異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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06 担当者

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ここでは、各部門の担当は、それに特化した専門の知識が必要になるようだ。

当たり前の事ではあるが、意外に半端な知識で査定をしている店員は多い。

日本のリサイクルショップでは、玩具、ゲーム、CD、本、古着、雑貨など、とにかく多様に取り扱っている。

もちろん担当部門はあり、基本的には担当者がそれを取り扱うが、働いていくうちに他の分野の知識も自然と付いていき、玩具とゲームを兼務したり、古着と雑貨を兼務したりする人も多く、実際に一人一つだけの完全専門職というのはあまりいないだろう。

更に、比較的扱いの少ない、家電製品やスポーツ用品になると、特に担当が決まっておらず、その場で受付けた人間が、ネット価格だけを参考に買値を決めている店もある。
それをレイチェルに話すと、認識の違いに目を丸くした。


「本気!?それでお客さん納得して売ってくれる?」

「そうだね。いらない物を捨てるよりはって事で持って来る人も多いから、だいたいは置いてくぞ」

「うーん・・・扱ってる品物がずいぶん違うみたいだから、アラタの世界ではそれでいいのかもしれないけど、ここではそれじゃ通用しないよ。なにせ命に関わる品物が多いからさ。買ったあとにそれを売るでしょ?なにか見落としがあって、そのせいで戦死したとなると本当に大変な事になるからさ。幅広くある程度の事が分かるより、分からない事は無い特化した知識が求められるんだ」

言われてみると、確かに日本のリサイクルショップで、殺傷能力のある物はほとんど扱う事はない。
せいぜい、エアガンくらいではないだろうか。

それも店員としては玩具の範囲として考えるから、人に向けて使うかも、それで怪我をしたら、とまではなかなか考えない。
戦うための剣、身を守るための鎧として、毎日品物を扱っているからこその考えなのだろう。

「なるほど、確かにレイチェルの言う通りだな。生死に関わるなら半端な知識で査定して、半端なメンテで売り出すわけにはいかないな。」

「素直でよろしい。確かに働いていれば担当以外の知識も自然と付いてくるけど、買い取りとメンテは担当にやってもらってるよ。うん、だいたいこんなところかな、あとは働きながら教えていくよ。今日のところは掃除でもしながら、皆と話して慣れていってよ。名前と顔は覚えたかい?」

「えっと、最初に会ったのがジーンでしょ。弓をいじってたのがリカルド、魔導書っていうのか?本を読んでたのがカチュア、あと、死にそうな顔してたのがミゼル」

ジーンと別れた後、武器コーナーのカウンターで、弓をいじっていた小柄な少年を紹介された。


リカルド・ガルシア。16歳 俺より頭一つは小さい160cmくらいだろう。
16歳と言えば高校生の年齢だ。この少年もまだ幼さの残る顔立ちをしている。

透き通るようなエメラルドグリーンの瞳、無造作に後ろでまとめた同色の髪が印象的だった。
緑色の半袖に鉄の胸当て、革の手袋を付けており、肘から手首までの鉄の腕当て。
黒のロングパンツには膝から足首までの鉄の脛当てを付けている。

レイチェルから、俺が異世界から来たと聞くと、

「兄ちゃんは異世界人か!そりゃおもしれぇ!あとで色々聞かせてくれよ!」と、好奇心を抑えきれないように声を弾ませていた。


次に魔道具を扱っているコーナーを案内された。
透明瓶に入った黒い謎の液体や、お札で厳重に封がされている巻物など、いかにも危なそうな物があるかと思えば、指輪や腕輪、スカーフなど、なにかの補助系のアイテムかな?と思える物も豊富に揃っていた。


カチュア・バレンタイン。18歳 リカルドよりも少しだけ小さく見える。
レイチェルが俺を紹介すると、読んでいた本を閉じ、外側に跳ねた少しクセのあるオレンジ色の髪をいじりながら、パッチリとした薄茶色の瞳で俺を見つめてきた。


透明感のある石が付いたネックレスが、ノースリーブの白いワンピースの胸元で光っている。
日本にもいそうな女の子らしい服装をしている。


「・・・魔力は感じないから、魔法は使えないんだ?でも、なんだろ・・・不思議な感じがする・・・」

そうつぶやくと、カチュアは俺の肩や腕、体のあちこちを触りだした。

「うわっ!な、なんだよ急に!?」

「あ!ご、ごめんなさい!気になったから・・・つい、あのね魔力はやっぱり感じないけど、魔力とは違う不思議な力は感じるの。自覚ない?」

「力?いや、今のとこなにも思い当たる事はないよ。俺のいた世界じゃ、魔法って言葉はあったけど、ゲームの中だけだったし、超能力も胡散臭いのが多かったしな」

「アラタ君は他の世界から来たんだよね?こっちの世界に来る過程で、魔法とは違う、なにか特別な力を得てるんだと思う。まだ自覚がないだけで。分かったら教えてね」

レイチェルの話しでは、カチュアは気になる物があると、つい触ってしまう癖があるそうだ。
回復専門らしいが、魔法使いとしてその癖は危なくないか?と心配になってしまった。


ミゼル・アルバラード 25歳 攻撃専門の魔法使い 180cmはあるだろう長身で細身の男だ。
顔色が悪く、伸びっぱなしにしているボサボサの黒髪、不精ひげや目の下の隈が不健康な印象をより強くしている。

「ミゼル、今日も元気ないね。また眠れなかったのかい?」

「あぁ・・・レイチェルか、おはよう。全然ダメだ、朝方やっと少し寝れたけど、1時間も寝れなかったよ。やっぱり俺は眠れない呪いに殺される運命なんだ」

レイチェルが俺を紹介すると、ぼんやりとした目を向けて、気だるそうにイスから腰を上げた。

「・・・新人君、俺は眠れない呪いをかけられているから毎日が辛い。異世界から来たのなら、異世界の知識でなんとか俺を助けられないか?」

体型より一回り大きいシャツは、前ボタンをダラリと開けて、着ているというより着られている印象だ。ズボンはサイズが大きいのか、ベルトがゆるいのか、腰パンに近い状態になっている。

「・・・疲れてるんですね・・・」

力無い表情や服装の乱れから、疲れきった様子が嫌という程伝わってくる。

「そうだ・・・俺は疲れてるんだ。眠りたくてしかたないのに、なかなか眠れない。やっと寝れても呪いのせいですぐに目が覚める。俺はギリギリ死なない睡眠時間で、かろうじて生かされてるんだ」

「アラタ、ミゼルは半年くらい前から急に眠れなくなったんだって。寝れても30分とか、せいぜい1時間。原因が分からなくて、今では眠れない呪いをかけられてるって思い込んでるんだ。アラタの世界でも、こういう事ってあったりするかい?」

悲壮感漂うミゼルはカウンターに伏せて、どうせ俺は呪い殺されるんだ、と呟いている。

「呪いは分かんないけど、不眠症じゃないんですかね?」

「不眠症?」

「なんだいそれ?」

この世界では、不眠症という言葉は無いようだ。レイチェルもミゼルも初めて聞く言葉に、首をかしげている。

「えっと、俺も医者じゃないから詳しくは分からないけど、心配事があったり、生活リズムが不規則だったりすると、不眠症、眠れなくなる事があるみたいです。あ、あと酒とタバコも悪いって聞いた事あるな」

以前、テレビで見た記憶をたよりに説明すると、ミゼルはなにか思いあたるふしがあったようで、口元に手を当て目をそらし黙ってしまった。


「・・・ミゼル、そう言えばアンタちゃんと禁酒してる?タバコは?半年前だと宿屋の受付の子、クリスって言ったけ?あの子とけっこうもめて毎日イライラしてた時だよね?アンタが気を持たせる事言って、あの子本気になったんでしょ?あれ解決したって言ってたけど、本当のとこどうなの?」

淡々とした口調でレイチェルがミゼルを見下ろし問い詰める。夏の暑さを加えても、今ミゼルの頬を伝い流れ落ちる汗、シャツが変色する程体から噴き出る汗の量は尋常ではない。


「・・・レ・・レイチェルさん・・・あの、その・・・俺としては禁煙も禁酒もクリスの事も、その・・・前向きに善処して・・・」

ドンッ!ミゼルの言葉を遮るようにレイチェルはカウンターに拳を振り下ろした。

レイチェルは怒らせないようにしよう。
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