「結婚しよう」

まひる

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第二章

3.守り刀として【5】

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 慌ててヴォルに視線を向けます。……ん?何でしょう。私に差し出される……何かの紋章でしょうか。荷物を探っていたヴォルの掌に、綺麗な鳥の絵のついた小刀が握られていました。

「今は詳細を話す訳にはいかない。ただ……守り刀としてこれを持っていてくれ」

 私はその意味が良く分かりませんでした。『守り刀』として……って、どういう事でしょう。お守りなら、ヴォルが持っていないと意味がないのではないでしょうか。大体私、刃物なんて使えません。

「あの……」

「メルは俺が守る。だが常にそばにいてやれる訳でもない」

 真っ直ぐ向けられたヴォルの青緑の瞳。詳細を話せないと言うのは、詮索するなとは違う気がします。

「分かりました。これを使えるかどうかは分かりませんが、持っていれば良いのですね?」

「あぁ。その必要のないように俺が守る」

 はっきりと言い切りますね。でも深い意味は……ないのですよね?難しいです。私の心は何処までヴォルの存在を受け入れて良いのでしょうか。

「昼を食べたら出掛ける」

「あ、はい。行ってらっしゃ……」

「メルもだ」

「私もですか?」

 小刀の意味が分からず、それを胸に抱いたままの私に新たな疑問。

「ずっと宿では息が詰まるだろう。この近くに湖がある」

 これは……、何の誘いですか?ふ、深い意味はないですよね?ただの散歩的なあれですよね?

「嫌か」

「あ、いえ。行きます、はい」

 確かに、やる事がなくて時間をもて余していたのです。ヴォルの仕事が終わったのかは分かりませんが、詮索は駄目なのです。質問と詮索は違うのですよ。

 とにかく、昨日の買い物ぶりに外に出られます。籠の鳥という訳ではありませんが、ヴォルがいないと部屋から出してもらえません。あ、宿の中は良いのでしょうか。でも、他の人は怖いです。これ以上誘拐慣れなんてしたくないですし、怖い目に遇いたくもないですからね。

「あの……、お昼を持って行けませんか?」

 どうせなら、お外でご飯を食べたいです。いつもアウトドアな食事をしていますが、ピクニックとはまた違うと思うのです。

「外でか」

「駄目、ですか?」

 何でワザワザ、と言った感じなのでしょうか。でも、少しだけ粘ってみます。

「……問題ない」

 わずかな間がありましたが、承諾していただけました。何か、嬉しいです。
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