116 / 515
第三章
3.抜け出してきた【4】
しおりを挟む
ガルシアさんに案内され、先程より豪奢な部屋に連れて来られました。
ぅわ~、これはまた……。何でしょうね。私用に部屋を用意したのだと言われても、ここは明らかに広すぎです。以前の私の家が丸ごと三つは軽く入ります。私が『農村出身』である事を忘れているのではないでしょうか。
あ、他の人は知らないのでしたね。ガルシアさんが言っていました。まぁ、すぐにバレるでしょうけど。
「これよりこの侍女、サーファがお世話をさせて頂きます」
ガルシアさんが、ここに案内してくれた侍女さんを紹介してくれます。サーファさんは綺麗な容姿をしていて、落ち着いたお嬢様の雰囲気を醸し出しています。
「メルシャ様、サーファです。お初にお目にかかります」
「あっ、こちらこそです」
深々と頭を下げられ、私は焦りつつ頭を下げました。
「サーファは伯爵家令嬢ですが、今は行儀見習いで侍女をしています。五年の見習い期間の後、侯爵家に嫁ぐ事になっています。後……、一年でしたか?」
「はい」
「この様に爵位を持つ家の者が侍女としてお仕えいたしますので不都合などないとは思いますが、何かありましたら私までご連絡下さいませ」
そこで漸くガルシアさんが深く頭を下げて退室しました。どうやら、ここから先はサーファさんの担当のようです。
貴族のご令嬢は行儀見習いをするのだと噂に聞いていましたが、結婚前の礼儀作法などの為なのですね。他人事ですが、大変なのです。
「あ、あの……」
「貴女がヴォルティ様の連れてきた人?冗談じゃないわ」
私が声を掛けたのですが、先程までとは違って溜め息混じりに告げられます。え、えっと……これはどうしたのでしょうか。二人きりになった途端、サーファさんが変貌しました。
彼女は元々私より背が高いのですが、それ以上に見下されています。あぁ、この目は他の人と同じです。ここに来た時から浴びせられている、暗くて重い視線。
「三年も待ったのよ?ポッと出の女なんかに、ヴォルティ様を奪われてなるものですか」
あからさまな敵意を向けられ、私はどう対処したら良いのか分かりませんでした。
あぁ……これって、片眼鏡の時と同じです。私に対してと言うよりか、ヴォルに近付く者に向けられる敵意。
「だいたい、何で貴女なのよ」
そ、それは私が聞きたいのですけど。まぁ、そんな事を口にすれば余計に怒られるのは分かります。私はとにかく怒り狂うサーファさんを見ている事しか出来ません。
「私は伯爵家の一員よ?貴女は何処の出身なの?舞踏会でも見た事ないけど、何処の田舎の貴族よっ」
「マグドリアの……」
「はあ?何処よ、そこ」
「えっと……、海の向こうの……」
「ちょっと、海ですって?!貴女、大陸の人間でもないって言うのっ?!」
腰に手をあて、真正面から威圧的に迫られます。私はポツリポツリとしか返せませんでした。
いえ、一応マグドリアも大陸でしたよ?なんて、今は言えそうにありません。私は貴族ですらありませんし。そもそも、サーファさんにとってはグレセシオ以外は大陸ではないのでしょう。
ぅわ~、これはまた……。何でしょうね。私用に部屋を用意したのだと言われても、ここは明らかに広すぎです。以前の私の家が丸ごと三つは軽く入ります。私が『農村出身』である事を忘れているのではないでしょうか。
あ、他の人は知らないのでしたね。ガルシアさんが言っていました。まぁ、すぐにバレるでしょうけど。
「これよりこの侍女、サーファがお世話をさせて頂きます」
ガルシアさんが、ここに案内してくれた侍女さんを紹介してくれます。サーファさんは綺麗な容姿をしていて、落ち着いたお嬢様の雰囲気を醸し出しています。
「メルシャ様、サーファです。お初にお目にかかります」
「あっ、こちらこそです」
深々と頭を下げられ、私は焦りつつ頭を下げました。
「サーファは伯爵家令嬢ですが、今は行儀見習いで侍女をしています。五年の見習い期間の後、侯爵家に嫁ぐ事になっています。後……、一年でしたか?」
「はい」
「この様に爵位を持つ家の者が侍女としてお仕えいたしますので不都合などないとは思いますが、何かありましたら私までご連絡下さいませ」
そこで漸くガルシアさんが深く頭を下げて退室しました。どうやら、ここから先はサーファさんの担当のようです。
貴族のご令嬢は行儀見習いをするのだと噂に聞いていましたが、結婚前の礼儀作法などの為なのですね。他人事ですが、大変なのです。
「あ、あの……」
「貴女がヴォルティ様の連れてきた人?冗談じゃないわ」
私が声を掛けたのですが、先程までとは違って溜め息混じりに告げられます。え、えっと……これはどうしたのでしょうか。二人きりになった途端、サーファさんが変貌しました。
彼女は元々私より背が高いのですが、それ以上に見下されています。あぁ、この目は他の人と同じです。ここに来た時から浴びせられている、暗くて重い視線。
「三年も待ったのよ?ポッと出の女なんかに、ヴォルティ様を奪われてなるものですか」
あからさまな敵意を向けられ、私はどう対処したら良いのか分かりませんでした。
あぁ……これって、片眼鏡の時と同じです。私に対してと言うよりか、ヴォルに近付く者に向けられる敵意。
「だいたい、何で貴女なのよ」
そ、それは私が聞きたいのですけど。まぁ、そんな事を口にすれば余計に怒られるのは分かります。私はとにかく怒り狂うサーファさんを見ている事しか出来ません。
「私は伯爵家の一員よ?貴女は何処の出身なの?舞踏会でも見た事ないけど、何処の田舎の貴族よっ」
「マグドリアの……」
「はあ?何処よ、そこ」
「えっと……、海の向こうの……」
「ちょっと、海ですって?!貴女、大陸の人間でもないって言うのっ?!」
腰に手をあて、真正面から威圧的に迫られます。私はポツリポツリとしか返せませんでした。
いえ、一応マグドリアも大陸でしたよ?なんて、今は言えそうにありません。私は貴族ですらありませんし。そもそも、サーファさんにとってはグレセシオ以外は大陸ではないのでしょう。
0
お気に入りに追加
405
あなたにおすすめの小説
新しい人生を貴方と
緑谷めい
恋愛
私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。
突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。
2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。
* 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。
旦那様の様子がおかしいのでそろそろ離婚を切り出されるみたいです。
バナナマヨネーズ
恋愛
とある王国の北部を治める公爵夫婦は、すべての領民に愛されていた。
しかし、公爵夫人である、ギネヴィアは、旦那様であるアルトラーディの様子がおかしいことに気が付く。
最近、旦那様の様子がおかしい気がする……。
わたしの顔を見て、何か言いたそうにするけれど、結局何も言わない旦那様。
旦那様と結婚して十年の月日が経過したわ。
当時、十歳になったばかりの幼い旦那様と、見た目十歳くらいのわたし。
とある事情で荒れ果てた北部を治めることとなった旦那様を支える為、結婚と同時に北部へ住処を移した。
それから十年。
なるほど、とうとうその時が来たのね。
大丈夫よ。旦那様。ちゃんと離婚してあげますから、安心してください。
一人の女性を心から愛する旦那様(超絶妻ラブ)と幼い旦那様を立派な紳士へと育て上げた一人の女性(合法ロリ)の二人が紡ぐ、勘違いから始まり、運命的な恋に気が付き、真実の愛に至るまでの物語。
全36話
誰にも言えないあなたへ
天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。
マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。
年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる