56 / 515
第二章
≪Ⅱ≫メルは今のままで良い【1】
しおりを挟む
結局ヴォルに気温調節の魔法を使ってもらい、私は快適な空間の中で尚且つウマウマさんに乗っているという贅沢な湿地帯の旅をしています。
でもでも毎回あんな……半分裸のような状態で混浴なんて、とてもじゃないですが私の心臓がもちません。逆に慣れてしまうのなんて、更に物凄く恐ろしいです。ただでさえ無駄に見目の良いヴォルと二人きりの旅なのです。私が勘違いしてしまっては、非常にマズイじゃないですか。
「ヴォル、あのキノコは食べられますか?」
「あれは毒だ」
「では、あの木の実は食べられますか?」
「あれは渋い」
気を紛らわす為に、私は目についた物を端からヴォルに質問していきました。質問が食べ物ばかりとか、仕方ないじゃないですか。共通の会話とか当たり前ながらないですし、私は村の外の知識は欠片もないのです。
けれども何度質問しても、ヴォルはキチンと答えてくれますね。これで鬱陶しいとか言われたら、私は存在価値もなくなりそうですが。
「なかなか食べられそうな物はないですね」
「そうでもない。あの葉は臭みもなく栄養豊かで生でも食べれる。その木の新芽は煮たら旨い。そこの川には臭みの少ない魚が多い」
う……ただ単に、私の目の付け所がダメダメな訳ですね?本当に私、ここに置いていかれたら食べ物に当たって即日死にそうです。
「私、本当に何も知らないですね」
「…………メルは今のままで良い」
ヴォルが少し間を置いて口を開きました。こう言う時って、何かしら思いがあるのだと思います。でもそれを追究する術は私にないのでした。
「もうすぐこのマレワット湿地帯を抜ける。サウルクの町に着いたら二、三日滞在する」
「はい」
確実にセントラルに近付いているのですよね。私のこの先の人生、どうなるのでしょうか。ヴォルと一緒にいる事自体は嫌ではないのですが。って言っても、色々と考えても仕方ないのですよね。
それから何日かして、湿地帯を抜けました。町はすぐ見え、難なく宿屋まで到着します。
「俺は出てくる。メルはここにいろ」
「あの……、少し買い物を……」
「後だ。ここにいろ」
あ……、また私は留守番ですか。前に誘拐されてから、本当に信用がないですね。
「分かりました。いってらっしゃい、ヴォル」
溜め息が出そうになりましたが、この様な横暴さには慣れましたよ。『私の意見』はないものと思え、です。
でもでも毎回あんな……半分裸のような状態で混浴なんて、とてもじゃないですが私の心臓がもちません。逆に慣れてしまうのなんて、更に物凄く恐ろしいです。ただでさえ無駄に見目の良いヴォルと二人きりの旅なのです。私が勘違いしてしまっては、非常にマズイじゃないですか。
「ヴォル、あのキノコは食べられますか?」
「あれは毒だ」
「では、あの木の実は食べられますか?」
「あれは渋い」
気を紛らわす為に、私は目についた物を端からヴォルに質問していきました。質問が食べ物ばかりとか、仕方ないじゃないですか。共通の会話とか当たり前ながらないですし、私は村の外の知識は欠片もないのです。
けれども何度質問しても、ヴォルはキチンと答えてくれますね。これで鬱陶しいとか言われたら、私は存在価値もなくなりそうですが。
「なかなか食べられそうな物はないですね」
「そうでもない。あの葉は臭みもなく栄養豊かで生でも食べれる。その木の新芽は煮たら旨い。そこの川には臭みの少ない魚が多い」
う……ただ単に、私の目の付け所がダメダメな訳ですね?本当に私、ここに置いていかれたら食べ物に当たって即日死にそうです。
「私、本当に何も知らないですね」
「…………メルは今のままで良い」
ヴォルが少し間を置いて口を開きました。こう言う時って、何かしら思いがあるのだと思います。でもそれを追究する術は私にないのでした。
「もうすぐこのマレワット湿地帯を抜ける。サウルクの町に着いたら二、三日滞在する」
「はい」
確実にセントラルに近付いているのですよね。私のこの先の人生、どうなるのでしょうか。ヴォルと一緒にいる事自体は嫌ではないのですが。って言っても、色々と考えても仕方ないのですよね。
それから何日かして、湿地帯を抜けました。町はすぐ見え、難なく宿屋まで到着します。
「俺は出てくる。メルはここにいろ」
「あの……、少し買い物を……」
「後だ。ここにいろ」
あ……、また私は留守番ですか。前に誘拐されてから、本当に信用がないですね。
「分かりました。いってらっしゃい、ヴォル」
溜め息が出そうになりましたが、この様な横暴さには慣れましたよ。『私の意見』はないものと思え、です。
0
お気に入りに追加
405
あなたにおすすめの小説
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
お飾り公爵夫人の憂鬱
初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。
私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。
やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。
そう自由……自由になるはずだったのに……
※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です
※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません
※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる