「結婚しよう」

まひる

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第一章

7.心配だ【5】

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「あの子も仲間だったのですか?」

「…………領主に税金の代わりになるものを脅されていた。荷担していた者は他に大勢いた」

 税金の代わりに……人身売買をするのですか。旅人が多く集まるこの町では、多少の行方不明者など気にされないのでしょう。領主様は、それほどまでにお金が欲しいのですね。

「悲しいですね。お金しか見えない人は、たくさん幸せを犠牲にしているのに」

 本当の幸せが近くにありながらも、お金と言う形にこだわるがあまり色々なものを見失っていくのです。お金はなくては困りますが、それ以外の幸せを皆が感じる事が出来れば良いです。

「それが分かる奴は少ない」

 ヴォルの呟きにも似た言葉に、私は彼の胸元に顔をうずめます。私が初めて見た外の町は、物語の中のような素敵なものではなかったようです。

 それから宿屋に戻った私は、ヴォルに怪我の手当てをしてもらいました。それが終わった頃、ちょうどセントラル派遣の自警団が到着。ヴォルはまた私を宿屋にお留守番させて出ていきました。けれど私は、もう外に出る気はしませんでした。

 あの町の奥にあった商店で遊んだ子供達が大きくなる頃には、もっと居心地の良い町になっている事を願わずにはいられません。少なくとも、人を人として見れなくなるようなそんな生活はして欲しくないです。ただの一般人である私には、そう願うくらいしか出来ませんが。

 膝の痛みより、心に大きな痛みを感じた町でした。でもでも、貧しくても元気に健気に生きている人達もいましたよ。どのような生き方をするのかはその人の生まれ育ちではなく、心のはぐくみ方なのかもしれません。

「どうした、メル」

「いいえ、何でもないです」

 翌朝、私達はこの町を後にしました。荷物をいつものようにウマウマさんにくくりつけ、ヴォルは私を抱き締めるように後ろから手綱を握ります。

「ドゥーナガの町を出るとガボン高原だ」

「はい」

 またしばらくサバイバルな生活ですね。でも本音を言わせてもらえるなら、人の集まる場所は今は避けたいです。だって、人を嫌いになりたくないですから。

 昨日はあまり寝られませんでした。背中から与えられるヴォルの温かさに、私はゆっくりと目を閉じました。
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