「結婚しよう」

まひる

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第二章

≪Ⅶ≫一緒に行かないか【1】

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 ウクレサの森をウマウマさんに乗って進みます。この森も小さな生物が多いです。以前に通った事のある森もそうでした。木々が密集しているので、身体が小さい方が有利なのかもしれません。木の根が張り巡らされていて足場も悪く、大きな生物は動き難そうでした。

「ウマウマさんは歩くのが上手ですね」

 目の前にある赤いたてがみのウマウマさんを撫でます。二人も乗っているのに、足場の悪さを感じさせない動きなのです。感心します。私ならすぐに転んでしまいそうです。

「ヴォルはずっとこのウマウマさんと一緒なのですか?えっと、セントラルから?」

「そうだ。有能な足がなければ長期の旅は出来ない」

 そうですよね。いくらヴォルが強くても、手荷物を持ったままでは戦い難いでしょう。

「優秀なんですね、ウマウマさん」

「あぁ」

 後ろから聞こえるヴォルの声。耳と身体を伝わるこの声に、とても安心感を覚えます。言葉が少なくても、聞いた事には不都合がない限りキチンと答えてくれますし。

 無言でいる事にも馴れて来ました。初めの頃は何か話さなければと不安になっていたのですが、慣れって恐ろしいですね。ヴォルに触れられる事も、抱き枕になる事も違和感を全く感じないようになってしまった私。もしかしたらこれって、女性としてどうかと思います。

 普通なら見目麗しいヴォルが相手では、触れられるだけでドキドキとかして心臓が暴れるのでしょう。でも私は毎日そんな状態なので、そのたびに心臓が暴れていたら死んでしまいます。どう間違っても、私はヴォルの恋愛対象からは外れているのですし。

「ここの魔物は、あまり襲い掛かって来ないのですね?」

「結界を張っている」

 はい?動いているのに、ですか?

「魔法対象をウマウマにしている」

「ウマウマさん……、ですか?」

 って言うか、そんな事が出来るなら初めからやってくださいよ!今まで怖い思いをしたのって、無駄だったのですか?

「……これは魔力の消耗が激しい」

 私の無言の怒りが伝わったのか、ヴォルが振り返る私から視線を逸らしました。あれ?少し……ムッとしていませんか?

「魔力……」

 消耗が激しいってどういう事でしょうか。移動物に結界を張ると、魔法の維持が難しいのですか?私はしばらく少ない経験と知識で考えます。

 その場に固定した魔法は、何の問題もなく翌日も力を継続していました。今までの旅で、ヴォルはウマウマさんに結界を張った事はありません。そして森の中だからと言って魔物が襲って来ない訳ではなく、実際に以前通過した森では魔物に襲われています。

「私が……いるから、ですか?」

 結論。ヴォルは私がいるから、疲れるのにウマウマさんに結界を張っているという事ですね。
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