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第三章
1.俺だと気付いたのか【5】
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「あの……」
「メルが気にする事はない。……少し痛め付けたからな」
えぇっ?!な、何かサラリと恐ろしい事を言いましたね。って言うか、元々お知り合いなのではないのですか?確か、セントラルで執事さんをされているとか…。
「メルは気にするな」
再度言われましたが、気になりますとも十分にっ!
……でも、これ以上の追求は私が危ないです。はい、空気を読みますよ。私は貝になります。それ以上は何も言いません聞きません。
互いが無言になり、ウマウマさんの足音だけが響きます。
「見えてきた。セントラルだ」
「あれが……」
ヴォルの告げた先にあったのは巨大な城壁でした。高さも幅も、今まで見た事のない程大きな規模です。思わず口をポカンと開けてしまいました。それくらい驚いたのです。
「ほ、本当にあんな大きな町があるのですねっ」
徐々に近付く壁は圧倒的威圧感を放ち、とても乗り越える事など出来ないものでした。見えてくる外観は要塞と言っても間違いではないです。
続く白い壁、そして入り口に立ち塞がる武器を持った兵士。そうなのです。兵士がいるのですよ。壁の入り口に、二人も。
「ヴォル、兵士がいますよ?」
「あぁ」
あ、薄い反応なのです。まぁ、そうですよね。ここから外に出たのでしょうから、知っているのは当たり前ですか。
「入る人も出る人も、何かの確認をされていますが」
「ここの出入りは身分証明が必要だ」
ヴォルはサラリと仰いますが、私はその様な物を持ってはいません。村から出たのが初めてですもの。
「あ、あの……私は……?」
「問題ない。俺がいる」
狼狽える私ですが、ヴォルは全く動じません。顔パス、なのでしょうか。まさか……ですよね?
「ツヴァイス様、お帰りなさいませ」
ヴォルの操るウマウマさんに気付いた兵士が、突然走り寄ってきて深々と頭を下げました。
私はキョトンとしてしまいます。な、何ですか?
「ヴォルティ様」
「ツヴァイス様」
あちらこちらから聞こえる声は、全てヴォルに向けられているようです。皆一様に頭を深く下げ、中には涙している人もいます。
えぇっ?!どうなっているのですか?私は訳が分からなくなり、後ろのヴォルを振り返ります。……いつもの無表情ですね。
そんな私に気付いたヴォルは、ポンと私の頭を撫でます。ん?そう言う場面なのですか?
ヴォルは周囲の人達を特に気にする事なく、ウマウマさんを町の中へ進めます。あ、本当に顔パスでしたね。私、不法侵入になっていませんよね?
町の中はとても広く、真っ直ぐお城へ道が続いてます。
……お城?えぇ、お城ですね。白い壁に幾つもの円錐形の棟が連なった、お話の中に出てくるあのお城です。って言うか、実在していたのですね。あ、もしかして皇帝様って……。
「メルが気にする事はない。……少し痛め付けたからな」
えぇっ?!な、何かサラリと恐ろしい事を言いましたね。って言うか、元々お知り合いなのではないのですか?確か、セントラルで執事さんをされているとか…。
「メルは気にするな」
再度言われましたが、気になりますとも十分にっ!
……でも、これ以上の追求は私が危ないです。はい、空気を読みますよ。私は貝になります。それ以上は何も言いません聞きません。
互いが無言になり、ウマウマさんの足音だけが響きます。
「見えてきた。セントラルだ」
「あれが……」
ヴォルの告げた先にあったのは巨大な城壁でした。高さも幅も、今まで見た事のない程大きな規模です。思わず口をポカンと開けてしまいました。それくらい驚いたのです。
「ほ、本当にあんな大きな町があるのですねっ」
徐々に近付く壁は圧倒的威圧感を放ち、とても乗り越える事など出来ないものでした。見えてくる外観は要塞と言っても間違いではないです。
続く白い壁、そして入り口に立ち塞がる武器を持った兵士。そうなのです。兵士がいるのですよ。壁の入り口に、二人も。
「ヴォル、兵士がいますよ?」
「あぁ」
あ、薄い反応なのです。まぁ、そうですよね。ここから外に出たのでしょうから、知っているのは当たり前ですか。
「入る人も出る人も、何かの確認をされていますが」
「ここの出入りは身分証明が必要だ」
ヴォルはサラリと仰いますが、私はその様な物を持ってはいません。村から出たのが初めてですもの。
「あ、あの……私は……?」
「問題ない。俺がいる」
狼狽える私ですが、ヴォルは全く動じません。顔パス、なのでしょうか。まさか……ですよね?
「ツヴァイス様、お帰りなさいませ」
ヴォルの操るウマウマさんに気付いた兵士が、突然走り寄ってきて深々と頭を下げました。
私はキョトンとしてしまいます。な、何ですか?
「ヴォルティ様」
「ツヴァイス様」
あちらこちらから聞こえる声は、全てヴォルに向けられているようです。皆一様に頭を深く下げ、中には涙している人もいます。
えぇっ?!どうなっているのですか?私は訳が分からなくなり、後ろのヴォルを振り返ります。……いつもの無表情ですね。
そんな私に気付いたヴォルは、ポンと私の頭を撫でます。ん?そう言う場面なのですか?
ヴォルは周囲の人達を特に気にする事なく、ウマウマさんを町の中へ進めます。あ、本当に顔パスでしたね。私、不法侵入になっていませんよね?
町の中はとても広く、真っ直ぐお城へ道が続いてます。
……お城?えぇ、お城ですね。白い壁に幾つもの円錐形の棟が連なった、お話の中に出てくるあのお城です。って言うか、実在していたのですね。あ、もしかして皇帝様って……。
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