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第二章
5.俺と一緒なら【2】
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あれ?私、ベッドで眠りましたっけ?朝の気配に目覚めてみると、いつの間にか私はベッドにいました。
「起きたか、メル」
「っ?……は、はい。おはようございます、ヴォル」
これもいつもの事なのですが、背後からヴォルに声を掛けられました。でもいつの間に……。
「メル。寝るならベッドで寝ろ」
……やっぱりです。私、机で寝てしまったのですね。って言うか運ばれても気付かないって、どれだけ爆睡してるのですか。
「すみません……」
「謝罪はいらない。それよりも、昨夜は食事を取らなかったようだな」
「あ……、はい」
「何故だ」
ヴォルと共に、ベッドで半身起き上がった状態で座っています。思わず俯いてしまった私の顔を、向かいに座っているヴォルが覗き込むようにしているのが分かりました。ど、どうしましょう。一人では寂しかったとか、言えないのですけど。
「あの……その……」
どのように答えて良いのか迷い、私は次の言葉が出てきません。と、その緊張の空気を打ち破るように──クゥ~。
「…………きゃーっ」
恥ずかしいですっ。私は自分のお腹が鳴った事で物凄く真っ赤になったであろう顔を、両手で隠して布団に伏せました。空気読みなさいよ、私のお腹って感じです。
「フッ……。食事にしよう」
わ、笑われました?頭にポンと手を置かれ、ヴォルが先にベッドを降ります。着替え……は、いらないですね。寝具に着替えずに寝てしまっていたので、何となく髪を手櫛で整えました。
「行くか」
「はい」
ヴォルと共に宿の下にある食事処に行きます。昨日と大差無い朝食でも、一人で食べるのとは全く美味しさが違いますね。このままだと私、もう一人で生きていけないのではないでしょうか。
「昨夜はどうして食べなかったんだ」
食べている途中で、先程と同じ質問をされました。あ、忘れては下さらなかったのですね。
「……一人では……」
「昨日の朝は食べたのだろう」
「……はい」
あぁ……この、無表情の追求ってかなり辛いです。朝食を食べて気付いたのですよ、なんて言えないじゃないですか。
「……俺と一緒なら食べるのか」
僅かに考え込んだ後、ヴォルがそう口にしました。そうですよね、ずっと一緒に食事をして来たのですから気付きますよね。私は特別少食という訳ではありません。好き嫌いが激しい訳でもありませんから、食べない理由が簡単なんです。これ以上誤魔化せないので、恥ずかしながら小さく頷き返します。
「分かった」
ヴォルはそう一言だけ答えました。
「起きたか、メル」
「っ?……は、はい。おはようございます、ヴォル」
これもいつもの事なのですが、背後からヴォルに声を掛けられました。でもいつの間に……。
「メル。寝るならベッドで寝ろ」
……やっぱりです。私、机で寝てしまったのですね。って言うか運ばれても気付かないって、どれだけ爆睡してるのですか。
「すみません……」
「謝罪はいらない。それよりも、昨夜は食事を取らなかったようだな」
「あ……、はい」
「何故だ」
ヴォルと共に、ベッドで半身起き上がった状態で座っています。思わず俯いてしまった私の顔を、向かいに座っているヴォルが覗き込むようにしているのが分かりました。ど、どうしましょう。一人では寂しかったとか、言えないのですけど。
「あの……その……」
どのように答えて良いのか迷い、私は次の言葉が出てきません。と、その緊張の空気を打ち破るように──クゥ~。
「…………きゃーっ」
恥ずかしいですっ。私は自分のお腹が鳴った事で物凄く真っ赤になったであろう顔を、両手で隠して布団に伏せました。空気読みなさいよ、私のお腹って感じです。
「フッ……。食事にしよう」
わ、笑われました?頭にポンと手を置かれ、ヴォルが先にベッドを降ります。着替え……は、いらないですね。寝具に着替えずに寝てしまっていたので、何となく髪を手櫛で整えました。
「行くか」
「はい」
ヴォルと共に宿の下にある食事処に行きます。昨日と大差無い朝食でも、一人で食べるのとは全く美味しさが違いますね。このままだと私、もう一人で生きていけないのではないでしょうか。
「昨夜はどうして食べなかったんだ」
食べている途中で、先程と同じ質問をされました。あ、忘れては下さらなかったのですね。
「……一人では……」
「昨日の朝は食べたのだろう」
「……はい」
あぁ……この、無表情の追求ってかなり辛いです。朝食を食べて気付いたのですよ、なんて言えないじゃないですか。
「……俺と一緒なら食べるのか」
僅かに考え込んだ後、ヴォルがそう口にしました。そうですよね、ずっと一緒に食事をして来たのですから気付きますよね。私は特別少食という訳ではありません。好き嫌いが激しい訳でもありませんから、食べない理由が簡単なんです。これ以上誤魔化せないので、恥ずかしながら小さく頷き返します。
「分かった」
ヴォルはそう一言だけ答えました。
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