145 / 1,253
【145 パトリックとの対話】
しおりを挟む
10時の時点ですでに満席に近かったが、試合時刻が近づくにつれ、闘技場内は人で溢れかえり、3階層では席に座れない人が通路で立ち見をしたり、席と席の間の、ゴツゴツとした石造り階段に腰を下ろしたりする人まで出て来る程だった。
この闘技場は、身分で見れる場所が決まっている。
1階層は貴族達、2階層は富裕層、3階層が一般市民。そして、これとは別に王族は1階に特別席が用意されている。
俺とジャニスは、師匠の弟子という立場でもあるので、1階層で見る事が許されている。
「ウィッカー、私も初めて見るけど・・・なんか、すごいね・・・」
1階層で席に通された俺達は、試合前から盛り上がりを見せている観客達の熱気に驚かされていた。
貴族達は大声を出したりせず、静かに試合開始を待っているが、2階層と、とくに3階層は、師匠の名前を叫ぶ人達や、早く始めろというヤジやら、とにかく大きな声が飛び交い、主役のいない試合場を盛り上げていた。
「あぁ・・・噂には聞いてたけど、思ってたよりずっとすごいな。師匠はこんなところで10年も勝ち続けていたのか」
「お、いたいた。ウィッカー、ジャニス」
俺とジャニスが2階、3階の盛り上がりに目を奪われていると、ふいに後ろから声をかけられた。
振り返ると、ロビンさんが右手を軽く上げ、俺とジャニスに笑いかけながら、俺の隣に腰を下ろした。
「ロビンさん、こんにちは。応援に来てくれたんですね」
俺が挨拶をすると、ロビンさんは、当たり前だ、と笑って答えてくれた。
「ブレンダン様には、私も本当にお世話になったからな。お前達のように、直接の弟子ではないが、沢山の事を教わってここまでこれた。応援するのは当たり前じゃないか」
「そんな事言って、本当はヤヨイさんもいるかと思って来たんじゃないんですか~?」
ジャニスがからかうような目を向けると、ロビンさんは少し慌てたように、言葉をつっかえながら否定した。
「い、いや、ジャニス、そんな事はないぞ!私は純粋にブレンダン様を応援する気持ちで来た・・・・・・で、ヤヨイさんはいらっしゃるのか?」
「いません」
ジャニスは間髪入れずに否定の言葉を口にした。
「ロ、ロビンさん、そんな肩落とさないでって・・・あれ、パトリックさんも来てたんですね?」
分かりやすいくらい、肩を落としてうな垂れるロビンさんに声をかけていると、ロビンさんの息子のパトリックさんの姿が視界に入った。
「おう、ウィッカー、ジャニス、ここ座らせてもらうぜ」
父親のロビンさんに比べると少し背は低いが、177~8cmくらいはある。ロビンさんは、魔法使いには珍しいくらいの筋肉質だが、パトリックさんが平均的な普通の魔法使いの体系だ。
父親似の彫りの深い顔立ちだが、どこか愛嬌のある目鼻が柔らかい印象を与えている。
肩まで伸びた長い、母親譲りのシルバーグレーの髪は首の後ろで結び留めていた。
「親父、なにへこんでんだよ?」
ジャニスの隣に腰を下ろしたパトリックさんは、肩を落としているロビンさんを見て、首を傾げた。
今日はヤヨイさんがいなくて、ロビンさんが残念がっていたと説明をすると、話しの流れから、パトリックさんがこの縁談に対しての、自分の考えを口にし始めた。
「・・・あぁ、その話しな。ここんとこ毎日聞かされてるよ。孤児院のヤヨイさんって人に会えって、もう耳が痛くなるくらいだ。でもよ、お前らも知っての通り、俺は、まぁ・・・無理だろ?
女の人と、仕事や友人としてなら普通に話せるのに、それが恋愛になると、どうしても緊張して全く話せない。もうさ、あんな気まずい思いしたくないんだよ。だから、お前らから断っておいてくれないか?そのヤヨイさんて人も、俺なんかに会ってもいいって言ってくれたのに悪いけど、きっと嫌な気持ちになるだけだし、お互いのためだと・・・」
「この馬鹿息子がぁッツ!」
パトリックさんが言い終わらないうちに、ロビンさんが体を起こし、俺とジャニスを挟んで座るパトリックさんに掴みかかった。
突然父親に胸倉を掴まれ、魔法使いとは思えない腕力で足が浮くほど体を持ち上げられると、苦しそうに歯を食いしばり、自分を持ち上げる父親の腕を掴み外そうともがいている。
「お前は会いもしないうちからヤヨイさんを否定するな!お前に会って嫌な気持ちになるだと!?
そんな心の狭い人では断じてない!例えご縁が無かったとして、あの人はお前という人間を否定しない!お前の事情を知った上で、自分を紹介してくださいと言ってくださったのだぞ!何がお互いのためだ!お前は最初から諦めているだけの臆病者だ!お前なんかにヤヨイさんはもったいない!」
闘技場一体に響き渡る大声に、あれほど活気づいていた場内が静まり返っていた。
場内全ての視線が集まる中、ロビンさんはパトリックさんを投げ捨てるように離すと、苦しそうに咳き込むパトリックさんを一瞥して、失礼した私は場所を変えた方がいいな、と言い残し、その場を離れた。
「・・・・・こ、怖かった・・・」
ロビンさんの姿が見えなくなると、ジャニスがポツリと言葉を漏らした。
ジャニスが、怖い、なんて言うのは聞いた事がない。それほど衝撃だったのだろう。
「うん・・・俺もびびった・・・」
そして、俺もあんな怖いロビンさんは初めてみた。
怒り過ぎな気もするが、それほどヤヨイさんを気に入っているという事だろう。
孤児院で出会ってほんの数日だけど、息子のためあれほど熱心に口説いていたのだ。
おかしな事言い方だが、息子の妻にしたい女性としての一目惚れ。みたいな感情があるのだろう。
「ゲホッ・・・う、つぅ・・・な、なんなんだよ一体・・・」
「パトリックさん、大丈夫ですか?」
やっと少し落ち着いたパトリックさんに、ジャニスが手を差し伸べる。
「あ、あぁ、悪い」
ジャニスの手を借り、体を起こすと、パトリックさんは喉をさすりながら、辺りをに目を向けた。
どうやらロビンさんを探しているようだ。
「くそっ、どこに行った?いい笑い者じゃねぇか・・・なんだってんだ」
「やり過ぎだけど、私もロビンさんと同じ気持ちですよ。ちょっと・・・ムカっとはしたから」
ジャニスは、自分より頭一つ程背の高いパトリックさんを見上げている。その視線には、少しだが責めるような色が見えた。
「私達も付き合いは短いけど、ヤヨイさんはパトリックさんが思ってるより、純粋で優しくて、何より人の痛みが分かる人ですよ。それはもう、臆病なくらい・・・・・ロビンさんが話してた通り、パトリックさんが緊張して女の人と全く話せなくなる事も分かった上で、会ってもいい、じゃなくて、私でよければ紹介してください、こう言ったのよ?パトリックさん・・・・・考えてみて?」
ジャニスの言葉を受け、パトリックさんは視線を逸らし、口を閉ざしてしまった。
そんなパトリックさんを見て、ジャニスは溜息をつき右手を振り上げると、そのまま思い切りパトリックさんのお尻を叩いた。
「痛っ!ジャニス!?なにするんだよ!?」
「座ってください」
「はっ!?何言って・・・」
「座ってください」
ジャニスはパトリックさんには目も向けずに腰を下ろすと、自分の隣の場所を手の平で叩きながら、感情のこもらない口調で言葉を発した。
その迫力に、パトリックさんもそれ以上口答えする事ができず、黙ってジャニスの隣に腰を下ろした。
俺もうかつに口を挟めない雰囲気に、ただ黙って成り行きを見守るしかなかった。
2分か3分か、5分程度か・・・短いような、長いような、沈黙が苦痛になりそうな時間が過ぎた頃、
軽い溜息が聞こえたと思うと、ジャニスが口を開いた。
「・・・パトリックさん。少しは気持ちの整理ができましたか?」
「・・・あぁ、悪かったな」
ジャニスもパトリックさんも、互いに視線は合わせず、前を向いたまま言葉を口にした。
パトリックさんの口調から、だいぶ気持ちが落ち着いているように感じられる。
「良かった。それじゃあ、もう一度言いますけど、ヤヨイさんとの事、本気で考えてみてください。
会った事も無い人なので、想像しにくいと思いますけど、ロビンさんがあれほど気持ちを持ってる人なんです。パトリックさんの事情は全て承知してるんです。きっと、ヤヨイさんはパトリックさんが何も話さなくても、居心地の良い時間をくれると思いますよ。だから、時間をかけた付き合いができるはずです。私は・・・ヤヨイさんにも、パトリックさんにも幸せになって欲しいです」
「・・・ジャニス・・・・・フッ、ハハ、本当にお前はすごいな」
「え?パトリックさん、急に笑って気持ち悪いですよ?」
「おい!そりゃないだろ!」
冷たく突き放すジャニスに、パトリックさんが抗議の声を上げる。
「フフ・・・冗談ですよ。ちょっとは前向きになれましたか?」
ジャニスがからかうように、片目を瞑って笑いかけると、パトリックさんは頭をかるく掻き、少しふてくされたようにも見えたが、しっかりと言葉を返してきた。
「あぁ、ありがとよ・・・こんだけ言われて、やっと分かった気がする。お前と父さんにそこまで言わせる人なんだから、興味が出て来た。ヤヨイさんに会ってみるよ・・・帰ったら、パトリックがぜひ会いたいって言ってたと伝えてくれ。日取りと場所は希望が無ければ、こっちで考えるよ」
「良かった。じゃあ、帰ったらヤヨイさんにそう伝えておきます。フフ・・・パトリックさん、あなたが思ってる以上に綺麗な人だから、期待してくださいね?このスケベ!」
そう言って、ジャニスは肘でパトリックさんの脇腹を軽くつつきだした。。
パトリックさんは、急にスケベなんて言われて、え!?なんで!?と、戸惑いながら、体を捻ってジャニスの肘を避けようとしている。
ジャニスの人柄とでも言うだろうか、人を説得したり、前向きな気持ちにさせたり、こういうところは本当にすごいと思う。
この闘技場は、身分で見れる場所が決まっている。
1階層は貴族達、2階層は富裕層、3階層が一般市民。そして、これとは別に王族は1階に特別席が用意されている。
俺とジャニスは、師匠の弟子という立場でもあるので、1階層で見る事が許されている。
「ウィッカー、私も初めて見るけど・・・なんか、すごいね・・・」
1階層で席に通された俺達は、試合前から盛り上がりを見せている観客達の熱気に驚かされていた。
貴族達は大声を出したりせず、静かに試合開始を待っているが、2階層と、とくに3階層は、師匠の名前を叫ぶ人達や、早く始めろというヤジやら、とにかく大きな声が飛び交い、主役のいない試合場を盛り上げていた。
「あぁ・・・噂には聞いてたけど、思ってたよりずっとすごいな。師匠はこんなところで10年も勝ち続けていたのか」
「お、いたいた。ウィッカー、ジャニス」
俺とジャニスが2階、3階の盛り上がりに目を奪われていると、ふいに後ろから声をかけられた。
振り返ると、ロビンさんが右手を軽く上げ、俺とジャニスに笑いかけながら、俺の隣に腰を下ろした。
「ロビンさん、こんにちは。応援に来てくれたんですね」
俺が挨拶をすると、ロビンさんは、当たり前だ、と笑って答えてくれた。
「ブレンダン様には、私も本当にお世話になったからな。お前達のように、直接の弟子ではないが、沢山の事を教わってここまでこれた。応援するのは当たり前じゃないか」
「そんな事言って、本当はヤヨイさんもいるかと思って来たんじゃないんですか~?」
ジャニスがからかうような目を向けると、ロビンさんは少し慌てたように、言葉をつっかえながら否定した。
「い、いや、ジャニス、そんな事はないぞ!私は純粋にブレンダン様を応援する気持ちで来た・・・・・・で、ヤヨイさんはいらっしゃるのか?」
「いません」
ジャニスは間髪入れずに否定の言葉を口にした。
「ロ、ロビンさん、そんな肩落とさないでって・・・あれ、パトリックさんも来てたんですね?」
分かりやすいくらい、肩を落としてうな垂れるロビンさんに声をかけていると、ロビンさんの息子のパトリックさんの姿が視界に入った。
「おう、ウィッカー、ジャニス、ここ座らせてもらうぜ」
父親のロビンさんに比べると少し背は低いが、177~8cmくらいはある。ロビンさんは、魔法使いには珍しいくらいの筋肉質だが、パトリックさんが平均的な普通の魔法使いの体系だ。
父親似の彫りの深い顔立ちだが、どこか愛嬌のある目鼻が柔らかい印象を与えている。
肩まで伸びた長い、母親譲りのシルバーグレーの髪は首の後ろで結び留めていた。
「親父、なにへこんでんだよ?」
ジャニスの隣に腰を下ろしたパトリックさんは、肩を落としているロビンさんを見て、首を傾げた。
今日はヤヨイさんがいなくて、ロビンさんが残念がっていたと説明をすると、話しの流れから、パトリックさんがこの縁談に対しての、自分の考えを口にし始めた。
「・・・あぁ、その話しな。ここんとこ毎日聞かされてるよ。孤児院のヤヨイさんって人に会えって、もう耳が痛くなるくらいだ。でもよ、お前らも知っての通り、俺は、まぁ・・・無理だろ?
女の人と、仕事や友人としてなら普通に話せるのに、それが恋愛になると、どうしても緊張して全く話せない。もうさ、あんな気まずい思いしたくないんだよ。だから、お前らから断っておいてくれないか?そのヤヨイさんて人も、俺なんかに会ってもいいって言ってくれたのに悪いけど、きっと嫌な気持ちになるだけだし、お互いのためだと・・・」
「この馬鹿息子がぁッツ!」
パトリックさんが言い終わらないうちに、ロビンさんが体を起こし、俺とジャニスを挟んで座るパトリックさんに掴みかかった。
突然父親に胸倉を掴まれ、魔法使いとは思えない腕力で足が浮くほど体を持ち上げられると、苦しそうに歯を食いしばり、自分を持ち上げる父親の腕を掴み外そうともがいている。
「お前は会いもしないうちからヤヨイさんを否定するな!お前に会って嫌な気持ちになるだと!?
そんな心の狭い人では断じてない!例えご縁が無かったとして、あの人はお前という人間を否定しない!お前の事情を知った上で、自分を紹介してくださいと言ってくださったのだぞ!何がお互いのためだ!お前は最初から諦めているだけの臆病者だ!お前なんかにヤヨイさんはもったいない!」
闘技場一体に響き渡る大声に、あれほど活気づいていた場内が静まり返っていた。
場内全ての視線が集まる中、ロビンさんはパトリックさんを投げ捨てるように離すと、苦しそうに咳き込むパトリックさんを一瞥して、失礼した私は場所を変えた方がいいな、と言い残し、その場を離れた。
「・・・・・こ、怖かった・・・」
ロビンさんの姿が見えなくなると、ジャニスがポツリと言葉を漏らした。
ジャニスが、怖い、なんて言うのは聞いた事がない。それほど衝撃だったのだろう。
「うん・・・俺もびびった・・・」
そして、俺もあんな怖いロビンさんは初めてみた。
怒り過ぎな気もするが、それほどヤヨイさんを気に入っているという事だろう。
孤児院で出会ってほんの数日だけど、息子のためあれほど熱心に口説いていたのだ。
おかしな事言い方だが、息子の妻にしたい女性としての一目惚れ。みたいな感情があるのだろう。
「ゲホッ・・・う、つぅ・・・な、なんなんだよ一体・・・」
「パトリックさん、大丈夫ですか?」
やっと少し落ち着いたパトリックさんに、ジャニスが手を差し伸べる。
「あ、あぁ、悪い」
ジャニスの手を借り、体を起こすと、パトリックさんは喉をさすりながら、辺りをに目を向けた。
どうやらロビンさんを探しているようだ。
「くそっ、どこに行った?いい笑い者じゃねぇか・・・なんだってんだ」
「やり過ぎだけど、私もロビンさんと同じ気持ちですよ。ちょっと・・・ムカっとはしたから」
ジャニスは、自分より頭一つ程背の高いパトリックさんを見上げている。その視線には、少しだが責めるような色が見えた。
「私達も付き合いは短いけど、ヤヨイさんはパトリックさんが思ってるより、純粋で優しくて、何より人の痛みが分かる人ですよ。それはもう、臆病なくらい・・・・・ロビンさんが話してた通り、パトリックさんが緊張して女の人と全く話せなくなる事も分かった上で、会ってもいい、じゃなくて、私でよければ紹介してください、こう言ったのよ?パトリックさん・・・・・考えてみて?」
ジャニスの言葉を受け、パトリックさんは視線を逸らし、口を閉ざしてしまった。
そんなパトリックさんを見て、ジャニスは溜息をつき右手を振り上げると、そのまま思い切りパトリックさんのお尻を叩いた。
「痛っ!ジャニス!?なにするんだよ!?」
「座ってください」
「はっ!?何言って・・・」
「座ってください」
ジャニスはパトリックさんには目も向けずに腰を下ろすと、自分の隣の場所を手の平で叩きながら、感情のこもらない口調で言葉を発した。
その迫力に、パトリックさんもそれ以上口答えする事ができず、黙ってジャニスの隣に腰を下ろした。
俺もうかつに口を挟めない雰囲気に、ただ黙って成り行きを見守るしかなかった。
2分か3分か、5分程度か・・・短いような、長いような、沈黙が苦痛になりそうな時間が過ぎた頃、
軽い溜息が聞こえたと思うと、ジャニスが口を開いた。
「・・・パトリックさん。少しは気持ちの整理ができましたか?」
「・・・あぁ、悪かったな」
ジャニスもパトリックさんも、互いに視線は合わせず、前を向いたまま言葉を口にした。
パトリックさんの口調から、だいぶ気持ちが落ち着いているように感じられる。
「良かった。それじゃあ、もう一度言いますけど、ヤヨイさんとの事、本気で考えてみてください。
会った事も無い人なので、想像しにくいと思いますけど、ロビンさんがあれほど気持ちを持ってる人なんです。パトリックさんの事情は全て承知してるんです。きっと、ヤヨイさんはパトリックさんが何も話さなくても、居心地の良い時間をくれると思いますよ。だから、時間をかけた付き合いができるはずです。私は・・・ヤヨイさんにも、パトリックさんにも幸せになって欲しいです」
「・・・ジャニス・・・・・フッ、ハハ、本当にお前はすごいな」
「え?パトリックさん、急に笑って気持ち悪いですよ?」
「おい!そりゃないだろ!」
冷たく突き放すジャニスに、パトリックさんが抗議の声を上げる。
「フフ・・・冗談ですよ。ちょっとは前向きになれましたか?」
ジャニスがからかうように、片目を瞑って笑いかけると、パトリックさんは頭をかるく掻き、少しふてくされたようにも見えたが、しっかりと言葉を返してきた。
「あぁ、ありがとよ・・・こんだけ言われて、やっと分かった気がする。お前と父さんにそこまで言わせる人なんだから、興味が出て来た。ヤヨイさんに会ってみるよ・・・帰ったら、パトリックがぜひ会いたいって言ってたと伝えてくれ。日取りと場所は希望が無ければ、こっちで考えるよ」
「良かった。じゃあ、帰ったらヤヨイさんにそう伝えておきます。フフ・・・パトリックさん、あなたが思ってる以上に綺麗な人だから、期待してくださいね?このスケベ!」
そう言って、ジャニスは肘でパトリックさんの脇腹を軽くつつきだした。。
パトリックさんは、急にスケベなんて言われて、え!?なんで!?と、戸惑いながら、体を捻ってジャニスの肘を避けようとしている。
ジャニスの人柄とでも言うだろうか、人を説得したり、前向きな気持ちにさせたり、こういうところは本当にすごいと思う。
0
お気に入りに追加
141
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。
▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ......
どうしようΣ( ̄□ ̄;)
とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!!
R指定は念のためです。
マイペースに更新していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる