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94 騎士団本部へ
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騎士団の本部は、城を出てすぐだった。協会の本部も城には近いが、それ以上だ。
貴族が多く、治安部隊より優遇されているため、城にもすぐ来れるよう、歩きでほんの1~2分程度の距離だった。
協会の本部には、治安部隊が常時300人は待機しているという事だが、騎士団は数千人と規模が違う。
それだけに、騎士団の本部も協会と比べても大きさが段違いだった。
俺の身長の倍はありそうな高い外壁が、ぐるりと建物を囲んでいて、ここだけ首都から独立しているようにもに見える。
外周りで一周するにはどのくらい時間がかかるだろうか?どこまでも続いて見える外壁に、目を凝らしてしまう。
これだけ大きいので、出入り口は要所に設けられているようだ。
俺達はヴァンに付いて、一番近くの門に立った。
高く重厚な門の前は、門番であろう若い騎士の男が一人立っていたが、男にはやる気が感じられず、門の前に立ってはいるがそれだけだった。
鉄でできた甲冑を着て、長槍を持っているが、立つ事すら面倒くさそうに、槍に体重を預けて腰を曲げている。
門番としての佇まいがまるで無く、案山子が甲冑を着て、長槍を持っている位の存在感しかなかった。
「おい、お前何してんだ?」
ヴァンは門番の男の前に立つと、低く凄みのある声で問いただしながら睨みつけた。
「あ?何だお前?そのアーマー、治安部隊じゃねぇか?こっちは騎士様だぞ?口のききか・・・」
ヴァンの睨みに気圧されたのだろう。
門番はそれ以上の言葉を発する事ができず、額に汗を滲ませ、顔を歪めながら歯を食いしばっている。
「門番はその場の顔だ。お前が弛んでると、騎士団全てが弛んで見える。お前のせいで騎士団全ての評価が落ちんだよ。それを忘れるな」
ヴァン・エストラーダが来たと伝えろ、そう口にすると、門番は憎々し気にヴァンを睨み、建物の中に入って行った。
「か・・・カッケーッツ!ヴァン隊長!俺どこまでも付いて行きますよ!」
門番とのやりとりを見ていたエルウィンが、拳を握り締め声を上げた。
「へー、けっこうやるもんだね?さすが治安部隊の新隊長。あんたなら、しっかり立て直せそうだね」
レイチェルの言葉を受け、ヴァンはいつもの含み笑いをもらした。
「クックック、まぁ今のヤツは論外だが、騎士団は貴族しかいないからな、治安部隊は下に見られている。例え隊長でもな。だが・・・マルコスだけは違ったな。アイツの実力とやり方は完全に恐怖の対象だった。騎士団の連中も、マルコスには緊張感を持って対応していた。俺もせめて顔くらいは覚えてもらわないといけねぇな」
やはり、マルゴンの影響力はかなりのものだったようだ。
貴族だらけの騎士団が、マルコスには緊張感を持っていたというだけで、相当な睨みを利かせていた事が窺える。
結果として、恐怖で支配をしていた事にはなるが、隊での規律は高い水準で保たれていたし、騎士団から不当な対応をされる事も少なかったのだろうと思う。
少しすると、長身の男が建物から出て来て来た。
ヴァンの前に立つと、軽く頭を下げ、爽やかな笑みを浮かべた。
「治安部隊、新隊長のヴァン・エストラーダ様。私は、ラヴァル・レミュー。階級はシルバーです。門番に話が通っていなかったようで、大変失礼をいたしました。お許しください」
年齢は20代後半くらいだろうか。まるで絹のような艶のある綺麗な金色の長髪。中性的な顔立ちで、いかにも物語りの中の正義の騎士というイメージだ。
身に着けている甲冑は、さっきの門番と同じ物だが、着る人が違えば、印象もずいぶん違うなという見本のようだった。
よく見れば、甲冑とは言っても全身を覆うようなデザインではなく、そこそこ軽装に見えた。
下半身は腰回り、腿、膝、脛としっかり防具が当てられているが、上半身は、主に肩と胸を覆うだけの形になっている。
腕は、肘から下にガントレットを付けているが、上腕部分には防具は当てられていない。
どことなく、スタイリッシュなデザインだ。
腰には高価そうな宝石が散りばめられた、やや長めの剣を携えている。
「俺は、ヴァン・エストラーダ。あんたは治安部隊に頭を下げれるんだな?」
「はい。部下が礼を失した行いをした時、上官が謝罪をする事は当然です。そこに騎士団と治安部隊という隔(へだ)てはありません」
ヴァンはレミューという男の言葉に、感心したようだった。
右手を出すと、レミューは意外そうにその手を見たが、口元に笑みを浮かべヴァンの手を握った。
「よろしく頼む。用件はマルコス・ゴンサレスへの面会だ。あと、俺はまだ隊長ではない」
「こちらこそ、よろしくお願いします。牢までは私がご案内いたします。それと、ヴァン様が新隊長という事で、固まっているそうですよ?うちの団長はそういう情報は早いんです」
レミューは、にこやかな笑みを絶やさず、門から中へ入るよう手を向け促した。
貴族が多く、治安部隊より優遇されているため、城にもすぐ来れるよう、歩きでほんの1~2分程度の距離だった。
協会の本部には、治安部隊が常時300人は待機しているという事だが、騎士団は数千人と規模が違う。
それだけに、騎士団の本部も協会と比べても大きさが段違いだった。
俺の身長の倍はありそうな高い外壁が、ぐるりと建物を囲んでいて、ここだけ首都から独立しているようにもに見える。
外周りで一周するにはどのくらい時間がかかるだろうか?どこまでも続いて見える外壁に、目を凝らしてしまう。
これだけ大きいので、出入り口は要所に設けられているようだ。
俺達はヴァンに付いて、一番近くの門に立った。
高く重厚な門の前は、門番であろう若い騎士の男が一人立っていたが、男にはやる気が感じられず、門の前に立ってはいるがそれだけだった。
鉄でできた甲冑を着て、長槍を持っているが、立つ事すら面倒くさそうに、槍に体重を預けて腰を曲げている。
門番としての佇まいがまるで無く、案山子が甲冑を着て、長槍を持っている位の存在感しかなかった。
「おい、お前何してんだ?」
ヴァンは門番の男の前に立つと、低く凄みのある声で問いただしながら睨みつけた。
「あ?何だお前?そのアーマー、治安部隊じゃねぇか?こっちは騎士様だぞ?口のききか・・・」
ヴァンの睨みに気圧されたのだろう。
門番はそれ以上の言葉を発する事ができず、額に汗を滲ませ、顔を歪めながら歯を食いしばっている。
「門番はその場の顔だ。お前が弛んでると、騎士団全てが弛んで見える。お前のせいで騎士団全ての評価が落ちんだよ。それを忘れるな」
ヴァン・エストラーダが来たと伝えろ、そう口にすると、門番は憎々し気にヴァンを睨み、建物の中に入って行った。
「か・・・カッケーッツ!ヴァン隊長!俺どこまでも付いて行きますよ!」
門番とのやりとりを見ていたエルウィンが、拳を握り締め声を上げた。
「へー、けっこうやるもんだね?さすが治安部隊の新隊長。あんたなら、しっかり立て直せそうだね」
レイチェルの言葉を受け、ヴァンはいつもの含み笑いをもらした。
「クックック、まぁ今のヤツは論外だが、騎士団は貴族しかいないからな、治安部隊は下に見られている。例え隊長でもな。だが・・・マルコスだけは違ったな。アイツの実力とやり方は完全に恐怖の対象だった。騎士団の連中も、マルコスには緊張感を持って対応していた。俺もせめて顔くらいは覚えてもらわないといけねぇな」
やはり、マルゴンの影響力はかなりのものだったようだ。
貴族だらけの騎士団が、マルコスには緊張感を持っていたというだけで、相当な睨みを利かせていた事が窺える。
結果として、恐怖で支配をしていた事にはなるが、隊での規律は高い水準で保たれていたし、騎士団から不当な対応をされる事も少なかったのだろうと思う。
少しすると、長身の男が建物から出て来て来た。
ヴァンの前に立つと、軽く頭を下げ、爽やかな笑みを浮かべた。
「治安部隊、新隊長のヴァン・エストラーダ様。私は、ラヴァル・レミュー。階級はシルバーです。門番に話が通っていなかったようで、大変失礼をいたしました。お許しください」
年齢は20代後半くらいだろうか。まるで絹のような艶のある綺麗な金色の長髪。中性的な顔立ちで、いかにも物語りの中の正義の騎士というイメージだ。
身に着けている甲冑は、さっきの門番と同じ物だが、着る人が違えば、印象もずいぶん違うなという見本のようだった。
よく見れば、甲冑とは言っても全身を覆うようなデザインではなく、そこそこ軽装に見えた。
下半身は腰回り、腿、膝、脛としっかり防具が当てられているが、上半身は、主に肩と胸を覆うだけの形になっている。
腕は、肘から下にガントレットを付けているが、上腕部分には防具は当てられていない。
どことなく、スタイリッシュなデザインだ。
腰には高価そうな宝石が散りばめられた、やや長めの剣を携えている。
「俺は、ヴァン・エストラーダ。あんたは治安部隊に頭を下げれるんだな?」
「はい。部下が礼を失した行いをした時、上官が謝罪をする事は当然です。そこに騎士団と治安部隊という隔(へだ)てはありません」
ヴァンはレミューという男の言葉に、感心したようだった。
右手を出すと、レミューは意外そうにその手を見たが、口元に笑みを浮かべヴァンの手を握った。
「よろしく頼む。用件はマルコス・ゴンサレスへの面会だ。あと、俺はまだ隊長ではない」
「こちらこそ、よろしくお願いします。牢までは私がご案内いたします。それと、ヴァン様が新隊長という事で、固まっているそうですよ?うちの団長はそういう情報は早いんです」
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