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第三章
9.気が紛れると【4】
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「立場など関係ないだろう」
「ありますっ。こんな場所で公然と……くっ……、口付けなどを……っ」
変わらず淡々と答えるヴォルでしたが、ベンダーツさんの興奮具合はマックスです。怒りのあまりなのか、紅潮しながら告げられた内容でした。しかしながら即座に意味が理解出来ず。
何を?……ヴォルも私もお互いに顔を見合わせて一瞬停止──後、赤面しました。
「あれ?違いましたか?」
私達の反応を見てか、ベンダーツさんが不思議そうに問い掛けてきます。
いえいえ、当たり前ですよ。──と突っ込みたいのはやまやまですが、今は口が利ける心理状態でもないのです。
私が完全に俯いている中、ヴォルは顔を片手で覆いながらも大きく息を吐いてから告げます。
「馬鹿な事を言うな。発熱の確認していただけだ」
いつもの冷静な声ではなかったようですが、私はとても話せる状態でもなかったのですよ。言い返せるだけヴォルは大人です。
私は心臓がバクバクして、ベンダーツさんの言葉が脳内リフレーンしていました。
「熱ですか?」
「……そうだ」
「薬草の知識は教えましたが、額を合わせて体温を確認するような方法を教えた覚えはありません。そもそも良い歳をした若い男女がベタベタくっついていては、他の者に示しがつきません」
私達の反応に少しは冷静になったのか、ベンダーツさんのお説教が始まります。
何か……色々突っ込み所がありますが、とりあえず一つの問いが浮かびました。
お説教を長引かせない為にも、ここは空気を読まずに問い掛けてみましょう。
「ヴォルの薬草の知識は、ベンダーツさんからなのですか?」
「……そうだ」
「その通りです。私はヴォルティ様の教育係でもありますから」
二人からの返答に、何故だか納得してしまいます。ヴォルがベンダーツさんを嫌いながらも完全に絶縁出来ないのは、それがあるからなのですね。
ベンダーツさんは口調は鋭く冷たいですが、周りを良く見ていて確実な修正点を教えてくれます。中々好きにはなれないですけど、嫌いではなくなりました。──苦手ではありますが。
「凄いです、ベンダーツさん。私も教えてほしいです」
「何を……?」
「そうだ。それなら俺が教える」
驚くベンダーツさんに被せるように、ヴォルの言葉が響きます。
確かに旅の最中はヴォルから教わっていましたけれど。
「だってヴォルは、別にお仕事があるではないですか」
「それを言うならベンダーツもだ」
「あ、それもそうでした」
「……私は時間を作れますが」
せっかくの思い付きを否定されて項垂れた私ですが、何とベンダーツさん本人からの承諾です。
本当に?と嬉しくてパッと見上げると、隣でヴォルが苦い顔をしていました。
「ヴォル……、ダメですか?」
でも、反対するヴォルを押し切っては実行に移せません。私は伺うようにヴォルを見つめます。
「……長時間は駄目だぞ。ただでさえ他の勉強があるのだろう。自分から面倒を増やしてどうする」
否定的ではありましたが、習うなとは言わないヴォルです。
そして見つめる私に諦めてくれたのか、大きく溜め息をついきながらも認めてくれました。
「やったっ!ありがとうございます、ヴォル。他の勉強は……何とかします」
「私からガルシアに伝えましょう」
「本当ですかっ?ありがとうございます、ベンダーツさん」
小躍りしてしまう私でした。
嬉しいですっ。勉強は苦手ですけど、やりたい事と覚えさせられるものは違います。ようはヤル気ですからねっ。
「ありますっ。こんな場所で公然と……くっ……、口付けなどを……っ」
変わらず淡々と答えるヴォルでしたが、ベンダーツさんの興奮具合はマックスです。怒りのあまりなのか、紅潮しながら告げられた内容でした。しかしながら即座に意味が理解出来ず。
何を?……ヴォルも私もお互いに顔を見合わせて一瞬停止──後、赤面しました。
「あれ?違いましたか?」
私達の反応を見てか、ベンダーツさんが不思議そうに問い掛けてきます。
いえいえ、当たり前ですよ。──と突っ込みたいのはやまやまですが、今は口が利ける心理状態でもないのです。
私が完全に俯いている中、ヴォルは顔を片手で覆いながらも大きく息を吐いてから告げます。
「馬鹿な事を言うな。発熱の確認していただけだ」
いつもの冷静な声ではなかったようですが、私はとても話せる状態でもなかったのですよ。言い返せるだけヴォルは大人です。
私は心臓がバクバクして、ベンダーツさんの言葉が脳内リフレーンしていました。
「熱ですか?」
「……そうだ」
「薬草の知識は教えましたが、額を合わせて体温を確認するような方法を教えた覚えはありません。そもそも良い歳をした若い男女がベタベタくっついていては、他の者に示しがつきません」
私達の反応に少しは冷静になったのか、ベンダーツさんのお説教が始まります。
何か……色々突っ込み所がありますが、とりあえず一つの問いが浮かびました。
お説教を長引かせない為にも、ここは空気を読まずに問い掛けてみましょう。
「ヴォルの薬草の知識は、ベンダーツさんからなのですか?」
「……そうだ」
「その通りです。私はヴォルティ様の教育係でもありますから」
二人からの返答に、何故だか納得してしまいます。ヴォルがベンダーツさんを嫌いながらも完全に絶縁出来ないのは、それがあるからなのですね。
ベンダーツさんは口調は鋭く冷たいですが、周りを良く見ていて確実な修正点を教えてくれます。中々好きにはなれないですけど、嫌いではなくなりました。──苦手ではありますが。
「凄いです、ベンダーツさん。私も教えてほしいです」
「何を……?」
「そうだ。それなら俺が教える」
驚くベンダーツさんに被せるように、ヴォルの言葉が響きます。
確かに旅の最中はヴォルから教わっていましたけれど。
「だってヴォルは、別にお仕事があるではないですか」
「それを言うならベンダーツもだ」
「あ、それもそうでした」
「……私は時間を作れますが」
せっかくの思い付きを否定されて項垂れた私ですが、何とベンダーツさん本人からの承諾です。
本当に?と嬉しくてパッと見上げると、隣でヴォルが苦い顔をしていました。
「ヴォル……、ダメですか?」
でも、反対するヴォルを押し切っては実行に移せません。私は伺うようにヴォルを見つめます。
「……長時間は駄目だぞ。ただでさえ他の勉強があるのだろう。自分から面倒を増やしてどうする」
否定的ではありましたが、習うなとは言わないヴォルです。
そして見つめる私に諦めてくれたのか、大きく溜め息をついきながらも認めてくれました。
「やったっ!ありがとうございます、ヴォル。他の勉強は……何とかします」
「私からガルシアに伝えましょう」
「本当ですかっ?ありがとうございます、ベンダーツさん」
小躍りしてしまう私でした。
嬉しいですっ。勉強は苦手ですけど、やりたい事と覚えさせられるものは違います。ようはヤル気ですからねっ。
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