「結婚しよう」

まひる

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第一章

7.心配だ【2】

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 少年に連れられ、細い路地をあっちへこっちへと移動します。さすがこの町の子ですね。こんな細かい道を良く覚えられます。

「ここですかぁ?」

「うん、ここ。はやく、はやく」

 連れて来られた場所は、微かに記憶に引っ掛かる場所でした。でもポンと出てきません。それはそうですよね、私は今日この町に着いたばかりですから。

 少年にかされるままに建物の中に入って行きました。ん~、やけに薄暗い通路ですね。段々寒くなってきてますが、気のせいでしょうか。下へ下へと階段を下りていきます。グルグル、グルグル……目が回ります。何でこんな階段を作ったのでしょうか。お酒が余計に回ってきて、とてもフラフラな状態です。

「ここだよ、おねえさん」

「あ~、はい。ここですかぁ?……ぅきゃっ!」

 開けてくれた扉の奥を覗いた途端、後ろからドンと押されました。思い切り前につんのめります。両手と両膝を勢い良く打ち付け、一人で転げて声もなく唸りました。痛いです。転んだのなんて、子供の頃以来です。も、勿論つまずく事くらいはありますけど。

「何するんですかぁ~!」

 怒りながら振り向いた時にはもう、扉が閉められて誰もいませんでした。あれ?私は少し足が痛いのを我慢して立ち上がり、扉の取っ手を引いてみました。開きません。押して開けるタイプだったでしょうか。そして押してみます。……開きません。ダラダラ変な汗が流れてました。これって、嫌な感じですね。

 す、少し落ち着きましょう。ス~、ハ~、ス~、ハ~。深呼吸です。はい、少し落ち着きました。そして改めて周りを見回してみます。えっと、窓がありません。薄暗いですが、真っ暗ではありません。壁がボンヤリ光っているので魔法の一種でしょうか。全く詳しくないので分かりませんが。

 どうしましょう。私、閉じ込められてしまいました。うぅ~、困りましたよ。窓もないので大声で助けを呼ぶ事も出来ません。ダラダラ、また変な汗が流れてきます。あ~、何か気分も悪くなってきました。緊張と恐怖とお酒がミックスです。うぅぅぅぅ~……、ヴォルからここに──酒場ですよ、こんな地下牢みたいなところじゃないです──いろと言われたのに。何でこんな事になってしまったのでしょうか。いえ、私が勝手に移動したんです。

 頭を抱えて唸ったところで、何も好転しません。でもでも、他に何も出来ないのですよっ。
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