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第三章
10.結婚しよう【4】
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そうしてドレス選びに何日か掛け、気付けば婚儀の日になってしまいました。結局選んだのは幾重にも布地が重ねられた、でも肌の露出が少ない真っ白な光沢のあるドレスです。全体的に刺繍がされていて、シンプルですがとても美しいものでした。
本当に今日、ヴォルと実質的な夫婦になるのですよね?──全く現実味がないですけど。
「どうなされたのですか、メルシャ様」
「あ……、いえ……。何だか、現実味がなくてですね」
問われて今の心境をポツリポツリと口にしました。
問い掛けて下さったのは、身の周り最後の調整をしてくれていたガルシアさんです。鏡を見ながらボンヤリとしていた私を気遣ってくれているのですよね。
始めこそベンダーツさんとヴォルのやり取りから、お二人の対応の板挟みになっていたガルシアさんです。けれども食事会の為の礼儀作法講座辺りから、私に対するベンダーツさんの態度が微妙に軟化してきたのでしたね。
結果的に私の専属侍女さんはガルシアみたいになっていましたが、サーファさん以外の侍女さんとも少しずつ打ち解けてこれたように思います。
「このところ準備でお忙しかったですからね。マリッジブルーでしょうか。ですが、ヴォルティ様とメルシャ様はとてもお似合いですよ?あの様に優しいお顔をなされているヴォルティ様を見ると、私は感動でもう……胸が苦しくなってしまいます」
感極まったのか、ガルシアさんは既に涙ぐんでいました。──そうですよね。幼い頃からヴォルを見守ってきたガルシアさんにとっては、その感動もひとしおなのでしょう。
むしろ、相手が私なんかですみません。
「さぁ、ヴォルティ様がお待ちです。メルシャ様、参りましょうか」
「はい……」
ガルシアさんに促され、部屋から足を踏み出しました。
手足が同時に出てしまいそうになるのを、頭で必死に右左の号令を掛けて堪えます。あ~、緊張します。
ガルシアさんにドレスの後ろをサポートしてもらいながら、長い廊下の先を曲がります。
──ぅわ~……。
真っ白なタキシードに身を包んでそこに立っていたのは勿論ヴォルなのですが、スッゴク王子様でした。
ただそこに立っているだけなのですが、もう空気すらも違いますね。装飾用の細い剣を腰から下げ、濃紺の髪は全て後ろに撫で付けてありました。
「……カッコいい……」
思わず呟いてしまいました。
ハッ!?不意に我に返り、ガルシアさんを振り返ります。ん~、生暖かい目で私を見ていました。
苦笑いを浮かべそうになった私は前を向き直り、改めて見たヴォルは──真っ赤です。冷静沈着なヴォルは、既にいないようでした。
「あ……、すみません」
「……いや……………………、似合っている」
間が長っ!!──っと、そのような突っ込みをいれている場合ではありませんでした。
ヴォルってば、試着の時にも私のこの姿を見ましたよね?まぁ、こんな立派な化粧も髪の装飾もなかったですけど。
「あ、ありがとうございます。ヴォルも素敵です」
「……あぁ……」
お互いの間に流れる微妙な緊張感。
少しぎこちなくなってしまいましたが、婚儀はこれからですからね。雰囲気に負けないように気持ちを強く持っていなくてはなりません。
「行こうか、メル」
「はい、ヴォル」
腕を差し出され、自然とその上に自分の手を乗せる事が出来ました。うん、自分からヴォルに触れる事に何の違和感も緊張もしていない私でした。──むしろ、落ち着きます。
何があっても守ってくれると言う、絶対的な安心感があるからですね。
本当に今日、ヴォルと実質的な夫婦になるのですよね?──全く現実味がないですけど。
「どうなされたのですか、メルシャ様」
「あ……、いえ……。何だか、現実味がなくてですね」
問われて今の心境をポツリポツリと口にしました。
問い掛けて下さったのは、身の周り最後の調整をしてくれていたガルシアさんです。鏡を見ながらボンヤリとしていた私を気遣ってくれているのですよね。
始めこそベンダーツさんとヴォルのやり取りから、お二人の対応の板挟みになっていたガルシアさんです。けれども食事会の為の礼儀作法講座辺りから、私に対するベンダーツさんの態度が微妙に軟化してきたのでしたね。
結果的に私の専属侍女さんはガルシアみたいになっていましたが、サーファさん以外の侍女さんとも少しずつ打ち解けてこれたように思います。
「このところ準備でお忙しかったですからね。マリッジブルーでしょうか。ですが、ヴォルティ様とメルシャ様はとてもお似合いですよ?あの様に優しいお顔をなされているヴォルティ様を見ると、私は感動でもう……胸が苦しくなってしまいます」
感極まったのか、ガルシアさんは既に涙ぐんでいました。──そうですよね。幼い頃からヴォルを見守ってきたガルシアさんにとっては、その感動もひとしおなのでしょう。
むしろ、相手が私なんかですみません。
「さぁ、ヴォルティ様がお待ちです。メルシャ様、参りましょうか」
「はい……」
ガルシアさんに促され、部屋から足を踏み出しました。
手足が同時に出てしまいそうになるのを、頭で必死に右左の号令を掛けて堪えます。あ~、緊張します。
ガルシアさんにドレスの後ろをサポートしてもらいながら、長い廊下の先を曲がります。
──ぅわ~……。
真っ白なタキシードに身を包んでそこに立っていたのは勿論ヴォルなのですが、スッゴク王子様でした。
ただそこに立っているだけなのですが、もう空気すらも違いますね。装飾用の細い剣を腰から下げ、濃紺の髪は全て後ろに撫で付けてありました。
「……カッコいい……」
思わず呟いてしまいました。
ハッ!?不意に我に返り、ガルシアさんを振り返ります。ん~、生暖かい目で私を見ていました。
苦笑いを浮かべそうになった私は前を向き直り、改めて見たヴォルは──真っ赤です。冷静沈着なヴォルは、既にいないようでした。
「あ……、すみません」
「……いや……………………、似合っている」
間が長っ!!──っと、そのような突っ込みをいれている場合ではありませんでした。
ヴォルってば、試着の時にも私のこの姿を見ましたよね?まぁ、こんな立派な化粧も髪の装飾もなかったですけど。
「あ、ありがとうございます。ヴォルも素敵です」
「……あぁ……」
お互いの間に流れる微妙な緊張感。
少しぎこちなくなってしまいましたが、婚儀はこれからですからね。雰囲気に負けないように気持ちを強く持っていなくてはなりません。
「行こうか、メル」
「はい、ヴォル」
腕を差し出され、自然とその上に自分の手を乗せる事が出来ました。うん、自分からヴォルに触れる事に何の違和感も緊張もしていない私でした。──むしろ、落ち着きます。
何があっても守ってくれると言う、絶対的な安心感があるからですね。
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