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07 思い

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今出勤しているのはレイチェルを含め、補助魔法のジーン、武器担当のリカルド、回復魔法のカチュア、攻撃魔法のミゼルの5人のようだ。
他にも従業員はいるが、まだ出勤していないそうだ。

この世界にも時計はあるようで、時間の感覚も日本と同じ感覚のようだ。
だが、日本人と比べて時間に寛容で5分、10分の遅刻などは咎められないようだ。
日本人は働き過ぎと言われているが、心の余裕も無くなっている人が多いのかもしれない。

「レイチェルの担当は何なんだ?」

一通り店内を案内してもらった後、俺とレイチェルは事務所内のテーブルで向かい合って話をした。
事務所内は簡素だった。

一応ロッカーはあるが、ホームセンターで売っているカラーボックスのような物で、扉は無く、
小学生の時の、ランドセルを入れるロッカーを思い出した。
弁当や着替え程度ならともかく、貴重品は置いて大丈夫か?と心配になる。信用だろうか?

そして、今俺とレイチェルが使っている横長のテーブルが置いてあるくらいだった。

「私は武器だよ。あ、剣とかナイフの接近戦用ね。弓はリカルドが専門なんだ。私も分かるけど、リカルドには敵わないからさ」

「そうなのか?同じ部門でも更に分けて担当したりするんだな」

「そうだね。基本的に同じ部門に2人担当いるんだ。もちろんみんな担当部門は全部分かるけど、やっぱり種類が多いから、物によっては自分よりできる方に任せちゃうかな」

「ちなみに、今日はまだ全部門の担当がいないでしょ?こういう時にいない部門の商品が買い取りに来たらどうなるんだ?」

「あぁ、預かって後日来てもらうよ。すぐに分かるのもあるけど、時間かかるのも多いから、2-3日待ってもらうのは普通かな」

なるほど。日本のリサイクルショップでは、その日のうちに査定を済ませる事がほとんどだ。
お客には30分程度待ってもらう事もあるが、1日かかるから明日また来てくれなんて話はそうは無い。
俺は1度だけ経験はあるが、トラックの荷台に山ほど積まれた本やら雑貨やら洋服のまとめ売りだ。
何時間もかかりそうだから、明日まで待ってと1日時間をもらった事がある。


時間の問題以外で考えられるのは、よほどの高級品か、それこそ専門的な知識が必要な特殊な商品が来た場合だろう。

レイチェルが話していた通り、ここでは専門の担当が査定を行うのだから、その都合に合わせる事が普通になっているようだ。


考えてみれば、専門の担当が納得のいく説明をして金額を提示すれば、オークションだけ見て、適当に付けられてるんじゃないのか?とか、店員によって値段が違うとか、そういった悪い評判は無さそうに思えるし、お客も安心して売る事ができる良い仕組みだ。

そう感じた事をレイチェルに話すと、レイチェルはニコリと笑って俺の背中を軽く叩いた。



午前中のうちに今いるメンバーの紹介を受け、店内も一通り回ったから、少しは店の雰囲気が分かってきた。

客層は悪くないと思う。日本のリサイクルショップでは、店内にUFOキャッチャーやゲームコーナーがあるところが多く、柄の悪い若者が騒いでいいたりする事があるが、ここはそもそもゲームが無い。

必要があって来る場所になっているから、だいたいの客がしっかりと商品を見て思案している。

また、武器や魔道具ばかりかと思いきや、男の子が好きなそうな木刀や、女の子が好きそうなお姫様の人形などもあった。

メインで扱っているのは、武器、防具、魔道具なのだろうが、リサイクルショップという以上、こういう家族層を狙った物も扱っているのだろう。新品もあるが、使用感のある中古もあった。

5~6才くらいに見える男の子が木刀を持って、両親におねだりをしていた。
父親が腰に剣を携えているところを見ると、憧れているのかもしれない。父親は優しく微笑むと、男の子と手を繋ぎ木刀を持ってレジに歩いて行った。
その隣で母親もそんな父子を微笑みながら見つめている。


昔、俺がまだ小さかった頃は、俺の両親もこんな風に可愛がってくれていたっけな。

いつからだろう、父の顔色を窺うようになったのは・・・

いつからだろう、母が俺に気を使いだしたのは・・・

弟、健太は俺と普通に接していたと思うが、両親と俺の間に入って、無理をしていたのではないだろうか・・・

懐かしさと寂しさ・・・複雑な気持ちに胸が少し痛くなった。

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