「結婚しよう」

まひる

文字の大きさ
上 下
120 / 515
第三章

4.俺の精霊を一人つけた【3】

しおりを挟む
「精霊を一人つけたからか」

 小さく呟くヴォルです。あ……そう言えば私に、護符代わりとかって言われていました。

「本来ならば、魔力を持たないと目視出来ない」

「そうなのですか?確かに、今まで見た事はなかったです。ガルシアさんが言っていました。ヴォルにはたくさんの精霊さんがそばにいるのですよね?」

「そうだ」

 今まで聞いた事もなかったですが、これ程までにハッキリと見えると言うのは……。

「あの……。セントラルの外でも、精霊さんはいたのですか?」

「そうだ。俺から離れた事はない」

 そうなのですか。……では寝ている時も、ですよね?
 私は気付いてしまったその事実に赤面してしまいました。ヴォルと一緒の布団に入っている事、精霊さんにはずっと見られていたのですよ。私は知らなかったですけど、今とても恥ずかしいですっ。

「どうした、メル。顔が赤い」

「……恥ずかしい……です。精霊さんにずっと見られていたなんて……、どうしましょう」

 頬を押さえてうめいてしまいました。
 まぁ、今更なのでしょうけど。

「気にするな」

 事も無げに彼は言い切ります。私的にそうは言われましても……。
 と言うか、ヴォルは産まれた頃から当たり前なのですよね?……そばに居るのが普通で、彼にとっては本当に気にする事でもないのでしょう。

「でも、こんな綺麗な顔をしているのに?可愛い顔の精霊さんもいますね」

 普段から見目麗しい精霊さんの顔を見ていては、人の美醜それなんて大した事がないのかもしれません。

「精霊は俺に媚びない。造形の良し悪しは問題ないからな」

 私の言葉を受けても、彼は淡々と告げました。
 そうは言っても、世の中見目の良い方が選ばれるのが常です。本当に、ヴォルが私を選んだ理由が分かりませんね。

「それより、これはどうだ」

 話をらされました。と言うか、ヴォルにとっては本当に大した事ではなかったのでしょう。別のガラスのビンを掲げ、その中の赤い液体を私に差し出します。

「……炎……ですか?あ、チラチラと火の粉が舞っていますね」

 今度のガラスビンの中では、綺麗な赤色の液体が揺れるたびにチラチラときらめく赤い光が舞います。液体なのに、本当に不思議です。

「凄いです。こんなにも綺麗なお水に見えるのに、炎なんですね。でも本来の魔力って、液体ではないですよね?」

「そうだ。実際には形のないものだが、空気も凝縮すれば液体に変えられる」

 感心し通しの私ですが、ヴォルにとっては確信された現象みたいでした。
 そうなのですか。何やら色々な事が出来るようですね?
 これらは農村で生活していては全く知る事がなかった事でした。お話の世界だけではなく、実際の世界でも魔法の存在は様々な出来事を見せてくれるようです。

「魔法って凄いですね」

「俺には当たり前のものだから分からない。だが、メルが言うならそうなのだろう」

 ヴォルは不思議そうでしたが、赤い液体の魔力を覗き込みながら頷いています。
 人それぞれの当たり前が違う事を改めて知り、それを認める事の大切さも知りました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勘違い令嬢の心の声

にのまえ
恋愛
僕の婚約者 シンシアの心の声が聞こえた。 シア、それは君の勘違いだ。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

公爵閣下の契約妻

秋津冴
恋愛
 呪文を唱えるよりも、魔法の力を封じ込めた『魔石』を活用することが多くなった、そんな時代。  伯爵家の次女、オフィーリナは十六歳の誕生日、いきなり親によって婚約相手を決められてしまう。  実家を継ぐのは姉だからと生涯独身を考えていたオフィーリナにとっては、寝耳に水の大事件だった。  しかし、オフィーリナには結婚よりもやりたいことがあった。  オフィーリナには魔石を加工する才能があり、幼い頃に高名な職人に弟子入りした彼女は、自分の工房を開店する許可が下りたところだったのだ。 「公爵様、大変失礼ですが……」 「側室に入ってくれたら、資金援助は惜しまないよ?」 「しかし、結婚は考えられない」 「じゃあ、契約結婚にしよう。俺も正妻がうるさいから。この婚約も公爵家と伯爵家の同士の契約のようなものだし」    なんと、婚約者になったダミアノ公爵ブライトは、国内でも指折りの富豪だったのだ。  彼はオフィーリナのやりたいことが工房の経営なら、資金援助は惜しまないという。   「結婚……資金援助!? まじで? でも、正妻……」 「うまくやる自信がない?」 「ある女性なんてそうそういないと思います……」  そうなのだ。  愛人のようなものになるのに、本妻に気に入られることがどれだけ難しいことか。  二の足を踏むオフィーリナにブライトは「まあ、任せろ。どうにかする」と言い残して、契約結婚は成立してしまう。  平日は魔石を加工する、魔石彫金師として。  週末は契約妻として。  オフィーリナは週末の二日間だけ、工房兼自宅に彼を迎え入れることになる。  他の投稿サイトでも掲載しています。

竜人のつがいへの執着は次元の壁を越える

たま
恋愛
次元を超えつがいに恋焦がれるストーカー竜人リュートさんと、うっかりリュートのいる異世界へ落っこちた女子高生結の絆されストーリー その後、ふとした喧嘩らか、自分達が壮大な計画の歯車の1つだったことを知る。 そして今、最後の歯車はまずは世界の幸せの為に動く!

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

旦那様の様子がおかしいのでそろそろ離婚を切り出されるみたいです。

バナナマヨネーズ
恋愛
 とある王国の北部を治める公爵夫婦は、すべての領民に愛されていた。  しかし、公爵夫人である、ギネヴィアは、旦那様であるアルトラーディの様子がおかしいことに気が付く。  最近、旦那様の様子がおかしい気がする……。  わたしの顔を見て、何か言いたそうにするけれど、結局何も言わない旦那様。  旦那様と結婚して十年の月日が経過したわ。  当時、十歳になったばかりの幼い旦那様と、見た目十歳くらいのわたし。  とある事情で荒れ果てた北部を治めることとなった旦那様を支える為、結婚と同時に北部へ住処を移した。    それから十年。  なるほど、とうとうその時が来たのね。  大丈夫よ。旦那様。ちゃんと離婚してあげますから、安心してください。  一人の女性を心から愛する旦那様(超絶妻ラブ)と幼い旦那様を立派な紳士へと育て上げた一人の女性(合法ロリ)の二人が紡ぐ、勘違いから始まり、運命的な恋に気が付き、真実の愛に至るまでの物語。 全36話

貴妃エレーナ

無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」 後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。 「急に、どうされたのですか?」 「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」 「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」 そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。 どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。 けれど、もう安心してほしい。 私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。 だから… 「陛下…!大変です、内乱が…」 え…? ーーーーーーーーーーーーー ここは、どこ? さっきまで内乱が… 「エレーナ?」 陛下…? でも若いわ。 バッと自分の顔を触る。 するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。 懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!

処理中です...