「結婚しよう」

まひる

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第二章

≪Ⅱ≫メルは今のままで良い【1】

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 結局ヴォルに気温調節の魔法を使ってもらい、私は快適な空間の中で尚且なおかつウマウマさんに乗っているという贅沢な湿地帯の旅をしています。

 でもでも毎回あんな……半分裸のような状態で混浴なんて、とてもじゃないですが私の心臓がもちません。逆に慣れてしまうのなんて、更に物凄く恐ろしいです。ただでさえ無駄に見目の良いヴォルと二人きりの旅なのです。私が勘違いしてしまっては、非常にマズイじゃないですか。

「ヴォル、あのキノコは食べられますか?」

「あれは毒だ」

「では、あの木の実は食べられますか?」

「あれは渋い」

 気を紛らわす為に、私は目についた物を端からヴォルに質問していきました。質問が食べ物ばかりとか、仕方ないじゃないですか。共通の会話とか当たり前ながらないですし、私は村の外の知識は欠片もないのです。

 けれども何度質問しても、ヴォルはキチンと答えてくれますね。これで鬱陶しいとか言われたら、私は存在価値もなくなりそうですが。

「なかなか食べられそうな物はないですね」

「そうでもない。あの葉は臭みもなく栄養豊かで生でも食べれる。その木の新芽は煮たら旨い。そこの川には臭みの少ない魚が多い」

 う……ただ単に、私の目の付け所がダメダメな訳ですね?本当に私、ここに置いていかれたら食べ物に当たって即日死にそうです。

「私、本当に何も知らないですね」

「…………メルは今のままで良い」

 ヴォルが少し間を置いて口を開きました。こう言う時って、何かしら思いがあるのだと思います。でもそれを追究するすべは私にないのでした。

「もうすぐこのマレワット湿地帯を抜ける。サウルクの町に着いたら二、三日滞在する」

「はい」

 確実にセントラルに近付いているのですよね。私のこの先の人生、どうなるのでしょうか。ヴォルと一緒にいる事自体は嫌ではないのですが。って言っても、色々と考えても仕方ないのですよね。

 それから何日かして、湿地帯を抜けました。町はすぐ見え、難なく宿屋まで到着します。

「俺は出てくる。メルはここにいろ」

「あの……、少し買い物を……」

「後だ。ここにいろ」

 あ……、また私は留守番ですか。前に誘拐されてから、本当に信用がないですね。

「分かりました。いってらっしゃい、ヴォル」

 溜め息が出そうになりましたが、この様な横暴さには慣れましたよ。『私の意見』はないものと思え、です。
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