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第三章
6.いずれ知る事だ【4】
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「でも、ヴォルはヴォルですからね?前にも言いましたけど、例え悪い人がご両親でもヴォルはヴォルです。貴族とかそうでないかなんて血筋、そんなに大切ですか?」
話しているヴォルがあまりにも自嘲気味な笑みを浮かべるので、私ははっきりと言い切りました。
そうなのです。貧乏農村生まれの私からしたら、貴族とか皇族とか関係ありません。同じ人である事に変わらないのですよっ。
「……そうか」
小さな呟きです。でも、瞳が僅かに細められていました。それは不快さを表したものではなく、どちらかというと安堵を浮かべているように思えます。
そして何事もなかったかのように、私の先程の質問に答えてくれました。
「それを慮る者が多いのがこのセントラルだ。俺に庶民の血が流れている事を忌み嫌う者も多い。表向きは精霊に好かれた者として崇め奉られてはいるがな」
「怖がられているって言ってませんでした?」
「あぁ、恐怖の対象でもある。だが同時に、この国の人柱でもあるからだ」
ヴォルが周囲の精霊さん達に視線を向けます。精霊さん達はそれぞれが自由に部屋の中を漂っていて、中には研究道具を興味深そうに覗き込んでいる子もいました。見た目はとても可愛いです。
しかし『人柱』とは?また酷く物騒な話が出てきましたけど……。
私は視線で続きを促してしまいました。
「この国がセントラルと呼ばれる理由だ。それこそ国の中心として、魔力での対魔物対人間用の結界を張っている。過去何人もの精霊に好かれた者を柱としてだ」
「はし……ら?」
何だか話が壮大すぎてついていけません。ただ漠然と、良くないものだと感じました。
「魔力の強い者が精霊に好かれる事は話したな」
「はい……」
突然話が変わったように感じましたが、これは布石ですよね。
「その者達は強い魔力を持つが故、正常な精神を保っていられないらしい。そして人としての成長と魔力の増幅を見定め、都合の良いところで魔法石に閉じ込める。そのまま地下に守護石として安置するのだ」
他人事のように語られていました。
…………何だか凄まじすぎて、頭の中をすり抜けて行ってしまいそうです。でも相手は人間、ですよ?
「その力を使い、この国は維持されている」
「そんな……。でも、ヴォルは違いますよね?」
「どうかな。俺はとりあえず次期皇帝に推されてはいるが、皇妃に男児が生まれている。11歳下でまだ10歳だが、正妃の子供だからな。必然的に彼が皇帝になるべきだろう」
客観的にそういう意見が多いのだと、彼の言葉から伝わってきました。弟君の登場ですが、何でしょう。素直に喜べません。
これが前に聞いた事のある、ヴォルの特殊環境というものですか。
「でもそれなら何故、結婚相手を必要とするのですか?」
「…………俺の年齢もあるだろうが、周りの貴族が煩くなってきたからだ。皇帝の息子であれば多少の庶民の血は関係なく思えるのか、次期皇妃の立場が目的なのか。奴等に都合の良い話だがな」
僅かながら、不快そうに目を細めていました。
年齢ですか。確かに結婚年齢は18歳くらいが平均ですからね。それが21歳で、尚且皇帝様のご子息。でも……。
「おかしいですっ。誰もヴォルを見ていないではないですか」
「怒ってくれるのだな、メルは」
「当たり前ですよっ」
我慢出来ず、憤りをそのまま口にしました。
悔しいですよ、そんなのっ。地位とかなんてどうだって良いじゃないですか。何故もっとヴォルの事を見て、彼の事を考えてあげられないのですかねっ。
私だったら──と考えて、サッと頭から血が引くのを感じました。あ……、分かっていますよ。私は貴族ではないですし、仮の妻候補ですから。
話しているヴォルがあまりにも自嘲気味な笑みを浮かべるので、私ははっきりと言い切りました。
そうなのです。貧乏農村生まれの私からしたら、貴族とか皇族とか関係ありません。同じ人である事に変わらないのですよっ。
「……そうか」
小さな呟きです。でも、瞳が僅かに細められていました。それは不快さを表したものではなく、どちらかというと安堵を浮かべているように思えます。
そして何事もなかったかのように、私の先程の質問に答えてくれました。
「それを慮る者が多いのがこのセントラルだ。俺に庶民の血が流れている事を忌み嫌う者も多い。表向きは精霊に好かれた者として崇め奉られてはいるがな」
「怖がられているって言ってませんでした?」
「あぁ、恐怖の対象でもある。だが同時に、この国の人柱でもあるからだ」
ヴォルが周囲の精霊さん達に視線を向けます。精霊さん達はそれぞれが自由に部屋の中を漂っていて、中には研究道具を興味深そうに覗き込んでいる子もいました。見た目はとても可愛いです。
しかし『人柱』とは?また酷く物騒な話が出てきましたけど……。
私は視線で続きを促してしまいました。
「この国がセントラルと呼ばれる理由だ。それこそ国の中心として、魔力での対魔物対人間用の結界を張っている。過去何人もの精霊に好かれた者を柱としてだ」
「はし……ら?」
何だか話が壮大すぎてついていけません。ただ漠然と、良くないものだと感じました。
「魔力の強い者が精霊に好かれる事は話したな」
「はい……」
突然話が変わったように感じましたが、これは布石ですよね。
「その者達は強い魔力を持つが故、正常な精神を保っていられないらしい。そして人としての成長と魔力の増幅を見定め、都合の良いところで魔法石に閉じ込める。そのまま地下に守護石として安置するのだ」
他人事のように語られていました。
…………何だか凄まじすぎて、頭の中をすり抜けて行ってしまいそうです。でも相手は人間、ですよ?
「その力を使い、この国は維持されている」
「そんな……。でも、ヴォルは違いますよね?」
「どうかな。俺はとりあえず次期皇帝に推されてはいるが、皇妃に男児が生まれている。11歳下でまだ10歳だが、正妃の子供だからな。必然的に彼が皇帝になるべきだろう」
客観的にそういう意見が多いのだと、彼の言葉から伝わってきました。弟君の登場ですが、何でしょう。素直に喜べません。
これが前に聞いた事のある、ヴォルの特殊環境というものですか。
「でもそれなら何故、結婚相手を必要とするのですか?」
「…………俺の年齢もあるだろうが、周りの貴族が煩くなってきたからだ。皇帝の息子であれば多少の庶民の血は関係なく思えるのか、次期皇妃の立場が目的なのか。奴等に都合の良い話だがな」
僅かながら、不快そうに目を細めていました。
年齢ですか。確かに結婚年齢は18歳くらいが平均ですからね。それが21歳で、尚且皇帝様のご子息。でも……。
「おかしいですっ。誰もヴォルを見ていないではないですか」
「怒ってくれるのだな、メルは」
「当たり前ですよっ」
我慢出来ず、憤りをそのまま口にしました。
悔しいですよ、そんなのっ。地位とかなんてどうだって良いじゃないですか。何故もっとヴォルの事を見て、彼の事を考えてあげられないのですかねっ。
私だったら──と考えて、サッと頭から血が引くのを感じました。あ……、分かっていますよ。私は貴族ではないですし、仮の妻候補ですから。
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