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第三章
4.俺の精霊を一人つけた【3】
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「精霊を一人つけたからか」
小さく呟くヴォルです。あ……そう言えば私に、護符代わりとかって言われていました。
「本来ならば、魔力を持たないと目視出来ない」
「そうなのですか?確かに、今まで見た事はなかったです。ガルシアさんが言っていました。ヴォルにはたくさんの精霊さんが傍にいるのですよね?」
「そうだ」
今まで聞いた事もなかったですが、これ程までにハッキリと見えると言うのは……。
「あの……。セントラルの外でも、精霊さんはいたのですか?」
「そうだ。俺から離れた事はない」
そうなのですか。……では寝ている時も、ですよね?
私は気付いてしまったその事実に赤面してしまいました。ヴォルと一緒の布団に入っている事、精霊さんにはずっと見られていたのですよ。私は知らなかったですけど、今とても恥ずかしいですっ。
「どうした、メル。顔が赤い」
「……恥ずかしい……です。精霊さんにずっと見られていたなんて……、どうしましょう」
頬を押さえて呻いてしまいました。
まぁ、今更なのでしょうけど。
「気にするな」
事も無げに彼は言い切ります。私的にそうは言われましても……。
と言うか、ヴォルは産まれた頃から当たり前なのですよね?……傍に居るのが普通で、彼にとっては本当に気にする事でもないのでしょう。
「でも、こんな綺麗な顔をしているのに?可愛い顔の精霊さんもいますね」
普段から見目麗しい精霊さんの顔を見ていては、人の美醜なんて大した事がないのかもしれません。
「精霊は俺に媚びない。造形の良し悪しは問題ないからな」
私の言葉を受けても、彼は淡々と告げました。
そうは言っても、世の中見目の良い方が選ばれるのが常です。本当に、ヴォルが私を選んだ理由が分かりませんね。
「それより、これはどうだ」
話を逸らされました。と言うか、ヴォルにとっては本当に大した事ではなかったのでしょう。別のガラスのビンを掲げ、その中の赤い液体を私に差し出します。
「……炎……ですか?あ、チラチラと火の粉が舞っていますね」
今度のガラスビンの中では、綺麗な赤色の液体が揺れる度にチラチラと煌めく赤い光が舞います。液体なのに、本当に不思議です。
「凄いです。こんなにも綺麗なお水に見えるのに、炎なんですね。でも本来の魔力って、液体ではないですよね?」
「そうだ。実際には形のないものだが、空気も凝縮すれば液体に変えられる」
感心し通しの私ですが、ヴォルにとっては確信された現象みたいでした。
そうなのですか。何やら色々な事が出来るようですね?
これらは農村で生活していては全く知る事がなかった事でした。お話の世界だけではなく、実際の世界でも魔法の存在は様々な出来事を見せてくれるようです。
「魔法って凄いですね」
「俺には当たり前のものだから分からない。だが、メルが言うならそうなのだろう」
ヴォルは不思議そうでしたが、赤い液体の魔力を覗き込みながら頷いています。
人それぞれの当たり前が違う事を改めて知り、それを認める事の大切さも知りました。
小さく呟くヴォルです。あ……そう言えば私に、護符代わりとかって言われていました。
「本来ならば、魔力を持たないと目視出来ない」
「そうなのですか?確かに、今まで見た事はなかったです。ガルシアさんが言っていました。ヴォルにはたくさんの精霊さんが傍にいるのですよね?」
「そうだ」
今まで聞いた事もなかったですが、これ程までにハッキリと見えると言うのは……。
「あの……。セントラルの外でも、精霊さんはいたのですか?」
「そうだ。俺から離れた事はない」
そうなのですか。……では寝ている時も、ですよね?
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「どうした、メル。顔が赤い」
「……恥ずかしい……です。精霊さんにずっと見られていたなんて……、どうしましょう」
頬を押さえて呻いてしまいました。
まぁ、今更なのでしょうけど。
「気にするな」
事も無げに彼は言い切ります。私的にそうは言われましても……。
と言うか、ヴォルは産まれた頃から当たり前なのですよね?……傍に居るのが普通で、彼にとっては本当に気にする事でもないのでしょう。
「でも、こんな綺麗な顔をしているのに?可愛い顔の精霊さんもいますね」
普段から見目麗しい精霊さんの顔を見ていては、人の美醜なんて大した事がないのかもしれません。
「精霊は俺に媚びない。造形の良し悪しは問題ないからな」
私の言葉を受けても、彼は淡々と告げました。
そうは言っても、世の中見目の良い方が選ばれるのが常です。本当に、ヴォルが私を選んだ理由が分かりませんね。
「それより、これはどうだ」
話を逸らされました。と言うか、ヴォルにとっては本当に大した事ではなかったのでしょう。別のガラスのビンを掲げ、その中の赤い液体を私に差し出します。
「……炎……ですか?あ、チラチラと火の粉が舞っていますね」
今度のガラスビンの中では、綺麗な赤色の液体が揺れる度にチラチラと煌めく赤い光が舞います。液体なのに、本当に不思議です。
「凄いです。こんなにも綺麗なお水に見えるのに、炎なんですね。でも本来の魔力って、液体ではないですよね?」
「そうだ。実際には形のないものだが、空気も凝縮すれば液体に変えられる」
感心し通しの私ですが、ヴォルにとっては確信された現象みたいでした。
そうなのですか。何やら色々な事が出来るようですね?
これらは農村で生活していては全く知る事がなかった事でした。お話の世界だけではなく、実際の世界でも魔法の存在は様々な出来事を見せてくれるようです。
「魔法って凄いですね」
「俺には当たり前のものだから分からない。だが、メルが言うならそうなのだろう」
ヴォルは不思議そうでしたが、赤い液体の魔力を覗き込みながら頷いています。
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