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16 米とパン
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「さぁさぁ、兄ちゃん、日本ってとこにいたんだろ?どんなとこなんだよ?」
「どんなって言われてもなぁ・・・まぁ、こことは全く違うぞ。日本には車や飛行機があって、
あ、車ってのは地面を高速で走る大きな鉄の塊で、飛行機ってのは空を高速で飛ぶ巨大な鉄の塊な」
「マジかよ!?なんだそれ!?鉄の塊が地面走って、空を飛ぶのか!?」
「そうそう。どっちも人を乗せて移動する手段なんだよ。あと電話ってのがあって遠くに離れた人と、自由に会話ができるんだ。声だけ飛ばす感じかな」
「あ、それなら写しの鏡と似てるかも」
リカルドと話をしていると、カチュアがトレーにオムライスを乗せて持って来た。
はいどうぞ、と目の前に置かれたオムライスは、2人前くらいはありそうな量だったが、
リカルドの皿には俺の倍はありそうな、とても大きなオムライスが乗せられていた。
「冷凍のブロッコリーもあったから、玉ねぎとハムで炒めてみたよ」
小皿に乗せて配ると、カチュアは俺の隣のイスに腰を下ろした。
「お!こりゃまたうまそうだな!いっただっきまーす!」
そう言うなり、リカルドがガツガツとオムライスを食べ始めた。
「スゲーな、あの量食えるのか?」
テレビで見た大食い選手のようなスピードでかきこむ姿に、呆気にとられてしまう。
「リカルド君って、このくらいはいつも食べてるよ。アラタ君は普通の大盛りにしたけど、大丈夫かな?」
「そうだな。これくらいなら食べれるかな、美味そうだし。じゃあ、いただきます」
見るからにふわふわのオムライスはとても美味しそうだ。
ソースとバターの香りにも食欲を刺激される。
早速スプーンを入れ、とろりとした半熟の卵を乗せて口に運ぶ。
「・・・」
「・・・ア、アラタ君、口に合わなかった?」
黙って口を動かしている俺を、カチュアが心配そうに覗き見る。
「・・・めっちゃ美味い・・・日本で食べたオムライスより、ずっと美味い!カチュアすごいな!」
「もー!びっくりさせないでよ!いきなり黙るんだもん!美味しくないのかなって思った!」
「兄ちゃん、カチュアとレイチェルのメシは美味いんだぜ、なめんなよ」
すでに半分程食べたリカルドが、水を飲みながら口を挟んできた。
確かに昨晩の焼き魚、朝の目玉焼きとトーストも、焼き加減など丁度良く家庭的な落ち着いた味だった。
一見簡単そうに見えるものほど腕前が分かるというし、レイチェルも料理が得意なのだろう。
「シルヴィアさんも料理上手だよ」
「いや、アレはメシじゃねぇ。おやつだ」
リカルドが手を振って即否定すると、カチュアが不思議そうに首をかしげる。
「おやつって、お菓子作りが得意って事か?」
「そうじゃねぇ、そういう意味じゃねぇんだ兄ちゃん。そりゃ、シルヴィアはお菓子も作れるよ。
こないだなんかドーナツ作って持ってきたんだ。みんな喜んだよ。俺も美味しくいただきました。
でもよ、昼にクロワッサンで午後働けるか?
夜にフルーツサンドで今日も1日頑張ったって満足できるか?
シルヴィアはパンしか食わねぇんだよ。ドーナツとかプリンとか、お菓子も作るし食べるよ。
うまいよ。俺も甘いの好きだし食べるよ。でもよ、主食がパンなんだよ。
んで、俺にもパン食わせるんだ。いっつもパン!絶対パン!米出せよ米!」
両手をテーブルに付いて身を乗り出し力説するリカルドに、俺もカチュアもたじろいでしまう。
リカルドはご飯に並々ならぬこだわりがあるのか、いや、俺も朝はパンでもいいが、昼や夜はラーメンやご飯が食べたい。なにかに付けてパンだとうんざりしてしまうかもしれない。
そう考えると、リカルドの気持ちが分からないでもない。
「だから俺は基本的に昼休憩は外食にしてんだ。弁当なんか作れねぇし、外で買おうとするとシルヴィアがパン持ってくるからな」
フンと鼻を鳴らし、残りのオムライスをかきこみ始めた。
「えー、シルヴィアさんのパン美味しいのに。リカルド君が一人暮らしだから、心配していつも作ってくれるんだよ?お姉ちゃんみたいでいいじゃない」
「だから!俺はご飯にしてくれってハッキリ言ってんだぞ!なんでパン作ってくんだよ!?嫌がらせか!?」
「ちょっと!ご飯飛ばさないでよ!もー、そこはシルヴィアさんの譲れないところなんだよ。リカルド君がパン食べればいいだけなのに」
「だから!嫌いじゃないし食うよ!でも朝も昼も夜もパン持って来んだぞ!?譲れよ!一食くらい譲れよ!」
リカルドはかなり感情的になっているが、それほどパンが続いたという事だろう。
カチュアは好意的だが、食事の好みや食べる量というのもある。これはしかたない事だろう。
「なぁ、兄ちゃんはそう思うだろ?三食パンはありえねぇだろ?」
「え!?いや、そこまでは言えないけど、俺は米も好きだし、パンもいいと思うよ」
突然リカルドに話を振られ、一瞬戸惑ってしまう。
どちらかと言えば、俺は米の方が好きだが、シルヴィアさんを否定する物言いはしたくない。
どっちつかずの返事にリカルドは不満そうだが、それ以上この話を続ける事もなく、
オムライスの残りを食べ始めた。
「どんなって言われてもなぁ・・・まぁ、こことは全く違うぞ。日本には車や飛行機があって、
あ、車ってのは地面を高速で走る大きな鉄の塊で、飛行機ってのは空を高速で飛ぶ巨大な鉄の塊な」
「マジかよ!?なんだそれ!?鉄の塊が地面走って、空を飛ぶのか!?」
「そうそう。どっちも人を乗せて移動する手段なんだよ。あと電話ってのがあって遠くに離れた人と、自由に会話ができるんだ。声だけ飛ばす感じかな」
「あ、それなら写しの鏡と似てるかも」
リカルドと話をしていると、カチュアがトレーにオムライスを乗せて持って来た。
はいどうぞ、と目の前に置かれたオムライスは、2人前くらいはありそうな量だったが、
リカルドの皿には俺の倍はありそうな、とても大きなオムライスが乗せられていた。
「冷凍のブロッコリーもあったから、玉ねぎとハムで炒めてみたよ」
小皿に乗せて配ると、カチュアは俺の隣のイスに腰を下ろした。
「お!こりゃまたうまそうだな!いっただっきまーす!」
そう言うなり、リカルドがガツガツとオムライスを食べ始めた。
「スゲーな、あの量食えるのか?」
テレビで見た大食い選手のようなスピードでかきこむ姿に、呆気にとられてしまう。
「リカルド君って、このくらいはいつも食べてるよ。アラタ君は普通の大盛りにしたけど、大丈夫かな?」
「そうだな。これくらいなら食べれるかな、美味そうだし。じゃあ、いただきます」
見るからにふわふわのオムライスはとても美味しそうだ。
ソースとバターの香りにも食欲を刺激される。
早速スプーンを入れ、とろりとした半熟の卵を乗せて口に運ぶ。
「・・・」
「・・・ア、アラタ君、口に合わなかった?」
黙って口を動かしている俺を、カチュアが心配そうに覗き見る。
「・・・めっちゃ美味い・・・日本で食べたオムライスより、ずっと美味い!カチュアすごいな!」
「もー!びっくりさせないでよ!いきなり黙るんだもん!美味しくないのかなって思った!」
「兄ちゃん、カチュアとレイチェルのメシは美味いんだぜ、なめんなよ」
すでに半分程食べたリカルドが、水を飲みながら口を挟んできた。
確かに昨晩の焼き魚、朝の目玉焼きとトーストも、焼き加減など丁度良く家庭的な落ち着いた味だった。
一見簡単そうに見えるものほど腕前が分かるというし、レイチェルも料理が得意なのだろう。
「シルヴィアさんも料理上手だよ」
「いや、アレはメシじゃねぇ。おやつだ」
リカルドが手を振って即否定すると、カチュアが不思議そうに首をかしげる。
「おやつって、お菓子作りが得意って事か?」
「そうじゃねぇ、そういう意味じゃねぇんだ兄ちゃん。そりゃ、シルヴィアはお菓子も作れるよ。
こないだなんかドーナツ作って持ってきたんだ。みんな喜んだよ。俺も美味しくいただきました。
でもよ、昼にクロワッサンで午後働けるか?
夜にフルーツサンドで今日も1日頑張ったって満足できるか?
シルヴィアはパンしか食わねぇんだよ。ドーナツとかプリンとか、お菓子も作るし食べるよ。
うまいよ。俺も甘いの好きだし食べるよ。でもよ、主食がパンなんだよ。
んで、俺にもパン食わせるんだ。いっつもパン!絶対パン!米出せよ米!」
両手をテーブルに付いて身を乗り出し力説するリカルドに、俺もカチュアもたじろいでしまう。
リカルドはご飯に並々ならぬこだわりがあるのか、いや、俺も朝はパンでもいいが、昼や夜はラーメンやご飯が食べたい。なにかに付けてパンだとうんざりしてしまうかもしれない。
そう考えると、リカルドの気持ちが分からないでもない。
「だから俺は基本的に昼休憩は外食にしてんだ。弁当なんか作れねぇし、外で買おうとするとシルヴィアがパン持ってくるからな」
フンと鼻を鳴らし、残りのオムライスをかきこみ始めた。
「えー、シルヴィアさんのパン美味しいのに。リカルド君が一人暮らしだから、心配していつも作ってくれるんだよ?お姉ちゃんみたいでいいじゃない」
「だから!俺はご飯にしてくれってハッキリ言ってんだぞ!なんでパン作ってくんだよ!?嫌がらせか!?」
「ちょっと!ご飯飛ばさないでよ!もー、そこはシルヴィアさんの譲れないところなんだよ。リカルド君がパン食べればいいだけなのに」
「だから!嫌いじゃないし食うよ!でも朝も昼も夜もパン持って来んだぞ!?譲れよ!一食くらい譲れよ!」
リカルドはかなり感情的になっているが、それほどパンが続いたという事だろう。
カチュアは好意的だが、食事の好みや食べる量というのもある。これはしかたない事だろう。
「なぁ、兄ちゃんはそう思うだろ?三食パンはありえねぇだろ?」
「え!?いや、そこまでは言えないけど、俺は米も好きだし、パンもいいと思うよ」
突然リカルドに話を振られ、一瞬戸惑ってしまう。
どちらかと言えば、俺は米の方が好きだが、シルヴィアさんを否定する物言いはしたくない。
どっちつかずの返事にリカルドは不満そうだが、それ以上この話を続ける事もなく、
オムライスの残りを食べ始めた。
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