「結婚しよう」

まひる

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第三章

3.抜け出してきた【4】

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 ガルシアさんに案内され、先程より豪奢な部屋に連れて来られました。
 ぅわ~、これはまた……。何でしょうね。私用に部屋を用意したのだと言われても、ここは明らかに広すぎです。以前の私の家が丸ごと三つは軽く入ります。私が『農村出身』である事を忘れているのではないでしょうか。
 あ、他の人は知らないのでしたね。ガルシアさんが言っていました。まぁ、すぐにバレるでしょうけど。

「これよりこの侍女、サーファがお世話をさせて頂きます」

 ガルシアさんが、ここに案内してくれた侍女さんを紹介してくれます。サーファさんは綺麗な容姿をしていて、落ち着いたお嬢様の雰囲気を醸し出しています。

「メルシャ様、サーファです。お初にお目にかかります」

「あっ、こちらこそです」

 深々と頭を下げられ、私は焦りつつ頭を下げました。

「サーファは伯爵家令嬢ですが、今は行儀見習いで侍女をしています。五年の見習い期間の後、侯爵家に嫁ぐ事になっています。後……、一年でしたか?」

「はい」

「この様に爵位を持つ家の者が侍女としておつかえいたしますので不都合などないとは思いますが、何かありましたら私までご連絡下さいませ」

 そこでようやくガルシアさんが深く頭を下げて退室しました。どうやら、ここから先はサーファさんの担当のようです。
 貴族のご令嬢は行儀見習いをするのだと噂に聞いていましたが、結婚前の礼儀作法などの為なのですね。他人事ですが、大変なのです。

「あ、あの……」

「貴女がヴォルティ様の連れてきた人?冗談じゃないわ」

 私が声を掛けたのですが、先程までとは違って溜め息混じりに告げられます。え、えっと……これはどうしたのでしょうか。二人きりになった途端、サーファさんが変貌しました。
 彼女は元々私より背が高いのですが、それ以上に見下されています。あぁ、この目は他の人と同じです。ここに来た時から浴びせられている、暗くて重い視線。

「三年も待ったのよ?ポッと出の女なんかに、ヴォルティ様を奪われてなるものですか」

 あからさまな敵意を向けられ、私はどう対処したら良いのか分かりませんでした。
 あぁ……これって、片眼鏡モノクルの時と同じです。私に対してと言うよりか、ヴォルに近付く者に向けられる敵意。

「だいたい、何で貴女なのよ」

 そ、それは私が聞きたいのですけど。まぁ、そんな事を口にすれば余計に怒られるのは分かります。私はとにかく怒り狂うサーファさんを見ている事しか出来ません。

「私は伯爵家の一員よ?貴女は何処の出身なの?舞踏会でも見た事ないけど、何処の田舎の貴族よっ」

「マグドリアの……」

「はあ?何処よ、そこ」

「えっと……、海の向こうの……」

「ちょっと、海ですって?!貴女、大陸の人間でもないって言うのっ?!」

 腰に手をあて、真正面から威圧的に迫られます。私はポツリポツリとしか返せませんでした。
 いえ、一応マグドリアも大陸でしたよ?なんて、今は言えそうにありません。私は貴族ですらありませんし。そもそも、サーファさんにとってはグレセシオ以外は大陸ではないのでしょう。
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