「結婚しよう」

まひる

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第二章

4.無自覚め【3】

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 髪も服も心地好い風に吹かれて、一緒に乾かされていきます。この風はヴォルと私の周りにだけ吹いているのです。ふと気付くと、ヴォルが不自然に視線をよそに向けているではないですか。私はそちらの方が気になりました。まさか、また魔物とか来ていませんよね?

「……何をしている」

「え?……ヴォルが何を見ているのか気になりまして」

 何気なく、ヴォルに近付いて彼の視線の先を追おうとしたのですが。何故そんなに怖い顔をするのです?だいたい、私達の距離は手を伸ばしたら届く程です。今も私、ツイッと一歩だけ近付いただけですけど。

「……無自覚め」

「えっ?」

 ボソリと呟いたヴォルの言葉が聞き取れず、小首を傾げて問いました。すると一瞬ヴォルが息を呑み、フイッと顔を逸らされました。あれ?何でしょう。おかしいですね。

「ヴォル?」

「……もう少し色の濃い服を着た方が良い」

 はい?色の濃い?……何を言いたいのか……。今日は私、白いワンピースでしたよね?私は確認の為に自分の服を見下ろしました。って?!……お気付きですか?そうなんですっ。白い服は、濡れたら透けるんですよ!本当に、この湖のように透け透けでした。

「ッキャッ!!」

 今さら遅いですが、両腕で胸を抱くようにして座り込みました。服の下には胸を寄せて上げる系の下着を着ているのですが、それがしっかりと見えています。

「み……、見えました……よね……?」

 もう恥ずかしすぎます。顔が……いえ、耳まで熱いです。無駄だとは思いましたが、聞いてみました。

「……すまない」

 視線を逸らしたままで謝られてしまいましたが。こう言う時には嘘でも……いえ、それはそれで良くないですね。あ~……、こんなことならもっと可愛い下着を……って!!そうじゃないですよ、私っ!見られても大した代物ではない事は嫌と言う程分かっていますが、これでも私は嫁入り前の身です。も~、お嫁に行けないです……よ?……あ、私はヴォルのお嫁さんになるのでした。…………形だけの、ですが。

「もう……良いです……」

 何となく別のショックを受けているのは何故でしょう。と、とにかく落ち込んでいても仕方がありません。私、立ち直りは早い方なんですから。ヴォルも悪気があって見た訳じゃないですし。あ、もしかしたら被害者なのはヴォルの方かも。見たくないものを見せられたのだとしたら……、何となく申し訳なく感じてしまいます。挙げ句に加害者のような扱いをされたなんて、屈辱的でしょうね。
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