「結婚しよう」

まひる

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第二章

1.メルとなら構わない【5】

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「あの……ですね。私も女の子なので……、男性と一緒にお風呂に入るというのは……かなり恥ずかしいのです」

 ここはしっかりと言っておかなければならないです。って言っている間も、ヴォルは私の腰辺りを抱き留めたままでした。確かに水位がヴォルにちょうど良い深さなので、手を放されると私は沈んでしまいますが。

「そうなのか」

「はい」

 分かってくれたのでしょうか。少しホッと……。

「それならば慣れろ」

 はい?な、慣れろってどういう意味ですか。ホッとしようとした矢先の、予想をかなり斜め上にいってしまったような言葉でした。

「セントラルは夫婦混浴だ」

 …………もう、何でしょう。私は異国の壁に突き当たっているのですね。文化や風習の違いは勿論覚悟していましたが、この無表情なヴォルから聞かされる私の身にもなってほしいです。そもそも、強制的な婚姻なのですから。

「そう……ですか」

「嫌か」

「えっ……あの……、嫌と言う訳では……。いえ、良くはないのですけど」

 だから恥ずかしいのですって。今のヴォルを見る限り、混浴と言っても直接肌をさらす訳ではなさそうです。けれども薄い布一枚。

「それなら慣れろ。俺はメルとなら構わない」

 何となく意味深な言葉のように聞こえたのは、私の願望でしょうか。もとより私の意見はあまり通らないので、もう諦めの境地ですよ。ヴォルは強引なので、こういうところも女性にモテるのでしょうか。私には比べる殿方が過去にいないので良く分かりませんが。

 とにかくしばらくそのまま二人してお湯に浸かっていました。本当に私、我慢強いですね。自分で誉めてあげたくなってしまいます。

「出るか」

「はい」

 ずっと抱き留められていたので、その状態のまま水球の外に出してもらいました。えっと、着替えとタオルと……。と思ってウマウマさんに近付こうとしたら、ヴォルに腕を掴まれて引き寄せられました。

「えっ?」

「乾かす」

 あ……、魔法ですか?本当に便利ですね。今度は私とヴォルを風が包み込みます。しかも穏やかな暖かい風なので、とても気持ち良いですね。

 もういい加減抱き枕歴が長いので、ヴォルの腕の中に収まるのは抵抗ないです。それが少し怖く思えてきます。私、段々常識が狂ってきてはいないでしょうか。
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