「結婚しよう」

まひる

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第二章

≪Ⅸ≫メルに触れていると【1】

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 朝です。心地好い目覚め……かどうか分かりませんが、とにかくいつもの寝起きな私です。ええ、当たり前のように背中にヴォルがいます。
 昨夜あんな怖い夕食を終えたのに、そのあとのヴォルは全くいつも通りの行動でした。えぇ、ぶれませんとも。

「起きたのか、メル」

「はい、おはようございます」

 挨拶を交わすと、ようやく腕の力を緩めてもらえます。それまではずっとヴォルの腕の中。ん~、慣れてしまった私が怖いです。でもおかしな話、居心地良いのですよね。何故でしょう。

「朝食を食べたら船に乗る」

「もう出発なのですか?」

「そうだ。昨日手続きを済ませてある」

 い、いつの間に。昨日はヴォル、片眼鏡モノクルと頻繁に火花を散らしていたような気がしますけど。
 あ、そう言えばセントラルでは人とあまり話さなかったって……。あっちでも片眼鏡モノクルのような人にあんな風に四六時中付きまとわれたら、私も人間が嫌いになりそうです。怖いですよ、プルプル。

 でも今まで見てきたヴォルは、案外誰にでも人当たり良く接していたと思います。明らかにあの片眼鏡モノクルに対するように、バチバチと攻撃的な対応はしていませんでした。

「あの……片眼鏡モノクル、さんは、ヴォルとどのような関係なのですか?」

 荷物をまとめているヴォルに問い掛けます。仲が悪そうだという事しか、私には分かりませんでした。

「……セントラルでの俺の世話係だ」

 世話係?先生とは違うのですよね。親……は勿論違うのでしょうが、兄弟でもなくて……メイド……じゃなくて執事さんとかでしょうか。

「セントラルって、みんなお金持ちなんですか?メイドさんとか執事さんとかが普通にいるのでしょうか」

 お話の中のセレブな世界です。村にはいませんでしたよ、そういった誰かにおつかえする職業の人。

「さぁな」

 あ、話の追求を逃れましたね?ヴォルはセントラルの事、必要以上に話したがらないです。行けば分かるとか、そう言うのだと困るのですけど。ただでさえ私はほとんど情報をもらっていないのですから。
 というか、あの片眼鏡モノクルとはここで会わなくても現地セントラルであれを言われていた事になります。うむむ……。ある意味良かったのかもしれませんがっ、ですよ。

「ヴォル、私は結構不利な立場にいると思うのですよ。このままサバイバルな旅が続くのなら構いませんが、大勢の人の中に入っていかなければならないのでしたら話は変わります。情報の開示を求めます」

 出発の準備が整ったであろうヴォルを引き留めます。はっきりさせて下さらないと、私は誘拐とサバイバルな旅以上の困難に立ち向かわなければならない事になります。しかも一人で。
 だって物語の中で主人公は、一人の時に限って困難にぶつかっていましたからね。

「…………」

 無言ですか。
 でも、おかしくないですか?あ、今更ですが。そもそも、セントラルとはいっても『皇帝様の前で式を挙げる』って普通ではないですよね?……知らないですけど何となくです。
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