「結婚しよう」

まひる

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第三章

4.俺の精霊を一人つけた【2】

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 そして次の日から、私はヴォルの研究を手伝う事にしました。えぇ、自主的にです。
 あ、昨日の夜は勿論ヴォルの抱き枕でした。おかしいです。確かガルシアさんが、婚儀の前は別々の部屋だ──とか言われていたような気がします。でもヴォルは当たり前の様に私へ与えられた部屋に来ました。

「メル。寝るぞ」

「え?……はい」

 いえいえ、拒否する時間はありませんでしたよ。身体を清めた後の私は薄い寝間着でしたし、何だかいつものように抱き込められてベッドに直行でしたから。勿論、疑問には思いましたけどね。

 それでも半年以上も一緒の布団に入っているのです。何だかそれ以上考えるのが馬鹿らしくなってきてしまって、逆に慣れたその温かさに思わずぐっすりと眠ってしまったのですよ。

「どうした、メル」

「あ、いえ」

 ヴォルに声を掛けられ、見入っていた手元から視線を外します。
 私はガラスのビンに入った何かを持たされていました。綺麗な銀色の液体です。

「これ、何ですか?」

「魔力だ」

 ……ん?魔力って、液体なのですか?
 キョトンとする私に、ヴォルは後ろから手を差し出してきます。

「氷の魔力を形にしてみた」

 後ろから伸ばされたヴォルの手が、私の持つガラスのビンを揺すります。あ、揺らすたびにキラキラと氷の粒が生まれました。
 不思議な感じです。魔法として使われていないのに、揺らす刺激に氷としての力を形にしているようなのです。

「凄いです、これ。魔法の前なのに、形になる力をもっているのですね」

「……あぁ、そういう発想か。……なるほど。既に命令がされているのか」

 彼は私の言葉を噛み砕くように頷きながら、真剣な眼差しをビンに向けていました。
 ん?ヴォルは私とは違った印象を受けたようです。まぁ、当たり前ですよね。人それぞれ、思いは違うのですから。

「……と言う事は、炎の魔力を……」

 何だか、ヴォルが楽しそうに瞳を輝かせて呟いています。そして何かをひらめいたのですかね?紙にペン先を走らせています。
 あ、今気付きました。さすがセントラルです。高級な筈の紙がたくさんありますね。

「あれ?」

 夢中になっているヴォルを見ていた時、私の視界の端を光る何かが通りました。何でしょう。動きが早くて中々追い付けませんが、私は必死に目を動かしてそれを捉えようとしました。

「あ……」

 不思議です。掌サイズの人が飛んでいます。えっと──正確に言うなら、背中にトンボのような羽根を持った人でした。

「……羽根……」

 知らずにボソリと呟いています。

「どうした、メル」

「……人……です?羽根がある……小さな人が飛んでいます」

 ヴォルに問い掛けられたのですが、私の視線は光を追う事に忙しく動いています。
 一度気付いたからなのか、それらは周りにたくさんいました。飛び回る度にキラキラと光が後を追って舞います。

「見えるのか」

「はい。何でしょうか、この人達」

「精霊だ」

「精霊さん、ですか?とても綺麗ですね」

 キラキラと光る人達を見続ける私です。そんな私を見るヴォルがとても優しい瞳を向けていたのにも全く気付かない程、小さな人を目で追う事に夢中になっていました。
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