「結婚しよう」

まひる

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第二章

7.一緒に行かないか【4】

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 荷物を解き終わったヴォルは、唖然とする私を不思議そうに見ています。まぁ、本当に今更な問題なのですけど。だいたい、釣り合わないのは身長だけじゃありません。見た目も中身も、何もかも私はヴォルの足下にも及びませんから。あ、悲しくなってきました。

「メル」

 ソッと頬を触られました。その感触にようやく私は我に返ります。いけないです、またもや自分の世界に入ってしまいました。

「あ、すみません。荷物、持ちます」

「問題ない。扉を開けてくれ」

「は、はい」

 私が持とうとした荷物も、ヴォルが一人で全て持ってくれます。手持ちぶさたで両手を見ていたら、ヴォルに訴えられました。そうですよね、両手が塞がっていますもの。私は慌てて宿屋の扉を開けます。本当、気も利かなくてすみません。

 ヴォルは当たり前のように一つだけ部屋をとりました。私も今更何も言いませんよ。町に泊まる回数より、野宿している回数の方が断然多いのですから。勿論寝具は当たり前に一つ、私はヴォルの抱き枕。えぇ、それくらいにしかなりませんからね。

 宿屋の御主人も、私達の婚約の腕輪を見て察するのでしょう。一度も突っ込まれた事はありませんよ、不思議な事に。こんなにもお似合いじゃないのに、ヴォルと私を見て何とも思わないのですかね。

「船を手配してくる」

「あ、分かりました。大人しく留守番してます」

 即答した私に、ヴォルの瞳が少しだけ揺れます。ん?私、何かおかしな事を言いましたか?

「……一緒に行かないか」

 はい?私は思い切り首を傾げました。ヴォルはこういう時、大抵一人で行動します。はい、今までずっと。だからこそ、私は今回も留守番だと思ったのですが……。

「嫌か」

「や、嫌だなんてっ。……あの……、本当に一緒に行っても良いのですか?」

 邪魔になったり、迷惑になったりしないですか?もしくは、一人になりたくなったり……しません?

「問題ない」

 ヴォルはいつものように答えます。こういう時のヴォルって、何を考えているのか分かりません。でも真っ直ぐ向けられる瞳に冷たさはなく、私は戸惑いながらも頷きます。

「い、行きますっ」

 いつも町に来た時はお留守番なので、私は少しだけ町に泊まる事が嫌になっていました。……言えませんが。だってそんなの、我が儘ですから。
 たまに自由になると、勝手に迷子になったり誘拐されたりなんかしている自分の事は棚にあげておきます。

 でも今回は、ヴォルから誘ってくれました。嬉しいです。しかも見た事のない港町。大きな船がたくさんたくさんいて、これはやっぱり近くで見てみたいと思っていたのです。
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