「結婚しよう」

まひる

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第一章

≪Ⅸ≫無理はしないつもりだ 【1】

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「本当にもう大丈夫なんですか?」

「問題ない」

 怪我をしているのに、ヴォルはウマウマさんが起きた後すぐに移動しようとします。そう言えばウマウマさん、なぜ寝ていたのでしょう。疲れていたのですかね?

「では、ヴォルがウマウマさんに乗ってください。私、歩きますから」

「駄目だ。乗るのはメルだ」

「でもでも……」

 私が情けない顔をしていたからでしょうか。ヴォルの瞳が少しだけ揺らいだ後、ポンと頭に手を乗せられました。大きな温かい手です。

「分かった。二人で乗る。進める距離は半分以下になるが、それなら良いか?」

「は、はいっ」

 きちんと私の意見を確認してくれました。いつもならヴォルの言葉が絶対なのにです。あ、でもウマウマさんにはご迷惑をお掛けします。私はウマウマさんの黄色い体を撫でてあげます。

「行こう」

「はいっ」

 命令口調じゃなかった事に少し驚きつつ、先にウマウマさんに乗ったヴォルに右腕一本で引き上げられました。やはり左肩は痛むのか、余り動かせないようです。

 山道は徐々に岩だらけになってきました。ウマウマさんの歩みが更に遅くなってきます。

「今日はここまでだ。結界を張る」

 相変わらず軽々とウマウマさんから降りますね。怪我をしていても、彼の運動能力は明らかに私より上です。

「Kono basyo wo kakuri suru.」

 またあの不思議な言語です。内容が分からないので、私には言葉と言うより歌に聞こえます。でも綺麗な音ですね。魔法は精霊との契約とかって、前に言っていました。ではこれは精霊に伝える言葉、と言うべきなのでしょう。

 ヴォルが魔法を掛け終わると、周囲が不思議な色合いの半円に覆われます。地面の中は分からないので、もしかしたら球かもしれませんが。これ自体は水の膜のような透明なんですけど、虹色の光が微かに波打ってて……あ、シャボン玉みたいな感じですかね。

「ヴォル、これって触っても大丈夫なんですか?」

 近付いて見ても、確かにそこに揺らめく膜があるのが分かります。それを指差しながら問い掛けると、ヴォルの瞳がわずかに驚きの色を浮かべました。

「魔法を無視した言動だな」

 ん?私、おかしな事を聞きました?
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