55 / 60
第2章──少年期5~10歳──
055 ヤんでしまう前に話題を変えよう
しおりを挟む「ガウ兄ガウ兄、魔法石の魔力、切れちゃう」
『あぁ、そうでしたね。せっかく愛おしい可愛いシアとお話しているのですから、もっともっとシアの可憐な声が聞きたいです。……話す事にすら制限があるなんて、本当に何度この学園を潰そうと思った事か分かりませんが通信魔法石の性能も考え直さなくてはなりませんね全く技師は何をしているのやら』
「ねぇ、ねぇ。ガウ兄、火月の休みには帰って来るんだよね?」
『えぇ、勿論ですシア。年に二回しか長期休暇がないなんて、本当にどうなっているのでしょうか。しかも二週間しかないかなんて、わたしにとって苦痛でしかないですもう学園滅ぼして良いですよねあと一年もあるなんてシアが足りない』
「シアモガクエンニイキタイナ~」
最終学年になったガウリイルは、生徒会の会長になっていると聞いている。
それなのに率先して学園を『存在しないもの』にしようとする考えに、フェリシアは思い切り心の中でつっこんだ。呆れるどころではない。
だがここで、『ダメに決まってる』と言ったところで通じないのがガウリイルだ。
フェリシアは何度も繰り返し言い続けた事で棒読みになるセリフを、再び口にする。この三年の間、本当に本当に幾度となくガウリイルに告げているのだ。
『あぁ、そうでした。シアも学園に行きたいと言っていましたね。それでは仕方がないので、今暫く形を保っていて貰わねばでした残念ですが仕方がないのですいえ本当に仕方がないでしょうか』
「ガウ兄が会長してる生徒会って、どんな事をしてるところ?」
『そうですね。学園は言わば小さな領地のようなものなので、将来の領地運営の勉強にはなります。第二学年になったマルが会計になったので、更に協力して回しています。基本的には風紀を守る役割りですが、行事や様々な役員という役割りをもった人員を使っての……』
ここでブチッ、と突如音声が途切れる。
通信魔法石と呼ばれる魔道具は蓄魔力式だが、満タンに魔力を貯めたところで三十分が限度なのだ。稼動可能時間が短く、未だ要改良点が多い。
「はぁ、やっと切れた」
「いつもながら、素晴らしい御手前でございますシア様」
溜め息を吐くフェリシアに、ミアの心からの称賛が送られた。
ガウリイルはフェリシアと会話をする為に通信してくる筈なのだが、会えない時間が長くなってくるとこうして度々ダークモードになる。それを何とか言葉巧みに誘導し、方向修正していく事で現状を維持しているのだった。
とはいえ、結局ガウリイルの言いたい事は分からなかった訳で。フェリシアに関する事で暴走するのはいつもの事なのだが、何かをこちらへ送った事しか伝わらなかった。
「……ん?」
「どうなさいましたか、シア様」
「ちょっと考え事」
新しい紅茶を入れてくれたミアが、小首を傾げたフェリシアに声を掛ける。
だが、フェリシアは先程の思考の中に引っ掛かりを覚えたのだ。
<グーリフ、もしかして……っ>
<あぁ、フェル。今ちょうど、チビ銀の魔力を纏ったリスを捕獲した>
ハッとしてグーリフにスキル【以心伝心】で聞こうとして、既に結論が出ていた。
チビ銀の魔力を纏っているならば、魔力個人認証を突破出来て当然である。そしてガウリイルが対価なしに他者へ魔力を渡す筈もなく、更にあの性格からして易々と奪われるなんて事も有り得ない。
きょうだい一、魔力操作が得意なのだ。
ラングロフ邸が魔力での個人認証をする理由を一番分かっているガウリイルなので、その辺りへの警戒心は半端ない。──『極端なフェリシア至上主義者』とも言える人物なのだ。
<そのリス、もしかしてタイ?>
<んあぁ?……頷いてやがる。何だ、まだ生きてたのか。とりあえず他には異常がなさそうだし、そっちに戻るぜ>
<うん。ありがとう、グーリフ>
かなり記憶が曖昧になっているが、確かに人化するリス──否、獣化するリス種の少年、タイが昔ラングロフに侵入して来た事があった。
あの時は最終的にガウリイルが彼の身柄を拘束した筈で、その後の経緯を聞かされていなかった為、フェリシアは完全に忘れていたのである。
「ミア。グーリフが男の子連れてくるって。あ、違うかな?リスかも」
「かしこまりました、シア様。お茶の準備をしつつ、警戒致します」
フェリシアの言葉に首肯しつつ、周囲へ意識を配った。
護衛の役割りでもあるミアは、グーリフの次に彼女の傍にいる時間が長い。戦闘向きではないものの、魔力の高さから主に防御を求められている事もあった。
回復魔法の使い手でもある為、攻撃主体のグーリフと並び、フェリシアの護りなのだ。
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
*****************************
***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。***
*****************************
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜
自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成!
理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」
これが翔の望んだ力だった。
スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!?
ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる