えて行動するタイプだ、前もってパトリックの性格も伝えてあるんだろ?それならばヤヨイは寄り添ってくれるはずだ。きっとうまくいく」
先頭に立って森に入って歩くジョルジュが、顔半分後ろに向け、俺の代わりにジャニスに言葉をかけた。
ヤヨイさんとはまだ会って日も浅いのに、よく見ていると思った。
ジョルジュは会話をしなくても、その人が纏う風で、その人の内面もだいたい分かるらしい。ヤヨイさんの風をとても褒めていたし、知り合ってからの日が短くても、すでに人間性を信頼しているのだろう。
「う~ん、そうだよね。私もヤヨイさんなら大丈夫だと思うんだ。きっと、うまくいくと思うの。ただね・・・見たかったなぁ、二人の初対面・・・」
ジャニスは残念そうに首を横に振り、両手を伸ばし頭の上で組ませて背伸びをする。
「何を言うかと思えば、見たかったって・・・ジャニスってそういうとこあるよな?ヤジ馬って言うか、特に恋愛になると首つっこむよな?」
少し呆れた感じで話し、隣を歩くジャニスに顔を向けると、ジャニスは少し口を尖らせて俺を睨んできた。
「だって、見たいんだもん・・・しょうがないじゃん!」
すねた感じでそう言うと、ジャニスは、プイっと俺から顔をそむけてしまった。
エロールを叱った時なんかは、さすがジャニスだと感心したものだが、たまにこういう子供っぽいところがある。
俺はおかしくなって声を出して笑ってしまい、ますますジャニスにすねられてしまった。
ジョルジュは振り返らないで、一定のペースで前を歩いている。
でも、なんとなくだけど、前を向いているその顔は笑っているように感じた。
二日続けてこの森に来る事になるとは思わなかった。
やっぱり空気が澄んでいるし、緑のにおいが溢れ、心が洗われる感じもする。
「・・・・・ついたぞ。さぁ、上がってくれ」
木々を抜け、少しだけひらけた場所に出る。
昨日も見た、大きな樹木の上のツリーハウスを指し、ジョルジュが振り向いた。
螺旋状に囲むような木造りの階段の上には、沢山の緑の葉が屋根に被さり、大きなログハウスを覆っている。
「昨日もすごいと思ったけど、やっぱ目を引くよな、ツリーハウスって」
「そうだね、それと、この森の中だからかな・・・なんか神秘的に見える」
ジョルジュに促されるまま、螺旋階段を上がり家の中に入ると、ジョルジュと同じアイスブルーの髪をした、少し年配の男性と女性が出迎えてくれた。
男性は、ジョルジュと同じ位の身長で、少しゆったりとした若草色の長袖の上からでも分かるくらい、引き締まった体付きをしている。
髪はオールバックにまとめていて、細い目は一見睨まれていると感じてしまうかもしれないが、空気と言うか雰囲気はとても穏やかなもので、外見とは裏腹に温かみを感じる人だ。
女性は肩の下まである髪を、一本の三つ編みに結っていた。
ジョルジュを女性にしたらこんな感じかな、と思えるような顔立ちで、
優しそうなクリっとした丸目と、小さめで形の良い唇が、実年齢より若く見える。
薄手で茶色の、ボタン留めのニットを羽織っている。
ジョルジュの両親だ。
「父さん、母さん、紹介するよ。ウィッカーとジャニス、俺の友達だ。今日からしばらくここに住んでもらう事になった」
玄関口でジョルジュが俺とジャニスを紹介して、簡単に経緯を説明すると、ジョルジュの両親はあまり驚いた様子はなく、俺とジャニスがしばらく滞在する事にも、好意的に受け入れてくれた。
立ち話しもなんだからと、上がるように促され、昨日と同じく、丸太を切って作った大きなテーブルを囲むように、みんなで座り顔を合わせた。
丸太のイスは4つしかなかったので、ジョルジュは両親に座るように話し、自分は壁に背を預け、腕を組んで話しに加わった。
「・・・なるほど、事情はよく分かりました。息子のためにありがとうございます。孤児院や魔法兵団にも大変ご面倒と、ご尽力をいただきましたようで、なんとお礼を言ってよいか・・・・・実を言いますと、闘技場で息子が人を殺めた事は聞いておりました。ただ、国からお咎めが無かったし、風の精霊も変わらず息子に付いてましたので、つまり、息子が殺したのはそういう人だったんだなと理解していたんです。ですから、今回の件を聞いても、可能性として私も妻も考えていた事ですので、驚く程ではありません。むしろ、息子が友達を連れて来た方が驚いたくらいですよ」
今回の件を詳しく説明し終えると、ジョルジュの父親は、まず俺達に感謝の言葉を口にしたあと、テーブルの上で両手を組み、理解したというように深く頷き、言葉を発した。
「私も、ジョルジュがお友達を連れてくるなんて驚いたわ。ずっと、森で暮らしていたから、親の責任でもあるんだけど・・・・・ウィッカーさんとジャニスさん、ジョルジュとこれからも仲良くしてくださいね。そして、こんな危険な事に巻き込んでしまって、ごめんなさい」
ジョルジュの母親にも頭を下げられ、さすがに俺とジャニスも恐縮してしまい、自分達の方がジョルジュに助けてもらっていると言って、なんとか頭を上げてもらった。
実際、師匠の命を助けてもらった事は何度お礼を言っても足りないものだ。
ヤヨイさんに風の精霊を紹介してくれた事で、ヤヨイさんも精霊とのつながりができたし、過去の記憶も少し戻ってきた。
ジョルジュには、助けてもらってばかりだ。今回、俺達が力になる事で、少しでも恩を返せればと思う。
それから俺達は今後の対策を話し合った。
ジョルジュの両親の弓の腕前は、空を高く飛ぶ鳥を落とし、木々の間を縫って遠く離れた獲物を撃ち抜く程のもので、俺もジャニスも感嘆の声をもらした。
戦闘になった場合、俺とジャニス、ジョルジュの三人を中心に考えていたが、考えをあらためさせられた。
「う~ん・・・気になる」
「ジャニス・・・師匠達なら大丈夫だよ。王子もいるし、パトリックさんにエロールだっている」
森の入り口まで来た時、ジャニスが腕を組み、首を捻りながら低い声を出したので、孤児院の心配をしているのかと思い、俺は心配しなくても大丈夫だと伝えるため、軽い調子で言葉をかけた。
「いや、そうじゃなくて・・・ヤヨイさんとパトリックさんよ。初対面どうなると思う?」
「・・・え?」
ずいぶんと思い悩んでいたように見えたと思ったら、予想もしない言葉に俺は何て返していいか分からずに顔を引きつらせてしまった。
「心配する事もないだろう。ヤヨイは相手の事を考えて行動するタイプだ、前もってパトリックの性格も伝えてあるんだろ?それならばヤヨイは寄り添ってくれるはずだ。きっとうまくいく」
先頭に立って森に入って歩くジョルジュが、顔半分後ろに向け、俺の代わりにジャニスに言葉をかけた。
ヤヨイさんとはまだ会って日も浅いのに、よく見ていると思った。
ジョルジュは会話をしなくても、その人が纏う風で、その人の内面もだいたい分かるらしい。ヤヨイさんの風をとても褒めていたし、知り合ってからの日が短くても、すでに人間性を信頼しているのだろう。
「う~ん、そうだよね。私もヤヨイさんなら大丈夫だと思うんだ。きっと、うまくいくと思うの。ただね・・・見たかったなぁ、二人の初対面・・・」
ジャニスは残念そうに首を横に振り、両手を伸ばし頭の上で組ませて背伸びをする。
「何を言うかと思えば、見たかったって・・・ジャニスってそういうとこあるよな?ヤジ馬って言うか、特に恋愛になると首つっこむよな?」
少し呆れた感じで話し、隣を歩くジャニスに顔を向けると、ジャニスは少し口を尖らせて俺を睨んできた。
「だって、見たいんだもん・・・しょうがないじゃん!」
すねた感じでそう言うと、ジャニスは、プイっと俺から顔をそむけてしまった。
エロールを叱った時なんかは、さすがジャニスだと感心したものだが、たまにこういう子供っぽいところがある。
俺はおかしくなって声を出して笑ってしまい、ますますジャニスにすねられてしまった。
ジョルジュは振り返らないで、一定のペースで前を歩いている。
でも、なんとなくだけど、前を向いているその顔は笑っているように感じた。
二日続けてこの森に来る事になるとは思わなかった。
やっぱり空気が澄んでいるし、緑のにおいが溢れ、心が洗われる感じもする。
「・・・・・ついたぞ。さぁ、上がってくれ」
木々を抜け、少しだけひらけた場所に出る。
昨日も見た、大きな樹木の上のツリーハウスを指し、ジョルジュが振り向いた。
螺旋状に囲むような木造りの階段の上には、沢山の緑の葉が屋根に被さり、大きなログハウスを覆っている。
「昨日もすごいと思ったけど、やっぱ目を引くよな、ツリーハウスって」
「そうだね、それと、この森の中だからかな・・・なんか神秘的に見える」
ジョルジュに促されるまま、螺旋階段を上がり家の中に入ると、ジョルジュと同じアイスブルーの髪をした、少し年配の男性と女性が出迎えてくれた。
男性は、ジョルジュと同じ位の身長で、少しゆったりとした若草色の長袖の上からでも分かるくらい、引き締まった体付きをしている。
髪はオールバックにまとめていて、細い目は一見睨まれていると感じてしまうかもしれないが、空気と言うか雰囲気はとても穏やかなもので、外見とは裏腹に温かみを感じる人だ。
女性は肩の下まである髪を、一本の三つ編みに結っていた。
ジョルジュを女性にしたらこんな感じかな、と思えるような顔立ちで、
優しそうなクリっとした丸目と、小さめで形の良い唇が、実年齢より若く見える。
薄手で茶色の、ボタン留めのニットを羽織っている。
ジョルジュの両親だ。
「父さん、母さん、紹介するよ。ウィッカーとジャニス、俺の友達だ。今日からしばらくここに住んでもらう事になった」
玄関口でジョルジュが俺とジャニスを紹介して、簡単に経緯を説明すると、ジョルジュの両親はあまり驚いた様子はなく、俺とジャニスがしばらく滞在する事にも、好意的に受け入れてくれた。
立ち話しもなんだからと、上がるように促され、昨日と同じく、丸太を切って作った大きなテーブルを囲むように、みんなで座り顔を合わせた。
丸太のイスは4つしかなかったので、ジョルジュは両親に座るように話し、自分は壁に背を預け、腕を組んで話しに加わった。
「・・・なるほど、事情はよく分かりました。息子のためにありがとうございます。孤児院や魔法兵団にも大変ご面倒と、ご尽力をいただきましたようで、なんとお礼を言ってよいか・・・・・実を言いますと、闘技場で息子が人を殺めた事は聞いておりました。ただ、国からお咎めが無かったし、風の精霊も変わらず息子に付いてましたので、つまり、息子が殺したのはそういう人だったんだなと理解していたんです。ですから、今回の件を聞いても、可能性として私も妻も考えていた事ですので、驚く程ではありません。むしろ、息子が友達を連れて来た方が驚いたくらいですよ」
今回の件を詳しく説明し終えると、ジョルジュの父親は、まず俺達に感謝の言葉を口にしたあと、テーブルの上で両手を組み、理解したというように深く頷き、言葉を発した。
「私も、ジョルジュがお友達を連れてくるなんて驚いたわ。ずっと、森で暮らしていたから、親の責任でもあるんだけど・・・・・ウィッカーさんとジャニスさん、ジョルジュとこれからも仲良くしてくださいね。そして、こんな危険な事に巻き込んでしまって、ごめんなさい」
ジョルジュの母親にも頭を下げられ、さすがに俺とジャニスも恐縮してしまい、自分達の方がジョルジュに助けてもらっていると言って、なんとか頭を上げてもらった。
実際、師匠の命を助けてもらった事は何度お礼を言っても足りないものだ。
ヤヨイさんに風の精霊を紹介してくれた事で、ヤヨイさんも精霊とのつながりができたし、過去の記憶も少し戻ってきた。
ジョルジュには、助けてもらってばかりだ。今回、俺達が力になる事で、少しでも恩を返せればと思う。
それから俺達は今後の対策を話し合った。
ジョルジュの両親の弓の腕前は、空を高く飛ぶ鳥を落とし、木々の間を縫って遠く離れた獲物を撃ち抜く程のもので、俺もジャニスも感嘆の声をもらした。
戦闘になった場合、俺とジャニス、ジョルジュの三人を中心に考えていたが、考えをあらためさせられた。
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