「結婚しよう」

まひる

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第二章

6.俺はメルを手放せない【4】

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「顔色が良くなった」

「え?」

 突然何を言われたのかと、一瞬ほうけてしまいました。私がヴォルを観察していた筈ですが、ヴォルも私の事を見ていて下さったのですか?
 互い横になったままでしたが、ヴォルの左手がゆっくりと私の顔に近付いてきます。パチクリしながら目で追っていますと、その手が私の額に当てられました。んん?私、熱なんてないですよ?

「疲労の蓄積は良くない。下手に我慢するな」

 ……………はい?えっと……もしかして、心配してるのだと言う意思表示ですか?本当にストレートに物を言わない方ですね。頭が良くない私は、理解するのに苦労しますよ。

「はぁ……」

 ハッキリとしない言葉に、私は曖昧に返す事しか出来ませんでした。それでもヴォルは満足したのか、私の額から手を離して起き上がります。

「腹は空いていないか」

「……はい。ずっと寝ていたからですかね?」

 それでも気分も身体も楽になっていました。ご飯を食べてシッカリと寝る、やはりこれはとても大切な事ですね。でももう、今日が終わってしまいます。陽が傾き、わずかに紅く色付いていました。

「今日もこのままここで野宿だ。森に入るより良い」

 ヴォルは結界を点検し、魔法の火も同じように確認しています。二日続けて同じ場所に留まる事は初めてなので、元々このように確認をするものなのかもしれません。

「あの……、ヴォル?」

「どうした、メル」

「その……、ヴォルは私が結婚相手としてセントラルに行く事を求めていらっしゃるのですよね?」

「そうだ」

「私が、その……ヴォルに興味がないから……なのですよね?」

「…………」

 うっ、ヴォルが無言になりました。この先を続けて良いのか迷ってしまいます。ヴォルは私をどう思っているのでしょう。単なる形だけの結婚相手としての存在を求められていると、分かっている筈なのに問いただしたくなります。自分が不安、だからでしょうか。彼に心が惹き付けられてしまうのが、怖いのでしょうか。

「何が言いたい」

 あ……ずっと私が考え込んでいたので、催促されてしまいました。

「えっと、その……あの……。か、確認ですっ。初めにそう……言われていたので……、それです」

 もう、シドロモドロですよ。聞いたところで何も変わらないのは分かっている筈ではないですか。むしろ今となっては、こんなところに置いていかれても困りますし。

「そうか」

 ヴォルの返答はそれだけでした。あれ?何かもっと、違う事を言われるかと思いましたが……。私がアレコレ考えたところで、一人相撲って感じですかね。勝手に考えて、勝手に不安になって。これって、迷惑さんじゃないですか。
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