「結婚しよう」

まひる

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第一章

6.気に入らなかったか【4】

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 何気なく腕輪を見ます。綺麗ですね、細工が細かいですね。細かな宝石がついていますね……って、これ凄く高いんじゃないですか?!婚約の腕輪って、相場はどのくらいでしょうか。それよりも、私なんかがこの様な物を頂いてしまって本当に良いのでしょうか。

 一人で悶々と考えていても、何の結論も出てきません。ヴォルが戻ってきたら聞いてみる事にします。とりあえず今は……、やる事がないですね。それにしてもベッド、一つなんですね。いつも当たり前に抱き枕になっているので違和感はなかったのですが、こうして大きなベッドを見ると……その……恥ずかしいです。

 本当に毎夜、ヴォルは私を抱き締めたまま眠ります。まぁ私もそのまま寝ちゃうのでそれもそれですが、野宿の時にはヴォルが結界を張ります。その為、寝ている間に魔物から襲われる事は一度もなかったです。外でもぐっすり眠れると言うのは、幸せな事ですね。

 なんて寝る事ばかり考えていたからか、ファッとアクビが出てしまいます。ヴォルはいつ頃帰って来るのでしょうか。夜ご飯までは時間がまだあります。私はコロンとベッドに転がりました。……眠いですね。





 微かな揺れに意識が呼び戻されます。あ……私、寝ていました。

「起きたか」

 慌てて身体を起こすと、ベッドに腰掛けているヴォルと目が合いました。と言うか、外が暗くなっています。

「あ、あの……すみません。寝てしまっていました」

「問題ない。腹は空かないか」

 何やら書物を読んでいたらしく、手元のそれを閉じて問い掛けてくれます。

「あ、はい。お腹、空きました」

「そうか。行くぞ」

 立ち上がるヴォルを見上げてから、私もハッとして起き上がります。ヨダレ、垂れてないですよね?少し口許を心配してみますが、どうやら大丈夫のようです。

「あ、あの……どちらへ行くのですか?」

「酒場だ」

 背中に問い掛けると、そのまま答えが返ってきます。なるほど。町ではサバイバルな料理は作らないのですね?私は一人で納得しながら、ヴォルの後を追い掛けました。

 宿屋を出てすぐ、目的の酒場(?)がありました。ですがこの建物、無駄に豪華ではありませんか?まるで領主様のお屋敷みたいです。
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