「結婚しよう」

まひる

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第二章

2.メルは今のままで良い【2】

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 窓の外を見ながら、ボンヤリとしていました。久し振りに感じる、このゆったりとした時間です。旅ってやっぱり大変ですね。もう何ヵ月ヴォルと一緒にいるのでしょうか。

 私はコロンとベッドに横になりました。布団で寝るのも久し振りな訳でして。空の青さを見ながらウトウトと……。



 ハッ!?いつの間にか眠っていたようです。勢いよく飛び起きると、既にヴォルが戻ってきていました。

「起きたのか、メル」

「あ、はい。すみません、眠ってしまいました」

「問題ない。疲れているのだろう。……俺に合わせて旅をさせているからな」

 わずかにヴォルの瞳に申し訳なさが見えました。またヴォルに気を遣わせているようです。

「そ、そんな事ないです。私はウマウマさんに乗っているだけですから」

 歩いているヴォルの方が疲れているはずなのに、私が先に寝てしまうとは……恥ずかしいです。

「……か、買い物……行きますか?」

 少し照れ臭くなってしまい、話を逸らそうと提案してみます。女の子の必要品、もう心細くなってきているのです。

「分かった」

 前の町でも購入したのでヴォルも分かっているとは思いますが、買ってきてもらうのは恥ずかしくて無理です。なので商人と擦れ違った時や町に寄った時に買うしかないのですよ。

 そうして私はヴォルと商店街を歩きました。色々と見て回り、他にも様々な買い物をします。ヴォルは多数の品物を買っているのですが、私と距離が離れる事はありませんでした。言われなくても分かりますが、私ってばかなり心配掛けているようです。

「あの……、私は買い物が終わりました」

 私の買いたい物は本当にわずかな個人的な品なので、旅支度のヴォルとは掛かる時間が違います。ちなみに必要なお金はヴォルから頂いています。

「そうか。俺はもう少し掛かる。先に宿に送って行こう」

「あ、良いですよ。宿は近いですし、私は一人で帰れます」

 って言ったのに、ヴォルは宿屋に向かおうとします。

「あ、あの……」

「……心配だ」

 そうですよね、心配ですよね。でもいくら私でも、そう何度も誘拐なんてされないと思うんですけど。

「ご迷惑じゃないですか?」

 心配してくださるのは有難いんですけど。それがヴォルの負担にならないか不安に……、そうです。不安になるんですよ。
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