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【143 三日間】
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それからの試合までの三日間は、穏やかな日が流れた。
師匠が帰ってきたので、俺は家に帰り、孤児院には通いで来るようにした。
朝食を家で済ませ、それから孤児院に向かうと、着くのはだいたい八時頃になる。
その頃には、子供達も食事を済ませているので、騒がしくなる時間帯だ。
メアリーも同じ通いだが、メアリーはとにかく早い。
6時には孤児院に付いて、朝食の準備に取り掛かっているのだ。
ジャニスとヤヨイさんも早いが、それでも起きるのが6時なので、朝食作りはメアリーに任せて、その間に子供達を起こして、着替えをさせたりトイレに連れて行ったりしている。
俺も孤児院に泊まりの時は、男の子達の面倒は見ていたが、基本的には通いなので、毎朝手伝いができるわけではない。
これまで、朝食はジャニスが作り、キャロルが子供達を起こしていたのだが、メアリーとヤヨイさん、大人が二人増えた事で、ずいぶん負担が軽くなったと話している。
だから、10歳のキャロルには、もう少しゆっくりしてもらおうという話しになったようで、
朝は自分の支度を優先してやって、余裕があったらスージーとチコリにミルクを上げる。という事になった。
メアリーは俺が自宅で朝食を済ませて来る事が、少し寂しいと話している。
できれば、一緒に食卓を囲みたいそうだ。
メアリーのご飯は美味しいから、食べたい気持ちはもちろんある。
俺は実家暮らしで、母親が朝食を用意してくれるので、朝起きればいつも準備ができている。
でも、俺ももう大人なので、孤児院でご飯を食べると言えば、あらそう、の一言が返ってくるだけだろうし、親の負担も減って楽なのだろうが、そうすると、朝一時間は早く孤児院に来なければならない。
これが少しキツかった。
孤児院に泊まりの時は頑張って早起きするが、できれば朝はゆっくりしたい。
それを正直に話してみようとしたが、なんとなくメアリーが拗ねる姿が想像できたので、やめておいた。
メアリーが拗ねたり、泣きそうになると、なぜかいつもトロワが現れて、とにかく責められるのだ。
あれも勘弁してほしい。
なので俺は、できるだけ来れる時は来るようにする。そう答えた。
メアリーはの良いところは、前向きなところだと思う。
俺は、できるだけ来れる時は来るようにする、なんてはぐらかすような言い方をしたのに、
とても喜んで、じゃあ絶対毎日来たくなるくらい、美味しいご飯を用意して待ってます!
そう笑顔で言葉を返したのだ。
その真っ直ぐで純粋な言葉に、俺ははぐらかすような言い方をした自分が恥ずかしくなった。
メアリーは嘘を付かない。
俺がかまわないと、いじけたり、拗ねる事はあるけど、いつも明るくて真っ直ぐで、メアリーと話していると、俺も元気をもらえているような気持ちになる。
少しづつ、俺はメアリーに惹かれていた
俺もメアリーのように、人に元気を分けてあげれるような人間になれればと思うけど、まずはメアリーの気持ちに真っ直ぐ向き合えるように、はぐらかしたり、嘘を付く事はしないように気を付けようと思う。
ヤヨイさんが、パトリックさんに会ってもいいと答えたのは衝撃だった。
この三日間、ロビンさんは毎日孤児院に来た。
表向きは、師匠が心配だから、試合当日までは毎日様子を見に来ると話していたけど、ヤヨイさんに会いに来ているのは明白で、実に分かりやすかった。
さすがに距離感はわきまえたようで、ぐいぐい近づきはしなかったが、帰りがけには必ず、ぜひ一度パトリックに会ってください、と言って頭を下げていくのだ。
それが、一日、二日と続き、三日目・・・
いつものようにロビンさんが、玄関に見送りに立つヤヨイさんに、ぜひ一度、パトリックに会ってください。そう言って頭を下げる。
はい、私でよければ、ぜひご紹介くださいませ
笑顔でそう口にしたのだ
俺もジャニスも師匠もメアリーも、みんな驚いてヤヨイさんの顔を凝視してしまう程だった。
そして、一番驚いていたのは、ロビンさんだったのだろう。
まるで、ヤヨイさんの言葉など耳に入っていないかのように、では今日はこれで、と言って一礼すると、そのまま出て行ってしまったのだ。
さすがに、俺達もヤヨイさんも、予想外の事に唖然として、ロビンさんの出て行った玄関を、無言で見つめてしまった。
だが、すぐに叩き付けるかのように玄関が開かれた。
血相をかえ、興奮したように息を切らせたロビンさんが、
ヤヨイさん!いまなんとーッツ!?
と、院内に響き渡る大声を出し、やかましい!と、師匠に頭を叩かれていた。
なぜ、会ってくれる気持ちになったのか、ヤヨイさんはロビンさんの問いに、自分の正直な気持ちを話していたと思う。
記憶を無くした自分にかけてくれた言葉が嬉しかった事
自分もそれほど積極的ではないから、似た者同士で相性も良いのではと思った事
なにより、毎日熱心に話しかけてくれるロビンさんに、ヤヨイさんはだいぶ心を開いていたようだ。
ロビンさんが、強面の外見とは裏腹に、子煩悩で一生懸命なところや、メアリーに対して見せた思いやりなど、ロビンさんの人柄を通して、パトリックさんを見ていたとも話した。
ロビンさんの息子さんなら、きっととても優しい人なんだろうと
ヤヨイさんの言葉を聞くと、感極まったロビンさんは、ヤヨイさんの手を取り、何度も何度も、ありがとうと感謝の言葉を口にした。
ヤヨイさんも、ロビンさんのこういう、ぐいぐい来る行動は慣れてきたようで、お会いできる日を楽しみにしております。と、優しく言葉をかけていた。
ロビンさんが帰った後、女同士の話しがあるので~、と言って戸惑うヤヨイさんを、いいからいいから、と二階に連れて行くジャニスとメアリーの顔は、とても楽しそうに笑っていた。
この流れなら多分、恋愛話しでもして花を咲かすのだろう。
そう思って、二階に上がる三人を見送っていると、キャロルが俺の隣に立ち、三人の後ろ姿と、俺を交互に見ている。
なんとなく分かった気がして、キャロルもまざりたいの?と聞くと、うん!とハッキリ頷いたので、俺はしばらくの間、師匠と二人で子供達を見る事になった。
師匠が帰ってきたので、俺は家に帰り、孤児院には通いで来るようにした。
朝食を家で済ませ、それから孤児院に向かうと、着くのはだいたい八時頃になる。
その頃には、子供達も食事を済ませているので、騒がしくなる時間帯だ。
メアリーも同じ通いだが、メアリーはとにかく早い。
6時には孤児院に付いて、朝食の準備に取り掛かっているのだ。
ジャニスとヤヨイさんも早いが、それでも起きるのが6時なので、朝食作りはメアリーに任せて、その間に子供達を起こして、着替えをさせたりトイレに連れて行ったりしている。
俺も孤児院に泊まりの時は、男の子達の面倒は見ていたが、基本的には通いなので、毎朝手伝いができるわけではない。
これまで、朝食はジャニスが作り、キャロルが子供達を起こしていたのだが、メアリーとヤヨイさん、大人が二人増えた事で、ずいぶん負担が軽くなったと話している。
だから、10歳のキャロルには、もう少しゆっくりしてもらおうという話しになったようで、
朝は自分の支度を優先してやって、余裕があったらスージーとチコリにミルクを上げる。という事になった。
メアリーは俺が自宅で朝食を済ませて来る事が、少し寂しいと話している。
できれば、一緒に食卓を囲みたいそうだ。
メアリーのご飯は美味しいから、食べたい気持ちはもちろんある。
俺は実家暮らしで、母親が朝食を用意してくれるので、朝起きればいつも準備ができている。
でも、俺ももう大人なので、孤児院でご飯を食べると言えば、あらそう、の一言が返ってくるだけだろうし、親の負担も減って楽なのだろうが、そうすると、朝一時間は早く孤児院に来なければならない。
これが少しキツかった。
孤児院に泊まりの時は頑張って早起きするが、できれば朝はゆっくりしたい。
それを正直に話してみようとしたが、なんとなくメアリーが拗ねる姿が想像できたので、やめておいた。
メアリーが拗ねたり、泣きそうになると、なぜかいつもトロワが現れて、とにかく責められるのだ。
あれも勘弁してほしい。
なので俺は、できるだけ来れる時は来るようにする。そう答えた。
メアリーはの良いところは、前向きなところだと思う。
俺は、できるだけ来れる時は来るようにする、なんてはぐらかすような言い方をしたのに、
とても喜んで、じゃあ絶対毎日来たくなるくらい、美味しいご飯を用意して待ってます!
そう笑顔で言葉を返したのだ。
その真っ直ぐで純粋な言葉に、俺ははぐらかすような言い方をした自分が恥ずかしくなった。
メアリーは嘘を付かない。
俺がかまわないと、いじけたり、拗ねる事はあるけど、いつも明るくて真っ直ぐで、メアリーと話していると、俺も元気をもらえているような気持ちになる。
少しづつ、俺はメアリーに惹かれていた
俺もメアリーのように、人に元気を分けてあげれるような人間になれればと思うけど、まずはメアリーの気持ちに真っ直ぐ向き合えるように、はぐらかしたり、嘘を付く事はしないように気を付けようと思う。
ヤヨイさんが、パトリックさんに会ってもいいと答えたのは衝撃だった。
この三日間、ロビンさんは毎日孤児院に来た。
表向きは、師匠が心配だから、試合当日までは毎日様子を見に来ると話していたけど、ヤヨイさんに会いに来ているのは明白で、実に分かりやすかった。
さすがに距離感はわきまえたようで、ぐいぐい近づきはしなかったが、帰りがけには必ず、ぜひ一度パトリックに会ってください、と言って頭を下げていくのだ。
それが、一日、二日と続き、三日目・・・
いつものようにロビンさんが、玄関に見送りに立つヤヨイさんに、ぜひ一度、パトリックに会ってください。そう言って頭を下げる。
はい、私でよければ、ぜひご紹介くださいませ
笑顔でそう口にしたのだ
俺もジャニスも師匠もメアリーも、みんな驚いてヤヨイさんの顔を凝視してしまう程だった。
そして、一番驚いていたのは、ロビンさんだったのだろう。
まるで、ヤヨイさんの言葉など耳に入っていないかのように、では今日はこれで、と言って一礼すると、そのまま出て行ってしまったのだ。
さすがに、俺達もヤヨイさんも、予想外の事に唖然として、ロビンさんの出て行った玄関を、無言で見つめてしまった。
だが、すぐに叩き付けるかのように玄関が開かれた。
血相をかえ、興奮したように息を切らせたロビンさんが、
ヤヨイさん!いまなんとーッツ!?
と、院内に響き渡る大声を出し、やかましい!と、師匠に頭を叩かれていた。
なぜ、会ってくれる気持ちになったのか、ヤヨイさんはロビンさんの問いに、自分の正直な気持ちを話していたと思う。
記憶を無くした自分にかけてくれた言葉が嬉しかった事
自分もそれほど積極的ではないから、似た者同士で相性も良いのではと思った事
なにより、毎日熱心に話しかけてくれるロビンさんに、ヤヨイさんはだいぶ心を開いていたようだ。
ロビンさんが、強面の外見とは裏腹に、子煩悩で一生懸命なところや、メアリーに対して見せた思いやりなど、ロビンさんの人柄を通して、パトリックさんを見ていたとも話した。
ロビンさんの息子さんなら、きっととても優しい人なんだろうと
ヤヨイさんの言葉を聞くと、感極まったロビンさんは、ヤヨイさんの手を取り、何度も何度も、ありがとうと感謝の言葉を口にした。
ヤヨイさんも、ロビンさんのこういう、ぐいぐい来る行動は慣れてきたようで、お会いできる日を楽しみにしております。と、優しく言葉をかけていた。
ロビンさんが帰った後、女同士の話しがあるので~、と言って戸惑うヤヨイさんを、いいからいいから、と二階に連れて行くジャニスとメアリーの顔は、とても楽しそうに笑っていた。
この流れなら多分、恋愛話しでもして花を咲かすのだろう。
そう思って、二階に上がる三人を見送っていると、キャロルが俺の隣に立ち、三人の後ろ姿と、俺を交互に見ている。
なんとなく分かった気がして、キャロルもまざりたいの?と聞くと、うん!とハッキリ頷いたので、俺はしばらくの間、師匠と二人で子供達を見る事になった。
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