異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
上 下
81 / 1,350

81 セインソルボ山 ②

しおりを挟む
「・・・よし、青魔法テンパラと結界で、気温も気圧も風も問題ないな。足元の雪は俺が炎で消しながら進む。ケイトは後ろから着いてきてくれ。それと、ピッケルに付いているストラップは肩から斜めにかけてくれ。もし手を離しても無くすことは無い」

「大丈夫ですよ。ここに来るまでに散々説明受けましたから。それに・・・」

アタシはピッケルのストラップを斜め掛けにしながら、これから登る標高6636メートル、雲まで届く山を見上げた。

「・・・山をなめる気はサラサラ無いですから」




アタシと店長は、縁取りに暗めの茶色のパイピングをあしらった、フード付きの青いローブを着ている。
クインズベリー国の青魔法使いの正統な装束だ。
身に着けている間は、魔法効果の持続時間が僅かに伸びる。
店長はどの装束でもいいのだが、今回は持続時間が伸びるという理由で、青のローブにしたようだ。


もし、青魔法使い以外が山を登るのであれば、それ相応の服装になるだろう。
でも、山登りに対して効果的な魔法が使える青魔法使いであれば、その必要はない。
アンダーウェアを着込んだりするより、軽装の方が動きやすくていい。

ブーツはしっかりと準備した。気温や気圧を調整したり、雪を溶かして進むにしても、歩く事だけは避けられない。店長が疲れたらヒールをしてくれると言っても、できるだけ疲労は抑えたい。

雪が乗っても冷えにくく暖かい、でこぼこした岩場でも足に負担がかかりにくい、少しゴツイけど、しっかりとしたブーツを選んだ。


今回、雪山に登るという事で、店長は店にあった大きめのリュックを持ち出した。
旅人用のリュックで、軽量化、汗抜けを良くするために、背中部分がメッシュ生地になっていたりと、長時間背負う時に、体にかかる負担を少なくするような作りになっている。

物の出し入れもしやすい造りで、アタシと店長はこれを背負って登る事になった。

中身は、圧縮した水を入れる魔道具のビンが数本。携帯できる食べ物。手袋。汗をかいた時のためのクリーン。着替え一式。靴下は厚いのを用意した。
発光石という、光る石がある。それを透明な筒に入れた魔道具も用意した。岩穴なんかを見る時に使うためだ。
だいたいこんなところだ。

ロープを岩壁に打って固定する道具なんかは、店長のリュックに全て入っている。




「それにしても、一人で三系統全て使えるなんて、街のリサイクルショップで治まる器でじゃないですよ?王妃様とも顔見知りだし・・・あぁ、答えなくていいですよ。察してまーす!」

山を登り始めた。
店長の後ろを歩きながら軽口をたたくと、店長は顔半分だけ振り向いた。
どこか懐かしそうに小さく笑った。


「・・・似てるな・・・」

「え?なんです?」

「いや・・・古い話だ・・・キミのそういうところ、俺の友達にどことなく似てると思ったんだ」


「・・・そうなんですか?てか、店長友達いたんですね?何にも話してくれないから、友達いないと思ってましたよ。まったく・・・もうちょっと話しましょうよ?」

「そういう遠慮の無い言い方・・・やっぱり似てるよ・・・そうだな、ケイトの言う通りだ。もう少し話すようにするよ」

「そうですよー、アタシでよけりゃ、いつでも話し聞きますからね」


それからしばらくは、店の話をして歩いた。




店の事は心配していないようだ。店長はレイチェルを一番に信頼している。
自分がいなくても、レイチェルなら大丈夫と言って今回の長期間の出張に出た。

ミゼルは少し頼りないところし、私生活がだらしないけど仕事は真面目だ。
意外と物知りだし、痒い所に手が届く。お金の管理や、台帳の整理、そういった仕事はミゼルにまかせれば問題ないだろう。

ジャレットは面倒見が良い。
特に、カチュア、ユーリ、リカルド、まだ10代の子達のところはよく見ている。
だからジャレットが店にいれば、体調面や、何かで悩んでいたりとか、変化に気付いてあげられるはずだ。

ジーンはアタシの個人的感情を抜きで言うと、サポートが上手い。
部門を問わず、手が足りない時はいつの間にか助けてくれている。
仕事も早いから、時間が空くとよくメインレジに立ってくれて、そのおかげで他の部門の皆が自分の作業を仕上げる事ができる。縁の下の力持ちみたいなところだ。

シルヴィアは基本的には優しいけど、一番厳しいと思う。
ミゼルもジャレットもジーンも、うちの男達は甘いから、誰かに注意する時どこかビシっとしない。
でも、シルヴィアの場合はなんと言うか、有無を言わさぬ迫力がある。
シルヴィアに注意されると、一切口答えができない。アタシも無理だ。
だから、シルヴィアがいると店に一本筋が通って、締める時は締める事ができる。


二十歳以上の年長組は、それぞれの足りないところを補って、しっかりできていると思う。
アタシも今のレイジェスのメンバーなら、心配する事は何もないのではないかと思う。


店長、よくここまで育てましたよね。尊敬します。


レイジェスのメンバーは、全員店長の弟子だ。




探索魔法サーチは複数の使い方ができる。

●対象がハッキリしていれば、頭に浮かべそれだけをピンポイントで探索する。

●対象がハッキリしない場合は、その種類全てを感知するように探索する。
今回は真実の花が目的だが、真実の花の形が分からない場合は、花という種類全てを感知して探す。

●生き物全てという使い方もできる。
この場合、人間でも動物でも、命を持って動いている全てを感知する。

なかなか便利な魔法で需要は多い。
家の中で落としたペンを探したり、行方不明者を探したり、使い方は幅広い。

得意、不得意はあるが、一般の人で範囲は10~50メートル。クインズベリーの王宮魔法使いで200~300メートルといったところだろう。


アタシは才能があったようだ。
アタシが14歳の時、ジーンがレイジェスで働きだした。アタシは毎日ジーンに会いに行った。ジーンと離れたくなかったし、ジーンの働く姿を見たかったからだ。

毎日毎日通うにアタシに、ある日店長が声をかけてきた。

【キミもここで働いてみない?】

アタシは二つ返事でその場で決めた。
ジーンと同じお店で働ける。しかも、アタシも青魔法だから、ジーンと同じ部門に配属してもらえた。
それだけでも店長には感謝している。

そして店長は、アタシを鍛えてくれた。
魔力の流れ、効果的な使い方、アタシの魔法は全て店長から教わったものだ。

【ケイトは才能があるよ。そのうち俺を抜かすと思う。その日が来るのを楽しみにしているよ】

店長は黒魔法が一番得意だ。白と青は苦手だと言っていた。
でも、その苦手な青魔法のサーチで、500メートル、アタシと同じ距離を感知できている。

アタシは毎日トレーニングを行っている。
体内の魔力を調整し、放出する。広範囲に使う場合、範囲を絞って使う場合、イメージを重ね研鑽する。

一部分では店長に並んだという自信はある。でも、追い越すことはできていない。

アタシの店長への恩返しは、きっと追い越す事だと思う。
店長は自分の力を惜しみなく伝えている。変わった人だ。普通は自分が一番でいたいのではないかと思う。

でも、店長はそういう人なんだろう。
アタシが新しい魔法を覚えたり、サーチの範囲が広がった時は、心から喜んでいたのが感じられた。

だから、アタシはこれからもトレーニングを欠かす事は無い。

いつか店長以上の青魔法使いになって、この恩を返してみせる。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界転生したならば自由でいたい〜我慢はしない!〜

脆弱心
ファンタジー
前世は苦労は自分からしてたでも何一ついい事なかった逆にそれでこの人はなんでもやってくれる便利な人扱いで都合良く使われて苦労が増えたほど。頼まれれば無碍にできなかったりした自分も悪いんだと思う、それで仕事が増えて増えて増えまくったところでポックリの35歳人生終わりで気がつくと不思議な空間まさかの異世界転生!? ご褒美ですか?今度は自由でいいですか? 我慢はもうしません! 好きに生きます!

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。 ※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。 ※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・) 更新はめっちゃ不定期です。 ※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

処理中です...