異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
上 下
159 / 1,351

【159 記憶の断片】

しおりを挟む
「・・・ここが、俺が毎日祈りを捧げている湖だ。ヤヨイ、来てくれ」

ジョルジュの家でしばらく話した後、そろそろ行こう、というジョルジュの呼びかけで、本題の湖まで足を運んでいた。

湖は底が見える程に透き通っていた。
緑のにおいもこの場所が一番濃いようで、体全体に自然を感じている感覚になる。
微かに聞こえる鳥のさえずりは、心地良い音色のように聞こえ、壮大な自然の中で時を忘れてしまいそうになる。

水面の前に立つジョルジュに呼ばれ、ヤヨイさんが前にでると、ジョルジュは目の前に広がる大自然に手を向けた。

「ヤヨイ、さっそくだが、この景色を見てどう感じる?」

「・・・月並みな表現ですが、とても美しいです。人の手が入っていないので、自然をそのままに感じられる。ジョルジュさんがこの森で暮らしている気持ちも分かります。とても、心が安らぐ場所ですね」


ヤヨイさんの言葉に、ジョルジュは目を細めて頷いた。

「ヤヨイ、やっぱりキミの風は特別だ。とても純粋で無垢で綺麗で・・・まるで産まれたばかりの赤ん坊のような一点の曇りもない風だ」

産まれたばかりの赤ん坊という表現に、ヤヨイさんは顔を赤くしている。
言いたい事は分かるし、誉め言葉で使ったのだろうが、言われる側としては少し恥ずかしいかもしれない。


「・・・・・風の精霊が気に入るわけだ。キミは俺以上に精霊と心を通わせる事ができるだろう。
これからキミと風の精霊を繋げるが、心の準備はいいか?」

ジョルジュがはヤヨイさんに左手を差し伸べた。
ヤヨイさんは、緊張しているのだろう。なかなかその手を掴めずにいる。

「・・・ヤヨイ、脅かすような事を言ってしまったかもしれないが、何も怖がる事はない。精霊はキミの味方だ。この手を掴めば、俺がキミと精霊の橋渡しになれる。俺とヤヨイは友達だ。怖がる必要はない」

「ジョルジュさん・・・はい!私とジョルジュさんはお友達です」

ジョルジュの言葉に勇気をもらったヤヨイさんは、表情にも力が入り、差し出された手をしっかりと握った。

「よし、では始めるぞ。目を閉じて、できるだけ力を抜いて自然体になってくれ。そして、風を感じてくれればいい。キミならすぐに精霊の声が聞こえるだろう」

ヤヨイさんは、はい、と小さいが力を込めた返事をすると湖に身体を向けた。
言われ通りに目を閉じ、体から力を抜いて自然体になる。ジョルジュも同様に、目を閉じリラックスしているようだ。

ジュルジュの左手をヤヨイさんが右手で握り、二人は静かに湖に体を向けて立っている。

俺もジャニスも、声を出しては駄目だと雰囲気で察し、できるだけ音を立てないように、少し後ろで静かに見守る事にした。

数分程立った頃、水面に緑色の光球がポツポツと現れ始めた。
指先くらいの小さいものから、拳程の大きさのものまで様々だが、この光球は風の加護を受けた時に見た事がある。

この光球が風の精霊だ。
加護を受けた時は、突然光球が体に溶け込むように入ってきて、そのまま自分の体が緑色の炎に包まれたから焦ったものだ。一緒に加護を受けたジャニスも、少しは驚いていたが、俺は声を大にして驚いてしまったので、今でもジャニスに当時の事をからかわれる時がある。


次第に光球の数が増えていき、最初は水面にだけ浮かんでいた光球は、辺り一帯に広がっていった。

加護を受けた俺達でさえ、この数には圧倒される。
目に見えるところ全てが埋め尽くされる程の数だ。

少し体を動かせば、どれかしらの光球に触れるだろう。触れても問題はないだろうが、今は水際に立つ二人の心を、ほんの少しでも乱す可能性のある行動は避けたい。

隣に立つジャニスにチラリを視線を送ると、ジャニスも俺に目を向けていた。
目が合うと、お互いに口は開かず最小限に軽く頷くだけで、意思の疎通はできたようだ。

そのまま視線を前に戻した。俺達にできる事は、ヤヨイさんとジョルジュを見守るだけだ。







私の心は不思議なくらいに落ち着いていた。
目を閉じているので、見る事はできないけれど、何か温かいものが自分の回りに集まっている事は分かる。

きっと、これが風の精霊さんなのだと思う。

精霊さんの声は私の頭の中に・・・いいえ、これは全身の感覚で理解しているような気がする。
熱い物、冷たい物に触ると、目を閉じていても、それが熱いか冷たいかはわかるように、これは声というものを体で感じて意思を理解しているような感覚だと思った。

精霊さんは私のどこが気に入ったのだろう?
私には人に誇れるものは何もない。
もしかすると、以前の私には何かあったのかもしれない。
でも、今の私は何も覚えていない。

だから、なぜ私なのかは分からなかった。

でも、ジョルジュさんがかけてくれた言葉は、はずかしかったけど、少し嬉しかった。


以前の私がどんな私かは分からない。
今の私と全然違う性格なのかもしれない。

でも、私が知ってる私は、この私だけだから、今の私にできる精一杯で生きていこうと思う。






心に風が吹いた
心はどこ?それは分からないけど、喜んだり、悩んだり、時には怒ったり、人が気持ちと呼ぶ場所に、確かに風が吹いた

声が聞こえる
声は私を歓迎しているみたい

そっか、これが精霊さんの声なんだ
私とお友達になってくれるの?

ありがとう・・・・・

孤児院のお仕事があるから、毎日ここには来れないけど、孤児院でお祈りするからね。






忘れもの?

精霊さんは、私の忘れているなにかを知っているの?






また、心に風が吹いた
それは、少し寂しい風だった

何百、何千、何万もの大勢の人が足早に行き交う街には、見たことのない大きな建物が沢山建ち並んでいる

鉄の塊のような、馬車ではないなにかは、人を乗せて驚くような速さで道を進んで行く


一軒の大きくて、横に長い四角形の建物が見える
なにかのお店だろうか?
入り口の脇の金属の箱に、沢山の服が畳んで置いてある。

不思議な事に、入り口にある看板を見て、あれは文字だとすぐに理解できた。
この国とは違う文字なのに、なぜか文字が読める。



・・・・・ウイニング



一人の男性が見える
目が隠れるくらい前髪を伸ばしていて、真面目そうだけど少し暗い印象を受ける。
誰かと話しているように見える・・・・・

私だ・・・・・

顔が私に向いている。この人は私に話しかけているんだ。
私は私を見れないけど、以前の私はこの男性と仲が良かったのかもしれない。




・・・アラタ
・・・・・・坂木 新



坊主頭で、ガッチリした体格の男性が出てきた。
見た目は怖いけど、優しそうだ。




・・・シュウイチ
・・・・・・村戸 修一




私は知っている


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜

言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。 しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。 それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。 「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」 破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。 気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。 「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。 「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」 学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス! "悪役令嬢"、ここに爆誕!

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...