「結婚しよう」

まひる

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第一章

≪Ⅷ≫すまない【1】

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 フワリと意識が上昇します。微かな揺れと心地好い温かさに、思わずニヘッと顔の締まりがなくなってしまいました。

「起きたか、メル」

 ハッとして目を開けると、ヴォルの腕の中で横抱きに眠っていたようです。は、恥ずかしいですっ。今更慌てても仕方ないですが、ワタワタと軽く暴れてしまいました。

「大人しくしろ」

「あ……、はい」

 軽く押さえ付けられ、ウマウマさんから落ちそうになったところを救われます。ですがヴォルは怒っている様子もなく、どちらかと言うと機嫌が良さそうです。

「ヴォル?あの……、もう起きます」

 横抱きにされている事に気付いたので恥ずかしくてならず、ソワソワと身動みじろぎをしました。

「そうか」

「ぅきゃっ!」

 返答を返されたかと思うと、突然自分の身体を持ち上げられ……ストンとウマウマさんに座り直されました。えっと……、ヴォルには簡単な事かもしれないですけど!

「ヴォルっ!?あの、突然抱き上げるのとかやめてくださいませんかっ。し、心臓に悪いですっ」

 恐らく顔が真っ赤だと思いますが、それでも振り向きざまに文句を言わなければ気がすみませんでした。

「そうか。次からは一声掛ける」

 あ……、そう言う意味ではなくてですね?二の句が継げなくなった私は、またもやお魚のようにパクパクと口だけが動きます。

「問題か?」

「大有りですっ」

「婚約者だろ」

「っ!?」

 何か釈然としません。大体私は、この婚約自体なかば強制されたものなのですよ?そこのところ、お忘れではないですか?

「毎夜一緒に寝ている」

「っ!」

「婚約の腕輪もある」

「……っ」

「問題か?」

「……ないです」

 対外的には何の問題もないです。私の心の持ちようなだけで。でもおかしいじゃないですか。ヴォルは私を、自分に興味のない女だからと言う理由で連れ出したのですよ?それなのに私に対して、あたかも本当の婚約者のように装うなんておかしすぎます。

 でもどうであれ、私はセントラルに着いたら結婚するのですよね?……でもでも、好きになっては駄目なのですよね?おかしいですよ、こんなの。
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